7 / 17
6.その野望が事実である可能性は
しおりを挟む
(ど、どうして怒っているのかしら)
いつも以上ムスッとしたテオドルが、私たちを引き剝がすようにツカツカと近付いてくる。
そして私たちのすぐ近くに立った。
(繋いだ手を無理やり剥がすのかと思ったのに)
三男といえど先生も伯爵家。そして私は彼が執事として仕える家の令嬢。
勝手に触れることは出来ないということなのだろうが、その事実がどうしてか寂しく感じた。
「別に何もしていないわ。お見送りに手を握ることもあるでしょう」
「そんなお見送り聞いたことはありません」
「そんなことないわよ。出迎える時だって、『よく来たわね!』って手を握らない?」
ちょっと強引な説明をしつつサッと先生の手を離し、特別なことではないとアピールするように手のひらを振ると、物理的に離れたからかテオドルの強張った顔が少し軽減する。
(もう、可愛いわね)
彼のこの表情が嫉妬から来るものだったらいいのに、なんてあり得ないことを考え私は思わず苦笑した。
「ね、少し散歩しない?」
「かしこまりました」
先生を見送ったあと、そうテオドルを誘う。絶対断られると思ったのに案外あっさりと頷いてくれたことに驚きつつも私の胸が高鳴った。
「今日はね、魔力量の勉強をしたのよ」
「さようでございましたか」
「なんでも保有する魔力と使える魔力ってのは一致していなくて、でも繰り返し何度も使えば使える魔力は増えるみたいなの」
学んだばかりのことを自慢気に話す。
こんな話をされてもテオドルからしたらどうでもいいことかもしれないが、それでも彼とふたりで歩いているという高揚感から私の口は止まらない。
「テオドルは魔力量多かったわよね。もしかしたらとんでもない魔法が使えるようになるかもしれないわよ?」
「とんでもない、とは?」
「奇跡の力よ! そうね、例えば……人を生き返らせるとか?」
その発言は完全に思いつきだった。
ただよくある定番の絵本の一幕。お姫様を生き返らせるのは王子様の口付けだと決まっている、というその程度の発想。
だが、私のそんな幼稚な発言を聞いたテオドルが、その赤い瞳を見開いたのを見てぽかんとする。
「テオドル? どうしたの?」
「あ、いえ、その……」
いつもハッキリと話す彼が口ごもるのを聞き唖然とする。
更に彼が戸惑いながら視線を下げたので、つい反射的にその顔を下から覗き込んだ。
「テオドル?」
てっきりバカなことを言った私を笑うか、呆れるかしているのかと思ったのだが、彼の表情がどこか暗く落ち込んだ様子だったことに私まで釣られて目を見開いてしまう。
(どうしてそんな、私変な事を言ったのかしら)
ほぼ無意識に彼の頬へと手を伸ばしたが、触れる寸前で彼が背けるように顔をあげたので触れることはなかった。
そのことに無性に腹が立つのはどうしてなのだろう。
(昔はテオドルの方から誰よりも近くで触れていたのに!)
肌と肌が触れるその熱を今でも思い出せるのに、なんて考えが一瞬浮かび、それはいつのことなのだと思考停止してしまう。
だって私は彼と“触れ合ったことなどない”のだから。
「――?」
「ソフィ様?」
「え、あ……ごめんなさい。何か今思い出したことがあった気がしたんだけど、よくわからなくて」
「お疲れなのでしょう。私室までお送りします」
さっきまでの暗い表情をパッと消したテオドルの後ろを歩く。
じわじわと頬が熱くなっていくのを感じ、彼の後ろを歩いていて本当によかったと思っていた。
(あんな妄想をするだなんて、私は欲求不満に違いないわ!)
貴族令嬢として純潔であることの重要さを思い出しながら、顔から火が出そうなのを必死に堪える。
どうかこのまま振り向かないで、と私は心の底からそう願ったのだった。
「送ってくれてありがとう」
「いえ、執事として当然のことをしただけです」
恭しく頭を下げるテオドルをムスッとしながら眺める。
(本当に一度も振り向かないなんて!)
振り向かないで、なんて願っていたくせに、本当に一度も振り向かれなかったことに機嫌が悪くなる。
エスコートではなく完全に道案内のような対応を取られたことに不満を感じるなんて私はまだまだ幼いようだ。
(でも、一度も振り向かないのは酷くないかしら)
万一私が付いて行っていなければどうするのだろうか。
もちろんこの邸は私の家なのだから当然迷うことなどないが、それでもうっかり転んだり他のものに目を奪われて遅れるかもしれないのにだ。
彼の態度は主人の娘に対する敬意など何も感じない、淡々としたもので、そう思えば思うほどものすごく腹が立つ。
だって私はこんなにもテオドルのことを考えていて、そしてもし婿を取ればこれから先もずっと側にいられるだなんて考えるくらいなのだ。
そんな私に対して彼のこの対応はあんまりではないだろうか。いや、あんまりだ。ものすっごくあんまりだ。
「ねぇ、まだ時間あるでしょ。私の部屋でお茶でもどうかしら」
「この時間から、ですか?」
「あら。まだ明るい時間よ」
夕食にはまだ少し早いが、十分日が落ちている時間であることにテオドルが意表を突かれた顔をする。
その戸惑った顔を見ると、さっきまでの苛立ちが少し収まるようだった。
「問題ないでしょ?」
「いえ、ですが俺は」
「執事じゃない」
(騎士だったような気もするけど、どっちにしろ私の身内だわ。お父様だって相手が信頼しているテオドルならむしろ安心するはずよ)
「そう……ですね、執事、ですから」
「?」
またも歯切れの悪い返答だったことに疑問を持つが、彼が私の部屋の扉を開けてくれたので素直に中に入る。
テオドルもまた、私に続いて室内へと足を踏み入れた。
「ね、バルコニーで星を眺めながらお茶にしましょう!」
うきうきとバルコニーまで行くと、空には星が瞬いている。
宝石のように輝く星をテオドルと眺められることが嬉しいと感じた。
「体が冷えてはいけません。こちらをどうぞ」
「ありがとう」
脱いだコートを私の肩にかけてくれる。
そんな優しさがくすぐったい。
(ちょっと困らせてやろうと思っただけだったんだけど、予想以上に楽しいわ!)
「先にリーヤにお茶を持ってきて貰わなきゃね」
テオドルに準備を頼んでもよかったし、私が淹れてもよかったのだが、折角ロマンチックな空の下でふたりきりなのだ。
この時間を減らすのが惜しくてそう提案し、リーヤを呼ぶためのベルへと手を伸ばす。
そのベルに指先が触れるその瞬間、遮るように私の手のひらをテオドルがぎゅっと握った。
(も、もしかして嫉妬!?)
さっき先生の手を握っていたことに反応していたテオドルだ。
もしかしてこれはそういうことなのではないだろうか。
まさかふたりに禁断の恋愛が芽生えてしまうのでは? なんて思いごくりと唾を呑む。
だが、私へと振られたのは全然別の話題だった。
「死んだ人間が生き返ることはありません」
「……え」
正直、色っぽい流れにならなかったことを残念に思う。だが、それ以上に彼の言葉が重く私の心にのしかかった。
「ですが、誰かの命と苦痛を犠牲にして時間を巻き戻すことは可能です」
(時間を、巻き戻す?)
そんなことがあり得るのだろうか。
対価の内容も理解できないし、そもそもそんな時間の巻き戻しという奇跡が起こせるのならこの世界の秩序が壊れてしまうだろう。
にわかには信じられない言葉で、だがそのあり得ない説明を断言するとはどういうことなのか。
「何を言ってるの、テオドル?」
「あの者が気に入ったんですか」
「え?」
さっきの話を詳しく聞きたいのに、またも突然変わったその話について行けず唖然とする。
「彼は三男ですが、伯爵家の者です。そして魔法学校でもいい成績を残していたそうですね」
「え、えぇ。そう聞いているわ」
同じ伯爵家同士とはいえ、どこからも引っ張りだこだったはずの彼が、私の家庭教師をしてくれることに疑問を覚えるくらいの相手なのだ。
だがそのことは執事であるテオドルも当然知っていることのはず。
それをわざわざ私に聞くことの意味がわからない。
「今日、どんな話をして何故あんなに興奮されていたんです?」
(興奮って!)
確かにそうだが、その言い方に少し不愉快な気分になる。
だが隠すほどのことでもないので私は素直に口を開いた。
「結婚相手を相談したの。私、ずっとどこかに嫁がなくちゃいけないと思っていたんだけど」
「ッ」
「先生に、婿を貰うことを提案されたわ」
「あの者はいけません!」
「ちょっ、テオドル?」
声を荒げる姿なんて見たことがなかったせいで、ビクリと肩が跳ねる。
私のそんな様子を見たからか、テオドルは気まずそうに顔を逸らした。
「あの者が何故この家の家庭教師を引き受けたのかは考えましたか?」
「え、どうしてかしら。家格が同じだから、引き受けやすかったとか?」
「ははっ、違いますよ。結婚相手を見繕う為でしょう」
刺々しいテオドルのその言葉に私はムッとしてしまう。
「だったら私より高位貴族の令嬢の家庭教師になったんじゃないかしら? 彼ならばもちろん声がかかっていたはずよ」
「高位貴族だと彼には何の権限も与えられないでしょう。そして下位貴族もダメです。ですが家格が同じなら、彼が伯爵になる未来もあり得る」
「そんなこと」
ない、と断言しようとして思わず口ごもる。
先生は、婿を取れと言っていたし生まれた長子を跡継ぎに出来るとも言っていた。
では、その長子に後を継がせるのは誰なのだろう?
(まさか、私じゃない可能性があるってこと?)
そうだ。彼は最初から『婿を取る』提案はしたが『家を継ぐ』提案はしていなかった。
そしてスクヴィス伯爵家には私しか子供がいない。
つまり私と結婚すれば、この家の実権を握れるのだ。
「まさか、本当に?」
「同じ家格で他に後継者候補がいないのは、ソフィ様だけです」
いつも以上ムスッとしたテオドルが、私たちを引き剝がすようにツカツカと近付いてくる。
そして私たちのすぐ近くに立った。
(繋いだ手を無理やり剥がすのかと思ったのに)
三男といえど先生も伯爵家。そして私は彼が執事として仕える家の令嬢。
勝手に触れることは出来ないということなのだろうが、その事実がどうしてか寂しく感じた。
「別に何もしていないわ。お見送りに手を握ることもあるでしょう」
「そんなお見送り聞いたことはありません」
「そんなことないわよ。出迎える時だって、『よく来たわね!』って手を握らない?」
ちょっと強引な説明をしつつサッと先生の手を離し、特別なことではないとアピールするように手のひらを振ると、物理的に離れたからかテオドルの強張った顔が少し軽減する。
(もう、可愛いわね)
彼のこの表情が嫉妬から来るものだったらいいのに、なんてあり得ないことを考え私は思わず苦笑した。
「ね、少し散歩しない?」
「かしこまりました」
先生を見送ったあと、そうテオドルを誘う。絶対断られると思ったのに案外あっさりと頷いてくれたことに驚きつつも私の胸が高鳴った。
「今日はね、魔力量の勉強をしたのよ」
「さようでございましたか」
「なんでも保有する魔力と使える魔力ってのは一致していなくて、でも繰り返し何度も使えば使える魔力は増えるみたいなの」
学んだばかりのことを自慢気に話す。
こんな話をされてもテオドルからしたらどうでもいいことかもしれないが、それでも彼とふたりで歩いているという高揚感から私の口は止まらない。
「テオドルは魔力量多かったわよね。もしかしたらとんでもない魔法が使えるようになるかもしれないわよ?」
「とんでもない、とは?」
「奇跡の力よ! そうね、例えば……人を生き返らせるとか?」
その発言は完全に思いつきだった。
ただよくある定番の絵本の一幕。お姫様を生き返らせるのは王子様の口付けだと決まっている、というその程度の発想。
だが、私のそんな幼稚な発言を聞いたテオドルが、その赤い瞳を見開いたのを見てぽかんとする。
「テオドル? どうしたの?」
「あ、いえ、その……」
いつもハッキリと話す彼が口ごもるのを聞き唖然とする。
更に彼が戸惑いながら視線を下げたので、つい反射的にその顔を下から覗き込んだ。
「テオドル?」
てっきりバカなことを言った私を笑うか、呆れるかしているのかと思ったのだが、彼の表情がどこか暗く落ち込んだ様子だったことに私まで釣られて目を見開いてしまう。
(どうしてそんな、私変な事を言ったのかしら)
ほぼ無意識に彼の頬へと手を伸ばしたが、触れる寸前で彼が背けるように顔をあげたので触れることはなかった。
そのことに無性に腹が立つのはどうしてなのだろう。
(昔はテオドルの方から誰よりも近くで触れていたのに!)
肌と肌が触れるその熱を今でも思い出せるのに、なんて考えが一瞬浮かび、それはいつのことなのだと思考停止してしまう。
だって私は彼と“触れ合ったことなどない”のだから。
「――?」
「ソフィ様?」
「え、あ……ごめんなさい。何か今思い出したことがあった気がしたんだけど、よくわからなくて」
「お疲れなのでしょう。私室までお送りします」
さっきまでの暗い表情をパッと消したテオドルの後ろを歩く。
じわじわと頬が熱くなっていくのを感じ、彼の後ろを歩いていて本当によかったと思っていた。
(あんな妄想をするだなんて、私は欲求不満に違いないわ!)
貴族令嬢として純潔であることの重要さを思い出しながら、顔から火が出そうなのを必死に堪える。
どうかこのまま振り向かないで、と私は心の底からそう願ったのだった。
「送ってくれてありがとう」
「いえ、執事として当然のことをしただけです」
恭しく頭を下げるテオドルをムスッとしながら眺める。
(本当に一度も振り向かないなんて!)
振り向かないで、なんて願っていたくせに、本当に一度も振り向かれなかったことに機嫌が悪くなる。
エスコートではなく完全に道案内のような対応を取られたことに不満を感じるなんて私はまだまだ幼いようだ。
(でも、一度も振り向かないのは酷くないかしら)
万一私が付いて行っていなければどうするのだろうか。
もちろんこの邸は私の家なのだから当然迷うことなどないが、それでもうっかり転んだり他のものに目を奪われて遅れるかもしれないのにだ。
彼の態度は主人の娘に対する敬意など何も感じない、淡々としたもので、そう思えば思うほどものすごく腹が立つ。
だって私はこんなにもテオドルのことを考えていて、そしてもし婿を取ればこれから先もずっと側にいられるだなんて考えるくらいなのだ。
そんな私に対して彼のこの対応はあんまりではないだろうか。いや、あんまりだ。ものすっごくあんまりだ。
「ねぇ、まだ時間あるでしょ。私の部屋でお茶でもどうかしら」
「この時間から、ですか?」
「あら。まだ明るい時間よ」
夕食にはまだ少し早いが、十分日が落ちている時間であることにテオドルが意表を突かれた顔をする。
その戸惑った顔を見ると、さっきまでの苛立ちが少し収まるようだった。
「問題ないでしょ?」
「いえ、ですが俺は」
「執事じゃない」
(騎士だったような気もするけど、どっちにしろ私の身内だわ。お父様だって相手が信頼しているテオドルならむしろ安心するはずよ)
「そう……ですね、執事、ですから」
「?」
またも歯切れの悪い返答だったことに疑問を持つが、彼が私の部屋の扉を開けてくれたので素直に中に入る。
テオドルもまた、私に続いて室内へと足を踏み入れた。
「ね、バルコニーで星を眺めながらお茶にしましょう!」
うきうきとバルコニーまで行くと、空には星が瞬いている。
宝石のように輝く星をテオドルと眺められることが嬉しいと感じた。
「体が冷えてはいけません。こちらをどうぞ」
「ありがとう」
脱いだコートを私の肩にかけてくれる。
そんな優しさがくすぐったい。
(ちょっと困らせてやろうと思っただけだったんだけど、予想以上に楽しいわ!)
「先にリーヤにお茶を持ってきて貰わなきゃね」
テオドルに準備を頼んでもよかったし、私が淹れてもよかったのだが、折角ロマンチックな空の下でふたりきりなのだ。
この時間を減らすのが惜しくてそう提案し、リーヤを呼ぶためのベルへと手を伸ばす。
そのベルに指先が触れるその瞬間、遮るように私の手のひらをテオドルがぎゅっと握った。
(も、もしかして嫉妬!?)
さっき先生の手を握っていたことに反応していたテオドルだ。
もしかしてこれはそういうことなのではないだろうか。
まさかふたりに禁断の恋愛が芽生えてしまうのでは? なんて思いごくりと唾を呑む。
だが、私へと振られたのは全然別の話題だった。
「死んだ人間が生き返ることはありません」
「……え」
正直、色っぽい流れにならなかったことを残念に思う。だが、それ以上に彼の言葉が重く私の心にのしかかった。
「ですが、誰かの命と苦痛を犠牲にして時間を巻き戻すことは可能です」
(時間を、巻き戻す?)
そんなことがあり得るのだろうか。
対価の内容も理解できないし、そもそもそんな時間の巻き戻しという奇跡が起こせるのならこの世界の秩序が壊れてしまうだろう。
にわかには信じられない言葉で、だがそのあり得ない説明を断言するとはどういうことなのか。
「何を言ってるの、テオドル?」
「あの者が気に入ったんですか」
「え?」
さっきの話を詳しく聞きたいのに、またも突然変わったその話について行けず唖然とする。
「彼は三男ですが、伯爵家の者です。そして魔法学校でもいい成績を残していたそうですね」
「え、えぇ。そう聞いているわ」
同じ伯爵家同士とはいえ、どこからも引っ張りだこだったはずの彼が、私の家庭教師をしてくれることに疑問を覚えるくらいの相手なのだ。
だがそのことは執事であるテオドルも当然知っていることのはず。
それをわざわざ私に聞くことの意味がわからない。
「今日、どんな話をして何故あんなに興奮されていたんです?」
(興奮って!)
確かにそうだが、その言い方に少し不愉快な気分になる。
だが隠すほどのことでもないので私は素直に口を開いた。
「結婚相手を相談したの。私、ずっとどこかに嫁がなくちゃいけないと思っていたんだけど」
「ッ」
「先生に、婿を貰うことを提案されたわ」
「あの者はいけません!」
「ちょっ、テオドル?」
声を荒げる姿なんて見たことがなかったせいで、ビクリと肩が跳ねる。
私のそんな様子を見たからか、テオドルは気まずそうに顔を逸らした。
「あの者が何故この家の家庭教師を引き受けたのかは考えましたか?」
「え、どうしてかしら。家格が同じだから、引き受けやすかったとか?」
「ははっ、違いますよ。結婚相手を見繕う為でしょう」
刺々しいテオドルのその言葉に私はムッとしてしまう。
「だったら私より高位貴族の令嬢の家庭教師になったんじゃないかしら? 彼ならばもちろん声がかかっていたはずよ」
「高位貴族だと彼には何の権限も与えられないでしょう。そして下位貴族もダメです。ですが家格が同じなら、彼が伯爵になる未来もあり得る」
「そんなこと」
ない、と断言しようとして思わず口ごもる。
先生は、婿を取れと言っていたし生まれた長子を跡継ぎに出来るとも言っていた。
では、その長子に後を継がせるのは誰なのだろう?
(まさか、私じゃない可能性があるってこと?)
そうだ。彼は最初から『婿を取る』提案はしたが『家を継ぐ』提案はしていなかった。
そしてスクヴィス伯爵家には私しか子供がいない。
つまり私と結婚すれば、この家の実権を握れるのだ。
「まさか、本当に?」
「同じ家格で他に後継者候補がいないのは、ソフィ様だけです」
57
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる