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最終章・勇者レベル、???
エピローグ:これがはじまりの物語
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「いだいいだいいだいぃっ!」
「もう少しッ!我慢ッ!してくださいませッ!」
ギリギリと骨を折ろうと思っているとしか思えないほどの力でコルセットを締め付けるのはアッケルマ家のメイドさん。
そう、今日はなんと私のデビュタントらしい。
“しんっじらんない!こんなにやることがあるなんて聞いてないしぃ~!!”
魔王討伐の報告をした私たちは、事前に打ち合わせした通り浄化に時間がかかるため誰にも森の奥まで足を踏み入れないように進言した。
ぶっちゃけ何一つ戦利品のような目に見える討伐の証拠を持っていなかったので、信じてもらえるは賭けだったのだが……
“さすがベルザックというか、信頼がダンチだわ”
彼が一言私の言葉を肯定してくれただけで祝砲が上がったので、まぁ良しとする。
出がらしなんで浄化に時間かなりかかりますよ、と言った以上私の当面の仕事は浄化というお墓参りだけ。
「……だと、思ってたのに……」
私だけでなくメイドさんもゼェゼェと荒い呼吸をしながらなんとか着替え終わったところで、いつの間にか来ていたらしいフランが私とお揃いの生地と色で作られたテールコートを着て横に立っていた。
「ここでバテるとか、まだ序盤だぞ。つか今日は始まってもいない」
「あぁあ……」
召喚された時点で出がらしになっていた私は、良くも悪くもあまり認知されていなかった。
もちろん王宮に勤める者や騎士は知ってはいたものの、国からの正式発表のようなものはされておらず。
「まさか全てが一気に来るなんて」
「まぁ、仕方ないだろ。次のパレードではコルセットなしだから安心しろ」
「夜会ではまた着けなきゃってこと知ってんだからね!?」
その結果、聖女としてのお披露目を兼ねたデビュタントに、魔王討伐の祝賀パレード、そのパレードが終わったらそのまま夜会が開かれ、さらにその次はフランとの婚約式と結婚式が待っていた。
「せめて一個、一個だけでも減らないかな……」
まさかコルセットを自分がつける日が来るなんて想像もしていなかった私は、この潰れそうなくらい締め上げられた体を見ながら口に出す。
“コルセットって体に悪いんだからね……”
次の目標はコルセットの討伐だ、なんてくだらないことを考えていると、私の主張を聞いていたフランが優しく肩をポンと叩いて。
「多分、今リッカが言った数の倍ぐらいのパーティーに参加することになるぞ」
「はっ!?」
「嫡男ではないが俺も貴族だからな。妻の仕事として社交もついてくる。諦めてくれ」
「や、やだ!もう本当に嫌なんだけど!!結婚しない、結婚しないっ!!」
「却下」
私の言葉を一瞬で切り捨てたフランが何故か楽しそうにくすくすと笑う。
そんな彼を見て、私からも笑い――と思いきや締め上げられたことによる圧迫で胃酸が上がってきて。
「ぅぷ」
「お、おい!それはまずい、ちょ、誰か!誰かいないか!?」
「も、ダメ……」
「誰かぁぁ!!」
――失ったものが沢山ある。
もっと上手くやれたと思うことも沢山あるけれど。
それでも、きっと君となら前を向けると思うから。
誰も眠っていないあのお墓にかけた二つの花冠が、手を振るようにふわりと揺れた。
「もう少しッ!我慢ッ!してくださいませッ!」
ギリギリと骨を折ろうと思っているとしか思えないほどの力でコルセットを締め付けるのはアッケルマ家のメイドさん。
そう、今日はなんと私のデビュタントらしい。
“しんっじらんない!こんなにやることがあるなんて聞いてないしぃ~!!”
魔王討伐の報告をした私たちは、事前に打ち合わせした通り浄化に時間がかかるため誰にも森の奥まで足を踏み入れないように進言した。
ぶっちゃけ何一つ戦利品のような目に見える討伐の証拠を持っていなかったので、信じてもらえるは賭けだったのだが……
“さすがベルザックというか、信頼がダンチだわ”
彼が一言私の言葉を肯定してくれただけで祝砲が上がったので、まぁ良しとする。
出がらしなんで浄化に時間かなりかかりますよ、と言った以上私の当面の仕事は浄化というお墓参りだけ。
「……だと、思ってたのに……」
私だけでなくメイドさんもゼェゼェと荒い呼吸をしながらなんとか着替え終わったところで、いつの間にか来ていたらしいフランが私とお揃いの生地と色で作られたテールコートを着て横に立っていた。
「ここでバテるとか、まだ序盤だぞ。つか今日は始まってもいない」
「あぁあ……」
召喚された時点で出がらしになっていた私は、良くも悪くもあまり認知されていなかった。
もちろん王宮に勤める者や騎士は知ってはいたものの、国からの正式発表のようなものはされておらず。
「まさか全てが一気に来るなんて」
「まぁ、仕方ないだろ。次のパレードではコルセットなしだから安心しろ」
「夜会ではまた着けなきゃってこと知ってんだからね!?」
その結果、聖女としてのお披露目を兼ねたデビュタントに、魔王討伐の祝賀パレード、そのパレードが終わったらそのまま夜会が開かれ、さらにその次はフランとの婚約式と結婚式が待っていた。
「せめて一個、一個だけでも減らないかな……」
まさかコルセットを自分がつける日が来るなんて想像もしていなかった私は、この潰れそうなくらい締め上げられた体を見ながら口に出す。
“コルセットって体に悪いんだからね……”
次の目標はコルセットの討伐だ、なんてくだらないことを考えていると、私の主張を聞いていたフランが優しく肩をポンと叩いて。
「多分、今リッカが言った数の倍ぐらいのパーティーに参加することになるぞ」
「はっ!?」
「嫡男ではないが俺も貴族だからな。妻の仕事として社交もついてくる。諦めてくれ」
「や、やだ!もう本当に嫌なんだけど!!結婚しない、結婚しないっ!!」
「却下」
私の言葉を一瞬で切り捨てたフランが何故か楽しそうにくすくすと笑う。
そんな彼を見て、私からも笑い――と思いきや締め上げられたことによる圧迫で胃酸が上がってきて。
「ぅぷ」
「お、おい!それはまずい、ちょ、誰か!誰かいないか!?」
「も、ダメ……」
「誰かぁぁ!!」
――失ったものが沢山ある。
もっと上手くやれたと思うことも沢山あるけれど。
それでも、きっと君となら前を向けると思うから。
誰も眠っていないあのお墓にかけた二つの花冠が、手を振るようにふわりと揺れた。
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辛いことも沢山あったけど、過去の二人の魂は救われたかな?救われているといいな😭これから同じ思いをする人が現れないように……今はコルセットをしての闘いですね💦向いてなさそうだけど頑張れ!と応援したい気持ち!打倒コルセットも応援!🤣体に悪いですからね!
朝倉真琴様
わ!最後までお付き合いくださり本当にありがとうございます⋯!
悪人って誰から見たら悪人で、違う視点からだと悪人じゃないよねぇ⋯みたいな思いから始まったこちらのお話、失ったものも含めて幸せになって貰いたいなぁ⋯!と思います(*^^*)
リッカは、これからきっとコルセットを廃止すべく全力の後世を送るのかな⋯なんて←
個人的に凄く力不足を感じた部分が多かったので、いつかもっと成長すべく、私もリッカ共々頑張りますね(((UωU` *)(* ´UωU)))
いつもコメント励みになっておりました!
最後まで走れたの、本当に真琴さんのお力も大きいです~!!
次は思いっきりラブコメでお会いできることを祈って♪
最後まで本当にありがとうございました!
辛い展開が続きますが、はぴえんのために応援っ!!😭してます!
アサクラ様
お読みくださりありがとうございます~!!
まだまだしっとりのターンが続きますが、最後はちゃんとハッピーです⋯!
穏やかで、だからこそ主人公組の喧嘩しながらもいちゃいちゃするような日常が待っておりますのでっ( ;∀;)
そしてそんな日常を取り戻すために奮闘するみんなをもう少し見守っていただければ嬉しいです~!!
感想ありがとうございました(*^^*)
倒せて治せたと思ったら😱ひぃー💦と思う辛い展開に。体も心も心配です。
アサクラ様
お読みくださりありがとうございます!
ここから第二章の終幕まで悲しいことが続いてしまうのですが、彼らは彼らなりに精一杯足掻くと思います~(*´;ェ;`*)
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感想ありがとうございました!