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4.育む相手が間違ってます
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フランカに連れられ向かったのは薔薇園だった。
「うっわ、凄い!」
あまり女の子らしくない私だが、ついテンションが上がるほどとても美しい場所で。
「薔薇って思ったより強い香りするんだね」
「あら、お嫌いですか?」
「いや、いい匂いだなって思うよ」
そう返答すると、白い指を口元にあてたフランカがパキンと1本の薔薇を手折った。
“薔薇園と美少女、似合う⋯”
なんともいえないその優雅な光景に思わずみとれていると、丁寧に全ての棘を取ったその薔薇をそっと私の髪に挿した。
「え⋯っ」
「可愛い」
「えぇ⋯?」
可愛い子に可愛いと言われても⋯、なんて思いつつも嬉しいもんは嬉しくて。
「フランカの方が似合うと思うけど⋯」
「そうかしら?んー、でもレイのつやつやの黒髪に赤が映えてますわ」
「んん⋯、そう?ありがと⋯」
“普段女らしい事を全然しないから、ちょっと照れ臭いな”
どこかくすぐったさを感じつつ、私も庭園の薔薇に手を伸ばし⋯
「いたっ」
「レイ!?」
思ったより鋭い棘で指を刺してしまった。
「大丈夫!?」
慌てたフランカがすぐに私の手を取り棘が刺さったままになってないかを確認すると、そのままじわりと血が滲む指をぱくりと口に含んでしまって。
「ちょ!?」
強く傷口を吸われ、傷の部分を指で強く圧迫すると傷自体が小さかったこともあってすぐに血は止まった。
「⋯薔薇が欲しかったのなら私がいくらでも手折りますから」
「うぅ、すみません⋯」
いつもより低い声で言われ、思わずしゅんとしてしまう私を暫く見たあと、フランカが小さくため息を吐く。
「で、どれがいいんですの」
「え?」
「どの薔薇が欲しかったんですか?さっき手を伸ばされてたのは⋯この薔薇だったかしら」
「ま、待って!?」
再び薔薇に手を伸ばすフランカを慌てて制止する。
「別に俺、薔薇が欲しかった訳じゃなくって⋯!」
「?」
「⋯その、フランカにこそ似合いそうだなって思ったから⋯」
「それはつまり、私に薔薇をプレゼントしたくて⋯って事?」
一瞬素のフランカが出て思わずくすっと笑ってしまう。
“ため口っぽいフランカの方がいいなぁ”
とは思うが、そもそも私は国の命運がかかっているのに性別を偽っているのだ。
素でいて欲しい、なんてどの口が言うんだというもので⋯
「まぁ、そうなる⋯かな」
「⋯⋯⋯」
結果プレゼントどころか怪我をし手当てまでして貰った私は、あまりにも格好悪いなとしょぼくれつつ正直に答える。
すると一瞬黙ってしまったフランカが、徐に薔薇をもう1本手折り棘を全部取ってから私に手渡して。
「⋯どうぞ、お好きなところに飾ってくださいませ」
「⋯!」
そっと顔を近付け目を瞑るフランカに思わず息を呑む。
“うっわ、キスをねだられてるみたい⋯!”
なんて考えたせいで少し指先が震えるが、それでも折角手渡してくれたのだからとそっと彼女の耳に引っ掛けるように薔薇を挿した。
「⋯そんなに緊張しちゃって、可愛いね?」
くすりと小さく笑ったフランカの声が、怒っていたさっきのトーンとはまた違う色気を帯びた低さでドキッとしてしまう。
「そ、んな事⋯っ」
「ふふ、ほら赤くなったよ、かぁわいい」
キス出来そうなほど近い距離にあったフランカの顔が、更に少しずつ近付いていると気付いた私は羞恥から思わず目を強く瞑ると、温かくて少ししっとりとした彼女の唇が私の頬を軽く掠めた。
「!!!」
慌てて一歩後ろに飛び退くと、くすくすとフランカが笑っていて。
「な、何を⋯っ」
「少し触れただけですわ?ー⋯ゆっくり育むのが希望⋯でしたものね」
「そ、れは⋯っ」
「早く私を好きになってくださいませね、レイ」
「~~ッッ」
とても楽しそうなフランカに、私の心臓はずっと痛いくらい高鳴ってしまうのだった。
そんな薔薇園でのデートという名のお散歩から数日。
今日はフランカと、そしてフランカの護衛のランドリューと3人で城下町に来ていた。
“一国の姫様の護衛が1人だけってちょっと心配だったけどー⋯”
そもそもフランカは普段騎士団に所属し、そこでかなりの実力を発揮していると聞いていたので少なくても平気なのかな、と考える。
一応お忍びという体でとの事で、フランカはエプロンドレスのようなシンプルなワンピースを着ていたのだが⋯
「いや、可愛いな!?」
「あら、嬉しいですわ。好きになってくださいまして?」
「いや、それは⋯その」
“そもそも女同士なんだよなぁ⋯っ!いや、ぶっちゃけいつもかなりドキドキさせられてるけど、でも⋯!”
フランカの目的はあくまでも魔王の封印を強める為の子作りな訳で。
“ほんと、そこさえクリア出来れば⋯”
と、そこまで考えハッとする。
“うわ、私フランカの事好きになり始めてるんじゃない!?”
それはまずいと頭を抱えていると、そんな私の気持ちなんて知らないフランカは心配そうに顔を覗き込んできて。
「近いって!」
「夫婦になるんですよ?これくらいの距離は当たり前ですわ」
なんて言い切るフランカの顔が少しだけ意地悪そうに見える。
「⋯からかってる?」
「どうでしょう?」
それでも、どこか楽しそうなフランカを見るとそれもいいかななんて思い始めてしまった私はいよいよ末期だ。
“本当はアゴットさんと育まなきゃいけないんだけどなぁ⋯”
何故子作りなんだ。何故女同士では子供が出来ないんだ。
帰ったらDEAD END、それにもし新しい勇者を召喚したら⋯
“その男とフランカが子作り⋯?”
それは嫌だと感じてしまい、そんな自分に苦笑する。
だって自分は、フランカの従兄弟であるアゴットと子供を作らなきゃいけないのだから――
いっそ71歳勇者の方向で計画を練り直すべきかとも思うが、ずっと性別を偽る訳にももちろんいかない。
それに、ずっとフランカを騙しているのだ。
本当の事を知った時、あの優しげな菫色の瞳が蔑みの色に染まるのかと思うとそれも怖くて⋯
「レイ?どうかしましたの?」
「え?⋯⋯っんぐ!?」
少し暗くなっていた私を心配したフランカが声をかけてきたと思ったら、そのまま口の中に冷たい何かを詰め込まれる。
驚いた私が目を白黒させていると同時に口の中に果実のスッキリとした甘さが広がり、そして声を上げて無邪気に笑うフランカがそこにいた。
「⋯何を悩まれてるのかはわかりませんが、甘いものは気持ちを明るくしてくれますわよ!」
「ん、ありがと」
どうやら果実を凍らせた一口シャーベットのようなものだったらしく、フランカもにこにことしながら頬張ってー⋯
「⋯って、フランカ!?毒味とか大丈夫なの!?」
王族は常に暗殺とか毒殺とかを警戒しなくてはならない、というイメージがあった私が慌ててフランカの手から残りのシャーベットを奪いランドリューの口に無理やり突っ込む。
「ん、んぐっ!?んんん!!?」
突然乱暴に食べさせられたランドリューが少し涙目になる。
「突然何ですかっ!?毒味ですが、私を使って毒味ですか!!」
「フランカ、食べても大丈夫みたいだから返すね」
文句を言う彼をスルーした私がシャーベットをフランカに返すと、呆然としていたフランカが吹き出した。
「も、もう食べた後でしたのに⋯っ!」
「それはそう、なんだけど⋯心配になって、つい」
「その心配は私にも向けて欲しかったですね⋯」
拗ねる口調のランドリューに少し申し訳ないと思いつつ、笑うフランカに釣られた私も段々可笑しくなってきて。
「大丈夫ですよ、ほら見てください。ここはとても平和なんです」
フランカに促され周りを見渡すと、確かに小さな子供も元気に駆け回るくらい穏やかな光景が広がっていた。
「ー⋯だから、私は絶対に守りたいんです。50年後の、その先も」
彼女の決意がチクリと痛む。
それは抜けない棘が心臓に刺さったようにジクジクと私を蝕んだ。
「うっわ、凄い!」
あまり女の子らしくない私だが、ついテンションが上がるほどとても美しい場所で。
「薔薇って思ったより強い香りするんだね」
「あら、お嫌いですか?」
「いや、いい匂いだなって思うよ」
そう返答すると、白い指を口元にあてたフランカがパキンと1本の薔薇を手折った。
“薔薇園と美少女、似合う⋯”
なんともいえないその優雅な光景に思わずみとれていると、丁寧に全ての棘を取ったその薔薇をそっと私の髪に挿した。
「え⋯っ」
「可愛い」
「えぇ⋯?」
可愛い子に可愛いと言われても⋯、なんて思いつつも嬉しいもんは嬉しくて。
「フランカの方が似合うと思うけど⋯」
「そうかしら?んー、でもレイのつやつやの黒髪に赤が映えてますわ」
「んん⋯、そう?ありがと⋯」
“普段女らしい事を全然しないから、ちょっと照れ臭いな”
どこかくすぐったさを感じつつ、私も庭園の薔薇に手を伸ばし⋯
「いたっ」
「レイ!?」
思ったより鋭い棘で指を刺してしまった。
「大丈夫!?」
慌てたフランカがすぐに私の手を取り棘が刺さったままになってないかを確認すると、そのままじわりと血が滲む指をぱくりと口に含んでしまって。
「ちょ!?」
強く傷口を吸われ、傷の部分を指で強く圧迫すると傷自体が小さかったこともあってすぐに血は止まった。
「⋯薔薇が欲しかったのなら私がいくらでも手折りますから」
「うぅ、すみません⋯」
いつもより低い声で言われ、思わずしゅんとしてしまう私を暫く見たあと、フランカが小さくため息を吐く。
「で、どれがいいんですの」
「え?」
「どの薔薇が欲しかったんですか?さっき手を伸ばされてたのは⋯この薔薇だったかしら」
「ま、待って!?」
再び薔薇に手を伸ばすフランカを慌てて制止する。
「別に俺、薔薇が欲しかった訳じゃなくって⋯!」
「?」
「⋯その、フランカにこそ似合いそうだなって思ったから⋯」
「それはつまり、私に薔薇をプレゼントしたくて⋯って事?」
一瞬素のフランカが出て思わずくすっと笑ってしまう。
“ため口っぽいフランカの方がいいなぁ”
とは思うが、そもそも私は国の命運がかかっているのに性別を偽っているのだ。
素でいて欲しい、なんてどの口が言うんだというもので⋯
「まぁ、そうなる⋯かな」
「⋯⋯⋯」
結果プレゼントどころか怪我をし手当てまでして貰った私は、あまりにも格好悪いなとしょぼくれつつ正直に答える。
すると一瞬黙ってしまったフランカが、徐に薔薇をもう1本手折り棘を全部取ってから私に手渡して。
「⋯どうぞ、お好きなところに飾ってくださいませ」
「⋯!」
そっと顔を近付け目を瞑るフランカに思わず息を呑む。
“うっわ、キスをねだられてるみたい⋯!”
なんて考えたせいで少し指先が震えるが、それでも折角手渡してくれたのだからとそっと彼女の耳に引っ掛けるように薔薇を挿した。
「⋯そんなに緊張しちゃって、可愛いね?」
くすりと小さく笑ったフランカの声が、怒っていたさっきのトーンとはまた違う色気を帯びた低さでドキッとしてしまう。
「そ、んな事⋯っ」
「ふふ、ほら赤くなったよ、かぁわいい」
キス出来そうなほど近い距離にあったフランカの顔が、更に少しずつ近付いていると気付いた私は羞恥から思わず目を強く瞑ると、温かくて少ししっとりとした彼女の唇が私の頬を軽く掠めた。
「!!!」
慌てて一歩後ろに飛び退くと、くすくすとフランカが笑っていて。
「な、何を⋯っ」
「少し触れただけですわ?ー⋯ゆっくり育むのが希望⋯でしたものね」
「そ、れは⋯っ」
「早く私を好きになってくださいませね、レイ」
「~~ッッ」
とても楽しそうなフランカに、私の心臓はずっと痛いくらい高鳴ってしまうのだった。
そんな薔薇園でのデートという名のお散歩から数日。
今日はフランカと、そしてフランカの護衛のランドリューと3人で城下町に来ていた。
“一国の姫様の護衛が1人だけってちょっと心配だったけどー⋯”
そもそもフランカは普段騎士団に所属し、そこでかなりの実力を発揮していると聞いていたので少なくても平気なのかな、と考える。
一応お忍びという体でとの事で、フランカはエプロンドレスのようなシンプルなワンピースを着ていたのだが⋯
「いや、可愛いな!?」
「あら、嬉しいですわ。好きになってくださいまして?」
「いや、それは⋯その」
“そもそも女同士なんだよなぁ⋯っ!いや、ぶっちゃけいつもかなりドキドキさせられてるけど、でも⋯!”
フランカの目的はあくまでも魔王の封印を強める為の子作りな訳で。
“ほんと、そこさえクリア出来れば⋯”
と、そこまで考えハッとする。
“うわ、私フランカの事好きになり始めてるんじゃない!?”
それはまずいと頭を抱えていると、そんな私の気持ちなんて知らないフランカは心配そうに顔を覗き込んできて。
「近いって!」
「夫婦になるんですよ?これくらいの距離は当たり前ですわ」
なんて言い切るフランカの顔が少しだけ意地悪そうに見える。
「⋯からかってる?」
「どうでしょう?」
それでも、どこか楽しそうなフランカを見るとそれもいいかななんて思い始めてしまった私はいよいよ末期だ。
“本当はアゴットさんと育まなきゃいけないんだけどなぁ⋯”
何故子作りなんだ。何故女同士では子供が出来ないんだ。
帰ったらDEAD END、それにもし新しい勇者を召喚したら⋯
“その男とフランカが子作り⋯?”
それは嫌だと感じてしまい、そんな自分に苦笑する。
だって自分は、フランカの従兄弟であるアゴットと子供を作らなきゃいけないのだから――
いっそ71歳勇者の方向で計画を練り直すべきかとも思うが、ずっと性別を偽る訳にももちろんいかない。
それに、ずっとフランカを騙しているのだ。
本当の事を知った時、あの優しげな菫色の瞳が蔑みの色に染まるのかと思うとそれも怖くて⋯
「レイ?どうかしましたの?」
「え?⋯⋯っんぐ!?」
少し暗くなっていた私を心配したフランカが声をかけてきたと思ったら、そのまま口の中に冷たい何かを詰め込まれる。
驚いた私が目を白黒させていると同時に口の中に果実のスッキリとした甘さが広がり、そして声を上げて無邪気に笑うフランカがそこにいた。
「⋯何を悩まれてるのかはわかりませんが、甘いものは気持ちを明るくしてくれますわよ!」
「ん、ありがと」
どうやら果実を凍らせた一口シャーベットのようなものだったらしく、フランカもにこにことしながら頬張ってー⋯
「⋯って、フランカ!?毒味とか大丈夫なの!?」
王族は常に暗殺とか毒殺とかを警戒しなくてはならない、というイメージがあった私が慌ててフランカの手から残りのシャーベットを奪いランドリューの口に無理やり突っ込む。
「ん、んぐっ!?んんん!!?」
突然乱暴に食べさせられたランドリューが少し涙目になる。
「突然何ですかっ!?毒味ですが、私を使って毒味ですか!!」
「フランカ、食べても大丈夫みたいだから返すね」
文句を言う彼をスルーした私がシャーベットをフランカに返すと、呆然としていたフランカが吹き出した。
「も、もう食べた後でしたのに⋯っ!」
「それはそう、なんだけど⋯心配になって、つい」
「その心配は私にも向けて欲しかったですね⋯」
拗ねる口調のランドリューに少し申し訳ないと思いつつ、笑うフランカに釣られた私も段々可笑しくなってきて。
「大丈夫ですよ、ほら見てください。ここはとても平和なんです」
フランカに促され周りを見渡すと、確かに小さな子供も元気に駆け回るくらい穏やかな光景が広がっていた。
「ー⋯だから、私は絶対に守りたいんです。50年後の、その先も」
彼女の決意がチクリと痛む。
それは抜けない棘が心臓に刺さったようにジクジクと私を蝕んだ。
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