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1.三女の入れ替わり既成事実宣言
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リーシェン伯爵家の長女はしっかり者。
リーシェン伯爵家の次女は可憐で麗しく。
リーシェン伯爵家の三女は····問題児。
「ねぇ、なんで私だけ問題児なんだと思う?」
三女のミアがそう声をかけたのは、ミアの護衛騎士であるアルフォンスことアルだ。
「お嬢様がお転婆だからじゃないですかねぇ」
「アイシラ姉さまもユーリ姉も上手くヤったみたいなのよ」
「お嬢様、ヤったではなく、やったと発音ください」
「いや、ほぼ同じ発音だし···」
アイシラとユーリにはそれぞれ婚約者がいたがミアにいないのは、問題児だから···ではなく、次期当主である長女が侯爵家から婿を取り、次女が幼馴染みとは言え同じ伯爵家へ嫁に行く事で家同士が繋ぐべき縁が十分だからでもある。
どこかに有力な子息がいれば話は別だが、わざわざ結婚で結ばなければならないほどの縁もなかったので相手を選ぶ権利がミアに与えられており、縁談を全て断った為に未だにミアには婚約者がいないのだ。
それにミアは···
「二人が幸せなのはとても嬉しいんだけど、そろそろ私も幸せになりたいななんて思っているのよ」
「それはそれは」
チラリのドアの前に立つアルを見て、声をかける。
「アル、中に入る気はないかしら?」
「お嬢様の寝室には1歩も入るつもりはございませんね」
「そこをなんとか、まずは1歩!」
「絶対嫌です」
この不遜な態度の護衛騎士にずっと片想いをしていて。
「アル、私と結婚しない?」
「しません」
「どうしても?」
「どうしても」
そうよねぇ、とため息を吐きながら、手元の封筒を眺めていた。
「これ、何だと思う?」
「お手紙ですね」
「これは婚約の申し込みの手紙なのだけど」
そう伝えた時、ピクッとアルの眉が動いた事に気付く。
「····アルって、私のこと好きよね?」
「大切なお嬢様ですから」
「異性として好きよね?」
「いえ、お嬢様としてですね」
「本当に?」
「本当です」
じっとアルの様子を見ると、そっと視線を外される。
ユーリ姉に一際優しいレント様よりもわかりやすく表情に出るアルは、絶対絶対両想いだと思うんだけど···
どうしたら確信を持てるのか、と考えふと思い付いたのは。
「気持ちがわからないなら体に聞けばいいんだわ!」
「ちょっと待って下さいなんか怖い言葉が聞こえたんですけど!?」
「アルっていつも私を見てるし」
「そりゃお嬢様の専属護衛騎士なんで!」
「でも、休みの日も気遣ってくれてるし、護衛騎士がしないようなフォローもいつもしてくれるじゃない?」
「お嬢様が問題児だからですよっ!」
「それに恋人もずっといないし、私に婚約の申し込みがある度に娼館で買う女性は金髪を1つに纏めた紫の瞳の子で、私にそっくりだったわ!」
「ちょっとヤメテ!なんでそんなこと知ってるんです!?」
「でも私が婚約の申し込みを全部断った後から娼館を利用しなくなったのも知ってる!」
「誰から聞いた!?」
アルと話しながら手に持った婚約の申し込み書を見せつけるようにしてドアに近付く。
わかりやすいくらいに動揺するアルは、やっぱりどう見ても脈アリで···
「コレが今ここにあるということは、今日も誰かを買うのかしら」
「お、お嬢さ···っ」
「買うなら、相手は私にすればいいじゃない?」
「む、無茶言わないで下さいよっ!身分差とか考えたことあります!?俺平民上がりのただの護衛なんですけど!?」
そう叫ぶように告げられてハッとする。
「そんなこと気にしてたの?」
「そんなこと!?」
アルが平民上がりだと言うことはもちろん知っている。
そして努力してここまで上った事もリーシェン伯爵家は誰よりも知っているのだ。
そんなアルだからこそミアはずっと好きだったし、ミアの気持ちはいつもオープンなので伯爵含めた全員が知っていて。
「なんだ!問題ないじゃない!」
「問題しかないわ~~っ!」
あははと笑ったミアに、青ざめて嘆くアル。
「でも気持ちもしっかり確かめ合ったし」
「確かめ合ってませんよね!?」
「でも何かキッカケがないとアルは身を引きそうだから」
「は?ちょ、なんかもうずっと嫌な予感がするんですけどっ」
コホンと咳払いし、真っ直ぐアルを見つめて宣言する。
「既成事実を作りましょう!!」
「このクソ問題児がぁっ!」
半泣きになって後退るアルを無視し、ミアは魔法を発動した。
リーシェン伯爵家の次女は可憐で麗しく。
リーシェン伯爵家の三女は····問題児。
「ねぇ、なんで私だけ問題児なんだと思う?」
三女のミアがそう声をかけたのは、ミアの護衛騎士であるアルフォンスことアルだ。
「お嬢様がお転婆だからじゃないですかねぇ」
「アイシラ姉さまもユーリ姉も上手くヤったみたいなのよ」
「お嬢様、ヤったではなく、やったと発音ください」
「いや、ほぼ同じ発音だし···」
アイシラとユーリにはそれぞれ婚約者がいたがミアにいないのは、問題児だから···ではなく、次期当主である長女が侯爵家から婿を取り、次女が幼馴染みとは言え同じ伯爵家へ嫁に行く事で家同士が繋ぐべき縁が十分だからでもある。
どこかに有力な子息がいれば話は別だが、わざわざ結婚で結ばなければならないほどの縁もなかったので相手を選ぶ権利がミアに与えられており、縁談を全て断った為に未だにミアには婚約者がいないのだ。
それにミアは···
「二人が幸せなのはとても嬉しいんだけど、そろそろ私も幸せになりたいななんて思っているのよ」
「それはそれは」
チラリのドアの前に立つアルを見て、声をかける。
「アル、中に入る気はないかしら?」
「お嬢様の寝室には1歩も入るつもりはございませんね」
「そこをなんとか、まずは1歩!」
「絶対嫌です」
この不遜な態度の護衛騎士にずっと片想いをしていて。
「アル、私と結婚しない?」
「しません」
「どうしても?」
「どうしても」
そうよねぇ、とため息を吐きながら、手元の封筒を眺めていた。
「これ、何だと思う?」
「お手紙ですね」
「これは婚約の申し込みの手紙なのだけど」
そう伝えた時、ピクッとアルの眉が動いた事に気付く。
「····アルって、私のこと好きよね?」
「大切なお嬢様ですから」
「異性として好きよね?」
「いえ、お嬢様としてですね」
「本当に?」
「本当です」
じっとアルの様子を見ると、そっと視線を外される。
ユーリ姉に一際優しいレント様よりもわかりやすく表情に出るアルは、絶対絶対両想いだと思うんだけど···
どうしたら確信を持てるのか、と考えふと思い付いたのは。
「気持ちがわからないなら体に聞けばいいんだわ!」
「ちょっと待って下さいなんか怖い言葉が聞こえたんですけど!?」
「アルっていつも私を見てるし」
「そりゃお嬢様の専属護衛騎士なんで!」
「でも、休みの日も気遣ってくれてるし、護衛騎士がしないようなフォローもいつもしてくれるじゃない?」
「お嬢様が問題児だからですよっ!」
「それに恋人もずっといないし、私に婚約の申し込みがある度に娼館で買う女性は金髪を1つに纏めた紫の瞳の子で、私にそっくりだったわ!」
「ちょっとヤメテ!なんでそんなこと知ってるんです!?」
「でも私が婚約の申し込みを全部断った後から娼館を利用しなくなったのも知ってる!」
「誰から聞いた!?」
アルと話しながら手に持った婚約の申し込み書を見せつけるようにしてドアに近付く。
わかりやすいくらいに動揺するアルは、やっぱりどう見ても脈アリで···
「コレが今ここにあるということは、今日も誰かを買うのかしら」
「お、お嬢さ···っ」
「買うなら、相手は私にすればいいじゃない?」
「む、無茶言わないで下さいよっ!身分差とか考えたことあります!?俺平民上がりのただの護衛なんですけど!?」
そう叫ぶように告げられてハッとする。
「そんなこと気にしてたの?」
「そんなこと!?」
アルが平民上がりだと言うことはもちろん知っている。
そして努力してここまで上った事もリーシェン伯爵家は誰よりも知っているのだ。
そんなアルだからこそミアはずっと好きだったし、ミアの気持ちはいつもオープンなので伯爵含めた全員が知っていて。
「なんだ!問題ないじゃない!」
「問題しかないわ~~っ!」
あははと笑ったミアに、青ざめて嘆くアル。
「でも気持ちもしっかり確かめ合ったし」
「確かめ合ってませんよね!?」
「でも何かキッカケがないとアルは身を引きそうだから」
「は?ちょ、なんかもうずっと嫌な予感がするんですけどっ」
コホンと咳払いし、真っ直ぐアルを見つめて宣言する。
「既成事実を作りましょう!!」
「このクソ問題児がぁっ!」
半泣きになって後退るアルを無視し、ミアは魔法を発動した。
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