王家の影はポンコツ令嬢!はじめての任務で×××

春瀬湖子

文字の大きさ
上 下
6 / 11
ポンコツ令嬢は次期宰相様と××したい

1.クビというのは表向き!⋯ですわよね?

しおりを挟む
――王家の影。
主君の手足となり自国他国問わず暗躍する忠実な存在。

そんな王家の影を担うダフネ伯爵家の娘である私ことクリスティナ・ダフネは、先日はじめての任務を完璧かつ大胆、それでいて華麗にこなしたばかりだったのだがー⋯



「お、お父様っ!?ど、どういうことですの!私にもう任務が与えられないだなんてッ!」
「そのままの意味だ、クリスティナ。今後お前に影の任務が与えられることはない」
「英断です、父上⋯っ!」

父の執務室に呼ばれた私に告げられたのは、そんなとんでもない宣言だった。

“ど、どういうことなの⋯!?”
「やはり私に才能がありすぎたのかしら⋯っ!?」
“暴いてはいけない部分まで暴いてしまったに違いないわ!”
「ディーデリック様が実は童貞だったと知ってしまったからね⋯っ」
「んんッ、クリスティナ、心の声を頼むから口に出すのは止めてくれ⋯ディーデリック様が不憫だから」

ガシッと兄に肩を掴まれた私は、兄の目に涙が滲んでいる事に気付く。

「お前のはじめての任務を完璧だったかは別だが達成したことは不本意ながら事実だ」
「何故不本意なんですの」
「そしてその結果どうなった?」

“ど、うー⋯?”


はじめて与えられた任務は次期宰相に内定したディーデリック・ローランド様の夜の素行調査。

「次期宰相になられる方の女性関係が緩くてはどこから極秘情報が漏れるかはわからないから⋯」


だから彼の寝室に潜入し、調べた。
そしてその結果彼は素行良しという結論を導いた私はー⋯


「彼の妻になることになりましたわね」
「あぁ、そうだな⋯」

はぁ、とため息を吐く父を見て私は胸が締め付けられるようだった。

“私は大事な一人娘ですものね”
「まさかこんな形で嫁に出すだなんて思ってなかったでしょうし⋯!」
「いや、打診はずっといただいていたからな。どちらかといえば不安が大きいんだが⋯」
「というか心労ですよね」
「んんッ、とにかくだなクリスティナ。お前は王家の影であるダフネ家からローランド家へ嫁ぐのだ。当然影で居続ける訳にはいかないだろう」
「素晴らしい言い訳です、父上」
「!」

“確かに!”

王家の影を担っているのはダフネ家であってローランド家ではない。
つまり影として裏で暗躍する肩書きを失ったも同然でー⋯!

「⋯⋯お父様、お兄様。今私は完璧に理解いたしましたわ⋯っ」
「んん?」
「⋯や、やめろクリスティナ、俺は聞きたくな⋯」

狼狽える父と兄を安心すべく、私は満面の笑みで導きだした結論を伝える。


「つまりこれからは!ローランド家の女主人として、ディーデリック様の為に表で暗躍しろということですわねッ!!」

“決まったわ⋯っ!”


父が伝えたかった全てを完璧に理解し断言した私を見た二人は、きっと感動の涙を見せない為にわざと机に突っ伏したのだろう。

えぇ、えぇ!このクリスティナ、もちろんわかっておりますとも。


「⋯そもそも表で暗躍って言葉が矛盾している⋯」


そんな兄の呟きを聞き流した私は、使命の為にディーデリック様の側にいなくてはならない訳で。


“そうと決まったらこうしてはいられませんわ!”

「暗躍する為に私、ディーデリック様のところへ行って参ります!」
「ちょ、待て待て待て!⋯くそっ、誰か!すぐに手紙を!早馬なら馬車を抜ける、せめてディーデリック様の元へ台風が向かったと伝えなくては⋯ッ!」
「父上!ペンはこちらですっ!」
「く、何故学んだマナーを自己流に進化させるんだクリスティナは⋯っ!?」

後ろでわちゃわちゃしている声を聞きながら私は振り向かなかった。

“近い将来、私はこの家を出るのだものー⋯”
「いつまでも家族からの名残惜しそうな声に応えていてはいけないわ。私もお母様のように社交界を牛耳るべく、まずはローランド家をモノにしてみせますわぁ~っ!!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

処理中です...