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ポンコツ令嬢は次期宰相様と××したい
1.クビというのは表向き!⋯ですわよね?
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――王家の影。
主君の手足となり自国他国問わず暗躍する忠実な存在。
そんな王家の影を担うダフネ伯爵家の娘である私ことクリスティナ・ダフネは、先日はじめての任務を完璧かつ大胆、それでいて華麗にこなしたばかりだったのだがー⋯
「お、お父様っ!?ど、どういうことですの!私にもう任務が与えられないだなんてッ!」
「そのままの意味だ、クリスティナ。今後お前に影の任務が与えられることはない」
「英断です、父上⋯っ!」
父の執務室に呼ばれた私に告げられたのは、そんなとんでもない宣言だった。
“ど、どういうことなの⋯!?”
「やはり私に才能がありすぎたのかしら⋯っ!?」
“暴いてはいけない部分まで暴いてしまったに違いないわ!”
「ディーデリック様が実は童貞だったと知ってしまったからね⋯っ」
「んんッ、クリスティナ、心の声を頼むから口に出すのは止めてくれ⋯ディーデリック様が不憫だから」
ガシッと兄に肩を掴まれた私は、兄の目に涙が滲んでいる事に気付く。
「お前のはじめての任務を完璧だったかは別だが達成したことは不本意ながら事実だ」
「何故不本意なんですの」
「そしてその結果どうなった?」
“ど、うー⋯?”
はじめて与えられた任務は次期宰相に内定したディーデリック・ローランド様の夜の素行調査。
「次期宰相になられる方の女性関係が緩くてはどこから極秘情報が漏れるかはわからないから⋯」
だから彼の寝室に潜入し、調べた。
そしてその結果彼は素行良しという結論を導いた私はー⋯
「彼の妻になることになりましたわね」
「あぁ、そうだな⋯」
はぁ、とため息を吐く父を見て私は胸が締め付けられるようだった。
“私は大事な一人娘ですものね”
「まさかこんな形で嫁に出すだなんて思ってなかったでしょうし⋯!」
「いや、打診はずっといただいていたからな。どちらかといえば不安が大きいんだが⋯」
「というか心労ですよね」
「んんッ、とにかくだなクリスティナ。お前は王家の影であるダフネ家からローランド家へ嫁ぐのだ。当然影で居続ける訳にはいかないだろう」
「素晴らしい言い訳です、父上」
「!」
“確かに!”
王家の影を担っているのはダフネ家であってローランド家ではない。
つまり影として裏で暗躍する肩書きを失ったも同然でー⋯!
「⋯⋯お父様、お兄様。今私は完璧に理解いたしましたわ⋯っ」
「んん?」
「⋯や、やめろクリスティナ、俺は聞きたくな⋯」
狼狽える父と兄を安心すべく、私は満面の笑みで導きだした結論を伝える。
「つまりこれからは!ローランド家の女主人として、ディーデリック様の為に表で暗躍しろということですわねッ!!」
“決まったわ⋯っ!”
父が伝えたかった全てを完璧に理解し断言した私を見た二人は、きっと感動の涙を見せない為にわざと机に突っ伏したのだろう。
えぇ、えぇ!このクリスティナ、もちろんわかっておりますとも。
「⋯そもそも表で暗躍って言葉が矛盾している⋯」
そんな兄の呟きを聞き流した私は、使命の為にディーデリック様の側にいなくてはならない訳で。
“そうと決まったらこうしてはいられませんわ!”
「暗躍する為に私、ディーデリック様のところへ行って参ります!」
「ちょ、待て待て待て!⋯くそっ、誰か!すぐに手紙を!早馬なら馬車を抜ける、せめてディーデリック様の元へ台風が向かったと伝えなくては⋯ッ!」
「父上!ペンはこちらですっ!」
「く、何故学んだマナーを自己流に進化させるんだクリスティナは⋯っ!?」
後ろでわちゃわちゃしている声を聞きながら私は振り向かなかった。
“近い将来、私はこの家を出るのだものー⋯”
「いつまでも家族からの名残惜しそうな声に応えていてはいけないわ。私もお母様のように社交界を牛耳るべく、まずはローランド家をモノにしてみせますわぁ~っ!!」
主君の手足となり自国他国問わず暗躍する忠実な存在。
そんな王家の影を担うダフネ伯爵家の娘である私ことクリスティナ・ダフネは、先日はじめての任務を完璧かつ大胆、それでいて華麗にこなしたばかりだったのだがー⋯
「お、お父様っ!?ど、どういうことですの!私にもう任務が与えられないだなんてッ!」
「そのままの意味だ、クリスティナ。今後お前に影の任務が与えられることはない」
「英断です、父上⋯っ!」
父の執務室に呼ばれた私に告げられたのは、そんなとんでもない宣言だった。
“ど、どういうことなの⋯!?”
「やはり私に才能がありすぎたのかしら⋯っ!?」
“暴いてはいけない部分まで暴いてしまったに違いないわ!”
「ディーデリック様が実は童貞だったと知ってしまったからね⋯っ」
「んんッ、クリスティナ、心の声を頼むから口に出すのは止めてくれ⋯ディーデリック様が不憫だから」
ガシッと兄に肩を掴まれた私は、兄の目に涙が滲んでいる事に気付く。
「お前のはじめての任務を完璧だったかは別だが達成したことは不本意ながら事実だ」
「何故不本意なんですの」
「そしてその結果どうなった?」
“ど、うー⋯?”
はじめて与えられた任務は次期宰相に内定したディーデリック・ローランド様の夜の素行調査。
「次期宰相になられる方の女性関係が緩くてはどこから極秘情報が漏れるかはわからないから⋯」
だから彼の寝室に潜入し、調べた。
そしてその結果彼は素行良しという結論を導いた私はー⋯
「彼の妻になることになりましたわね」
「あぁ、そうだな⋯」
はぁ、とため息を吐く父を見て私は胸が締め付けられるようだった。
“私は大事な一人娘ですものね”
「まさかこんな形で嫁に出すだなんて思ってなかったでしょうし⋯!」
「いや、打診はずっといただいていたからな。どちらかといえば不安が大きいんだが⋯」
「というか心労ですよね」
「んんッ、とにかくだなクリスティナ。お前は王家の影であるダフネ家からローランド家へ嫁ぐのだ。当然影で居続ける訳にはいかないだろう」
「素晴らしい言い訳です、父上」
「!」
“確かに!”
王家の影を担っているのはダフネ家であってローランド家ではない。
つまり影として裏で暗躍する肩書きを失ったも同然でー⋯!
「⋯⋯お父様、お兄様。今私は完璧に理解いたしましたわ⋯っ」
「んん?」
「⋯や、やめろクリスティナ、俺は聞きたくな⋯」
狼狽える父と兄を安心すべく、私は満面の笑みで導きだした結論を伝える。
「つまりこれからは!ローランド家の女主人として、ディーデリック様の為に表で暗躍しろということですわねッ!!」
“決まったわ⋯っ!”
父が伝えたかった全てを完璧に理解し断言した私を見た二人は、きっと感動の涙を見せない為にわざと机に突っ伏したのだろう。
えぇ、えぇ!このクリスティナ、もちろんわかっておりますとも。
「⋯そもそも表で暗躍って言葉が矛盾している⋯」
そんな兄の呟きを聞き流した私は、使命の為にディーデリック様の側にいなくてはならない訳で。
“そうと決まったらこうしてはいられませんわ!”
「暗躍する為に私、ディーデリック様のところへ行って参ります!」
「ちょ、待て待て待て!⋯くそっ、誰か!すぐに手紙を!早馬なら馬車を抜ける、せめてディーデリック様の元へ台風が向かったと伝えなくては⋯ッ!」
「父上!ペンはこちらですっ!」
「く、何故学んだマナーを自己流に進化させるんだクリスティナは⋯っ!?」
後ろでわちゃわちゃしている声を聞きながら私は振り向かなかった。
“近い将来、私はこの家を出るのだものー⋯”
「いつまでも家族からの名残惜しそうな声に応えていてはいけないわ。私もお母様のように社交界を牛耳るべく、まずはローランド家をモノにしてみせますわぁ~っ!!」
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