巻き込まれた薬師の日常

白髭

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酒精と層菓

第88話 宿酔

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 次の日。3人は酒精が強いものを飲んでいた。たぶん必要なのはアレだろう。向こうでは散々話してきたのだから。作成はそれほど難しいものではない。砂糖と塩があれば簡単に作ることができる。あとは胃腸薬があれば良いのだけど、ここは商店にある爺さんの作成物は使えるだろう。
【*解毒ポーション。一級品。苦味小。毒成分を中和。中和効果3】
 これは爺さんが作ったもの。解毒ポーションも等級と副次効果が連動するようだった。
【*解毒ポーション。特級品。無味。毒成分を中和。中和効果3】
 これは自分が先ほど自作したもの。ホーミィー村で採取したツンベルギを使用した。向こうではゲンノショウコ。どこにでも生えていた薬草だ。
【*ツンベルギ。整腸作用有り。薬効部位;地上部。少量の魔素を含む】
 解毒ポーションは、やはり目星をつけていた植物から作られていた。ツンベルギを原料に、スライム浄水を使用して、魔力を使って抽出。今回も薬草の処理と同様に乾燥しておいた。等級には水の質と下処理が影響している。良い水を入手することはあらゆるところに波及する。効果としては予想通り。むこうの薬効・効果が魔素を介して増加させていることには変わりない。整腸作用が解毒作用となり、毒成分を中和するに至る。中和する効果の範囲は不明のままだ。

 ついでにもう一品作成する。言わずと知れた補水液だ。砂糖、塩は入手できる。砂糖は南の方で植物から製造できるらしい。輸送に高くついてはいるが入手は可能だ。塩は内地だが岩塩として領内で産出するので、安価に手に入る。どちらも精製度は低い。今後の課題として覚えておこう。向こうの環境が整いすぎていたのだ。処方は砂糖40g、塩3g、水1Lとすると記憶している。果実液があれば良いのだが。

「おはよう。珍しいわね。レッドが台所にいるなんて」
「昨日の飲み会で朝は頭が痛くなっているでしょう。対策で作っていました」
「あら、優しいわね。何かしら?」
「体の水分を効果的に補給できるようにした水です。下痢とか、嘔吐した時とかに使用します。酸っぱい果実水があれば良いのだけど」
 それぞれを目分量で入れていく。スプーンを計量器とみなす。味をみて微調整する。
「ならこれはどうかしら?キトルスならあるけど」
 見た目はオレンジだ。レッド君の記憶でもほんのり甘く、少し酸っぱい印象を残している。ちょうど良いかもしれない。
「半分貰います」
 もちろんジューサーのようなものはない。手で絞るくらいしかない。うーんと考えて、アイテムボックスの中から土を取り出しガラスを抽出・錬成する。ポーション瓶も、ショットグラスも作れるくらいだ。形を覚えているものなら魔術の修練の結果、作成はできた。思う通りに行使をして造形する。生搾り**でについてくるアレだ。液だまりもつくって、果汁が確保できるようにする配慮も忘れない。グリグリと絞ったあと、補水液に入れていく。果汁が多すぎた。希釈するため、補水液を倍に作成し直して2Lとした。
【*補水液。普及品。爽やかな味。適切な水分・塩分・糖分を補給】
「また魔術を手足代わりに使うわね。もう驚かないわ・・・」
「できました。コップ二杯くらい置いて行きます。父さんが起きたら飲ませてください。解毒ポーションも置いていきますね」
「わかったわ。解毒ポーションまでいらないと思うけど。渡しておくわ」

 母さんに後を託し、パラケル魔導具店へ。ガチャリと入るとダメな大人が三人横たわっている。部屋自体が非常に酒臭い。渡した空き瓶は転がっていた。全て飲んだのか・・・父親を帰して正解だった。この中に加わってはダメだ。自重しないで飲んだ結果がコレだ。散々な目に合うのは予想ができる。

 窓を開け、風魔法で空気の入れ替えをする。心地よい風が入ってきた。酒瓶を洗い。さっさと収納する。証拠は隠滅しておくに限る。エールを入れていたコップも洗浄し、経口補水液を並々と注ぐ。

「はい。もうそろそろ起きましょう。朝ですよ」
「あー」「眩しい・・」「頭痛いな・・」
「もうかなり日が登っていますよ。仕事の時間です」
「もうそんな時間か・・・・・」
「体がだるい・・」
 ダメだ。全員二日酔いの状態だ。やっぱり飲ませないといけない。
「まずはこれを飲みましょう。飲みすぎたあとは脱水になりやすいんです。少し酸っぱいのですが飲みやすいですよ」
 風・水魔法を併用し冷やす。気化熱を利用し、補水液の温度を下げる。少し汗ばむほどの室内だから、飲みやすく感じるはずだ。
「ああ、もらおう。冷たいな。スーと入っていくな。酸っぱいのも良い」
「美味しい」「水よりもはるかに飲みやすいな」
 概ね良好のようだ。
「塩と砂糖を使用した[補水液]です。果実水も入っています。水よりも飲みやすいでしょう」
 さらに解毒ポーションを出す。
「酒瓶が空となるまで続けるのは飲みすぎです。これを飲みましょう。パラケルさんは自分で作った解毒ポーションにしますか?」
 と四本出す。三本は磁器瓶だ。
「小僧。まさか解毒ポーションまで作っていたのか?」
「作ったのは今日の朝ですよ。薬草は川のそばに生えていましたから。改良はしましたけど」
 パラケルは鑑定をした後、レッド製の解毒ポーションを飲む。
「特級品じゃないか。作り方はポーションの特級品と同じか?」
「はい、そうですね。やはり鍵は乾燥と使用部位の選定、使用する水のようです。前処理の有用性は高いです」

「なるほどな。水はスライム浄水を使ったのか」
「原料の水が綺麗なほど魔力の節約になりますから」
「等級があがるほど解毒ポーションの飲みやすさも上がる。これは飲みやすい。飲み過ぎにはちょうど良いな」
「確かに格段に頭痛も腹の中も調子が良くなったな」
「セットで売れそうだな。特に冒険者ギルドの酒場とか・・」

 アレだけ死人のようなダメな大人がすでに通常モードとなっている。解毒ポーションと補水液の効果は抜群だ。効果を見るには良かった。

「飲み過ぎはダメですからね!内臓を痛めます!特に年齢も無理できる歳ではないのですから!」
 「「「はい」」」
 12歳に説教をもらう爺さん達だ。反省したのか返事は良かった。


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