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氾濫と供給
第67話 補給
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途中、アゼル爺とは別行動となった。商人ギルドを把握しつつ、自警団の取りまとめをして街の防衛と後方支援に徹するためだ。
「それでは私は自警団の取りまとめに。戦端はよろしくお願いします」
「了解したわ。こちらも崩れないよう指揮を頑張るわよ」
城郭都市は、正方形の防壁と長城からなる。長城は魔の森からの魔物の流出を防ぐための防波堤だ。これは東の鎮守の森の境目から、城郭都市、西の山脈まで通っていた。これが抜かれたときは、王国を蹂躙され、被害は拡大だろう。辺境伯の責任は重大だ。魔の森から見て、パール辺境伯が南側。同じ王国のウオルク男爵が魔の森の東の一部と接している。西側は山脈となる。一方、北側は他の王国の領土が接している。接線はパール家よりも少ないとのことだ。大抵の魔物は騒動があると南側に移動するらしい。結果としてパール家の負担は重くなる。
通常、主を決める戦いは2、3日で決まることが多い。魔物の群れの騒動は7日間くらいで納まる。対策として感知の魔導具を置いている。一定以上の魔力の移動を感知し、対の魔道具に通知する。この魔道具の作成はパラケル爺さんの仕事だった。これにより城郭都市に魔の森の移動状況を知ることができる。平時に戻った確認は、結局は人力による目視は必要だ。
北門は常時開かれている。魔の森と城郭都市との間はごろごろとした岩が残る草原が広がる。領主により森が伐採され空白地帯となっていた。森から漏れ出た魔物を認識し討伐しやすくするためだ。
騎士と兵士は東側。冒険者は西側に分かれ戦いが始まっていた。魔術師は防壁の上に陣取る。まるで遠隔射撃の砲台のようだ。撃ち漏らしのはぐれを狙ってか、時々火魔法が飛んでいく。射程距離は案外長い。
現在の群れはゴブリン。徐々にオークに変わり、主の戦いが激しい時にはオーガも出てくる。その他の魔物も出てくる。常時複数人で当たって消耗を防ぐようだ。
自分の受け持ちは北門に設置された救護所だ。近接戦闘ができない治療者の方も数名いた。彼らに入り込み仕事を教わる。斥候職の冒険者にポーションを配布する。運ばれた重症人の介護をするのが仕事のようだ。ポーションは各戦闘職にすでに配られた。現在は20本一単位として斥候職に配っている。直接戦闘を行う場所に斥候が配布をしているのだ。六時間くらいすると冒険者パーティーが二組程戻ってきた。
「おい、少年、補給だ」
「はい、ウィード隊ですね。こちらにまとめてあります。使用した空瓶を出していただき、交換ください」
「ああ、わかった」
戦時とは言え、使用した量は隊ごとに計数管理していた。戦闘者には空瓶は廃棄しないよう申し伝えている。冒険者の仲間は五人組が多い。職種ごとの役割も決まっている。ギルドが推奨しているためだ。そのため、組ごとに20本を1セットとして配布していた。
冒険者は次々と休憩にやってくる。救護所の隣は、商人ギルドが炊き出しを行っていた。冒険者への依頼は戦闘6時間、休憩2時間の1日2セットだ。休憩2時間の間に救護所でのポーション交換、その後食事と休憩を一セットとして現場に復帰する。二セットしたらその一日は終了となる。
一方で、騎士、兵士は数が少ない。騎士は専門職。統制は取れているので現在の戦勢は問題ない様子。こちらも戦闘6時間と休憩2時間の二セット勤務だ。
救護所は北門に設置し、扱いは共通している。騎士、兵士、冒険者が入り混じり救護所は瞬く間に忙しくなる。回収は自己申告として空箱を設置する方式に変更となった。全員が受付にまわり配布係を行う。ポーションで回復する怪我のみで、重傷者はいない。救護所のベッドはおかげさまで空だ。
しばらくすると魔導師ギルドからの応援が来た。副ギルド長ヘレナと主任エラスムスというらしい。副ギルド長のヘレナさんは見るからに有能そうな女性のようだ。インテリ系のヒョロ長い男性がエラスムス。
「ギルド長は領主と共に魔物討伐隊にて行っているから、今は楽なのよ」
「パラケル爺からの指示よ。暇ならこっちを手伝えって」
パラケル爺さんはウィザーリングがいないことを良いことに、魔導師ギルドで指導に当たっているようだ。
「すると、パラケルさんはギルドで魔力ポーションを量産しているのですね」
「そうなのよ。ギルドで持っていたポーションだけだと足りなくなるから、今指導しながら作成中のようよ」
「へえ、ここが終わったら見に行こうかな」
「いいんじゃない。ここが終わったら商人ギルドの近くだから寄り道できるわ。いまは魔力ポーションの指導を受けているわ」
「まさか、魔力ポーションまで改良してしまっていたとは・・・」
「もう少し見ておきたかったけど。番なのは仕方がないわね」
「等級が上がったので、数回使用しても寝れるようになりますよ」
「あら、それは助かるかも知れないけど、昔の方が良い時もありそうね」
救護所の分担は二交代制となっている。今はポーションの配布のみで、休める時に休んでおきなさい、と休憩をうながされる。魔導師ギルドの指導も気になるので寄り道をしておこう。自分の代わりに来た二名に感謝をして、休憩を取ることにした。
「それでは私は自警団の取りまとめに。戦端はよろしくお願いします」
「了解したわ。こちらも崩れないよう指揮を頑張るわよ」
城郭都市は、正方形の防壁と長城からなる。長城は魔の森からの魔物の流出を防ぐための防波堤だ。これは東の鎮守の森の境目から、城郭都市、西の山脈まで通っていた。これが抜かれたときは、王国を蹂躙され、被害は拡大だろう。辺境伯の責任は重大だ。魔の森から見て、パール辺境伯が南側。同じ王国のウオルク男爵が魔の森の東の一部と接している。西側は山脈となる。一方、北側は他の王国の領土が接している。接線はパール家よりも少ないとのことだ。大抵の魔物は騒動があると南側に移動するらしい。結果としてパール家の負担は重くなる。
通常、主を決める戦いは2、3日で決まることが多い。魔物の群れの騒動は7日間くらいで納まる。対策として感知の魔導具を置いている。一定以上の魔力の移動を感知し、対の魔道具に通知する。この魔道具の作成はパラケル爺さんの仕事だった。これにより城郭都市に魔の森の移動状況を知ることができる。平時に戻った確認は、結局は人力による目視は必要だ。
北門は常時開かれている。魔の森と城郭都市との間はごろごろとした岩が残る草原が広がる。領主により森が伐採され空白地帯となっていた。森から漏れ出た魔物を認識し討伐しやすくするためだ。
騎士と兵士は東側。冒険者は西側に分かれ戦いが始まっていた。魔術師は防壁の上に陣取る。まるで遠隔射撃の砲台のようだ。撃ち漏らしのはぐれを狙ってか、時々火魔法が飛んでいく。射程距離は案外長い。
現在の群れはゴブリン。徐々にオークに変わり、主の戦いが激しい時にはオーガも出てくる。その他の魔物も出てくる。常時複数人で当たって消耗を防ぐようだ。
自分の受け持ちは北門に設置された救護所だ。近接戦闘ができない治療者の方も数名いた。彼らに入り込み仕事を教わる。斥候職の冒険者にポーションを配布する。運ばれた重症人の介護をするのが仕事のようだ。ポーションは各戦闘職にすでに配られた。現在は20本一単位として斥候職に配っている。直接戦闘を行う場所に斥候が配布をしているのだ。六時間くらいすると冒険者パーティーが二組程戻ってきた。
「おい、少年、補給だ」
「はい、ウィード隊ですね。こちらにまとめてあります。使用した空瓶を出していただき、交換ください」
「ああ、わかった」
戦時とは言え、使用した量は隊ごとに計数管理していた。戦闘者には空瓶は廃棄しないよう申し伝えている。冒険者の仲間は五人組が多い。職種ごとの役割も決まっている。ギルドが推奨しているためだ。そのため、組ごとに20本を1セットとして配布していた。
冒険者は次々と休憩にやってくる。救護所の隣は、商人ギルドが炊き出しを行っていた。冒険者への依頼は戦闘6時間、休憩2時間の1日2セットだ。休憩2時間の間に救護所でのポーション交換、その後食事と休憩を一セットとして現場に復帰する。二セットしたらその一日は終了となる。
一方で、騎士、兵士は数が少ない。騎士は専門職。統制は取れているので現在の戦勢は問題ない様子。こちらも戦闘6時間と休憩2時間の二セット勤務だ。
救護所は北門に設置し、扱いは共通している。騎士、兵士、冒険者が入り混じり救護所は瞬く間に忙しくなる。回収は自己申告として空箱を設置する方式に変更となった。全員が受付にまわり配布係を行う。ポーションで回復する怪我のみで、重傷者はいない。救護所のベッドはおかげさまで空だ。
しばらくすると魔導師ギルドからの応援が来た。副ギルド長ヘレナと主任エラスムスというらしい。副ギルド長のヘレナさんは見るからに有能そうな女性のようだ。インテリ系のヒョロ長い男性がエラスムス。
「ギルド長は領主と共に魔物討伐隊にて行っているから、今は楽なのよ」
「パラケル爺からの指示よ。暇ならこっちを手伝えって」
パラケル爺さんはウィザーリングがいないことを良いことに、魔導師ギルドで指導に当たっているようだ。
「すると、パラケルさんはギルドで魔力ポーションを量産しているのですね」
「そうなのよ。ギルドで持っていたポーションだけだと足りなくなるから、今指導しながら作成中のようよ」
「へえ、ここが終わったら見に行こうかな」
「いいんじゃない。ここが終わったら商人ギルドの近くだから寄り道できるわ。いまは魔力ポーションの指導を受けているわ」
「まさか、魔力ポーションまで改良してしまっていたとは・・・」
「もう少し見ておきたかったけど。番なのは仕方がないわね」
「等級が上がったので、数回使用しても寝れるようになりますよ」
「あら、それは助かるかも知れないけど、昔の方が良い時もありそうね」
救護所の分担は二交代制となっている。今はポーションの配布のみで、休める時に休んでおきなさい、と休憩をうながされる。魔導師ギルドの指導も気になるので寄り道をしておこう。自分の代わりに来た二名に感謝をして、休憩を取ることにした。
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