巻き込まれた薬師の日常

白髭

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窯業と産業

第48話 魔治

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 ハイポーションの組み合わせ実験をしたい衝動に駆られながら、濃縮ポーションの品質保持の試験を数日かけて試す。途中村長に呼びつけられて、百本の試作ポーションを領主代行に献上するイベントは発生したが。
 中間製品でもある濃縮ポーションが安定供給できるとしたら、輸送の問題も解決する。販売先での小分けも可能だろう。派生製品への分岐、出発物としても用途が広がる。まずは焦らずに地道に足場を固める。前に使用した遮光箱に入れ、試験を開始した。

「マリン。今日はすることあるかい?」
朝食時にお誘いをかける。今日は休息日だ。教会のお勉強会は休みだろう。ブラックメンタの採取の労働力を確保したい。並行している遮光試験は放置が可能だ。
「うん。ローズちゃん、フローラちゃんと一緒に遊ぶ」
「それなら、川の側で、友達と一緒にお小遣い稼ぎしない?」
「2人次第だけど。私はいいよ」
人手がいるので、妹とそのお友達2名を確保できたらうれしい。一緒に遊ぶのならちょうどよいだろう。待ち合わせの鍛冶屋に一緒に行く。
「おや?マリンの兄ではないか?めずらしいな。こっちに来るなんて」
「ディオスさん。おはようございます。これから妹と採取に行こうと思って。お友達を誘いにきました」
 玄関先でディオスさんに会う。革の前掛けをいつもしている、がっちりとした体格が印象的だ。剣や盾などの戦闘用の他、料理道具、馬具までも扱う。村に一軒しかない何でも屋の鍛冶職人だ。本人は専門的ではないと嫌がっている。パラケル爺さん、ディオスさんと細工職人のクバナさんがわが村の誇る生産系の職人達だ。よく一緒に飲んだりしていた。合作の魔道具を作ることもあるようだ。
「おい、ローズ。マリンちゃんとレッドが誘いに来たぞ」
「あれ?レッドがなんで来ているの?」
「川の近くて採取をしようと思って。この間の薬草とは別のもの」
「マリンが行くなら良いけど。あっ、ちょうどフローラも来た」
「レッドが来てる?どうしたの?」

再度説明することになった。2人の同意をもらい、引き連れて採取場に出向く。
「採るものはこれ。もちろん買い取りするよ。2株で銀貨1枚」
近くにあったブラックメンタを見せる。メンタは1株単位の買い取り。相場は母親から聞いた。ブラックメンタの金額は高く、アルテミ草の5倍だ。
「!? ずいぶん高くない?」
「少し見分けが難しいからね。これからコツを教えるよ」
ブラックメンタの見分け方を伝達して採取となった。少し森に近いが、ここなら川にも近い。魔力操作もだいぶ慣れてきたし探知もできている。大丈夫だろう。

 一日かけて採取したのは55株。少し通常のメンタが含まれているので弾くと52株となった。金額にして銀貨26枚。これで色々買えるよ、と妹とお友達がはしゃぎながら、自宅へ帰っていった。ホーミィー村の物価は安い。妹たちに取っては手に余るお小遣いだったようだ。さて自分はもう一仕事。素材の劣化を防ぐためだ。乾燥、部位選定までは一連の流れ。手早く済ませておく。

 翌日。ブラックメンタの水蒸気蒸留を行う。瓶に移し替えて鑑定。
【*10倍濃縮魔力ポーション。特級。少しの気付効果。魔素回復6。中間製品。液量1/10】
この確認は、魔力枯渇の影響で実施できなかった。ポーション瓶へ移し替えると想定通り製品化した。5株で1瓶単位は変わらないらしい。

試しに通常の全草・乾燥・部位選定をしたあと、それぞれ熱水抽出を実施して作成してみる。
【*魔力ポーション。劣化品。二日は不眠状態。魔素回復6】
【*魔力ポーション。普及品。1日は不眠状態。魔素回復6】
【*魔力ポーション。一級品。気付効果。魔素回復6】
 ほぼポーションと同じ結果となった。それぞれの抽出操作でのランクも同じだ。ポーションは苦味とえぐみ。魔力ポーションは不眠の有害作用が付与されるようだ。特級品になると有害作用の大幅に軽減がある。ポーションとは違い、劣化品でも十分に利用価値がありそうだ。一部の企業戦士にとっては必須アイテムになりそうな感じがする。劣化品でも構わない、むしろ劣化品を希望する、と言われそうだ。こちらでも必要な人がいるだろう。軍隊などは特に。

 濃縮魔力ポーション、魔力ポーションを遮光箱に入れ、遮光試験に入る。
数日経ち、先に濃縮ポーションの結果が出る。想定通り鑑定結果から、ポーション並みの保管期間ができるようだ。磁器瓶は思ったより性能が良い。本当に開発してよかった。

一日遅れで実施した各種魔力ポーションの遮光試験はポーションと同様の結果となった。一連の試験が終わったのは会議から1週間が過ぎた頃だった。

試験が終わる同じタイミングで、出張に行っていたサルタンが帰宅した。


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