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試行と結果
第23話 討伐
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土魔法の制御もようやく慣れたころ、父親から報告があった。城郭都市の冒険者ギルドに依頼を出していた件だ。
「冒険者数名が洞窟を見つけ、野盗の討伐を達成した。レッド。安心してくれ。野盗は三人組で全員死亡だ。所持品から身元が判明した。ウオルク領の所属の元冒険者だった」
生死問わずの依頼のため、手加減はまったく無かった。鎮守の森は結界が張り巡らされている。発見された洞窟は結界のギリギリのところにあった。場所は街道から入り組んだところだ。生活した雰囲気があったが、滞在の理由が怪しかったらしい。2.3の質問を投げかけたところ、問答無用で切りかかってきたとのことだ。
「ひとまず安心しました」
言葉とは裏腹に雑な仕事だなと思った。拘束して聴取すればよいのに・・・
「ああ。他領の住民となると、直接パール家も本人以外、手出しができない。貴族の拉致案件ではないからな。抗議止まりだ。良好な関係なら協力はしてくれるがな。商人の身元もわかったぞ。こちらも野盗と同じウオルク領所属の商人だった」
残念ながら他領なので、うやむやになってしまいそうだと、父親は悔やむ。
「すっきりしないですね」
「そうだな。御領主も同じらしい。ウオルク領へご抗議され、対策を依頼されたと聞いている。領都では兵士を動員され、徹底的な捜査をされたと聞く。我々商人の捜査も行われたとギルド長の親父から聞いた。進展は、ギルドに所属していない商人を数人検挙されたに留まったらしい。お前との事件との関連性をお調べになられたが、わからなったようだ。残念ながら違法な取引を確認されただけで何も出てきてはいない」
パール家には、元相談役のパラケル爺さんの言付けも有ったらしい。祖父である商人ギルド長の上申もあったと父親は言う。祖父も都市の執行役の1人なので領主への意見は通りやすいようだ。2人からの要請もあり、城廓都市を領都とするパール家が動いてくれた。
「事件の捜査は終了でしょうか?」
「御領主は拉致事件の終了宣言をお出しになられた。被疑者の刑は執行された。他領の商人も死亡した。幕引きには充分と判断され、これ以上捜査しても進展は無いとしたようだ。違法な商人の摘発ができただけでも良かったと思われたらしい。村での行動制限も解禁となるだろう。これで森にも行けるし、城郭都市にも行けるな」
「はい。ようやく買い付けの再開ができそうです」
「パラケル爺との契約が有るだろう?納得いくまで魔力制御の教授は続けておけ。護身にもなるしな」
午前と午後の店番は継続することは変わらない。習得するまではもちろん継続したい。今後生きる為に魔法を扱うのは必要に違いないからだ。
午後の魔導具店に移る。当然のようにお客さんがいない店内から入る。いつものように店の裏の作業所に向かう。そこには準備完了とばかりにセッティングされた製造容器があった。容器の前に立った爺さんがこちらを向く。
「家業のほうは終わったか? 拉致事件は収束となったようだな」
「はい。歯切れは悪いですが」
「容疑者は全員死亡だからな。生きて返せばよいものを・・・」
「貴族の決定は庶民には覆せませんから。この幕引きでも十分に安心できます」
「お前が納得できるのならそれでよい。他領絡みの厄介ごとはパール家も放置としないだろう。貴族案件は貴族に任せておけ。よし、昨日までで基礎訓練を終了として、今日からはポーション作りをはじめるぞ」
魔力制御を習い始めてから一ヶ月。ようやく水・風・土・火と合格点をもらい、念願のポーション作りに入ることとなった。これからが正念場だ。ようやくこの世界の【薬師】としての出発地点に立てる。
「一ヶ月くらいで魔力制御をして4種の属性魔法をモノとするとは思わなかったがな」
「おかげさまで集中できましたから。」
あんまり喜怒哀楽がないパラケル爺さんだけど、習得速度には驚いていたようだった。通常、魔力制御に半年、属性魔法で半年くらいの期間で覚えていく。早くても一ヶ月はかかる。遅いと1年を超えることが多いらしい。一ヶ月で両方を覚えるのは、常軌を逸しているらしい。
レッド君の肉体は未熟な半面、精神は年数を経過しているのだ。学ぶことは常習化しているし、生活が懸かっている。吸収する速度は平均よりも早いのは仕方がない。
「随分とこの一ヶ月はきつかったです。なんとか覚えた程度ですよ」
「何をいう。自主練習をサルタンから聞いているぞ。訓練と称して庭の土をこねくり回していると。作ったものは、売り物になるレベルの陶器だったと。立体地図も村長宅に飾ると言っていたぞ。お前の両親は今が商戦だ!とばかりに方々連絡をとっているからな」
自分の両親は嬉々として商戦真っ最中のようだだ。魔力操作の題材としては、陶器づくりは丁度いい。物づくりは楽しい。何より材料は無料だ。土は無限にある。訓練成果が形になるのはすばらしいと思う。話が進展すると釉薬と本焼きの焼成温度の研究もあるかもしれないか。焼成窯も必要ではないか。魔力枯渇と魔力操作の取得に随分と役立ちそうだ。
「ポーションを作る前に陶器を作るのはワシも想定外だ。ワシの経験上、うまく回ると領内の産業となるぞ。覚悟しておけ」
各方位巻き込んで話が大きくなりそうな案件だった。
「冒険者数名が洞窟を見つけ、野盗の討伐を達成した。レッド。安心してくれ。野盗は三人組で全員死亡だ。所持品から身元が判明した。ウオルク領の所属の元冒険者だった」
生死問わずの依頼のため、手加減はまったく無かった。鎮守の森は結界が張り巡らされている。発見された洞窟は結界のギリギリのところにあった。場所は街道から入り組んだところだ。生活した雰囲気があったが、滞在の理由が怪しかったらしい。2.3の質問を投げかけたところ、問答無用で切りかかってきたとのことだ。
「ひとまず安心しました」
言葉とは裏腹に雑な仕事だなと思った。拘束して聴取すればよいのに・・・
「ああ。他領の住民となると、直接パール家も本人以外、手出しができない。貴族の拉致案件ではないからな。抗議止まりだ。良好な関係なら協力はしてくれるがな。商人の身元もわかったぞ。こちらも野盗と同じウオルク領所属の商人だった」
残念ながら他領なので、うやむやになってしまいそうだと、父親は悔やむ。
「すっきりしないですね」
「そうだな。御領主も同じらしい。ウオルク領へご抗議され、対策を依頼されたと聞いている。領都では兵士を動員され、徹底的な捜査をされたと聞く。我々商人の捜査も行われたとギルド長の親父から聞いた。進展は、ギルドに所属していない商人を数人検挙されたに留まったらしい。お前との事件との関連性をお調べになられたが、わからなったようだ。残念ながら違法な取引を確認されただけで何も出てきてはいない」
パール家には、元相談役のパラケル爺さんの言付けも有ったらしい。祖父である商人ギルド長の上申もあったと父親は言う。祖父も都市の執行役の1人なので領主への意見は通りやすいようだ。2人からの要請もあり、城廓都市を領都とするパール家が動いてくれた。
「事件の捜査は終了でしょうか?」
「御領主は拉致事件の終了宣言をお出しになられた。被疑者の刑は執行された。他領の商人も死亡した。幕引きには充分と判断され、これ以上捜査しても進展は無いとしたようだ。違法な商人の摘発ができただけでも良かったと思われたらしい。村での行動制限も解禁となるだろう。これで森にも行けるし、城郭都市にも行けるな」
「はい。ようやく買い付けの再開ができそうです」
「パラケル爺との契約が有るだろう?納得いくまで魔力制御の教授は続けておけ。護身にもなるしな」
午前と午後の店番は継続することは変わらない。習得するまではもちろん継続したい。今後生きる為に魔法を扱うのは必要に違いないからだ。
午後の魔導具店に移る。当然のようにお客さんがいない店内から入る。いつものように店の裏の作業所に向かう。そこには準備完了とばかりにセッティングされた製造容器があった。容器の前に立った爺さんがこちらを向く。
「家業のほうは終わったか? 拉致事件は収束となったようだな」
「はい。歯切れは悪いですが」
「容疑者は全員死亡だからな。生きて返せばよいものを・・・」
「貴族の決定は庶民には覆せませんから。この幕引きでも十分に安心できます」
「お前が納得できるのならそれでよい。他領絡みの厄介ごとはパール家も放置としないだろう。貴族案件は貴族に任せておけ。よし、昨日までで基礎訓練を終了として、今日からはポーション作りをはじめるぞ」
魔力制御を習い始めてから一ヶ月。ようやく水・風・土・火と合格点をもらい、念願のポーション作りに入ることとなった。これからが正念場だ。ようやくこの世界の【薬師】としての出発地点に立てる。
「一ヶ月くらいで魔力制御をして4種の属性魔法をモノとするとは思わなかったがな」
「おかげさまで集中できましたから。」
あんまり喜怒哀楽がないパラケル爺さんだけど、習得速度には驚いていたようだった。通常、魔力制御に半年、属性魔法で半年くらいの期間で覚えていく。早くても一ヶ月はかかる。遅いと1年を超えることが多いらしい。一ヶ月で両方を覚えるのは、常軌を逸しているらしい。
レッド君の肉体は未熟な半面、精神は年数を経過しているのだ。学ぶことは常習化しているし、生活が懸かっている。吸収する速度は平均よりも早いのは仕方がない。
「随分とこの一ヶ月はきつかったです。なんとか覚えた程度ですよ」
「何をいう。自主練習をサルタンから聞いているぞ。訓練と称して庭の土をこねくり回していると。作ったものは、売り物になるレベルの陶器だったと。立体地図も村長宅に飾ると言っていたぞ。お前の両親は今が商戦だ!とばかりに方々連絡をとっているからな」
自分の両親は嬉々として商戦真っ最中のようだだ。魔力操作の題材としては、陶器づくりは丁度いい。物づくりは楽しい。何より材料は無料だ。土は無限にある。訓練成果が形になるのはすばらしいと思う。話が進展すると釉薬と本焼きの焼成温度の研究もあるかもしれないか。焼成窯も必要ではないか。魔力枯渇と魔力操作の取得に随分と役立ちそうだ。
「ポーションを作る前に陶器を作るのはワシも想定外だ。ワシの経験上、うまく回ると領内の産業となるぞ。覚悟しておけ」
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