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修練と改良
第11話 報告
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レッド君の意識の少なさにさみしさを覚えた。久しぶりの家族と朝食をとった後、マリンを教会に送る。彼の行動パターンだ。七歳から十歳までの間は、寺子屋のような教会に通う。読み書きの初等教育を行うためだ。彼女の引き剥がしに時間がかかった。これからの話は妹の前では避けたいので外出してからとなった。
家に戻ると、こちらから話を待っていたのか両親が揃って待っていた。マリンには刺激が強い話だ。両親も居なくなるこの時間まで待っていたようだ。ようやく両親に人攫いにあったときの話ができる。自分とレッド少年のすり替わりの話題は避けて話を行う。まだ自分の中の諦めと覚悟ができていない。
「レッド。マリンの送り届けありがとう。それでは・・わかっているな」
「はい。マリンもいなくなったので、話せます」
「辛くなったら途中でやめてもよいのよ」
両親の前でホーミー村の店から出た後の話をする。レッド君の記憶を遠慮なく引き出す。荷馬車で城郭都市を目指す途中にて鎮守の森にて襲われたこと。抵抗はできずにあっさり捕まったしまったこと。その時は怪我がなかった。襲った野盗らしき人物は、自分を拘束した後、目隠しをして洞窟に連行した。洞窟の場所は、全くわからないことを話す。身なりから裕福そうだと判断した野盗は、アイテムボックスの中身をすべて出すように要求した。持参したお金は没収されたことを話す。
「お金はいいのだ。レッドが生きてくれれば」
「無事に帰ってこれたことに感謝ね」
その後、着ていた服はいらないので返された。外出の時に使用するから持っておくように言われる。監禁の間、食事は二食であったが空腹を満たすくらいの食事は与えられていた。自分の販売価格を上げるためだろう、それから何もされずに経過、待機させられて奴隷商人に引き渡された。商人に引き渡された後、馬車に閉じこめられた。途中馬車が暴走してようで衝撃があって意識が途絶えた。起きたときには、檻が壊れて外に投げ出されていた。頭の傷の後はその時にできたと思う。なぜ傷が塞がっているかはわからない、と。
「レッドを拉致した犯人はまだ見つかっていない。捜索は森の中となるため、冒険者に依頼を村長にしているから安心しろ」
「大変だったわね。今日一日は休みなさい」
「自宅の中か、パラケルさんの家までにしておきなさい」
「村の範囲なら行動しても良いが、森には絶対に入るなよ。今は警戒中だ」
父親のサルタンは一連の話を聞き、しばらく考え、結論をだす。鎮守の森に野盗の棲みつきと違法な奴隷商人の存在があると判断したようだ。母親には店の手伝いをすることを免除された。相当に堪えたものと判断された結果だ。せっかくなので村の中を散策することにした。
レッド君の情報を頼りに、村内を巡る。鎮守の森に隣接しているホーミィー村は、麦の生産と馬・羊の養育を産業の柱としている。城郭都市ベンベルク周辺の開拓村の一つ。人口は400人くらい。むしろ村民よりも馬や羊の頭数のほうが多いくらいだ。麦は城郭都市に卸され、馬は城郭都市だけでなく、他の領にも出荷されている。羊は、羊毛をとるのに生育されている。これらの出荷は村営で行われており、村の事業となっていた。
村の中心地は、教会と集会場、役場兼村長宅があり、周辺に商店街がある。商店街と言っても5店舗ほど。ベルナル商店の他に鍛冶屋、宿屋兼食堂、木工店、魔導具店だ。我がベルナル商店は日用品全般を取り扱う何でも屋の雑貨店だ。村の中心を外れた周りには、散在した民家があるだけ。麦畑や放牧場が広がるのどかな風景が広がる。残念ながら冒険者ギルドはない。平和すぎるため依頼がないのだ。依頼をするときは、村長経由で城郭都市へ連絡をしている。
鎮守の森は、ホーミィー村周辺に広がる森の名称だ。城郭都市の奥に広がる魔の森とは違い、危険な生物はほとんど遭遇しない。たまに魔の森から流れくる魔物がいるくらいだ。森の主を警戒して居座ることはほとんどない。たまに出る周辺の魔物は、冒険者か領兵に依頼して討伐してもらう。森の主の配下によって排除されることもある。故に、城郭都市と村の行き来は比較的安全という認識があった。村でも比較的森の浅いところならば、子供だけでも採取に出かけることも許可されていた。自分の拉致があったため、現在のホーミィ―村は往来も鎮守の森への移動も警戒を強めている。
ホーミィ―村から、北への街道を抜けると城郭都市ベンベルクがある。おおむね徒歩で一日の距離となる。ベンベルクは人口一万人ほどの領都市だ。領都市は王国の北限。ベンベルクから王都へは、ホーミー村と結ぶ街道と途中で分岐し、南下する必要がある。自分が拉致されたところもこの分岐地点の鎮守の森だった。王都へは馬車で10日間の旅だ。全面は舗装がされていないベンベルクから王都の街道は、少なからず流通があった。
ベンベルクの北部は、魔物が跋扈する魔の森が広がっている。迷宮も存在していることもあり、開拓の前線基地となっていた。人口が集中しているので一大消費地となっている。我がベルナル商店は、村事業の代行として販売と仕入れを担う。領都市にて村の農産物を商人ギルドへ売り、手数料収入を得る。商人ギルドは貴族家へ報告を行う。この取引にて村から領主側への税金の納付も代行している。ベンベルクで買い付けた素材と王都製品は、村内でも販売を行ってきた。
村内の流通を一手に担うベルナル商店は、村内では重要な役割を持っていたようだ。小売業、仲卸業、公益事業も行う、昔ながらの商店だった。
家に戻ると、こちらから話を待っていたのか両親が揃って待っていた。マリンには刺激が強い話だ。両親も居なくなるこの時間まで待っていたようだ。ようやく両親に人攫いにあったときの話ができる。自分とレッド少年のすり替わりの話題は避けて話を行う。まだ自分の中の諦めと覚悟ができていない。
「レッド。マリンの送り届けありがとう。それでは・・わかっているな」
「はい。マリンもいなくなったので、話せます」
「辛くなったら途中でやめてもよいのよ」
両親の前でホーミー村の店から出た後の話をする。レッド君の記憶を遠慮なく引き出す。荷馬車で城郭都市を目指す途中にて鎮守の森にて襲われたこと。抵抗はできずにあっさり捕まったしまったこと。その時は怪我がなかった。襲った野盗らしき人物は、自分を拘束した後、目隠しをして洞窟に連行した。洞窟の場所は、全くわからないことを話す。身なりから裕福そうだと判断した野盗は、アイテムボックスの中身をすべて出すように要求した。持参したお金は没収されたことを話す。
「お金はいいのだ。レッドが生きてくれれば」
「無事に帰ってこれたことに感謝ね」
その後、着ていた服はいらないので返された。外出の時に使用するから持っておくように言われる。監禁の間、食事は二食であったが空腹を満たすくらいの食事は与えられていた。自分の販売価格を上げるためだろう、それから何もされずに経過、待機させられて奴隷商人に引き渡された。商人に引き渡された後、馬車に閉じこめられた。途中馬車が暴走してようで衝撃があって意識が途絶えた。起きたときには、檻が壊れて外に投げ出されていた。頭の傷の後はその時にできたと思う。なぜ傷が塞がっているかはわからない、と。
「レッドを拉致した犯人はまだ見つかっていない。捜索は森の中となるため、冒険者に依頼を村長にしているから安心しろ」
「大変だったわね。今日一日は休みなさい」
「自宅の中か、パラケルさんの家までにしておきなさい」
「村の範囲なら行動しても良いが、森には絶対に入るなよ。今は警戒中だ」
父親のサルタンは一連の話を聞き、しばらく考え、結論をだす。鎮守の森に野盗の棲みつきと違法な奴隷商人の存在があると判断したようだ。母親には店の手伝いをすることを免除された。相当に堪えたものと判断された結果だ。せっかくなので村の中を散策することにした。
レッド君の情報を頼りに、村内を巡る。鎮守の森に隣接しているホーミィー村は、麦の生産と馬・羊の養育を産業の柱としている。城郭都市ベンベルク周辺の開拓村の一つ。人口は400人くらい。むしろ村民よりも馬や羊の頭数のほうが多いくらいだ。麦は城郭都市に卸され、馬は城郭都市だけでなく、他の領にも出荷されている。羊は、羊毛をとるのに生育されている。これらの出荷は村営で行われており、村の事業となっていた。
村の中心地は、教会と集会場、役場兼村長宅があり、周辺に商店街がある。商店街と言っても5店舗ほど。ベルナル商店の他に鍛冶屋、宿屋兼食堂、木工店、魔導具店だ。我がベルナル商店は日用品全般を取り扱う何でも屋の雑貨店だ。村の中心を外れた周りには、散在した民家があるだけ。麦畑や放牧場が広がるのどかな風景が広がる。残念ながら冒険者ギルドはない。平和すぎるため依頼がないのだ。依頼をするときは、村長経由で城郭都市へ連絡をしている。
鎮守の森は、ホーミィー村周辺に広がる森の名称だ。城郭都市の奥に広がる魔の森とは違い、危険な生物はほとんど遭遇しない。たまに魔の森から流れくる魔物がいるくらいだ。森の主を警戒して居座ることはほとんどない。たまに出る周辺の魔物は、冒険者か領兵に依頼して討伐してもらう。森の主の配下によって排除されることもある。故に、城郭都市と村の行き来は比較的安全という認識があった。村でも比較的森の浅いところならば、子供だけでも採取に出かけることも許可されていた。自分の拉致があったため、現在のホーミィ―村は往来も鎮守の森への移動も警戒を強めている。
ホーミィ―村から、北への街道を抜けると城郭都市ベンベルクがある。おおむね徒歩で一日の距離となる。ベンベルクは人口一万人ほどの領都市だ。領都市は王国の北限。ベンベルクから王都へは、ホーミー村と結ぶ街道と途中で分岐し、南下する必要がある。自分が拉致されたところもこの分岐地点の鎮守の森だった。王都へは馬車で10日間の旅だ。全面は舗装がされていないベンベルクから王都の街道は、少なからず流通があった。
ベンベルクの北部は、魔物が跋扈する魔の森が広がっている。迷宮も存在していることもあり、開拓の前線基地となっていた。人口が集中しているので一大消費地となっている。我がベルナル商店は、村事業の代行として販売と仕入れを担う。領都市にて村の農産物を商人ギルドへ売り、手数料収入を得る。商人ギルドは貴族家へ報告を行う。この取引にて村から領主側への税金の納付も代行している。ベンベルクで買い付けた素材と王都製品は、村内でも販売を行ってきた。
村内の流通を一手に担うベルナル商店は、村内では重要な役割を持っていたようだ。小売業、仲卸業、公益事業も行う、昔ながらの商店だった。
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