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遭難と保護
第7話 通信
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兵士さんの話によると、自分が拉致されたことを察した家族が、捜索金を村長に託したらしい。領内に捜索を出してはいるが、この界隈、積極的な捜索とはならないようだ。このような案件はごくたまに出る程度と兵士が言っていた。奴隷と落とされても、都市に入るには全員分の証明が必要となる。都市に入れない以上は、ある程度の大きい組織が必要なためだろう。残念ながら、どこに洞窟があったのかを知るすべはない。現段階ではわからないことが多い。難を逃れたことだけでも幸いと考えよう。
詰所から、場所を変えて屋敷のような大きさの役所に移動する。ベンベルクと呼ばれる都市を北に向かい、広場にある大きな屋敷だ。専門の部門に移動し、手続きが行われた。兵士はそのまま待っていてくれるようだ。制服のような事務服を着ている文官は、魔導具付きの専門員のようだった。
「こちらの台に身分石をのせてください。籍のある村につなげます」
石を乗せた後発光し、受付人が端末となる魔導具を弄る。ボタン式のようだ。ピーピーと音がした後、しばらく無音が続く。五分ほど待たされた後、年配の男の声が聞こえた。まるで電話のようだ。
「こちらホーミィー村。村長のサーカエと申す」
『ああ、村長だ』
「こちらベンベルク城郭都市。役所捜索課の担当のアジソンだ。そちらに籍があるレッドという少年の捜索の届けについてだ」
「!! 一ヶ月前に、商人のサルタンから提出を受けている。進展があったのでしょうか?」
「そうだ。ベンベルク南門での検問にて発見された。都市兵士によって本日、身柄を確保した。本人に聴取を行った結果と、捜索届と外見と一致した。さらに持参した身分石にて確認したから間違いない。取り決めに従い、村側で引き取りの手配して欲しい」
「引き取りの件、了解した。本日は日暮のため、家族に連絡するだけとします。何もなければ明日に向かうよう手配をします。こちらでの準備もある為、引き取りには明日、もしくは明後日になるでしょう」
「日時の件、了解した。到着次第、担当者には役所まで来るよう伝えて欲しい。少年は役所にて手続きが完了するまで、詰所の勾留所で責任をもって、身柄を確保しておくから安心してくれ」
「御手配、ありがとうございます。村長として迅速な対応に感謝いたします」
相手側とのやりとりがあり、通信が終了した。
「よかったな、少年。明日か、明後日には引き取りされて家族と会えるぞ」
一緒に役所に向かった兵士が声をかけてくれた。
「ありがとうございます。ホッとしました。動いてくれたことに感謝します」
「捜索者が見つかるとは珍しい。ここは魔の森が近い。ほとんどが残念な結果となることが多いからな。俺も良い報告ができて良かったよ」
今まで行動をしてくれた兵士と役所の担当の人に感謝の言葉をかける。その言葉と裏腹に、明日か明後日が制限時間と心に刻む。
帰り道、安心したという少年の風貌を利用し、兵士と取り止めのない話を続け、情報収集をすることにした。ホーミィー村のこと、城郭都市の出来事など、必要な事項は多い。レッド君には負担をかけられないからだ。城郭都市ベンベルクはパール家が収める辺境領にて領都となる。魔の森が近くに存在し、魔物の氾濫がたびたび起こる地だ。統治面では、比較的安定的に政治を行う貴族とのことだった。パール家は、庶民派と呼ばれる穏健的な一派に属している。領の住民への税金は軽く、他の領に比べると住みやすいところだと兵士はいう。
並行して頭の中でホーミィー村の家族の事を考える。いままでなかなかできなかったが、レッド少年の記憶は意識するとそれなりに流れてくる。レッド君は警戒心をすでに解いているので、彼の情報がストレートに伝わってくる。父親、母親、妹の四人家族だ。商人に一家にてホーミィー村で商店を開いていた。何でも屋の雑貨店とのことだ。
『父親がサルタン、ジーナが母親、妹がマリンだね』
親戚はベンベルクにもいるらしい。こちらも商店を開いている。爺さんはこの都市のお偉いさんとのことだが、レッド君は祝い事でしか会っていないので、よくわからないと言っている。過去の記憶は映画を見ているような印象。今の主人格は自分。副人格となったレッド少年は、次第に弱まっている。おそらく、自分も思うくらいだから、本人も感じているに違いない。あの場所で頭を打った形跡があったことが原因なのかもしれないと感じる。
「すまないが待機する場所は、詰所の勾留所だけなのだ。宿泊には向かないのは事前に謝っておく。身元も分かっているのに、宿屋では無くて本当に済まんな。もちろん飯は出すぞ」
しばらく兵士と共に拘留所での生活を満喫する必要があるようだ。野宿になるよりかはマシと考えるようにしよう。安心して休憩できる。安息を確保できるのは大きかった。
詰所から、場所を変えて屋敷のような大きさの役所に移動する。ベンベルクと呼ばれる都市を北に向かい、広場にある大きな屋敷だ。専門の部門に移動し、手続きが行われた。兵士はそのまま待っていてくれるようだ。制服のような事務服を着ている文官は、魔導具付きの専門員のようだった。
「こちらの台に身分石をのせてください。籍のある村につなげます」
石を乗せた後発光し、受付人が端末となる魔導具を弄る。ボタン式のようだ。ピーピーと音がした後、しばらく無音が続く。五分ほど待たされた後、年配の男の声が聞こえた。まるで電話のようだ。
「こちらホーミィー村。村長のサーカエと申す」
『ああ、村長だ』
「こちらベンベルク城郭都市。役所捜索課の担当のアジソンだ。そちらに籍があるレッドという少年の捜索の届けについてだ」
「!! 一ヶ月前に、商人のサルタンから提出を受けている。進展があったのでしょうか?」
「そうだ。ベンベルク南門での検問にて発見された。都市兵士によって本日、身柄を確保した。本人に聴取を行った結果と、捜索届と外見と一致した。さらに持参した身分石にて確認したから間違いない。取り決めに従い、村側で引き取りの手配して欲しい」
「引き取りの件、了解した。本日は日暮のため、家族に連絡するだけとします。何もなければ明日に向かうよう手配をします。こちらでの準備もある為、引き取りには明日、もしくは明後日になるでしょう」
「日時の件、了解した。到着次第、担当者には役所まで来るよう伝えて欲しい。少年は役所にて手続きが完了するまで、詰所の勾留所で責任をもって、身柄を確保しておくから安心してくれ」
「御手配、ありがとうございます。村長として迅速な対応に感謝いたします」
相手側とのやりとりがあり、通信が終了した。
「よかったな、少年。明日か、明後日には引き取りされて家族と会えるぞ」
一緒に役所に向かった兵士が声をかけてくれた。
「ありがとうございます。ホッとしました。動いてくれたことに感謝します」
「捜索者が見つかるとは珍しい。ここは魔の森が近い。ほとんどが残念な結果となることが多いからな。俺も良い報告ができて良かったよ」
今まで行動をしてくれた兵士と役所の担当の人に感謝の言葉をかける。その言葉と裏腹に、明日か明後日が制限時間と心に刻む。
帰り道、安心したという少年の風貌を利用し、兵士と取り止めのない話を続け、情報収集をすることにした。ホーミィー村のこと、城郭都市の出来事など、必要な事項は多い。レッド君には負担をかけられないからだ。城郭都市ベンベルクはパール家が収める辺境領にて領都となる。魔の森が近くに存在し、魔物の氾濫がたびたび起こる地だ。統治面では、比較的安定的に政治を行う貴族とのことだった。パール家は、庶民派と呼ばれる穏健的な一派に属している。領の住民への税金は軽く、他の領に比べると住みやすいところだと兵士はいう。
並行して頭の中でホーミィー村の家族の事を考える。いままでなかなかできなかったが、レッド少年の記憶は意識するとそれなりに流れてくる。レッド君は警戒心をすでに解いているので、彼の情報がストレートに伝わってくる。父親、母親、妹の四人家族だ。商人に一家にてホーミィー村で商店を開いていた。何でも屋の雑貨店とのことだ。
『父親がサルタン、ジーナが母親、妹がマリンだね』
親戚はベンベルクにもいるらしい。こちらも商店を開いている。爺さんはこの都市のお偉いさんとのことだが、レッド君は祝い事でしか会っていないので、よくわからないと言っている。過去の記憶は映画を見ているような印象。今の主人格は自分。副人格となったレッド少年は、次第に弱まっている。おそらく、自分も思うくらいだから、本人も感じているに違いない。あの場所で頭を打った形跡があったことが原因なのかもしれないと感じる。
「すまないが待機する場所は、詰所の勾留所だけなのだ。宿泊には向かないのは事前に謝っておく。身元も分かっているのに、宿屋では無くて本当に済まんな。もちろん飯は出すぞ」
しばらく兵士と共に拘留所での生活を満喫する必要があるようだ。野宿になるよりかはマシと考えるようにしよう。安心して休憩できる。安息を確保できるのは大きかった。
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