美形貴族のお坊ちゃん×極悪非道のツン/ヤンデレ海賊の激甘執着ラヴ

ゆっくり

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三章

無駄足

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 レイは時折、夜中に深い眠りに落ちた後でも泣き始めることがあった。私は優しく彼の頭を撫でて「ヨシヨシ」と声をかけて撫でる。手のひらで彼の頬を包み込むように撫でながらそう呟けば、彼は大抵の場合また眠りについていた。
 しかし今日は彼はパチッと目が覚めたようで、うるうるした目でこちらを見ていた。しょんぼりとした表情をしたレイに、私は話しかける。

「抱きしめてもいいですか?」

 レイは黙って頷きながら、私にに身を預けた。抱きしめられることで、徐々にレイの表情は穏やかさを取り戻し、スリっと私の肩辺りに懐いた。

「どうやったら、あなたの心を安らげますか?」

 暗闇の中、ほのかな光が彼の瞳を照らし出していた。涙で濡れた目が月光を反射し、涙も相まってキラキラと輝いているように見えた。

「殺して、二度と会わないと分かればトラウマが無くなる」

 彼はしょんぼりした声を出しながら、ほんのり震えるような口調で話した。その声はかすれ、微弱ながらも確かな存在感を持っていた。

「今までもそうだった、殺した途端に夢に出なくなる」

 彼は手の甲で静かに涙を拭いながら、そっと語った。そうか、やはり彼の心を掻き乱しているのはあのサーカスの男を筆頭に過去に彼に酷い目を合わせた人間たちか。

「あのサーカスの男を殺しに行きますか」

「ルイスを危険に合わせることは出来ない。あの変態男が一番好きな見た目だから、連れて行けない」

「あなたが毎日魘されているのは見ていると辛い」

 彼は弱々しく首を振り、私をぎゅっと抱きしめた。私を腕の中に囲って、もう逃がさないという強い意志が込められた力の強さだった。その瞬間、彼の香りが一層近付き、私の周りを包み込み、安心感と共に鼻腔を満たす。そして、彼は小さな小さな声でつぶやいた。

「毎日魘されるよりも、お前を失う方が恐ろしい」

 目を合わせれば、彼は参ったような顔をしていた。彼がそういうなら、そうなのだろう。彼を怖がらせる様なことはしないでおこうと思った。

「ええ、ずっと側にいます」

 さらに暗闇で抱きつく。







 次の日、彼は昨日のことなんてなかったかのようなツンとした振る舞いをしていた。私はそんな彼の様子が照れ隠しにしか見えなかったので、可愛い人だなとつくづく思っていた。

 私たちは買い物に出かけることにした。あの件以来、レイは街の人と喧嘩するようなことはしなかった。イラッとしたことがあれば、舌打ちをして睨みつけるくらいのことはしていたが、手を挙げることはめっきり無くなっていた。

「………レイ、あれみてください」

 街の様々な壁には、本国からのレイの指名手配書のポスターがあちこちに貼られていた。彼が犯した犯罪が端的に書かれており、私はその罪状は見なかったことにした。人々は時折そのポスターを見て、連れの人々と話をしたりしていた。

「……チッ面倒なことになった」

 そしてサーカス団と本国の協力体制を宣伝する広告も目立っていた。要するにサーカス団にてレイが大暴れしたことが書かれており、その調査にサーカス団も全面的に協力するとの事だった。つまり、本国の追ってとサーカス側両方の追っ手がいると考えた方が良い。

「そろそろ追っ手にそなえて武器揃えましょうか」

「たしかにな」

 見つからないに越したことはないが、万が一見つかった時に戦えなくてはならない。私もレイもそこそこ体術ができる方だが、武器はある方が戦いやすいだろう。

「武力揃えるまでしばらくレイは部屋にいて欲しいです」

 レイは本当に目立つ。顔もかっこいいし背も高いし、その振る舞いなどが堂々としている感じも、人々の目を非常に引く。現にバレてはいないと思うがチラチラ人々がこちらを見ている。
 そう思って声をかけたのだが、レイは不貞腐れたような顔をしていた。

「絶対に却下だ。一緒に買いに行く」

「まだ信用なりませんか?私を一人で外に出したら逃げると思ってる?」

 私がそう聞けば、レイはさらに怒ったような顔をした。そして、私の頬を軽い力でもちもちと抓る。別に痛くは無い。

「逃げると思ってるわけじゃない。ただ、お前はそそっかしいから心配なだけだ」

 まだこの場に順応できないお坊ちゃまだと思われているようだ。しかし、困ったな。こんなにも指名手配書が増えた今、いつ市民がレイの存在に気がついてもおかしくない。
 そうだ、夜に出かけよう。とにかくこの金髪は目立つ。私はレイに少し屈んでもらって、フードを被らせた。
 私が急に接近しても、もうレイは怯えなくっていた。

「夜に武器を買いに行きましょう」

「そうだな、一旦帰るか」

 そうして私達は無駄足を踏んだのであった。
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