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一章
スイーツ
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彼の立ち振る舞いは堂々としていて、非常に不機嫌な表情だった。その場所に緊張感を醸し出、彼の部下たちは恐れ慄いているようで、入り口付近で立ち止まっていた。
彼は私の作っているフルーツサンドを見た。
「あ…」
彼はつまみ食いをした。切られたフルーツをソースに付けてもぐ…と食べている。最悪、敵である私が作っているというだけで、鍋をひっくり返すんじゃないかと思っていたから食べたのは意外だった。
「…………」
頬っぺたをもぐもぐ動かして果物を食べている。眉間に皺を寄せていたが、気に入ったのかまたいちごのような果物に手を伸ばしていた。
「つまみ食いしちゃダメです、サンドウィッチにするんですから」
「………」
彼は私を睨みつけたが、黙って近くにあるタルの上に座った。彼はまだこちらを睨みつけており、私が料理をしている様子を観察しているようだ。毒などを入れないか見張っているのだろうか?
「………」
気まずいが、気を取り直して料理を始めよう。
パンを2枚、砂糖を入れたミルクに浸す。そしてフライパンで両面を焼いて軽く焼き色をつける。バターはないので、そのままいちごソースを表面に塗った。そして、その上にフルーツをたくさん載せる。そしてその上からまた、贅沢にソースをたくさんかけた。そしてもう一枚のパンで挟む。包丁で半分に切って、できあがりだ。
正直料理と言っていいのかわからないくらい、簡単な出来合いのものだ。こんなのでいいのかな。
「出来ました」
「…………」
彼は黙って樽から降り、私を通り過ぎてキッチンから出ていく。私はあれ?と思い彼の移動した先を見た。着いてきていない私にイラついたような顔をして、彼は手招きした。
「さっさと来い」
「はい」
どうやら彼の部屋まで運ばされるようだ。
「………」
相変わらず趣味が悪い部屋だ。
テーブルの彼がいつも座っているところに置いた。彼はフルーツサンドに手を伸ばして食べ始める。また、頬がもぐもぐと動く。
「……うまいな」
片眉を上げて、ボソッと彼はそう呟いた。
驚いた。彼がそんな風に感想を言うとは思わなかった。せいぜい、文句は言わずに黙って食べるくらいかと。好意的な声が出るとは思わなかった。
「あいつらの飯には辟易とする」
同意。彼らのご飯は本当に不味い。野菜の旨みなどがなぜか一切ない。全てべたベタだったりカサカサだったり。食べられたものではない。
「どいつもこいつも、肉やら魚やら焼いてだしやがって。俺は肉も魚も野菜も大嫌いなんだよ」
彼はかなりの偏食なようだ。海の世界で食べるものあるのか?どうやら、キッチン係が寝込んだとか関係なく、彼はこの船の料理が嫌いなようだった。そりゃ彼らの作るご飯はほとんど食べられないだろうな。
もしかして、フルーツと甘いものが好きなのだろうか。完全に出来合いのものだったが、彼の趣味にあってよかった。
「お前の飯は?」
「この船は食糧難で。あなた以外食べるものがないのです」
「ふむ、まああと1日くらい耐えてもらうか」
彼はフルーツサンドを少しちぎった。そして、私の方に差し出す。いちごもどきのソースが溶けて流れていた。
「ありがとうございます」
「元はお前が作ったものだ」
食べる。
パンは砂糖ミルクに漬けたおかげで甘く柔らかい。そして、フルーツはどれも爽やかな香りがして、甘酸っぱくておいしかった。
この船に来てからいちばん美味しい食べ物だ。今まで出てきたものは全てしょっぱすぎたり脂っこかった。自分で思っていた以上に美味しくできていた。
彼は今まで見てきたような苛烈な印象とは異なり、穏やかな様子で食事を終えた。1度も彼に怒鳴られなかった。
「食材が増えたらまた作れ」
「………私が、毒を仕込むとは思わないのですか」
「ふむ……それは考えなかったな」
面白いことを聞いたような顔をして、彼は片眉を上げた。その表情はいつもよりずっと、とっつきやすい印象を受けた。人間不信じゃないのかこの人は。
「毒は幼い頃に慣らされている。熱くらいは出るだろうが、死にはしない」
とてつもない幼少期をすごしたことが伺える。私は同情の眼差しを向けないように努めた。彼は酒を開けていた。これから晩酌するようだ。私はお皿を持って、彼の部屋を出た。
久々に料理をしたが楽しかった。結果的にあんなふうに彼に褒めて貰えたし。ああ見えて部下は大切にするほうなのか?いや、絶対そんなことはないだろうな。そうでなければクーデターなんて計画されないだろうし。
キッチンに戻って、お皿を返却する。疲れたからさっさと牢屋に戻ってアルバートさんとゴロゴロしたい。しかし、見張りをしていた海賊たちに取り囲まれる。
「お前、どういうつもりだ」
「どういう?」
どういうつもりとは?作れと言われて作っただけなのになんだ。私は不愉快な気持ちになってその海賊を睨みつけた。
「お頭があんなふうにモノを食いたがるなんて」
その海賊は悔しそうにそう呟いていた。私は彼を呆れた顔でみる。お前らのご飯がまずいからでしょ。要らない絡みをしてこないで欲しい。
そうして、牢屋に戻された。アルバートさんには、甘い香りがすると嗅がれた。こそばゆかった。
彼は私の作っているフルーツサンドを見た。
「あ…」
彼はつまみ食いをした。切られたフルーツをソースに付けてもぐ…と食べている。最悪、敵である私が作っているというだけで、鍋をひっくり返すんじゃないかと思っていたから食べたのは意外だった。
「…………」
頬っぺたをもぐもぐ動かして果物を食べている。眉間に皺を寄せていたが、気に入ったのかまたいちごのような果物に手を伸ばしていた。
「つまみ食いしちゃダメです、サンドウィッチにするんですから」
「………」
彼は私を睨みつけたが、黙って近くにあるタルの上に座った。彼はまだこちらを睨みつけており、私が料理をしている様子を観察しているようだ。毒などを入れないか見張っているのだろうか?
「………」
気まずいが、気を取り直して料理を始めよう。
パンを2枚、砂糖を入れたミルクに浸す。そしてフライパンで両面を焼いて軽く焼き色をつける。バターはないので、そのままいちごソースを表面に塗った。そして、その上にフルーツをたくさん載せる。そしてその上からまた、贅沢にソースをたくさんかけた。そしてもう一枚のパンで挟む。包丁で半分に切って、できあがりだ。
正直料理と言っていいのかわからないくらい、簡単な出来合いのものだ。こんなのでいいのかな。
「出来ました」
「…………」
彼は黙って樽から降り、私を通り過ぎてキッチンから出ていく。私はあれ?と思い彼の移動した先を見た。着いてきていない私にイラついたような顔をして、彼は手招きした。
「さっさと来い」
「はい」
どうやら彼の部屋まで運ばされるようだ。
「………」
相変わらず趣味が悪い部屋だ。
テーブルの彼がいつも座っているところに置いた。彼はフルーツサンドに手を伸ばして食べ始める。また、頬がもぐもぐと動く。
「……うまいな」
片眉を上げて、ボソッと彼はそう呟いた。
驚いた。彼がそんな風に感想を言うとは思わなかった。せいぜい、文句は言わずに黙って食べるくらいかと。好意的な声が出るとは思わなかった。
「あいつらの飯には辟易とする」
同意。彼らのご飯は本当に不味い。野菜の旨みなどがなぜか一切ない。全てべたベタだったりカサカサだったり。食べられたものではない。
「どいつもこいつも、肉やら魚やら焼いてだしやがって。俺は肉も魚も野菜も大嫌いなんだよ」
彼はかなりの偏食なようだ。海の世界で食べるものあるのか?どうやら、キッチン係が寝込んだとか関係なく、彼はこの船の料理が嫌いなようだった。そりゃ彼らの作るご飯はほとんど食べられないだろうな。
もしかして、フルーツと甘いものが好きなのだろうか。完全に出来合いのものだったが、彼の趣味にあってよかった。
「お前の飯は?」
「この船は食糧難で。あなた以外食べるものがないのです」
「ふむ、まああと1日くらい耐えてもらうか」
彼はフルーツサンドを少しちぎった。そして、私の方に差し出す。いちごもどきのソースが溶けて流れていた。
「ありがとうございます」
「元はお前が作ったものだ」
食べる。
パンは砂糖ミルクに漬けたおかげで甘く柔らかい。そして、フルーツはどれも爽やかな香りがして、甘酸っぱくておいしかった。
この船に来てからいちばん美味しい食べ物だ。今まで出てきたものは全てしょっぱすぎたり脂っこかった。自分で思っていた以上に美味しくできていた。
彼は今まで見てきたような苛烈な印象とは異なり、穏やかな様子で食事を終えた。1度も彼に怒鳴られなかった。
「食材が増えたらまた作れ」
「………私が、毒を仕込むとは思わないのですか」
「ふむ……それは考えなかったな」
面白いことを聞いたような顔をして、彼は片眉を上げた。その表情はいつもよりずっと、とっつきやすい印象を受けた。人間不信じゃないのかこの人は。
「毒は幼い頃に慣らされている。熱くらいは出るだろうが、死にはしない」
とてつもない幼少期をすごしたことが伺える。私は同情の眼差しを向けないように努めた。彼は酒を開けていた。これから晩酌するようだ。私はお皿を持って、彼の部屋を出た。
久々に料理をしたが楽しかった。結果的にあんなふうに彼に褒めて貰えたし。ああ見えて部下は大切にするほうなのか?いや、絶対そんなことはないだろうな。そうでなければクーデターなんて計画されないだろうし。
キッチンに戻って、お皿を返却する。疲れたからさっさと牢屋に戻ってアルバートさんとゴロゴロしたい。しかし、見張りをしていた海賊たちに取り囲まれる。
「お前、どういうつもりだ」
「どういう?」
どういうつもりとは?作れと言われて作っただけなのになんだ。私は不愉快な気持ちになってその海賊を睨みつけた。
「お頭があんなふうにモノを食いたがるなんて」
その海賊は悔しそうにそう呟いていた。私は彼を呆れた顔でみる。お前らのご飯がまずいからでしょ。要らない絡みをしてこないで欲しい。
そうして、牢屋に戻された。アルバートさんには、甘い香りがすると嗅がれた。こそばゆかった。
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