美形貴族のお坊ちゃん×極悪非道のツン/ヤンデレ海賊の激甘執着ラヴ

ゆっくり

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二章

Side レイ〈4/7〉

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 眠りから目を覚ました瞬間、俺は夢であってくれと願った。その祈りが虚しく、目を開ければ現実の無情さに俺は打ちのめされた。
 俺は牢屋に入れられていた。身体中が痛い。しかも、まだ何か体の中に入れられたままのようだ。あまりの絶望に、呼吸さえも辛く感じる。 そしてまた俺は何度も何度も自分の手首を噛みちぎって自傷行為をしていた。

「因果応報か…」

 あのお綺麗なお坊ちゃんのことを思い出す。貴族という立場から無理やり引き剥がし、何度も何度も暴力を振るった。トラウマになるような仕打ちを繰り返した。狭く暗い、ジメジメとした牢屋に閉じ込めた。まさしく因果応報だ。

「……出番だ」

 低く冷たい声が静かに響いた。俺はそのまま、入れられていた檻ごと連れていかれる。誰だこの男は。どこに連れていく気だ。不安と疑念が心を包み込んでいた。


 そこはステージだった。観客たちが興奮気味に、俺のいる檻を見つめているのが感じられた。観客たちの冷たい笑い声が、俺の心に深く突き刺さる。俺の尊厳は深く傷つけられていた。

 あの日の情景が俺の心に鮮明に蘇る。瞬間的な閃光が、トラウマとして深く刻まれた記憶を呼び覚ました。幼い頃、性奴隷として扱われていたあの時だ。

「……ふざけんな、出せよ出せ、くそ」

「本日は特別に、お客様の中から1名このあと大海賊レイを好きにしてもいい権利を差し上げます!」

 観客たちは興奮に満ちた目を輝かせ、俺の檻を見て興奮気味に話し合っていた。嘲笑や興奮の快感に満たされている。吐き気すら覚えた。
 もう、抱かれたくない。辛いこわい。

「手始めに、ステージ上にて彼がいかに淫乱であるかをお見せしましょう!」

 大きな歓声が耳に響き渡り、俺の身体に震えが走る。歓声の背後には興奮と狂気が混ざり合っていた。こわい。こわい。
 俺は檻から出された。震えて立てない俺を、ピエロは無理やり立たせた。そして観客の方に少し近づき、俺の尻にはいっているそれをぐちゃぐちゃと動かした。

「おえっ……」

 奥がガンガンと突かれる感覚がし、全身が鈍い痺れと痛みに包まれた。痛みは鋭く突き刺さり、額には冷たい汗が滲み出した。そして目の前がぼんやりとした光景に変わっていく。苦痛の中で俺の意識は朦朧とした。気持ち悪い。俺は心から傷つき、悲しみと絶望に打ちひしがれた。もう死んだほうがマシだ。

「……あっ」

 誰かがそう声を出した。そして観客たちは不意に静かになった。俺は彼らがなぜ突然静まり返ったのかを疑問に思い、ぼんやりした思考ながらも周りを見渡した。観客たちは皆、上を向いていた。俺も上を向く。

 誰かが飛んできている。

 舞台の照明がキラキラと輝く中、美しい白い長い髪が優雅になびいていた。その髪はまるで純白の絹のように滑らかで、光の中できらめきながら舞い踊っていた。
 そして、緑色の目
 誰かがハッと息を呑んだ。もしかしたら、俺自身の息遣いかもしれない。

「失礼」

 そして、本当に息を呑むくらい美しいその顔が俺の近くに来た。そしてニヤッと笑った。
 お坊ちゃま。俺が心底痛めつけて、その地位から引き摺り下ろして尊厳を奪って、そして薄暗い牢屋に閉じ込めたひと。最低な衝撃的な光景をわざと見せてトラウマを植え付けさせようとしたひと。
 何故、なぜここに。

「助けに来ましたよ」

 なぜ。なぜ俺を助けに?
 俺は彼に近寄り、その服をぎゅっと握る。彼は俺の状態に気付いて上の服を脱いで俺に着させる。無防備にも上半身裸になったその男は彼は俺を軽く抱きしめ、観客たちの目線から俺を庇った。
 
「またの機会に復讐をあなたに。楽しみにしておいて下さい」

 彼の胸に顔をつけながら、そう告げた彼の言葉を頭の中で反芻させる。またの機会。復讐。
 俺は、ここを出られるのか。生きてここを出られるのか。またの機会を考えても良いのか。俺は一気に安心感が芽生えて、涙が出そうになった。

「走れますか」

「無理だ、腹の中が、腹が……」

 立っているだけでも痛いしつらい。ゴロゴロと腹の中を抉って俺を苦しめる。気持ち悪い。吐きそうだ。
 彼は無言で俺を抱き上げても良いか尋ねた。俺は、頷く。彼は俺を横抱きにした。俺は彼の首もとに顔を埋める。そして、この体にギュッとしがみついた。

「振動痛かったらすみません」

 彼はそう一言俺に声をかけて走り出した。俺は、俺は助かったのか。あの地獄から解放されたのか。
 俺は安堵から、彼の首元で少し泣いた。本当に、本当に死ぬかと思った。
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