美形貴族のお坊ちゃん×極悪非道のツン/ヤンデレ海賊の激甘執着ラヴ

ゆっくり

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二章

外道

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「本日はさらに、特別な仕掛けを用意しております!」

 レイさんを救う良いタイミングが来るまで、私はまた、ステージの様子を観察することとした。
 司会者はステージの回転板を力強く回し、牢屋がゆっくりと後ろ向きになった。ステージ上の照明が明滅し、なにやら盛り上げようとしているようだ。

「ご覧下さい!」

 腕を縛られているレイさんのお尻が丸出しにされているほか、そこにはなにかの棒が突き刺さっていた。今も尚ぐちゃぐちゃと中をかき混ぜている。どう見ても同意性交では無い上に、その様子を観客たちに見られているのだ。
 それを見た観客たちは熱狂した。歓声と拍手が会場に響き渡り、期待と興奮が頂点に達する。会場は一体となって盛り上がっていた。

「…………」

 私は血が頭に登るような感覚を覚えた。レイさんが見世物として扱われている状況と、非人間的な扱い。私は彼に傷つけられたことを忘れた訳では無いが、彼がこのように苦しめられているのは我慢できなかった。

「……ふざけんな、出せよ出せ、くそ」

 微かに聞こえてくるレイさんの声。牢屋の中でレイさんは苦しそうな声を上げていた。その声からは不安と緊張が滲み出ている。

「皆さん、ご存知でしたか。実は彼も幼少の頃ここの性奴隷でした。酷い仕打ちを受けたことを根に持っており、ボスに復讐をしに来たようですが、まんまとまたこのステージに舞い戻ってきたようでですね」

 何となく察してはいたが、やはりレイさんは海賊になる前にここで性奴隷をさせられていたようだ。聞きたくない事実を聞いて、私は苦い思いをした。さっさと彼を助けないと。

「本日は特別に、お客様の中から1名このあと大海賊レイを好きにしてもいい権利を差し上げます!」

 観客たちは再び熱狂した。その姿を見ながら、私は軽蔑の念を抱いた。本当に気持ち悪いし、彼と彼の人生をただの性道具としてしか扱っていないのかと頭が痛くなった。

「手始めに、ステージ上にて彼がいかに淫乱であるかをお見せしましょう!」

 レイさんが牢屋から解放されて、さらに観客の近くでぐちゃぐちゃと見世物にされている。私はできる限りその光景を見ないようにした。何となく、それは見てはいなないものだと思ったからだ。
 牢屋から出たということは、彼を救うには良い機会だ。さっさとステージに降り立って彼を攫って逃げることとしよう。

「さっさとしよう」

 私は高台に立ち、空中ブランコの足をかけるところを手で握りしめた。ブランコは天井に太い鎖で支えられ、風に揺れている。
 私は高台から1歩踏み出した。ブランコは大きく揺れ、身体が風をきって、ゴウっと耳元で音を立てながらすごい速さで移動している。ステージが次第に近づいてくるのを感じる。私は一番ブランコがステージに近づいたタイミングで手を離した。長い白い髪が靡いて、ステージの照明に反射して、眩しくて邪魔だ。宙を舞いながらステージに向かって飛ぶ。
 耳が痛いほどの静寂。そして、着地。

「失礼」

 そうピエロに声をかけて、持っていた警棒で彼のことをぶん殴る。彼は抵抗をしたが、素早い速度で対応し、もう何度か殴ったら彼は意識を失った。
 会場が驚きの声に包まれた。先程まで気持ち悪い熱狂をしていた客たちが冷や水を浴びたような顔をしているのが楽しくて仕方がなかった。

「助けに来ましたよ」

 レイさんは苦しみの表情を浮かべていたが、同時に少し驚いたような顔をした。彼のカタカタと震える手が、私の服の裾をぎゅっと握った。彼は上の服しか着ておらず、下の服は脱がされていた。私は急いで上着を脱いで、彼が着ている服の上からさらに着せた。私の丈でワンピースのように大きかった服でちょうど下まで隠すことが出来た。その代わり私は上半身裸だが。
 私は彼に服を着せながらもざっと会場内を見渡す。

「またの機会にあなたに復讐を。楽しみにしておいて下さい」

 ピエロが落としたマイクを拾って、私はどこかにいるであろう、レイさんが復讐したがっていた人間にそう告げた。
 長々とここに留まる訳にもいかない。私はレイさんに向き直った。彼は真っ白な顔をして、荒い息遣いをしていた。

「走れますか」

「無理だ、腹の中が、腹が……」

 要領を得ない回答だが、彼の状態は理解できた。息遣いや顔色、その声、全身で彼が最悪な気分だということがよくよく分かった。
 私は彼に体に触れてもよいかを目線で尋ねた。彼は少し考えたあと、黙りつつ、小さく頷いた。 私は怪我や性器に触らないように気をつけながら彼を抱き上げた。

「振動痛かったらすみません」

 そう断りを入れて、観客席の方に向かって走りだす。従業員たちは私を止めようと必死になって私を追いかけてきた。その手を逃れつつ蹴りを入れて何とか彼らをかわした。

 やってみれば彼を救うなんて案外簡単な事だった。
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