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一章
不快
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なぜこんなことになったのか。この大勢の大馬鹿者たちは、先ほどお前らのお頭にご飯を作ってやった恩を忘れたのだろうか。
アルバートさんはもはや過呼吸にでもなるのではないかと言うくらいに、ヒッヒッと音を立てて呼吸をしていた。
私はペロンとズボンを脱がされた。日にあたっていない白い尻がその場に露わになる。その瞬間そこらはまた歓声で沸いていた。
「良いけつしてるな」
体を這い回る手の感触は、気持ち悪くて不快で本当に嫌悪させた。頭がぐるぐると回る感覚が私を襲い、思考が混乱した。
無意識に私の手に力がこもり、アルバートさんを強く抱きしめていた。
「お前顔覚えたからな、ほんまに殺すからお前や!お前お前お前!!!」
肩で息をしながら発狂するアルバートさん。そこに凶器があれば真っ先に男を殺しているだろう。それくらいの狂乱振りだった。
一方でそんな様子のアルバートさんを見て、船員たちは非常に楽しげだった。曰くここまでアルバートさんが取り乱すことはまずないと楽しそうにアルバートさんと私を観察していた。
抵抗するにもいかんせん人数が多い。この男たち全員から逃れてアルバートさんと共に船から降りることは到底不可能だと思われた。私は万事休すという気持ちで抵抗をやめた。
「お前ら何をしてる」
そこに金髪の男がやっていた。先ほどとは打って変わって非常に不機嫌そうだ。尻丸出しの私とアルバートさん、そして部下たちを見て、彼の顔には苛立ったような表情が浮かんでいた。
「チッ…男に発情するな気持ちの悪い」
金髪の男は私たちを見下すような目で蔑み、不機嫌な口調で話した。このような行為をしている部下たちを見て、非常に深い軽蔑の目を向けていた。彼はやはり性暴力はあまり好きではないらしい。
「アルバートの野郎をリンチしてたんじゃねえのかよ殺せよバカが!!」
彼は持っていた瓶で、私に覆い被さっていた彼の部下の頭を思い切りに殴った。うめき声と共に瓶の割れる音が大きく響く。
盛り上がっていたその場が一瞬にして静けさに包まれた。船員たちも金髪の男の怒りに冷水を浴びせられたような表情をしていた。中にはガタガタと震える者もおり、その緊張感が一層高まっていた。
「まあいい、次の島で一泊するから女でも買いに行け無能ども。気が狂っても男に手ェ出すなよ気持ちが悪い」
どうやら、彼は男色家を非常に嫌悪しているようだ。不機嫌そうに舌打ちし、その場はお開きとなった。彼はその後、冷たい目線をこちらに向けた。特にアルバートさんを睨みつけているようだ。その眼差しには敵意と嫌悪が滲んでいた。
「てめぇ、こっちの気持ちわかったか。ちったぁ反省しろくそぼけ」
その言葉もアルバートさんに向けているようだ。私には彼が何を言っているのかわからなかった。
アルバートさんは乾いた笑い声を口から漏らした。
「ああ、よくよくわかったで。次はあんたに同じことしたるさかい覚悟しときや」
「……………」
金髪の彼は不快そうな顔をこちらに向けただけで、何も言わずに帰って行った。私たちも、彼の部下に連れられてまたもや地下牢に戻された。
その道中、私はいつものヒゲモジャに話を聞くことにした。彼は金髪の彼に付ききりだったそうで、先ほどのあの宴会にはいなかったようだ。
「この船では薬物が流行っているのです?」
「ああ。お頭は酒にしろって言ってんだけどな。聞かねぇんだよあいつら頭悪いから」
文脈的に金髪の彼が持っていたのは本当にただの酒だったのか。私は、二度と彼らが薬物に手を出して判断能力が劣らないと良いなと思った。
ひげもじゃは私たちの牢屋に鍵をかけた後、そそくさと地下牢を出て行った。
「アルバートさん、怪我大丈夫?」
私はアルバートさんに向き合った。アルバートさんはハッハッと短い息をしており、非常に痛そうだった。私はその怪我の部分に手を当てて撫でた。そこは熱を持っていた。
「ルイスちゃん、うちのせいでごめん。ほんまごめんな」
「アルバートさんのせいじゃないよ。あの人たちちょっとおかしかったもん」
アルバートさんはケガに手を当てた私の手の上から手を重ねてきた。そして熱が出ているのか潤んだ目で私を見てきた。
「…いや、うちのせいや。うちがあいつらに恨み買ってるからこんなことになってんねん」
「でも…」
アルバートさんは私をかき抱いた。じんわりと暖かい怪我を負ったアルバートさんに、私は少し悲しい気持ちになった。なぜ私たちがここまで虐げられなければならないのだろう。
「うち、ルイスちゃん守るって約束したのに」
「約束…?」
私はそんな約束アルバートさんとはしていない。私はアルバートさんの顔を見た。アルバートさんは、目を瞑っていて、おそらく眠っている。先ほどの言動もほとんど気絶寸前で口だけで話していた状態だったと思う。
「……疲れたな」
今日は色々あって疲れた。私は先ほどの言葉は聞かなかったことにして、アルバートさんの怪我に触らないように体勢を整えて眠った。
アルバートさんはもはや過呼吸にでもなるのではないかと言うくらいに、ヒッヒッと音を立てて呼吸をしていた。
私はペロンとズボンを脱がされた。日にあたっていない白い尻がその場に露わになる。その瞬間そこらはまた歓声で沸いていた。
「良いけつしてるな」
体を這い回る手の感触は、気持ち悪くて不快で本当に嫌悪させた。頭がぐるぐると回る感覚が私を襲い、思考が混乱した。
無意識に私の手に力がこもり、アルバートさんを強く抱きしめていた。
「お前顔覚えたからな、ほんまに殺すからお前や!お前お前お前!!!」
肩で息をしながら発狂するアルバートさん。そこに凶器があれば真っ先に男を殺しているだろう。それくらいの狂乱振りだった。
一方でそんな様子のアルバートさんを見て、船員たちは非常に楽しげだった。曰くここまでアルバートさんが取り乱すことはまずないと楽しそうにアルバートさんと私を観察していた。
抵抗するにもいかんせん人数が多い。この男たち全員から逃れてアルバートさんと共に船から降りることは到底不可能だと思われた。私は万事休すという気持ちで抵抗をやめた。
「お前ら何をしてる」
そこに金髪の男がやっていた。先ほどとは打って変わって非常に不機嫌そうだ。尻丸出しの私とアルバートさん、そして部下たちを見て、彼の顔には苛立ったような表情が浮かんでいた。
「チッ…男に発情するな気持ちの悪い」
金髪の男は私たちを見下すような目で蔑み、不機嫌な口調で話した。このような行為をしている部下たちを見て、非常に深い軽蔑の目を向けていた。彼はやはり性暴力はあまり好きではないらしい。
「アルバートの野郎をリンチしてたんじゃねえのかよ殺せよバカが!!」
彼は持っていた瓶で、私に覆い被さっていた彼の部下の頭を思い切りに殴った。うめき声と共に瓶の割れる音が大きく響く。
盛り上がっていたその場が一瞬にして静けさに包まれた。船員たちも金髪の男の怒りに冷水を浴びせられたような表情をしていた。中にはガタガタと震える者もおり、その緊張感が一層高まっていた。
「まあいい、次の島で一泊するから女でも買いに行け無能ども。気が狂っても男に手ェ出すなよ気持ちが悪い」
どうやら、彼は男色家を非常に嫌悪しているようだ。不機嫌そうに舌打ちし、その場はお開きとなった。彼はその後、冷たい目線をこちらに向けた。特にアルバートさんを睨みつけているようだ。その眼差しには敵意と嫌悪が滲んでいた。
「てめぇ、こっちの気持ちわかったか。ちったぁ反省しろくそぼけ」
その言葉もアルバートさんに向けているようだ。私には彼が何を言っているのかわからなかった。
アルバートさんは乾いた笑い声を口から漏らした。
「ああ、よくよくわかったで。次はあんたに同じことしたるさかい覚悟しときや」
「……………」
金髪の彼は不快そうな顔をこちらに向けただけで、何も言わずに帰って行った。私たちも、彼の部下に連れられてまたもや地下牢に戻された。
その道中、私はいつものヒゲモジャに話を聞くことにした。彼は金髪の彼に付ききりだったそうで、先ほどのあの宴会にはいなかったようだ。
「この船では薬物が流行っているのです?」
「ああ。お頭は酒にしろって言ってんだけどな。聞かねぇんだよあいつら頭悪いから」
文脈的に金髪の彼が持っていたのは本当にただの酒だったのか。私は、二度と彼らが薬物に手を出して判断能力が劣らないと良いなと思った。
ひげもじゃは私たちの牢屋に鍵をかけた後、そそくさと地下牢を出て行った。
「アルバートさん、怪我大丈夫?」
私はアルバートさんに向き合った。アルバートさんはハッハッと短い息をしており、非常に痛そうだった。私はその怪我の部分に手を当てて撫でた。そこは熱を持っていた。
「ルイスちゃん、うちのせいでごめん。ほんまごめんな」
「アルバートさんのせいじゃないよ。あの人たちちょっとおかしかったもん」
アルバートさんはケガに手を当てた私の手の上から手を重ねてきた。そして熱が出ているのか潤んだ目で私を見てきた。
「…いや、うちのせいや。うちがあいつらに恨み買ってるからこんなことになってんねん」
「でも…」
アルバートさんは私をかき抱いた。じんわりと暖かい怪我を負ったアルバートさんに、私は少し悲しい気持ちになった。なぜ私たちがここまで虐げられなければならないのだろう。
「うち、ルイスちゃん守るって約束したのに」
「約束…?」
私はそんな約束アルバートさんとはしていない。私はアルバートさんの顔を見た。アルバートさんは、目を瞑っていて、おそらく眠っている。先ほどの言動もほとんど気絶寸前で口だけで話していた状態だったと思う。
「……疲れたな」
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