美形貴族のお坊ちゃん×極悪非道のツン/ヤンデレ海賊の激甘執着ラヴ

ゆっくり

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一章

捕虜

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 そのまま数分の間あたりは静寂に包まれていた。
 しかし、急に騒がしさが船内に広がった。ざわめきや声、足音の音量が急増した。そして、たくさんの人々が階段を降りてくる音が聞こえる。私はアルバートさんと顔を見合わせた。

「何事やろ」

「…うーん」


 
 そしてたくさんの人が一挙に地下牢に入ってきた。多くの男性が含まれていたが、女性も一部いた。彼らは捕虜のような様子で、手をロープで繋がれ、疲れた表情が見受けられた。

(もしかして、強奪した国で攫ってきていたのかな。自分のことに必死で周りを見ていなかった)

「お仲間が増えて良かったな坊ちゃん」

「………」

 けむくじゃらの船員が意地悪そうな顔で私に話しかけてきた。彼の目には嫌らしい光が宿り、その言葉には嫌味が込められていた。
 どうやら本当に彼らは捕虜のようだ。私は彼らの未来を憐れんだ。

 船員たちはとりあえず片っ端から捕虜を牢屋に閉じ込めていくが、ある時点で牢屋に二人が入らないことに気づいた。

「お頭ここに入れとけって言ってたけど、牢屋の数足りなくね?」
 
 混乱の中、牢屋の収容限度に限界があることが明らかになった。その場が一層騒がしくなった。私は関心がないため、静かにその船員の様子を見守る。
 そして、けむくじゃらの船員が私の牢屋の鍵を開けるために近づいてきた。

「お坊ちゃんお前こっち来い」

 ぐっと体を引っ張られ、よろけながら牢屋に入れられた。入れられたのはアルバートさんの牢屋だった。私は何となく少し気まずかった。一方彼はニヤニヤしながらこちらを見ていた。

「いいか、大人しくしておけよ」

 多くの捕虜の中にいながらも、船員は私を睨んで去っていった。最後にお小言を言われ、私は少し不機嫌になった。

「ルイスちゃーん」

「わ…」

 アルバートさんは私に手を伸ばし、私を抱きかかえた。その手はさわさわと私の身体のさまざまなところを触れ、私の肌に触れる感触が身体中に響いた。
 先ほどのこともあり、なんで言えば良いかわからず、私はなんとなく黙って彼の目をじっと見つめた。

「…さっきのことまだしょげてんの?可愛い子やね」

「…」

 座った状態でアルバートさんに後ろから抱きしめられる。私はこの狭い空間で抵抗しても仕方がないなと悟ってそのまま自由にさせておくことにした。幸い、アルバートさんの機嫌は良くなったようだし。

「……あなたたちは」

 隣の牢屋に入っている男が静かに話しかけてきた。しかし、その人の目には生気がない。彼の言葉は何気ないものだったが、その口調や表情からは不安感があった。
 
「……うちは海賊や。ここの奴らと敵対してた」

「そうでしたか」

「あんたらはなんで連れてこられたんや」

 捕虜の男の生気のない、しかしぎょろっとした目がこちらをのぞいた。彼の目には生きる気力を求めるような渇望がもはや感じられなかった。

「あの人は、私たちを憎んでいた」

「あーうちと一緒やな。うちも恨みかっててん」

 彼はアルバートさんに対して納得した様子で頷いた。そしてぎょろっと私を見つめた。その視線にはどこか必死さを感じ、私は少しゾッとした。

「あなたは?」

「……えと、私は間違えて連れてこられて…役に立たないから殺されそうに…」

「そうですか」

 それから再び静寂が周囲を包み込んでいた。彼以外の捕虜たちは一言も発しないまま、無言のままでいた。
 捕虜の彼は異国の言葉を使い、同国の捕虜たちに何かを語りかけているようだった。
 緊張した雰囲気が流れたため、背後から抱きしめてくるアルバートさんをじっと見た。

「………」

 彼は疲れた表情を浮かべていたが、私が見ていることに気づくと、ニコッと微笑んだ。そして彼は私の頭を優しく撫で、さらに自分にもたれかかるように促した。

「…ルイスちゃん、疲れたやろおねんねしよし」

 その触れられる手は安心感をもたらし、私は彼にすりよりながら目を瞑った。
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