美形貴族のお坊ちゃん×極悪非道のツン/ヤンデレ海賊の激甘執着ラヴ

ゆっくり

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三章

売っぱらう

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 先ほどアルバートさんがなにやらレイに問いかけた時から、レイの様子がおかしい気がする。元々この島に来た時から黙っていたが、アルバートさんとの意地悪な会話以降顔がさらに青白い。傷でも痛むのか、アルバートさんとの共通の記憶に何か嫌なことでもあったのか。

「アルバートさん、ちょっとそこで待ってて」

「なに?トイレでも行くの?うちも一緒に行きたい、見せてや」

 何やら気持ち悪いことを言っているが相手にせずにレイを引っ張って連れて行く。どう考えても正気ではないその様子。通りを少し逸れて狭い道に入り込んで立ち止まる。レイは俯いていた。

「大丈夫ですか?さっきから、体調が悪そうですけど」

「………うるさい、さっさと連れて行け」

 その青白い頬に手を添えようとしたが、力無く背けられてしまった。私はその動作を見ても、何だか辛そうに見えて眉を顰めてしまう。
 この人が半分血のつながった、しかも自分と同じような体験をしたと知れば、なぜか構いたくなる何か感情が芽生える。そんな私の気持ちを理解していたのだろか、彼は少しよろけた私を弱く叩いた。

「同情するな。俺はそこまで落ちぶれていない」

 そう言って睨みつけられて、これ以上の心配は彼の矜持を傷つけるだけだと理解しつつも、あの夜見せた泣き顔や震えた声を思い出して、私は心配になった。
 私は黙ってまた彼の手を引いた。



 アルバートさんと合流したが、アルバートさんは何やらニヤけ面でまたレイのことを見ていた。私は、何となく嫌な感じがしたのでレイを自分の後ろに庇って、アルバートさんに話しかける。その様子を気がついているのかいないのか、アルバートさんは私を見てニコッと笑った。

「おかえり、じゃあ行こか」

「うん、とりあえず寝床を探してほしい」



 アルバートさんにそのまま着いていけば、スラム街のようなところに着いた。その辺に人が寝転がっていたり、ゴミが散乱していたりして、何ともいえない汚さだった。昨日来た、裏路地よりもはるかに治安の悪いそこは、私は正直耐えられそうにない衛生環境だった。
 そのスラム街をどんどんと進み、一つの宿のようなところに着いた。スラム街にもこのような場所があるのかと思って見ていれば、レイが一瞬ぐ、っと手を引っ張るような動作をした。

「どうかした?」

 静かにそう問いかけても、レイは特に何も言わなかった。ただ、少し青白い顔でその建物を見ている。私は何となく嫌な予感がしたがそのままにアルバートさんに問いかけた。

「ここは?」

「ん?まぁ紳士淑女の溜まり場っちゅうもんやな。ほぼただで泊まらせてもらえるお宿やで」

 紳士淑女の溜まり場?よくわからないが、とりあえずほぼただということは、少額とはいえ金がいることが判明した。私はアルバートさんに向き合い、隠し持っていたレイの部屋から盗んできた宝の事について話す。

「これ、レイの部屋から盗んできたんだ。これを売ってお金にしたいんだけど」

 袋を開けて、アルバートさんに中にある金銀財宝を見せる。キラキラと輝くそのものは、レイが頑張って集めたものだろう。
 私はチラリとレイの方を見たが、彼は別にお宝に未練はなさそうだった。

「盗んでたんかナイスやで!でも、それは来る最中の時に言わな。換金所は通り過ぎたし、もう一回戻らなあかんで」

 タイミングを大間違いしてしまったようだ。疲れているのに二人を連れ回してしまったことは申し訳ないが、ついてきてほしいと思った。

「疲れてるのにごめんねアルバートさん、もう一回案内してもらってもいいかな?」

「気にせんでええで、ルイスちゃん」

 アルバートさんはヘラッと笑って、道を引き返した。私もレイの手を繋いでその後をつける。

「疲れてる?ごめんね」

 レイにそう告げると、レイは何か言いたそうに口を開いたが結局なにもいうことはなく口を閉じた。言葉が出てこないのだろうか。代わりに彼は、繋いだ手をぎゅっと握った。
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