美形貴族のお坊ちゃん×極悪非道のツン/ヤンデレ海賊の激甘執着ラヴ

ゆっくり

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三章

衝撃の事実

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 彼は感情の乗らない固い声で肯定した。そして私の服をギュッと掴んだ。彼が不安な時にやる動作だと最近知った。

「………父親…」

 ベンジャミン・ホワイト、それは私の実の父親であり、同時に私にとっては敵国の人間でもある。彼は、かつて祖国と戦争をしていた国の出身で、母親は当時、貴族の箱入り娘だった。彼はその母をそそのかし、一夜の関係を結んだ。その結果、私が生まれた。
 そして今、レイさんの父親がベンジャミン・ホワイトであるという事実を知った。つまり、レイさんと私は母親が違う兄妹だということになる。
 そうなると、レイさんも本来は貴族の血を引く存在なのだろうか?私はレイさんに話を続けるように促した。

「俺の名前はレイモンド・フィリップス。王位継承第一位ギルバードの弟で、王妃アンジェリカがベンジャミン・ホワイトと一晩の過ちを犯してできた子供、それが俺だ」

 私は驚き、息を呑んだ。つまり彼は、第二殿下ということか。なんという地位の高い人間だ。確かにその話し方やアクセントに若干の気品を感じてはいたが、まさかそんな家系の人だとは思いもしなかった。

「そんな俺が気に食わない、現国王ウィリアム・フィリップスは幼い俺を地下牢に監禁し、生きることも死ぬ事も出来ない環境に置いて様々な拷問を行った」

 なんという境遇の酷似。私の幼少期から現在に至るまで、お父様から受けた扱いにひどく似ている。
 そして、一つ思い出したことがある。あの日彼の目とその瞳を見た時に感じたその強い違和感。彼の目の形はギルバート殿下にそっくりだ。敵国の色だと言われた緑色の瞳でギルバート殿下にそっくりな目つきというのが、強烈な違和感だった。

「ああ…あなたの綺麗な金髪は…そうでしたか」

 私は彼の毛先に触れた。
 まるで太陽の光をそのまま束ねたかのようにキラキラと輝く。柔らかい髪。それは、あの国では王族の象徴でもあった。

「ベンジャミン・ホワイト、その名を知っているあたり、あの醜悪なギルバートが何かお前に告げ口をしたのか?」

 彼の目は疑念に満ちた光を宿していた。その眼差しは鋭く、私の表情を注意深く見つめていた。
 唐突にベンジャミン・ホワイトの名を出すのは悪手だったか。

「……違う、殿下とはほとんど喋ったことはありません」

 醜悪なギルバート。昨日、レイさんがトラウマを思い出して苦しんでいる時にもギルバート殿下の名前が出ていた。その一方で妹であるドロシーからは、ギルバート殿下は優しくて良い方だと聞いていた。そのイメージの相違はなんだろうか。

「さあ、いきましょう」

 私はロープを切り終わり、彼に手を貸して引き上げた。彼はそんな私を静かに見つめていた。

「なぜ、俺を助けた。俺になにをされたか忘れたか」

 それは、サーカスから彼を助けた時にもされた問いかけだった。彼は、人間不信なのだろうか。彼の目には警戒心が宿り、他人を信じることへの疑念がにじみ出ていた。

「俺を、あの国に連れて行く気か。お前は海賊殺しの貴族、俺は指名手配の海賊だ」

 そして話していてわかるが、彼は私が貴族としての義務を果たそうとしていると勘違いしている。おそらく王族の情報について口を割る割らないの問答があったからだとは思うが。
 私と彼との間にこんなにも大きな立場の差があることを再認識させられて、少し辛かった。

「違います。私は、あなたに危害は与えません」

 一方私は、なぜ彼を助けたいかというと、異母であっても兄妹だからだ。彼と私は同じ瞳を持つもの。あの国で、疎まれ虐げられてきた同じルーツを持つものだ。私は生まれて初めて親近感というものを持った。そして、暴力も振るわれたが、大嫌いなあの国から私を救い出してくれたのも彼だった。海賊たちに犯されそうになった時にも助けてくれた。

「レイモンド様、私は」

「チッ!その名前で呼ぶな、様付けもするな!」

 どうやら自分の名前が嫌いらしい。私は彼のことをレイと呼ぶことにした。
 私は彼に向き直る。早くしないと船が沈む。それでも、いつ死ぬかわからないこの世で私は彼に言いたいことがあった。そう、私たちは兄妹だということだ。

「レイ、実は私もベンジャミン・」

「ルルルルル、ルイスちゃん!??なにやってんの、え!!!待ってその人連れてきたアカンて、ここで殺さなあかんて!!」

 ベンジャミン・ホワイトの息子だと告げようとして、アルバートさんの大声に遮られた。はっとして、私はアルバートさんの方を向く。
 そうだな、ここでこんな悠長に話している場合ではない。私たちも早く避難するべきだ。

「いいから、早く行こう、アルバートさん」

「いやはよ行こはこっちのセリフやねんけど??ルイスちゃんやばいって」

 レイが繋いだ手をギュッと握る。彼はやはりアルバートさんのことが怖いようだ。可哀想に。あれだけ性的なことに怯えていたから、強姦魔と対峙するのは怖いのだろう。

「後で訳は話すから。とりあえず今は行こう」

 大慌てのアルバートさんとも手を繋いで引っ張る。しぶしぶアルバートさんは階段を上がっていく。アルバートさんは呆れたような声を出した。

「あんた、まじで可愛い顔してなかったらぶん殴ってるところやでほんま」

「ごめんね」

「……かわいいなぁ、もうしゃーないからさっさと行こか。あ、レイちゃんはうちの隣こんといてな。うちのこと殺す気やろ」

「…………」

 やはり相当レイから恨みをかっているようだ。かくして、この奇妙な3人での生活が始まったのであった。
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