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一章
上陸
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「おい」
彼との会話がどんよりとした空気に包まれ、お互いに黙り込んでいた。その時また、あの汚らしい毛むくじゃらの男が私の檻の近くまで近づいてきて話しかけてきた。彼を見た途端に吐き気を覚えるほどの嫌悪感が湧き上がる。どうしてこんなに汚らしい人間がいるのか理解できない。
「お頭がお呼びだ」
「また?もう話すことなんて何もないんですけど。もしかして私とお喋りしたくて呼んでるのかな」
「やめろ!そんな口聞いたら殺されるぞ!とにかく来い。良いな、絶対に生意気な態度をとるなよ」
彼はブルブルと震え、唾を飛ばしながら一生懸命に語りかけてきた。その言葉は急かすように激しいリズムで続いていて、狂ったかのように見えた。それほどまでにあの金髪の彼は怖いのだろうなと思った。
しかし我ながら最低だが、それほどまでに熱心に忠告してくれても汚いなこいつとしか思えなかった。いけないいけない、ちゃんと忠告を聞かないと。
「ルイスちゃん、うちちさっき教えてくれたこと全部話し。多分、わかってくれはるで」
檻から出されて、後ろを振り返ったらそこには檻に入れられた美しい男がいた。彼の髪は淡いサンゴ礁のような色合いだった。海の上にいるのに日焼けを知らない、色白のその肌は陶器のように美しい。その大きな瞳は澄んでおり、深海のような青色だった。この薄汚い牢屋の中にいることが信じられないほど、彼は美しかった。
「私のことを綺麗だ言うが、あなたもとびきりの美人だ。貴族でも貴方ほどに美しい人は見たことがない」
「まっ!………あんた、こんな状況でなに呑気なこと言ってんの!ほんま、なんやろ、、」
なぜか彼は慌て始めた。その様子を見て私は首を傾げる。何か変なことを言っただろうか。
すると、毛むくじゃらの男が怒ったように口を開き、荒々しく話し始めた。その声は不快な響きを持ち、言葉の中に怒りと威嚇が感じられる。不潔なものの威嚇なんて、不快でとにかく視界が汚くて見ていられない。
「その神遊楽の男には全部話したのか!!バカな真似をするな!さっさとお頭の前でも話せ」
また勘違いされている。金髪の彼に故郷について知らないと言ったことと、その理由を話しただけなのに、私が王族などの情報を話したとこの男は勘違いしたようだ。
毛むくじゃらの男は怒りに満ちた表情で私の腕を掴み、引きずった。彼の手は汚れていて、その触れる感触が不快だった。ベタベタしていて本当に汚い。
私は再びその偉そうな金髪の人の前に連れてこられた。
私が居なくなった後、彼は怒り狂っていたようだ。先程はそこまで汚くなかった部屋の中が荒れ放題となっていた。机の上には散らかった紙類やばらばらになった財宝があちこちに広がっていた。壊れた壷や銀の食器が床に散らばり、その上に書類が踏み潰された跡が残っていた。
彼は冷酷で私を睨みつけ、不遜な笑みを浮かべた。
「これからどこに行くかわかるか?」
「さぁ。さっぱり」
その金髪の人をじっと見ると、案外若いことがわかった。もしかしたら、私と少ししか年齢が離れていないのかもしれない。彼の輪郭には少しの幼さが残っていた。
「奴隷市場だ。さっさとついて来い」
私はその言葉に喜びを感じた。船の中に閉じ込められるよりも、奴隷として売られる方が逃げるチャンスがある。これは好機だ!
船が揺れなくなったことに気づいたが、どうやら既に港に着いているようだ。
「お前、こいつの腕を縛って鎖持っとけ」
私は後ろ手に手を縛られ、そして縛った上から押さえつけられる。船長の彼は、私の前を歩いた。さらに階段を登ると、そこは甲板だった。
そこには見たことのない景色が広がっていた。日差しはありえないほど眩しく、私の顔を照りつけて目を焼くようだった。眼を細めて周囲を見渡すと、目の前には大小様々な船が停泊していて、活気溢れる港が広がっている。陸の上には賑やかな市場。物売りたちが色とりどりの商品を積み重ねた野晒しの店を営んでいた。繁華な市場の中を歩く人々は、異国の装いを身に纏い、言葉を交わす様子もさまざまだった。色とりどりの布地や鮮やかな宝石が並ぶ店舗には、興味津々な人々が集まっている。
「きれい…なにこれ」
乗っていた船は、明らかに海賊船であることが一目瞭然だった。大帆には髑髏のマークが描かれ、その船の姿は大きくて迫力がある。それは映画で見るような海賊船そのものだった。
私の前世の朧げな記憶が蘇る。「この世界ではこんな凶暴な海賊船に乗っているのか」と少し不思議な気持ちになった。前世の海賊船は、漁師に偽装したようなしょぼい船が一般的だったから。
海賊船の甲板では、頭巾をかぶった海賊たちが忙しく動き回っている。船首には鋭い刃を持つ大砲が配置されており、見た目にも威圧的だった。海賊船の船体には、戦いの痕跡が刻まれ、壮絶な航海を重ねてきたことがうかがえる。
「何キョロキョロしてんだてめぇ自分の立場がわかってんのか?」
モジャモジャで汚れた男が私に向かって怒りをぶつけてきた。日の当たるところで見ると、船内で見た以上に穢らわしい見た目をしていた。彼の髪は乱れ、衣服も汚れていて、野性的な雰囲気を醸し出していた。その厳しい目つきと荒々しい態度に、私はムッとして睨み返す。
彼との会話がどんよりとした空気に包まれ、お互いに黙り込んでいた。その時また、あの汚らしい毛むくじゃらの男が私の檻の近くまで近づいてきて話しかけてきた。彼を見た途端に吐き気を覚えるほどの嫌悪感が湧き上がる。どうしてこんなに汚らしい人間がいるのか理解できない。
「お頭がお呼びだ」
「また?もう話すことなんて何もないんですけど。もしかして私とお喋りしたくて呼んでるのかな」
「やめろ!そんな口聞いたら殺されるぞ!とにかく来い。良いな、絶対に生意気な態度をとるなよ」
彼はブルブルと震え、唾を飛ばしながら一生懸命に語りかけてきた。その言葉は急かすように激しいリズムで続いていて、狂ったかのように見えた。それほどまでにあの金髪の彼は怖いのだろうなと思った。
しかし我ながら最低だが、それほどまでに熱心に忠告してくれても汚いなこいつとしか思えなかった。いけないいけない、ちゃんと忠告を聞かないと。
「ルイスちゃん、うちちさっき教えてくれたこと全部話し。多分、わかってくれはるで」
檻から出されて、後ろを振り返ったらそこには檻に入れられた美しい男がいた。彼の髪は淡いサンゴ礁のような色合いだった。海の上にいるのに日焼けを知らない、色白のその肌は陶器のように美しい。その大きな瞳は澄んでおり、深海のような青色だった。この薄汚い牢屋の中にいることが信じられないほど、彼は美しかった。
「私のことを綺麗だ言うが、あなたもとびきりの美人だ。貴族でも貴方ほどに美しい人は見たことがない」
「まっ!………あんた、こんな状況でなに呑気なこと言ってんの!ほんま、なんやろ、、」
なぜか彼は慌て始めた。その様子を見て私は首を傾げる。何か変なことを言っただろうか。
すると、毛むくじゃらの男が怒ったように口を開き、荒々しく話し始めた。その声は不快な響きを持ち、言葉の中に怒りと威嚇が感じられる。不潔なものの威嚇なんて、不快でとにかく視界が汚くて見ていられない。
「その神遊楽の男には全部話したのか!!バカな真似をするな!さっさとお頭の前でも話せ」
また勘違いされている。金髪の彼に故郷について知らないと言ったことと、その理由を話しただけなのに、私が王族などの情報を話したとこの男は勘違いしたようだ。
毛むくじゃらの男は怒りに満ちた表情で私の腕を掴み、引きずった。彼の手は汚れていて、その触れる感触が不快だった。ベタベタしていて本当に汚い。
私は再びその偉そうな金髪の人の前に連れてこられた。
私が居なくなった後、彼は怒り狂っていたようだ。先程はそこまで汚くなかった部屋の中が荒れ放題となっていた。机の上には散らかった紙類やばらばらになった財宝があちこちに広がっていた。壊れた壷や銀の食器が床に散らばり、その上に書類が踏み潰された跡が残っていた。
彼は冷酷で私を睨みつけ、不遜な笑みを浮かべた。
「これからどこに行くかわかるか?」
「さぁ。さっぱり」
その金髪の人をじっと見ると、案外若いことがわかった。もしかしたら、私と少ししか年齢が離れていないのかもしれない。彼の輪郭には少しの幼さが残っていた。
「奴隷市場だ。さっさとついて来い」
私はその言葉に喜びを感じた。船の中に閉じ込められるよりも、奴隷として売られる方が逃げるチャンスがある。これは好機だ!
船が揺れなくなったことに気づいたが、どうやら既に港に着いているようだ。
「お前、こいつの腕を縛って鎖持っとけ」
私は後ろ手に手を縛られ、そして縛った上から押さえつけられる。船長の彼は、私の前を歩いた。さらに階段を登ると、そこは甲板だった。
そこには見たことのない景色が広がっていた。日差しはありえないほど眩しく、私の顔を照りつけて目を焼くようだった。眼を細めて周囲を見渡すと、目の前には大小様々な船が停泊していて、活気溢れる港が広がっている。陸の上には賑やかな市場。物売りたちが色とりどりの商品を積み重ねた野晒しの店を営んでいた。繁華な市場の中を歩く人々は、異国の装いを身に纏い、言葉を交わす様子もさまざまだった。色とりどりの布地や鮮やかな宝石が並ぶ店舗には、興味津々な人々が集まっている。
「きれい…なにこれ」
乗っていた船は、明らかに海賊船であることが一目瞭然だった。大帆には髑髏のマークが描かれ、その船の姿は大きくて迫力がある。それは映画で見るような海賊船そのものだった。
私の前世の朧げな記憶が蘇る。「この世界ではこんな凶暴な海賊船に乗っているのか」と少し不思議な気持ちになった。前世の海賊船は、漁師に偽装したようなしょぼい船が一般的だったから。
海賊船の甲板では、頭巾をかぶった海賊たちが忙しく動き回っている。船首には鋭い刃を持つ大砲が配置されており、見た目にも威圧的だった。海賊船の船体には、戦いの痕跡が刻まれ、壮絶な航海を重ねてきたことがうかがえる。
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モジャモジャで汚れた男が私に向かって怒りをぶつけてきた。日の当たるところで見ると、船内で見た以上に穢らわしい見た目をしていた。彼の髪は乱れ、衣服も汚れていて、野性的な雰囲気を醸し出していた。その厳しい目つきと荒々しい態度に、私はムッとして睨み返す。
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