一目惚れ

詩織

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坂江俊夫さかえとしおです」

「はじめまして、大成梨衣菜です。」

あー!緊張MAX

所長さんのオススメでお見合いをセッティングしてもらったが、やっぱりなー

「緊張されてますか?」

笑顔で言われ

「あっ、はい!」

真面目そうな、でも優しそうな感じの人だ。

銀行勤務の方で35歳。

「老人ホームの施設に勤務と伺いました。介護士のお仕事は肉体労働ですよね」

「…そうですね、健康でないと続けるのはきびしいですね。」

陸斗とのあの出来事から2ヶ月、所長さんにお見合いを勧められて乗り気ではなかったんだけど、周りの押し切られ攻撃で結局最後は断れず現在に至る。

同僚の

「誰かが近くに居てもらった方が楽よ」

「チャンスなんだから、絶対お見合いしなさい!」

などなどっと、押しまくられた。


あー、私この人と結婚したら、仕事辞めることになるのかな?

長男とか言ってしたし、同居希望とか?

色々考え始めてきた。

「梨衣菜さんは、お休みの日はなにかされてることありますか?」

休みの日か…

特にはなー、はまずいか

「ネットなどで調べて美味しい洋菓子屋さんに行ったりとか密かな楽しみで…、すません、地味で」

「いえ、全然ですよ!いいじゃないですか」

そういうと、坂江さんは世界遺産巡りが好きで連休の休みがとれると海外でもアチコチ行くと言う。

なんつーか、すけーるが…



「すいません!失礼します!!」

!?

私も坂江さんもビックリして止まってしまった。

「お話中失礼します。私堀内陸斗と申します」

頭を深々と下げ入ってきた。

状況が読み込めず、呆然としてる。

「本日の縁談の件ですが、見送って頂けないでしょうか?」

陸斗は坂江さんに向かって再び深々と頭を下げながら言った。

どういうこと?

何が起こってるの?

「貴方は梨衣菜さんのなんですか?」


「あ…、」

少し言葉がつまり

「恋人です!…元…恋人です」


元…か

そうだよね

「その、元の恋人の方がなんでここにいらっしゃるのですか?」

「…自分勝手の我儘で傷つけてしまった。そしてそのまま放置してなかったことにしてました。今更ですが彼女の大きな存在に気が付きました。」

!?

「居なくなってから、大きな存在だったなんてよくあることです」

「見送って頂けないでしょうか?」

「それは、梨衣菜さんが決めることです」

!!

陸斗が私をチラッとみる。

「あ、あ…」

こんなこと急に…

「梨衣菜さんは、どうしたいてますか?」

「あ、あの…」

どうしたいって…、そんな…

フッと笑顔に坂江さんはなって

「顔に答えが書いてありますね」

「えっ?」

そういうと、陸斗に向かって軽く頷いた。

陸斗がそれをみて頭をさげて

「えっ?えっ?えっ!?」

腕を引っ張って

「ちょっ、ちょっ!!」

私は陸斗に引っ張られて、その場を離れた。

ずっと、引っ張ってる陸斗。

何も言わない。

「乗って」

久々に見る陸斗の車

「あ、あの…」

「いいから、乗って!!」

強く言う陸斗に何も言えず車に乗った。


しばらく車は走り、何も話してはいない。

陸斗が私のこと大事なようなこと言ってたけど本当なんだろうか?

だって、あれから3ヶ月以上たってない?

それに私達って付き合ったの3ヶ月もないし、とっくにもうあの女性と一緒にいるものだと…

「…何から話していいか…」

車が公園の前に止まって突然話しだした。

「あ、あの…」

「なに?」

「私はもう忘れられたのかと」

というと

「…ごめん」

少しの間があって


「付き合いたいとも思ったし、一緒にいたいたも思った。けど…」

少し言葉を詰まらせて

「あのとき、追いかけはしたが見つからなかったのでそれまででいっかと思ってしまった」

「…」

素直な気持ちなんだろうな。

それまでの程度だったということがよくわかる。

「あ、うん。そっか」

「…梨衣菜と会わなくなってから、梨衣菜のことばかり考えてた」



「俺、昔大好きだった人がいたんだ。結婚するつもりでいてし、相手も同じ気持ちだった。けど…」

寂しそうな目をして

「昨日まで全く変わらずだったのに、翌日自ら命をたったんだ」

「!?」

「未だに理由もわからないし、色々聞きまくったけど、結局…」

「…陸斗」

陸斗の知らない過去に言葉が詰まってしまった。

「俺は別に恋愛が嫌になったわけじゃないが…、そこまで執着できなくなった」

「そっか、話してくれてありがとう」

それでも短い期間陸斗に愛されてたから…、うん。

「梨衣菜」

そう言って私の顔をみて

「執着はなかったんだけど、でも梨衣菜のことばかり考えてて、ごめん、勝手なのはわかってる」

今までこんな話したことなかっまから、びっくりしてて

「でも、陸斗には恋人がいるよね?」

「恋人?…あっ、彼女は同期の人だよ!同期の間ではみんな名前で呼び合ってるんだ。それに彼女のことをいいって言ったと聞いて、勝手に勘違いをしてな」

「そうなんだ」

「彼女とはそんなつもりもないし、ハッキリ勘違いだと思うって言ったよ」

「陸斗あの…」

「なに?」

「…わ、私とはどうしたいの?ごめん、よく解らない」

「あ…」

一瞬ハッとなる陸斗

だってお見合いてしてところにきて、途中で終わるような形になって、陸斗は私と何がしたいのか…、こんな感じで連れてくるってことは、よくドラマとかアニメとかである、本当に好きあってる人同士が…とかそういう感じ?には見えないし

「梨衣菜、俺と付き合ってくれませんか?」

「…えっ?」

な、なに?

「今の俺は、梨衣菜のことが好き」

!?

始めて好きとか言われた。

でも、今って?

何か違和感がある。

それは、前の彼女のことがあったから…?

「あ、あの、陸斗。前付き合ってたときは…好きではなかった?」

「…いや、嫌いではなかったよ」

なんか、うまくかわされた言い方な気が…

「どっかで、好きになることをセーブしてたのかもしれない。自分勝手でごめん」

「じゃ、なんで付き合おうとしたの?」

「俺をみて顔を赤らめて、一生懸命で、嬉しそうな顔をしてる梨衣菜みたら、一緒にいたいなって素直に思ったんだ。好きだったとは思うけど、どっかでセーブしてたのはあったから…、今は梨衣菜を離したくない!」

前の時はなんだったんだろう…て思うけど、でも陸斗の素直な気持ちなんだよね?

「縁談ぶっ壊したんだから、それなりの責任も考えてるから」

「えっ!?」

それなりの責任!?

それってまさか…

「梨衣菜」

そう言って私の手を触って

「梨衣菜となら、結婚でもなんでも考えられるから、だからずっと側にいてほしい」

これって、プロポーズなのかな?

でも…

「私は…、陸斗好きだよ!でも陸斗は本当に私のこと好きか疑問もあって…、勿論好意はあったから付き合ってはくれたんだろうけど、でも…」

「そうか…、じゃこれからの俺で判断して?お試し期間でもいいから俺と一緒にいて」

陸斗の真剣な顔をみて

「う、うん。わかった」

こうして陸斗とまた付き合うことになった。


翌日、所長さんからはお相手からお断りされたことを伝えられた。

「いい話だと思ったんだけどねー」

「す、すいません」

理由は聞いてないようだった。

飯野さんに、体調を聞こうことしたら

「私は孫の恋愛に色々言うなんてことしたくないんだけどね」

と言って私の顔をみると

「陸斗、よろしくね」

「!?」

「陸斗から真剣に貴方と向き合うからって言われたわよ!驚いたわ!今までそんなこと言ったことなかったら…、でも私からしたら大成さんは大事な人、家族みたいな特別な存在だから、だから私にも言ったんだと思うのよ」

「飯野さん…」

「色々あったようだけど、よろしくね」

まさか、飯野さんにそんなこと言ってるなんて… 


その後、陸斗は前と変わらずの付き合いになってるけど

「梨衣菜」

陸斗のその愛しそうな顔を見ると、言葉が失う。

前よりも大事そうにみてる陸斗。

そして

「俺の恋人の梨衣菜」

友達に紹介したり

「大成さん、いらっしゃい」

陸斗の自宅に招かれたり

前とは違う行動も出てきた。

「愛されてるねー」

「えっ!?」

陸斗のお店にで待ってると、従業員の人に言われた。

以前恋人ですって紹介された人で、確か先輩のはやしさんかな

「あいつ、なんか変わったよ!いい意味で。あなたのお陰かもね」

私の?

私はまだ半信半疑でいて、店で待っててというから来てるけど、でもそれもなんか恥ずかしくって

「おまたせ!」

仕事を終って私のところに来てくれた。

「じゃ、いこっか!」

仕事の仲間がみてるのに全然気にしない様子。

元々隠すつもりはなかったんだろうけど、凄いオープンになってビックリしてる。

そして

「梨衣菜」

陸斗から求めるのが凄い情熱的というか

「陸斗…」

「ごめん、止められない」

陸斗の気持ち、行動が前よりも解りやすくなってる気がして愛されてると実感するようになっていた。

その行動に少しばかり戸惑ってはいるけど、今の陸斗のありのままの気持ちなんだなっと思うようになっていた。



そして、

「梨衣菜、結婚しよう」

という陸斗のプロポーズに

私は涙が止まらずにいた。

だってここ、周りが何もなく小高い丘で、そして満点の星空!

急に旅行しようとか言い出すからどこ行くのかと思ったら、こんな最高な場所に…

目の前には指輪があって、そして笑顔の陸斗。

「返事は?」

「えっ?」

「へんじ!!」

「あっ…」

返事を聞く前に薬指にダイヤの指輪が嵌められて

「よ、宜しくお願いします」

というと

「俺、マジで溺愛しまくるから」

と、宣戦布告するような言い方に笑ってしまった。

私の一目惚れはこうして実った。
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