一目惚れ

詩織

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あれ?おかしい

エンジンがかからない。

最近多いな。やっぱり交換が必要かな?

車通勤している私、大成莉衣菜おおなりりいな、介護士として働いて7年。年齢は33歳。

かなりの重労働の日々にプライベートでは疎かになりがち。

恋人がいたのは既に5年前。

介護施設まで車通勤してるんだけど、ここ数日なんどエンジンかけてもかからない。

「あっ、やっとかかった」

6回目でやっとエンジンがかかった。

明日休みだしカー用品店に行ってみるか。



「あー、バッテリー交換して方がいいですね」

あー、やっぱり。

翌日カー用品店に行って見てもらって言われた。

バッテリーとオイル交換をお願いし、私は2階のカー用品を時間になるまで見ていた。

品揃えが多くって、何かっていいかわからない!

芳香剤と汚れないようにするマットを購入し、1階の待合室に移動した。

あー、今作業中か。

数台車があってその一台が私の車で一人の担当者の方がやっているのが見えた。

えっ!?

凄いなに!?ドキッとした。

一瞬顔をあげたのをみて、体中が熱くなった。

私より若いだろう男性。

背は高く、がっちりした体型、作業着を着て帽子も被っているので、顔立ち全部は見えないけど体中が熱くなってドキドキが止まらない。

彼のことが目を離すことができない。

これってまさか…、一目惚れとか!?

マジかぁー、この歳で?

ど、どうしよう…

「大成様」

あっ!?

名前を呼ばれてハッとする。

「作業が終わりましたので」

呼ばれて行くと

「あっ」

あの作業してた男性だ

「本日は、バッテリーの交換とオイル交換を致しました。詳細はこちらに書いておりまして…」

いやもう、ドキドキする。

てか、声も好き。目は透き通っているキレイな目でブラウン系の瞳、鼻は高い。ハーフなのかな?あー、もうこの歳でこんな…

「…大成様?」

!?

「えっ、あ、はい!すいません」

ちゃんと説明してくれてるのに上の空だった。

恥ずかしい…

「以上の工程で作業を終えましたが、何か質問等ございますか?」

「いえ、あの、あ、有り難うございます」

やばい!マジで焦ってる。

クスッてわらわれて

「何がありましたら、遠慮なくご連絡ください」

「あ…は、はい」

名刺をくれたが、まぁそれは営業的なやつだよな。

解ってても、彼の笑顔が見れただけで満足した。

名前は堀内陸斗ほりうちりくとと書かれてあった。

「ありがとうございました」

と言われて車にのって店を出る。

もう、会うことないだろうな。

カー用品店なんて滅多にこないし、買うものもそんなにないしなー

用もないのに行くのも怪しいし

完璧な一目惚れ…

「はぁー」

「大成さん、何ため息してるんですか」

「あっ!?」

しまった。仕事中につい…

職場の介護施設で勤務してる人8割以上は女性なので、まず男性がいないので出会いがほんと少ない。

いたとしても、既婚者だったり、20以上年が離れてたり…

「出会いないなーと」

「あー、ほんとこの仕事はしてると出会いはないですよね」

4歳年下の後輩の子と話してるが、彼女は少し前に合コンしてGETしたとか…

「大成さんも出会いありますよ!」

「いいわよ!そんな慰め」

惨めになるぅーー


あれ?

ない!

鞄の中を探したけど、見つからない。

カードケースが見つからない。

ポイントカード、メンバーズカードなどなど色々入ってたカードケース。

やっと目標のポイント溜まったので帰りに買い物してポイント使おうとしたのに…

どこで忘れたんだ?と考えると

ま、まさか…

電話すると、預かってると回答がきた。

カー用品店の待合室で出してたんだった。

仕事が終わって、帰りにカー用品店に行くと

「少しお待ち下さい」

レジにいた店員さんに話して電話をしてる。

しばらくすると

「大成様」

う、うそ!?

堀内さんだ!

「こちらで間違いないですか?」

わざわざ持ってきてくれた。

「は、はい!有り難うございます」

やば!!声が裏返った。

「その後、車の調子はどうですか?」

「お、お陰様で元気です!」

え!?あれ?ちょっと返事変じゃなかった?

「それはよかっです」

ううう、変な返事にも笑顔で返された。

はずかしいー!

「では」

と、頭を下げられて離れて行ったのを…


「あ、あの…」

しまった!ほんと無意識に追っかけて声かけてしまった。

「はい」

ど、どうしよう。

「あ、あの…」

「はい?」





「個人的にお会いすることとかって出来ますか?」

「…えっ?」

ビックリした顔がチラッと見えて

「や、やっぱり何でもないです!すいません!!」

猛ダッシュで逃げた!

駐車場に向かってエンジンをかけて出発。

「あっ、ちょっと!」

て、声が聞こえた気がしたけど死ぬほど恥ずかしかった。

なにやってるんだ?私…

いい歳した、したもかなり年下かもしれない人に…

その日は、帰って酒でも飲んで反省した。




それから半月後、今日は介護施設の運動会!

と言っても普通の運動会とは違って皆さんが出来る範囲の運動を披露する大会。

ご家族も参加、観覧など出来るので大賑わいになる。

私達職員は、もう凄い忙しさ!

町田まちださーん、次玉入れ参加でしたよね?こちらですよ」

吉本よしもとさーん、綱引きそろそろはじまりますよ」

アチコチに声をかけて誘導する。

ひぃー、まだ競技は半分しか終わってない。

「大成さん」

振り向くと

「あっ、こんにちわ!」

「いつも、お世話になってます」

担当してる人のご家族が挨拶してくれて

「あれ?ご主人は今日はご一緒じゃないんですね?」

いつも夫婦で来るのに今日は1人?珍しい。

「ええ、急に来れなくなって…、ですので息子に乗せてきてもらいました」

「あら、そうだったんですね、よかったですね」

と、何気に遠くに目をやると

えっ!?うそっ!!!

「あっ、息子です。こちらいつもおばあちゃんのお世話してくれる大成さん」

「お世話になってます」

はじめは気づかないで挨拶されたけど、少しして目を見開かれ

「では、私次の出し物の準備あるので失礼しますね」

まさかここで再会!?

カー用品店のあの堀内さんがまさかご家族だったなんて。

たしか飯野いいのさんのご家族は堀内さんだけど、こんなことって…

でも堀内さんみたいなかっこいい人は私でなくても声かけてる人いると思うから、あんなことあっても気にするわけないか。

私は色々準備でやることもいっぱい。

今の私は化粧化まなく、乱れる髪の毛を纏めるだけ、そして汗もかきまくってる。

こんな私みて堀内さんから見たら…

い、いかん!!

仕事だもん!別に周りにどう思われようが関係ない!!

元々向こうは一人のお客さんとしてしか見られてないし

その後は慌ただしく動き、なんとか運動会は終わった。

ご家族は帰り始め、担当してる方を部屋に移動させ、食事の準備をしてその日は終わった。


それから1週間後。

「こんにちわ」

堀内さんご夫婦が面会にきた。

旦那さんがハーフなのか少し日本人離れした顔をしている。だから堀内さんもあの顔立ちなのか。

「息子がこの間はじめて運動会みて驚いてました。凄いって」

「えっ?」

「職員の人がずっと動いてるのみて驚いてました」

あー

「皆さんが喜んでもらえるよう一生懸命やるのも仕事ですから」

別に私だけをみて言ってんじゃないのはわかってるけど、それでも少しでも私のことをみてたのかな?と思ってしまった。

「そういえば、大成さんって独身でしたよね?前、出会いないから恋人できないって言ってたけど、うちの息子どお?」

「えっ!?」

な、なにを…

「うちの息子ねー、女性に興味ないわけじゃないんだけど、車に興味ばっかあってねー、彼女の1人でも作ってくれるとねー、ああ見えておばあちゃん子なんで、おばあちゃんも孫の結婚式みたいとか言ってるしねー」



いやいや、私なんぞ無理でしょ!

「いや、あの、えーと、ご両親が知らないだけで、いるかもしれませんよ」

「…そうなのかしら?」

「そ、そうですよ!」

心臓に悪いわ、もう!!

カー用品店に勤めてるのはやっぱり車が好きだからなんだ。

って、そんなこと知っても仕方ないけど…


というそんな会話が本気でないと感じて気にならなくなった頃

仕事が終わり、車に乗り込もうとしたときクラクションがなった。

振り向くと少し離れたこところに車が1台。

よく見ると人が乗ってる?

車から人が降りると

「えっ?」

な、なんで!?堀内さん!?

うそ!?なんで?

頭が混乱しまくって、落ち着かない私に近づいてくる。

「おはようございます。夜勤あけと伺いましたので、こんな形で出待ちしてしまってすいません」

「あ、え、い、いえ」

あのカー用品店で私がアホなこと言った以来に声をきく。

「お疲れだと思いますが、少しお時間いいですか?」

夜勤と言っても、仮眠もしてるし、まぁ多少疲れもあるけどもう慣れてる。

「あ、あ、はい!」

堀内さんの車に乗り移動した。

少し離れた小高いところで車を止めた。

街の景色がみえる。

それまで会話は何一つなくって、何がこれからおきるのか…、考えることができない。

てか、家帰ってシャワー浴びて寝るだけと思ってたから、化粧も治してないし、髪型だって後にお団子して前髪も左右にピンで止めて…、服装だって部屋着のTシャツにジーパンだし…、こんなんの恥ずかしすぎて下を向いていた。

「以前うちの店で言ったことですが」

「あっ、はい。あのすいません。忘れてください」

もうあのことしかないと直ぐに察したので直ぐに返事した。

「どうしてです?」

「え?」

「忘れる理由は?」

「あ、あのえーと…」

そんなの言わないでもいいでしょう!!

「うちの祖母から聞いてました。色々面倒もみてくれて凄い親切な人が担当でよかっと」

そうなんだ。そう言ってくれてうれしいな。

「祖母はその人は恋人いないから俺にどうだ?って勧めてると母が言ってて」

えっ?そうなの?飯野いいのさんからは全く聞いてないけど

「あ、あの…、すいません。飯野さんお優しいから、ご迷惑でしたね?すいません」

「正直、会ったこともない人勧められてウザかった」

まぁ、そうだよね。そうなるわ!

「でも…」

そう言ったあと、こっちを見てる気が…

「大成さんが俺を気に入ってくれてるなら、それも悪くないかなーと」

「えっ!?」

一瞬顔をあげて堀内さんを見るも

「あ、」

と言って、また下を向く。

な、なに?どういうこと?

「前言ってた個人的に会えませんか?っての、俺も使っていいです?」

「えっ!?」

「大成さん、もし恋人とかお相手いないなら、俺と個人的に会ってくれませんか?」

ビックリして固まってる。

てか、真っ白だ。

しばらく固まって動かないでいると

肩を触れられて

「返事、聞かせてください。何も言われないと困る」

「あ、あの…、私多分ですけど堀内さんよりもかなり年上かも」

「俺は27だけど、大成さんは?」

「さ、33」

「6歳上か」

「あ、えっと、あの…、いつもこんなノーメイク状態のボサボサ頭でこんな格好で」

フッと笑われた気がした。

「そうですね」

そして頬を触られて堀内さんの方に向かせられ

「可愛いからいいんじゃないですか?」

ええっ!?な、なに?

あ、目が合った。

ドキドキが止まらない。体中が熱い。

「きっかけを作ったのは大成さんですよ」

そ、そんな…

「てか、その顔なに?誘ってるとしか見えないけど」

「えっ?」

「そんな顔赤くして、潤んだ目してそそるでしょ!普通」

「そ、そんなこと…」

「で返事は?」

「そ、それってあのつまり…」

真剣な目をされて

「俺と付き合ってほしいってことだけど」

直球に言われて

「い、いいんですか?私で?」

「ごめん、無理」

と言われてキスをされた。

目を見開き固まってる私をみてすぐにキスはやめて

「別に手が早いとかじゃないですからね」

こんな突然な出来事から私達は付き合うようになった。
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