逢いたくて逢えない先に...

詩織

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忘れてた過去 【飯山省吾】

本当の自分と向かい合う

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直ぐに遥に言える自信がなかった。

とりあえず、親父、母さんと話したく実家に向かった。

「親父、母さん、俺全部思い出したよ」

2人はそれで悟ったようだ。

親父は

「そうか」

そう言って、

「お前はもう飯山省吾以外進む道はない」

「わかってるよ」

今までいっぱい育ててくれて大事にしてもらった。感謝しきれない。

「これからも、俺の親父と母さんだ」

3人で少し無言になった。

「聞いていいか?」

「なにを?」

「お母さんと妹はどこで眠ってるの?俺は1度も会ってない。」

「行ってどうする?」

「会いたいんだ」

「お前は飯山省吾だ」

親父は大声で言い切った。

「お父さん。」

母が親父の肩を触り

「貴方だって産みの母親に会いたいでしょう?そして妹さんにも」

「1度母さんたちで墓参り行ったことあるのよ。だからだいたい場所は覚えてるわ」

と言って母さんは席を外し、住所の書いた紙を渡してくれた。

「きっと、お母さんと妹さん待ってるわよ」

「母さんありがと」

そう言って頭を下げた。

「桜井陽一はあの時一緒に死んでるの?」

「ああ、死亡したことになってる」

親父が言った。

「俺は死んだのか...」

「お前は死んでない!省吾として生きてる」

「ああ、そうだよな」

今までずっと飯山省吾だったんだ。これからもそれは間違いない。

でも記憶が戻ってしまい、自分の中でどう整理していいか解らない。

「解ってるんだが、急に湧き出した記憶に整理がつかないんだ」

俺は初めて両親の前で涙した。

どうしていいか解らない不安な気持ち。母、妹の死。あの辛かった日々...、気持ちがあふれていっぱいだった。

「忘れろ!切り捨てろ!」

と、父がいい

「お父さん!」

っと言って涙を流してる俺を母さんは背中でさすってくれる。

「今まで、ずっと知らないで生きてたんですもん。急に記憶が湧き出して気持ちに整理ができないのよ。お父さんも理解しないと」

と親父に言う。



その後、本当の省吾の墓石に挨拶に行った。

こんな状況なので省吾の名前は刻まれてない。けど

「省吾君、俺が今引き継いで生きてる省吾だ。」

そう言って手をあわせる。

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