逢いたくて逢えない先に...

忘れてた過去 【飯山省吾】

夢の女性

「一緒に楽園に行くのよ」

絶望した顔の女性がそう言ってる。

まただ。

また、あの夢だ。


俺はよく、悲しく辛い顔をした女性が俺に楽園に行くと言ってる夢をみる。

歳は30代くらいだろうか。

俺自身に忘れた何かがきっとあるのでは？と不安になる。



俺は飯山省吾いいやましょうご。21歳で現在アメリカの大学に在席してる。

予定では来年卒業して実家のある日本に帰る。

親父は会社を経営してて、俺が引き継ぐことになってるのだが、まぁ俺がそこまでできるかしばらくは見定めるようだ。

小学校の低学年からアメリアに渡り、こっちで語学の勉強をしていた。

親父は仕事で日本にいるから、年に数回しか会えない。

15歳なったと同時に寮は入ったことで、母とは一緒に住んでいたが、日本に帰ってしまった。

これ以降寮暮らしになってる。


大学でも結構日本人が居て、よく飲み会などやっている。

「省吾、スリーブとは別れたんだって？」

「情報早いな」

スリーブとは、ちょっと前まで付き合ってた彼女の名前だ。

「スリーブがあんま相手してくれないって文句言ってたぞ」

「いやなんか、毎日愛してるとか言わないといけなくなって、なんかウザっくなってさ」

「こっちじゃ当たり前じゃね？」

「まぁ、そうかもだけど」

日本と違い愛情表現は毎日なレベルなので、俺には少し面倒になっていた。

「無理に作らんでもいいしな。来年には日本だし」

どうせ来年には日本に帰る。

「そーあえばさ、ルイスっているじゃん。あいつ日本で会社作るのが夢なんだってさ。」

「わざわざ日本に？」

「みたいだよ。彼女は日本人らしく結婚したら一緒に日本に行くとか言ってた」

へぇー、そんな人もいるんだ。


少し興味をもったので、翌日ルイスに聞いてみた。

第一印象は、日本人より日本語がうまい。

「来年卒業予定なんで、卒業したら恋人と結婚して日本に行く予定。」

「どんな会社作るの？」

「まだ考えててないんだ。でも人の意見とか聞くの好きなんで、そういのに関係してる会社を作りたい」

人の意見か…

うーん、なんだろ？

まぁ、どっちにしてもルイスの前向きな考えは好きなので、自分も来年卒業予定で、卒業したら日本に帰るので、日本でも会おうと話しをした。

それ以降もルイスとも少し交流ができ、ルイスの彼女もいれて食事会をするようになった。