トラガール

詩織

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実家へ

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翌月の週末と祝日を入れて三連休だったので、そこで実家に帰ることにした。

短大で家を出たので戻ってきたのは、14年ぶり?本当に戻ってきてよかったのか未だに不安になる。

「た、ただいま」

玄関をあけて言ってみたが、それであってるのかを疑問だった。

チャイム鳴らしたほうが…、色々考えてしまった。

「おかえり!志奈乃」

母が嬉しそうに出迎えてくれた。

「…うん」

「早く入って」

そう言って、リビングに付いていった。

そこにはお義父さんがいて

「あ、」

なんて言ったらいいんだろ?

「おかえり、志奈乃ちゃん」

優しく微笑んでくれて、言葉に詰まってしまった。

「そんなところに突っ立てないでこっち来なさい」

当たり前だけど二人共歳をとってしまって、月日がたったんだなと実感する。

「お腹すいたでしょ?色々作ったから食べなさい」

座ってすると、どんどんと色んなものが出て来て、テーブルいっぱいになってしまった。

元気だったかとか今どんな仕事してるの?とか近況を少しずつ話しだした。

そんなときに、玄関の開く音がした。

しばらくすると、リビングのドアがあいた。

制服を着た男の子が立っていて

「おかえり。志奈乃よ」

と、母が言う。

この子があの時の…

私が知ってるのは3歳くらいまで

私の顔を見て、本当に軽くだけど頭を下げた。

「こんばんわ」

と言うと

「早く着替えてらっしゃい」

と、言われて自分の部屋に向って行った。

智樹ともきは、今高校2年生よ」

「そうなんだ。大きくなったな」

私にとって唯一の姉弟になるのか。

実感がわかなかった。

着替えてリビングにきて

「はじめまして…だよね。私のこと覚えてないよね」

と言うと

「…覚えてない」

と、返された。まぁ覚えてる方が凄いか。

「じゃ乾杯しよ」

と言って、お義父さんは私にビール飲める?と聞いて注いでくれた。

4人で乾杯して

「やっと4人でこうやって…」

母は少し潤んでた。

「俺が…」

少し小さい声で

「え?」

「俺が居場所なくさせた?」

と言われて、返す言葉が一瞬なかった。

「そ、そんなことないよ!私が我儘だったの」

と言ってビールを飲んだ。

智樹は何か言いたげだったが、それ以上は言わなかった。

よく見ると、髪の毛サラサラだし背も高い。顔を整っててスラッとしてるスタイルだからモテるな。

「お相手の方は海外にいるって聞いたけど」

翔悟さんとの出会い、そして事故で記憶をなくして別れてたこと、またやり直そうとしたことを簡単に話した。

「そう…事故で志奈乃だけ記憶が…」

何とも言えない顔をしてた。

「…うん、でもまぁ何とか結婚する話までになったし」

「そう…、良かったわね」

「向こうのお父さんがあの大臣してた方なのか…、うちは一般家庭だからな。その辺大丈夫なんだろうか?」

それは、私も1番気になってたこと。

「大丈夫だと思うんだけど」

今はこれしか言えなかった。

「志奈乃ちゃんが幸せになることは願ってるよ!でも嫁に行って志奈乃ちゃんが辛い思いするのであれば、家族としてはな…」



反対されてるわけではないけど、やっぱり難しいのかな。

でも、それよりも

「お義父さん、ありがとう。」

「え?」

「だって、こんな何十年も連絡取ってなかったのに家族と言ってくれて」

と言うと

「志奈乃ちゃんが家を出た気持ちは解ってるつもりだから。その後も何もしなかった俺は父親として失格だと思う。でも俺にとっては家族だからな」

優しそうな目で言ってくれて、胸が詰まった。

「志奈乃は、うちの家族よ」

言葉に詰まって何も言えなかった。



ごめんね、お義父さん、お母さん、ずっと連絡しなくって

そんな気持ちで胸がいっぱいだった。


「えっ?うそ!!」

一泊泊まる予定だったので、寝ようとして居間で寝たほうがいい?と聞いたら、2階に私の部屋があった。

高校の時ままで…

「いつ帰ってきてもいいようにね」

と言われた。

ビックリして、まさかこの部屋がこのままあったなんて…

部屋に入って懐かしさで色々みていた。

あー、これ部活のみんなで撮ったときのだ。

これは…、あー坂下の携帯の番号だ。

そそ、大事なものは3番目の引き出しの奥の箱にしまってたんだった。

あと、これって…

と、色々見てると

「…入っていい?」

と、ドアの向こうから声が聞こえた。

智樹君だとすぐわかったので

「うん」

と言った。

しばらくは立っていて

「明日帰るんだよね?」

と言われたので

「うん」

少し間があった。

そして

「父さんも母さんも、ずっと逃げるように出ていったと思ってるようで、自分たちが傷つけたとずっと責めてた時期があった。でも本当は俺が産まれたからだよな?」

「え?」

「俺が産まれたから…」

「違うの、私が…我儘だっの。」

そう。私が結局我儘だったんだ。

「あのときは、君が産まれたことで私は邪魔だと思って逃げてしまった。でもお義父さんやお母さんのこと見てればちゃんと愛情もらってたんだよね。でも怖くって見ることが出来なかった。」

もっとこっちを見てほしい。そのうちにいらないと思われる。そんなことで頭いっぱいで…

「ごめんね、そういう気持ちにさせちゃって」

智樹君は何も悪くないのに、そう思わせちゃったな。

顔を見ると、ビックリした顔をしてて

「…」

何とも言えない顔をしてる

「あ、あの智樹君?」

「出ていった方はいいかもだけど、残った人たちのこと考えてること出来なかった?」

「!?」

言葉が出ない。

智樹君の言うとおりだ。

「俺達、ずっと考えてた。俺は産まれないほうが…て。両親はもっとしっかり見ていればって…、口は出さないけど、それでもどこかに3人共考えてるのはあって、そういうの考えたことある?」

「…」

そうだ。本当に自分勝手すぎるな、私。

「考えたことは正直なかった。3人で仲良く暮らしてるんだろうなって思ってた」

「…今更怒ってもだけど、もっと早く話し合いたかった」

「…うん」

「智樹君、ずっと考えててくれて、そして辛い思いさせてごめん」

そう言って頭を下げた。

そのあと、智樹君は部屋を出てしまった。

確かに彼からしたら、自分が産まれたことでってなるだろう。

子供なりに傷ついて辛かった時期もあっただろうに。

心から申し訳ないと思った。

翌日、朝ご飯が用意されてた。

「…智樹君は?」

「休みの日なのにねー、部活なのよ!近々地区大会があってね、いつも休みの日も朝からなのよ」

「へぇー、何してるの?」

「サッカーよ」

そっかぁー、部活か…

彼にとっては私は会いたくない存在かもな。

食事をしたあと3人でまったりと過ごして、昼ころに帰ることにした。

「これからはちゃんと連絡するから、本当に心配かけてごめんね!」

「いいのよ!元気でさえいてくれれば。今度は2人できてね」

「…うん」

そう言って実家を出た。

両親の感謝と智樹君の最もな意見に複雑な気持ちで家に帰った。




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