クリスマスバースディー

詩織

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彼女の気持ち

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12月に入り、今年もあとわずか。

色々あったな。

やっぱり大きいのは裕貴との出会い。あとは転職。

そして…

まだ気持ちが切り替えていなかった、あのキス…

わかってるんだけど、でもどうしても切り替えられなかった。

裕貴とは、今さっきまでと変わらずなんだけど、私の中で小さなシコリがあった。


裕貴の会社に入社して3ヶ月。

少しずつ慣れ始めてる仕事を毎日頑張っていた。

「…谷井田さんですよね?」

夜7時過ぎ。リフレッシュルームにいた私に声をかけたのは遠山さんだった。

「…はい」

1番会いたくないのに

「裕貴さんと恋人ってのは本当なんでしょうか?」

「…」

確認ってこと?

「口裏合わせとかじゃないですか?」

「…えっと…」

目が怖い!!

「裕貴さんと谷井田さんが恋人同士ってどうしても合わなくって…、何か弱み握ってるとか?」

「…いえ、そんな…」

「もし、そういうのなら裕貴さんを開放してほしいんですけど」

…な、なに?

あまりの圧力かかった顔にすぐにちゃんとした言葉が返せなかった。

「…あ、あの…、弱みとかそういうのではないです」

「でも、何か谷井田さんがしてるんじゃありませんか?」

それって、強制的に付き合うようにってこと?

「だっておかしいもの。お二人が付き合ってるって」

確かに裕貴は容姿がいい。

遠山さんは美人だし、隣にいるなら私より遠山さんのが合うけど。

でも裕貴は私が好きと言ってくれてるし

「遠山さんが言いたいことは解ります。確かに私みたいな年上で見た目もこんなんだし、裕貴からしたら不釣り合いだと思います。でもそれでも私達は恋人です」

と答えた。

それと同時に遠山さんの顔が怒り満ちていた。

「嘘よ!」

「嘘と言われましても…」

これ以上答えようがない。

そしてこっちに近寄ってくる。

何か恐怖を感じた。

ここにいるのは二人だけ。

誰か来てくれないだろうか

私は少しずつ後ずさりをした。

何かある。怖い!!

睨みつける遠山さんから、上手く説明てまきないけど、殺意すら感じられた。

私、もしかして…

遠山さんの右手が高く挙げられたのをみて、ギュッと目をつぶった。

「その辺で」

と言う声が聞こえた。

誰?と目を開けようとしたと同時に

パーン

頬に痛みが走る。

私は頬を抑え、下を向いていた。



「…しゃ、社長!?」

遠山さんの声を聞いて、えっ!?と振り向くと春樹さんがいた。

「谷井田さん、お久しぶりです。まさかこんなタイミングで再開するとは…」

た、たしかに…

「私から説明しますよ。遠山さん」

「えっ!?」

社長の一言に遠山さんがビックリしている。

「裕貴は谷井田さんに惚れこんでるのは間違いないです。似合う似合わないは貴方が決める事ではないんじゃないでしょうか?」

「いや、あの…、私は裕貴さんを開放して欲しくって」

「開放てなんのですか?むしろ開放してほしいなら、遠山さんに対してですよ」

「えっ!?」

「二人は恋人同士であることは間違いないです。それを知っててこうやって谷井田さんにちょっかいを出す。裕貴からも谷井田さんからもこういことで絡まないで頂きたい」

「そ、そんな…」

「なぜ谷井田さんを叩いたんですか?私はその前に止めたはず」

「い、いえ。あの…」

「その件については、こちらでお話聞きましょう」

「あ、あの…春樹さ…、あっ、社長!あの…」

と言うとプッと笑われて

「社長って言いづらそう」

うっ

「遠山さんの言いたいことは解るんです。私みたいなのが裕貴の恋人ですから。それにたいしたことありませんから、私としては問題ありません」

社長直々に話しを聞くとかって…

「そうは言っても私ならは、谷井田さんを叩いてるのがハッキリ見てました」

「…本当に大丈夫です」

私自身なんでこんなことを言ったのか解らなかった。

遠山さんは何も言わないでじっとしていた。

「谷井田さんの気持ちは解りました。ですが私としては手を上げた遠山さんをほっとく訳にはいきません。貴方はこの会社に長くいる秘書です。今したことがよくないことはわかりますよね?」

悔しそうな顔をして、答えようとしない。

春樹さんは自分の後ろを向いて

「お願いします」

と言うと二人の男性が現れ

「こちらに」

と、遠山さんをこっちに来るように導いた。

しばらく戸惑ってたが、遠山さんは男性二人の近くに行ってそのままリフレッシュルームを後にした。

「あ、あの遠山さんは?」

「どうして、手を上げたのか伺います。その後はそれなりに対処になるかと」

「そ、そうなんですか?でも…」

「裕貴からも報告は受けてますので、その辺も踏まえてになりますね。それより…」

と言って私の顔をじっと見て

「頬が腫れるかもです。冷やしといた方がいいですよ」

「あっ」

「裕貴は今会議中なので会議終わったら報告します」

では…といって、春樹さんは居なくなった。

私は洗面所でタオルを冷して、そのまま席に戻る。

「どうしたんですか!?」

と言われて

「あー、なんか考え事してたらぶつかっちゃって。アハハ」

とりあえず適当に言って作業を再開するも、色々集中ができない。

とりあえず、今日やりたいことの最低限だけして、帰り支度をして会社を後にした。

もう腫れは引いてる。

でもなんだろ?心が痛いというか…

遠山さんが本気で裕貴のこと好きで、裕貴のために思ってした気がする。

勿論結果は全然違うけど、でも裕貴のために…そんな気持ちがひしひし伝わった気がした。

急に後ろから抱きしめられて、ビックリする

「可奈美」

ちょ、ちょっと裕貴!!

声を聞いてすぐ解る…けど

「会社の前!!」

「顔みせて!」

ちょっと、人の話聞いてない。

「ここ?」

私の左頬を触る。

話しは既に聞いてるんだろう…

「大丈夫だから」

「…可奈美」

凄い心配そうな顔をしてる

「とりあえず、帰ろう」

と言うと

「今日は車で来てるから」

と言って、車に乗って裕貴の自宅の方へ向かった。

「この時間だし、もう泊まっていってよ」

暗黙の了解じゃないけど、仕事してる平日は基本泊まらないでいた。

「うん、わかった」

途中で和食屋さんでご飯を食べて、そして自宅に到着。

家に着いたら、ギュッと抱きしめられて

「可奈美…」

「大丈夫だから」

「ねぇ、聞いていい?」

「ん?」

「遠山さんはどうなるの?」

「んー、まだ解らないけどもう厳重注意てわけにはいかないだろうな」

「…そか」

「ねぇ、裕貴。私ずっとあれから裕貴の前では遠山さんのこと聞かないでいた。やっぱり…、なんなのみちゃうとね。ムカムカしちゃって、話す気にも聞く気にもなれなくって」

「…わかるよ」

あれから裕貴も私といるときは遠山さんについては一切話してなかった。

「でもね、遠山さんのこと聞いていい?」

「え?」

「私ね、遠山さんが裕貴のこと凄い好きで、純粋に守りたかったんだと思うの。私みたいな年上の人が恋人と言われて釣り合わないし、もしかして何か弱み握られてるのかもと必死だった」

「…そんなことまでいったの?」

「…うん。でもそれって私も想ってた。裕貴に釣り合うような人間じゃないって。歳もかなり上だし、私達がよくっても周りからしたらね。だから遠山さんが言いたい事わかるの」

「…可奈美」

「遠山さんとは、この会社にきてからなの?」

「…いや」

なんとなくそんな感じがしてた。

「彼女とは、大学時代から交流があった」

「そうなんだ」

「大学は違うが会長である伯父と彼女のお父さんが仕事で付き合いが長くってね。お互い大学生のとき会う事もあったよ」

「…うん」

「綺麗な子だなとは思ったよ。少し異性として気になったことがあったのも事実だよ!でも当時は彼女の方に恋人がいたし」

「…うん」

「大学卒業してすぐ彼女はこの会社に就職して、俺も今後この会社にいくことはなんとなくね…、当時はまだ解らなかったから曖昧にしてた。俺がこの会社に入ってからは、ガンガン着たのでビックリしたよ」

「そか」

「俺が以前好意あったのも覚えてたようで、だから余計にな」

「うん。」

なら、その方がよかったんじゃ…と、口に出したいのを我慢した。

それが解ったのか

「昔は昔。今は可奈美以外考えられない。」

「…うん」

じゃ、これからは?

と、聞きたかったがそれは言えないでいた。

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