クリスマスバースディー

詩織

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普通のおばさん

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「おはようございます」

会社に入って挨拶をして自分の席に座ろうとしたら

「すいません、課長。出社早々なんですけど、これ確認お願いします」

座る前からもうこんな感じで仕事がいつも始まる。

どんどんチェックしないと、貯まる一方。

朝から部下の提出したのを確認する。

それだけで午前中終ってしまった…

お昼ごはんを食べれるようになったのは1時半頃だった。

食堂に行って、定食を食べてる。

「はぁー、仕事が貯まる一方」

小声で言いながら食べてると

「課長」

目の前に、真下君がいた。

「ん?今お昼?」

「はい!吉井よしいさんに色々教えてたら午前中やりたかった作業が出来なかったんで、ご一緒いいですか?」

「あ、うん」

吉井さんは、今年入ってきた新入社員。真下君には新入社員の教育係をお願いしている。

「今年もあと少しですね。」

「うん、あと3日で仕事も終わりだもんね」

今年もあっと言う間だなー

「課長!クリスマスどうでした?」

あっ…

「…」

「え?ダメだったんですか?」

「いや、楽しかったよ」



「?」



「どうしたんですか?」

「え?」

「何かあったんです?」

「いやー、楽しかったから満足したよ」

「…課長?」

「ん?」

「なにかあったんですね?」

「何もないよ!楽しかったし」

じーっと私をみる。

「じゃ、次は約束しました?」

「え?」

「次ですよ!初詣とか?」

「…そんなのあるわけないでしょ!」

「何でです?」

「私みたいなおばさん相手にそんな何度も会うわけないじゃん!」

「は?」

「…ほら、急いで食べないと、まだ仕事残ってんでしょ?私ももう会議近いんだった。早く食べて戻るよ!」

と、言って少しピッチをあげて定食を食べ始めた。


裕貴さんの話しはまだ整理出来てないからしたくないけど、紹介してもらったのは真下君だしな。

その後は、急いで二人とも食事を終えて仕事に戻った。



はぁー、もう21時前?早いな…

「谷井田!」

「あっ、お疲れさまです」

営業部の課長の松永まつながさんが、私の席まできた。

松永さんは一期先輩で、よく面倒を昔から見てくれた。

はじめのときは、同じシステム部に所属してほんと色々教えてもらったな。

「仕事終わりそう?飯でもいかね?」

「あっ、もう少しで終わりますけど」

「例の話もしたいしさ」

「あっ、了解!あと少しだけ待ってください」

そう言って少しだけ待ってもらって、一緒に退社した。


一駅隣の居酒屋まできてそこで一杯飲みながら夕飯を終わらせる。

松永さんとは10年近くこんな感じの付き合い。

「今日は奥さんは?」

「あー、あいつ同窓会とかで遅いから」

「そーなんですか」

松永さんの奥さんは私と同期の子で既に結婚退職している。

仲もよかったので、たまにこうやって飲むのも谷井田の愚痴聞いてあげてよ!って言ってくれるようだ。

ビールで乾杯し

「で、例の話だが、既に親会社の筆頭株主はFJAが所有している。多分業務提携になる可能性が高い」

「そう…」

親会社も含めここ数年はは業績が落ちていた。

もしかしてどっかの傘下に入るのでは?という噂があった。

FJAといえば、業績がうなぎ登りの会社。私達と同じシステム会社で、数年前からレジャーやサービス業などと業務提携をして、どんどんと大きくなっている。

業務提携提携した会社は業績が伸び、安定してるようだ。

「実績もあるからな、業務提携したらこっちも安定するかもしれないが」

「そうねー、でもやっぱり寂しいな」

「まぁ、何かしら方針は変わるだろう。基本リストラみたいなことはないみたいだが、同じシステム会社となるとどうなるかわからんな」

「仕方ないんだけど、なんとか出来なかったんですかね」

10年以上いる会社が変わってしまうかもというのに、不安を感じでしまってる。

「私もこの職でいられるのか…」

「まぁ、大丈夫だとは思うがな。社長はかなりのやり手らしいよ」

「まぁ、それだけの業務提携してますからね。そうでしょうね」

「話によると、社長は会長になるとかで、どうやら業務提携とか糸を引いてたヤツが近々社長になるとか。どうやら30代らしい」

「そんなに若いんですか?」

「ああ、かなりのやり手らしい」

「そうなんですか」

その後業務提携のことについて松永さんと色々話して、23時前に解散した。



はぁー

こんなタイミングで業務提携って…

この歳でリストラとかあったら、凹むな。

技術職ではあるけど、年齢的になー転職って35までって聞くし。



仕事納めも慌ただしく、無理やり押し込むような感じで終了。

真下君が何か言いたそうに見えるが、裕貴さんとのことはまだ口にだしたくなくって、仕事以外のときは少し避けてしまった。

年末年始は寂しいけど一人で過ごす。

これも慣れてる。

幼い頃に母をなくし、5年前に方親で育ててくれた父が病死し、兄は居るけど家族と歳を越したいだろうから、まぁ一人は慣れてるかな。

年末年始のテレビをみて、ふと思うことは裕貴さんのこと。

彼は今何してるかな?

また豪華なことをして女の子を喜ばせてるかもしれない。

特定の彼女もいるかもだし…

「あー、やめた!!考えるの」

と、言いつつまた考えてしまう。

こうやって歳をとって一人でいるのかな…



そして新年がきた。

今年も去年と同じかな。

さて、ひとり酒でもしますか。

日本酒を出して、ちびちびと飲む。

完璧なおばさんだ。

普通の一般的なおばさん。

こんなおばさんが、あんなお姫様みたいな…って、また考えてるしまった。


そんは感じのぐーたら年末年始を迎え、新年の仕事が始まった。

「今年もよろしくおねがいします」

と、アチコチで挨拶。

そして、社報で業務提携のことが書かれた。

社内ではその話でもちきり。

噂はあっても、ハッキリこうやって出るとやっぱりね。

「課長!」

真下君がこっちにして

「見ました?社報?」

「みたよ」

「…課長、切れないもんですよ!」

「えっ!?」

なに?なんのこと?

「真下君なに?」

「いやいいです。」

と言って行ってしまった。

なんなんだ?真下君。

社内でも業務提携について役職の会議が開催され説明があった。

「4月からって思ったより早いな」

松永さんの隣に座って小声で話をした。

「今の所そこまで変わることはないようですけど」

「新たな部も出来るみたいだしな。」

「まぁ、私達は現状維持ってことですかね」

2時間近く会議があって解散。

「課長どうでした?部署とか変わるんですか?」
 
戻ってきたら興味津々で皆聞きまくる。

「基本は部署とか変更ない。現状維持みたい」

と、その後も色々質問された。

まぁ、今後自分がどうなるか皆気になるもんな。

そんな話題が落ち着いた頃

「えっ!?面倒…」

2月に入って総務からきたメールを見たら、役職クラス以上の業務提携の祝賀会?みたいなのがあるらしい。

親会社、FJAの幹部などが出席。

ホテルでパーティーみたいな?感じのようで

「松永さーん、これ面倒くさい」

文句をぶーたれる。

「あー、こういうのって俺も嫌い!挨拶とかなー」

「そーですよ!しかも親会社もでしょ?」

親会社なんか付き合いないし、幹部クラスでやってよ!

「とりあえず、まぁ行くしかないな」

と、苦笑する松永さん。

まだ1ヶ月以上先だけど気持ちは憂鬱。

そんなパーティーみたいな服なんかないよ!

仕方ないのでパーティー用?と言っても会社のなんでそこまで派手にならない服を探しにアチコチ探して、まぁこれならなっていうフォーマルドレスみたいな服を購入した。

クローゼットをあけてその服をしまってるとき、ちらっとピンクのワンピースを見る。

このワンピースもあの下着もあれから着てない。

だってまだ裕貴さん忘れられないもん。

未だに引きずってて、自分でもどうしていいかわからなかった。
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