クリスマスバースディー

詩織

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クリスマスイブ

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お昼休み、社食でランチをして自分の部に戻ろうとしたとき

「課長!」

真下君が近寄ってきた。

「明日ですが、出来るだけ残業しないでくださいね!裕貴待ってますから」

「ちょっと真下君。私待ち合わせとか全く…」

「そこは、大丈夫ですから」

と言って行ってしまった。

明日はイブ。

予定あけといてくださいねだけで、待ち合わせもだし、連絡先も知らないし、半信半疑でいた。

なのに、大丈夫ってよくわからない。

おばさん臭いが、近ごろの若いものはよくわからん。

若い人の遊びなのかな。

それだとしたら悪趣味すぎない?

イマイチ考えてることが理解できず、イブの日を迎えた。



そろそろ19時、残業1時間。

真下君は定時でルンルン顔で帰ってる。

周りをみると、ほぼみんな帰ってる。

みんな幸せオーラ全開。

さて、帰るか。

残業してても一人じゃ寂しいし、急ぎの仕事もないし、例の裕貴さんも特にどこで待ち合わせるもないし…

帰り支度をして、会社を出た。

ビルを出て歩いてると

「お待ちしてました」

と、目の前に

「な、なに?」

スーツを着た男性が

「え?」

よく見たら裕貴さんだった。

BARのときはジーンズにパーカーだったから、一瞬わからなかった。

「もしかして、待ってたの?」

「勿論」

笑顔で言われて

「そ、そんな寒いのに…」

「会ってすぐの人に連絡先教える気になれないでしょ?」

それは、そうだけど…

「じゃ、行きますか」

と言って軽く私を腰に手を添えて歩く。

「あの、裕貴さん?」

「なに?」

「えっと、どこに?」

「お楽しみってことで」

と言ってしばらく歩いてタクシーを止めて、行き先を言う。

ちょっと、そこメッチャ高級なホテルじゃない!?

大丈夫なんだろうか?

って、そもそもこの時期に行って入れるの?

まさか、宿泊?…それだって今更無理だよね?

どうするんだ?行って

色々考えてるうちにホテルに着いて

「行きましょう」

ホテルに入って、エレベーターの乗って最上階のボタンを押す

ちょ、ちょっと、本当に?

最上階に着いたら、今まで来たことない未知のレストランの前についた。

「ちょ、ちょっと」 

と言って止まる、

「私、こんな凄いレストラン入ったことない」

「俺もない」

「えっ!?」

「じゃ、お互い初めて同士ってことで」

と言って、私をエスコートしながら入ろうとする。

まさか、何も予約しないで入れるとでも?

そこまでアホじゃないよね?今日イブだよ?

入口に黒いスーツを着た男性がいて

「いらっしゃいませ」

と、お辞儀された。

「今日はよろしくおねがいします」

と、裕貴さんが言うと

「かしこまりました。どうぞ、こちらに」

えっ?

どういうこと?

名前も名乗らず?

と言って、案内され着いてく私達。

どうなってるんだ?

案内された先は、夜景がよく見えて、しかも個室。

どうやってこの席とったの?

しかも数日前だよね?

あっ!!もしかして…

元々約束してた人が来れなかったとか?

それなら、理解できるかも

「シャンパンで乾杯しようと思うけどいい?」

「あ、うん」

シャンパンが出て来て

「じゃ、乾杯!メリークリスマス」

と言って乾杯した。

すぐに料理が出て来て、コースのようだ。

「これから頼むと時間がかかるので、事前に食事も言っといたから。もし食べれないのあったら言ってね」

「あ、うん」

こんな若い人男子と、しかもこんな豪華な、まぁ代理とはいえ、贅沢すぎる。

顔もかわいい系のイケメン男子だし、私でなくてもついてくる女子いたんじゃない?

「あ、あの裕貴さん」

「なに?」

「こんな時に言っていいのかわからないけど、もしかして約束されてた方いたとか?」

「え?」

「いやだって、私と行くってなってからこの店予約って無理でしょ?」

「あー」

「そんな、代わりとかじゃないよ。可奈美さんと約束してからこの店予約したから」

へ?

そんなことできるの?

いやいや、ありえない。

謎すぎる…

キャンセル待ちがたまたま出たとか?いや、それにしても…

裕貴さんって、何者なの?

「まさかな。こんなに早く可奈美さんと会えるとは思ってなかった」

「え?」

「直人から聞いてどんな人だろ?ってずっと思ってたから」

「え?女課長だから?」

「まぁ、それもあったけど話聞いてると、面倒見のいい、いい上司なんだなって。直人が仕事をミスしたときに可奈美さんに叱られて凄い落ち込んでたんだけど、でもその後もしっかりフォローして一緒に立て直す方法も考えてくれて、こんな人になりたいって思ったと聞いたので」

あー、そんなの

「よくあることよ!叱るのも、でも叱ったあとに何が悪かったのか、今後はどうするのか?一人で考えるんでなく一緒に考えるのも上司の仕事よ」

「かっこいいな、可奈美さん」

「え?なんで?」

「他の上司ではそんなことなかったって言ってた。直人」

「そうなの?」

「だから、直人慕ってるんだと思う」

「そうなの?それはそれで嬉しいけど」

「だから、会ってみたかった」 

「それはどうも。でもここまでしなくっても…」

「それは個人的に、話してみたかったから」

「だからって、別にクリスマスじゃなくても」

「いいじゃない。予定ないって話だし、素敵な日を一緒に過ごせば」

なんか憎めないというか、調子にのせられてるというか…

「可奈美さん、もっとさ甘えてよ」

「甘えてって…」

「可愛いんだしさ、女の子らしく甘えてくれたほうが嬉しいな」

「女の子って…、こんな歳で女の子ってないでしょう?」

「えー?俺からしたら女の子だけど」

「サービス業ならではのうまさだねー


「またそうやって言う」

と、笑顔で言われてそれも少しかっこよく見えたり

いかん!酔ってきたか?

「これってさ、フォアグラ?」

急に出て来たメインの料理にビックリする。

「あー、うん。そそ」 

あー、うん。そそ…じゃないよ!!

「た、高くない?」

「まぁ、うん。でも可奈美さんとのクリスマスだし、問題ないでしょ?」

やっぱり、なんだろ?何か普通の人でない気が…

「とりあえず食べよう」

と言われて食べる。

「食べたことない味」

そりゃそうだ。お肉の上にこんなフォアグラ見たことないってか、こういう味なの?と思ったわ

「そっか。まぁ俺もだけど」

「え?」

なんか、やっぱりどかズレてるというか…

でもまぁ折角だしと、頂くも高級すぎて味が…

普段体験したことないことしまくって、てか今更だけど、こんな服で大丈夫だっんだろうか?

とか、もう混乱しまくってる。

メインも食べてデザートが来て頂いてるとき

「次は二人きりで祝いたいから、部屋行くね」



「え?ちょ、ちょっと部屋って…」

「このホテルの部屋」

え?まさかそれも数日前にとれたってこと?

言葉には出さないけど

「勿論誰かの代わりの部屋じゃないよ」

と言われた。

それって、あれだよ?まさかの…

「何か想像してるようだけど」

「いやだって、部屋でしょ?そりゃねー」

「純粋に二人ってきりで祝いたいから部屋とっただけだけど、でもその気あるなら俺は構わないよ」



シャンパンも飲んで気持ちよくなって、しかも凄いフルコース食べて夢みてるようで

いかん!冷静な判断が…と思うも

「可奈美さんの誕生日、一緒に祝いたい」

そんな目で見られたら、いやマジで

「ず、ずるいよ!そんな風に言われたら」

「じゃあ、行こっか」

と言って、強制ではないけどでも少し強引な、そんな感じで部屋へと行くことになった。

なんで拒否しないんだろ?なんで断れなかったんだろ?と、頭の中は往復してて、エレベーターに乗って少し下の階を押して降りるようにエスコートされて、ついた先は…

「…ここ、スイート?」

もう入ろうとするドアが違う。

「いや、スイートは取れなかったんだよね。だからジュニアスイートだけど」

と言われて、いやもう私からしたら手が届かない部屋です。どっちも。

と、叫びたくなる。

ドアをあけて

「どうぞ」

と、言われる。

入っていいのか悩んでる私をみて

「入って」

と、言われるけどどうしても前に足が…

「可奈美さんと二人っきりで居たい。」

そう言って私の背中に腕が触れてそのまま誘導するように部屋に入った。

部屋に入ると

「え?」

テーブルが見えて、そこにはケーキがあった。

他にも簡単なおつまみとそして、ワインもある。

「ここで一緒に25日を迎えよう。そして俺が一番初めに祝うから」

凄いドキドキする。

なんだろ?凄い体が熱い。

ソファに座って、上着を脱ぐ裕貴さんにドキッとする。

「ここ、座って」

と託されて隣に座る

「ここは、店じゃないからくつろぎながら、まったり迎えよう」

「裕貴さん、ここまでしてもらうなんて」

「俺がしたいんだ。いいでしょ?」

少し目があってドキドキする

どうしよう?ここにきてからドキドキしっぱなしで

「少し飲む?」

と、ワインをとっていう

「ワイン飲める?」

「あ、うん。」

わいんのコルクは既に空いていて軽く蓋をしてある程度。

そのコルクをあけて、2つのグラスに注がれる。

「じゃ、また乾杯」

と言って二人で飲む。

「なんか、私、この歳でお姫様になった気分」

「可奈美さんは、お姫様だよ!俺にとってはね」

「な、なにを!」

そんなサラッと照れるようなことを、恥ずかしすぎる。

照れる気分と、ドキドキが交互になって、そして気がついたら

「あ、あと少しで時間だね」

時計をみるとあっという間で、もう24時になろうとしてた。

「あっ、ほんとだ」

「じゃ、こっちのケーキある方にいこう!」

と言われて、テーブルの席に移動した。

あれ?と振り向くと裕貴さんはいなくって、そして24時になった。

「可奈美さん、誕生日おめでとう」

別の部屋から裕貴さんが出て来てそして手にはキレイな薔薇の花束を持ってて私に渡した。

「ちょっと、こんな…」

「俺のお姫様だから」

「裕貴さんの10歳くらい離れてるおばさんだよ!こんなさー」

「ストップ!!!」

と、大声で言われて

「歳関係ないでしょ?素直になってよ」

「…あ、ありがとう」

やばい!本当にやばい!!

「素直になれば、凄いかわいいよ」

「え!?」

「素直でなくても可愛いけど、素直になったら尚更ね」

「ちょとー、からかってる?」

「からかってないよ!本心」

あっ

目があってじーとお互いみてしまった。

「なに!?それ?」

「え?」

なに、それ?ってなに?

さっぱりわからない。

「…女の顔になってる」

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