癒しの世界

詩織

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癒しの世界

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「だからー!!ツブツブのじゃないと嫌っていったじゃん!!」

「…」

「ここないわけ?ないならもう来ない!」

「…はい」

17の小娘が…、まぁこれから楽しくなるわ!

私、坂下亮子さかしたりょうこ、35歳。芸能事務所のマネージャーをして15年。はじめはタレントの言うことをペコペコとしてたが、今では凄腕マネージャーなんて言ってくれる人もいる。

最近この進藤楓しんどうかえでのマネージャーになった。モデル事務所からの移籍で、女優志望ということでうちの事務所と契約したらしい。

だが、かなりの我が儘放題!ということで、私が急遽マネージャーになった。

今はツブツブオレンジレンジがツブツブじゃないことに腹を立ててる。

バラエティー番組の一旦休憩で控え室に戻るも、目上の人にも挨拶もしない。注意するが来てあげた的な…、遣り甲斐バッチリあるな。




数日後

「あんた!なんであの仕事ないのよ!」

「なにがです?」

「あのバラエティー番組の!」

「あー、あれは楓さんがツブツブのオレンジレンジがないから行かないと言ったので、他のものに仕事をお願いしました」

「な、なに考えてるのよ!!それでもま!?」

「マネージャーとしておっしゃってることをやったまでのことです」

「マネージャー変えて貰う」

と言って事務所に電話しようしたが

「掛けてもいいですけどねー、もう貴方に
つきたいってマネージャーは居ないと思いますよ」

それでも電話したようだが、やっぱり私の言う通り、他につきたいマネージャーはいないという返事だった。

「なんでよ!売れてるんだからもう少し考えなさいよ!」

うちの事務所は大きい事務所ではない。だが、所属芸能人の常識ある行動に評価があり信頼されている。私はこういうどうしよもない我が儘なのをたまに面倒をみている。

「どうしますか?あーあと、来週の雑誌の取材ですが、遠くてめんどいからうざいから辞めるとおっしゃったので、他のタレントにお願いしてます。」

「!?」

「自分の担当が仕事減らすのっておかしくないわけ?」

「言われた通りのことをしてるまでです」

「売れるように努力しなさいよ!」

「なら、自分がおかれてる立場を理解して仕事をやられたらどうですか?私は次の打ち合わせがありますので」

と言って、事務所の会議室にむかった。

「はぁー、今回も疲れるわ!」

「まぁ、亮子がやってくれればこっちは助かるよ」

話してる相手は、社長の柳木剛士やなぎつよし。私が二十歳の頃、タレントの夢を諦めかけてたとき、それなら裏方で頑張ってみたらどうだ?とスカウトした人だ。

副社長が奥さんの莉子りこさんと言う。既に何でも話せる間柄になっている。

「莉子さんに頼まれたからやってるけど、多分早いうちに辞めるんじゃないかなー」

「まぁ、常識のかけ離れたヤツはうちはいらないからね」

そう。この社長の常識が出来るってのがうちの社のコンセプト。

挨拶もろくにしない人が多いし、我が儘し放題。そんなタレントはよく見る。

社長と少し話し、会議室を出ると

「坂下さん!」

「あら」

3年前までマネージャーをしてた、柄本雅巳えもとまさみだった。彼もはじめは手がつけられなかった。けど、自分の立場を理解して目の上の人にたいしては敬意を表し、後輩にはしっかりアドバイスをする。

「雅巳、お疲れ様」

「坂下さんがいるって聞いたんで」

「うん。ドラマの仕事増えてきたね」

「そうなんだ。やっときたよ!これも坂下さんのおかげだよ!」

「そんなことないよ!雅巳が頑張ったからだよ」

そんな会話をしてると

「あー!雅巳さんだぁー!おはようございますぅ」

と、楓がきた。

「雅巳さん、今日もステキですね!」

何となく察したのか

「坂下さん、今この子のマネージャー?」

「…ええ」

「君、坂下さんが相手してるうちが花だよ!俺も昔はかなりヤンチャして坂下さん大変だったけど、坂下さんに捨てられたらどこ行っても無理だからね」

「…えっ?」

顔面蒼白する。

「じゃ、坂下さんまた!」

「うん!がんばってね!」

そのあと楓はイラッとして

「なんなのよ!」

と言い出した。

その後、進藤楓は他の事務所に移籍。はじめこそは大々的に宣伝してたので売れていた。

「ふん!あんたなんかいなくったて売れるのよ!」

と、テレビ局で会って言われたが

「…終わったな」

結局はドタキャン、礼儀知らず、我が儘し放題で、仕事は一気に減り、あまり画面でみることはなくなってしまった。



私の中で3人大事に育てたのがいて、その中に雅巳がいる。俳優志望だったのに来るのはキャンペーンの宣伝とか、クイズの回答者、ちょい役のCM、ラジオのアシスタントなど、やりたい仕事が全くと言っていいほどこなかった。喧嘩もしたし、取っ組み合いレベルでしたこともあった。けど30手前になってやっと俳優の仕事が来るようになった。今は30歳。俳優を初めて2年の遅咲きだけど、やってたことは間違ってないと思ってる。


「名前はなんていうの?」

津崎哲つざきさとる

まだ8歳の子。子役タレントとしてうちの事務所に入ってきた。

今日からこの子のマネージャーになる。

学校もあるし、そこまで活動はしないけど、やはり子役で多いのはCMとかになる。

「哲、あっち向いて!」

子供のマネージャーなんてしたことないから撮影するにも大変。心配で母親も来るし、でも撮影のことに関しては口に挟まないように重々言っている。

「哲、がんばったね!」

「みなさん、ありがとうございました」

「哲君えらいねー」

子供といえど、挨拶は最低でもさせるようにしてる。

「今日は終わりです。」

「ありがとうございました」

そう言って、母親と手を繋ぎ帰っていった。

哲は、少しずつ人気になったがそこまで多く仕事はとってこないのでその間は、幹部の仕事の手伝いをしていた。うちの事務所で仕事がとれそうなら、挨拶をしにいくようにしている。


「坂下さんー!!」

離れたところから、りんがきた。彼女も私が育てた1人。まだ25歳と若い。お嬢様育ちなので礼儀作法は知っていたが、かなりズレてた。例えば電車に乗ったことないなど…、自動販売機でジュース買うのも初めは大変だった。まぁ、そこがギャップで人気出てきて今では色んなバラエティー番組に出ている。

「今日ね、コンビニでおにぎり買ったの!すごい美味しいんでビックリしたー」

勿論天然。

「そう。よかったわね!」

「今度、一緒にファミレス行ってくれませんか?ドリンクバーしてみたいの」

「わかったわ、今度行きましょう!」

「やったぁー!!楽しみ!じゃ、またねー」

やっぱりお嬢様だなー、でもいい子に育ってるから…




さて、帰るか…

と、事務所を出たとき

「あれ?どうしたの?」

雅巳がいた。

「坂下さん待ってたんだ」

「私?」

なに?どうしたんだろ?

りっちゃんと何かあったとか?

りっちゃんとというのは、雅巳のマネージャーの持田律子もちだりつこ、まだ28歳と若いながら雅巳のために必死にやっている。

「車で来てるから」

と言うので車に乗った。

「どうしたの?」

「単刀直入にいうよ!俺と付き合って」

「あ、うん。いいよ!何処に?」

「…なにその定番のボケ!!」

「は?」

「お付き合いをしてください」



??

???????


「な、なに?」

いや、待って!!

「雅巳、どうしたの?」

「どうしたのってなにが?」

「だって、えっと最近週刊誌で噂になったモデルの子いたじゃん」

「あんなのフェイクでしょ?坂下さんならわかるでしょ?」

「そりゃ、まぁなんとなくは…」

「で?」

「で?って…」

「返事は?」

「ちょっと待って!雅巳て私のこと好きだったの?」

「は?解らなかったの?」

いや、解らないって!!

「何もマネージャーなんて裏方の人選ばんでも…」

「恋愛に、裏方とかそんなの関係ないでしょ?」

「あ、あのね、雅巳!私達芸能人と事務所なスタッフであって、もしこんなことが…」

「あー、副社長には昔から相談してた」

「えっ!?」

「坂下さん鈍感だから、言わないと解らないって!だから俺が色んな仕事出来るようになって安定してそれでも好きならコクったら?って言われた」

「ちょ、ちょっと待って…」

頭が回らない…

「りっちゃんも知ってるよ!俺が好きだって」

今や色んなドラマにでるようになって、モテる男ランキングにも入ってる。そんな雅巳に

「俺、マジなんだけど…」

「ま、雅巳…」

「だめ?」

だめって…

「彼氏いないでしょ?」

「…いなわよ!!」

「お試しでもどお?まぁ、お部屋デートが多いと思うけど」

雅巳が私の頬を触る。

ちょ、ちょっと、いい男なんだからそんなことしたら、ドキッとするでしょ!!

「雅巳、ちょっとそんな」

「ほんと、仕事では何でも出来て凄いのに、こういうのはウブだよねー」

「う、うるさい!!」

「じゃ、少しだけお試ししよ?」

「俺自身が有名になりたいのもあったけど、何よりも坂下さんに認めて貰いたいのもあった。その時は絶対に坂下さんを落とすって決めてた」

落とすって…

「答えないとキスするよ!」

「な、なにいってるのよ!」

「本気!本気の本気!お願い、これから少しでもいいから俺のこと考えて!じゃ1ヶ月だけ!それでよければ更新ってことで」

「契約書じゃないんだから…」

それでも雅巳が必死なのは解ってた。まさか私に…

その後はうまく丸め込まれたように1ヶ月だけお試しってことでスタートした。

まずは、プライベートのスマホにおはようのチャットがきた。

『ねみぃー!でも今日はドラマの初日なんだよね!俺、学校の先生役なんだけど、今日は生徒役もみんな来るから賑わいそうだわ!行ってくるねー』

『おはよう!雅也が教師役かぁー、前は生徒役でもって思ったのに早いなー、がんばってね』

そんなやりとりから朝ははじまる。

そして初めて行く雅巳のマンション。

昔のマンションはマネージャー時代に何度も行ったけど、今はこんないいマンションに住んでるんだ。


「ちょっ!!」

後ろから抱き締められる。

「はぁー、坂下さんとこうしてるのが癒される。こっち向いて」

振り向かされると

「チュッ」

と、キスをされ

「ちょ、ちょっと雅巳!」

「好きだよ」



真剣な目で

「こういうのって、最近役でやったりしてて、でも相手はいつも坂下さんだと思ってやってる」

「…」

少し前にドラマで愛してると言ってキスをしてたのを見たけど、その相手が私と思ってしてるってこと!?

「俺ずっと一途だよ!」

ギュッと抱き締められて

「俺だって本当は自信無い!けど、絶対に落とす」

「…雅巳」

「ほんと、マジ可愛い」

男としての顔をチラチラ私に見せる。その度にドキドキして、こんな整った男に愛情表現いっぱいされたら…

「昔は私達、大喧嘩もして頭ひっぱたたくとか、胸ぐら掴んだりとか、ほんとやばかったよね」

「…だね、そのときはコイツ何様?だったよ!でも、俺のために全てを削ってやっててけれたんだよな。俺さ、お父さんが癌で手術して行きたいのにそれを押し殺して俺について、バラエティー番組の撮影に同行して俺の失態を必死に謝ったりしてたっての後から聞いたよ」

「あー、そんなことあったね」

「お父さんは…亡くなったんだよね?」

「…うん」

「そんな大事な人亡くなっても俺のために必死で…、それすら言わず俺のためにやってくれて、ほんとバカだなって」

そう言いながら優しい目をして

「坂下さんは今も変わらずそのスタンスを続けてるかもだけど、その息抜きの癒されたいときに俺を頼って欲しい」

「…」

「俺が坂下さんを癒す」

ヤバイ!泣きそう


私はどんどんと雅巳に魅了されてしまった。

そんなときに


「あっ、撮られちゃったねー」

と、さくっと言われる副社長の莉子さん。

まさかお試し期間の1ヶ月で私がマンションに行くのが撮られてる。

柄本雅巳!元マネージャーが通い妻!!

なんていうタイトルだ。

「まぁ、あの、でも仕事の話だと言うことにすれば…」

「雅巳は色々考えてるみたいよ!」

「え?」



会社のHPに、この度の報道につきまして、というタイトルで

この度の報道に報道につきまして元マネージャーとの報道は事実とは異なる部分がございます。しかしながら私個人としては仕事が安定しなかった時期にいつも支えて頂き、いつも側にいてくれた方で大切な存在であることは確かです。この先何かあればご報告をすることをお約束します。



という内容だった。

これってうまく纏められてるけど、私を特別と言うことを言って、更にこの先のことも考えての内容だよね?

「まぁ、付き合ってるとか恋人とか書かれてないけど、それでも大事な存在ってことはアピールしてるね!しかもこの先もそうなりたいと言ってますなー」

「り、莉子さん!!いいの?こんなこと書かせて」

「まぁ、雅巳はずっとあんた命だったからね。ここまで一途ならくっついて欲しいとすら思ってるわよ!他事務所のわけわからんタレントや女優くっつくより全然マシ」

「…」

理解がありすぎる。

「すいません、これから仕事ですので」

哲のマネージャーをして移動中も例の週刊誌の報道で質問に着てた記者

これはこれで実はありがたい。これで哲の注目もされるから。そして案の定、こちらからあまり宣伝しなくっても哲に仕事が入ってくる。




「坂下さん」

と、言って抱き締められる。

「ちょ、ちょ、雅也!」

指定されたホテルに着くと雅也がいた。私も雅也も何度もタクシーを乗り換えて、しかもホテルはロビーからでなく、従業員入口から入った。あまりにしつこい記者はこうやってうまく巻くことはよくしてたので、私達にとっては慣れてはいるがまさか自分がつけられるとは…

「キスしていい?」

て、言う前にキスしてるし

「こんなこそこそ会うのってずっとだとしんどいよねー、そらそろお試しの1ヶ月だしどお?更新しない?」

「…」

この1ヶ月で雅也の本気が解り、自分が女だったことに気づいてしまった。雅也のことばかり考えてる。

「私で本当にいいのかな?」

「いいってか、坂下さんじゃないと無理!!」

雅也を男として見てしまってる。私を愛してくれてる顔がドキドキする。

「うん、じゃよろしくね」

「そうと決まれば、更新決定ね!じゃその契約書ね」

と言って渡されたのが

「ま、雅也!?」

婚姻届だった。

「付き合わなくってもお互いよく知ってる間柄だし、まぁ男と女って関係だとお互い知らないことも多いけど、でも俺は絶対に離れないことを誓うよ」

「…」

まさか、こうなるとは…

「とりあえず」

と言ってベッドに押し倒され

「亮子がほしい。どんだけ我慢してたか解る?」

あっ、この顔。男の色っぽい、そして見いってしまう顔。

「亮子のその女顔初めてみた。やばー!崩壊しそう」

そう言って濃厚なキスが始まった。

「んー」

ガッチリ押さえられ逃げられない。それすらも興奮して身体中がうずく。

「もう、未来も俺のものだから観念してね!」

雅也の一言に全てを捧げてもいいと思いながら、抱かれていた。




「まぁ、いいんじゃい。」

社長と副社長に言われる。

それは、結婚の報告だった。

「雅也がもう亮子を離さないのは解ってるし」

「じゃ、入籍の報告は雅也の映画の撮影が終わってからでいいかしら?」

と、なんともあっさりと…

予定どおり、映画の撮影が終わった後に私達は入籍をし報告をした。それから数ヵ月後に新居に引っ越し

「これからここが俺たちの癒しの場所だね」

「…うん」

「亮子おいで」

私は雅也に向かって歩いていき

「うん、素直!可愛い!!」

「もう!」

「ずっと頑張ってたんだ。ここだけでも俺に一杯我が儘いって!」

「…」

「ん?聞こえない」

「…雅也に愛されたい」

「おおせのままに」

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