大好きな背中

進展地で

「課長、判子すいません」

転勤して1ヶ月。未だ課長と言われるのに慣れてない。

主任すっとばして課長になったんだもん。私もてんぱるわ！

でもそれでも、期待に答えようと頑張ってる。

本社と違い、人は少ない。

総務部も10人もいない。

それでも、他の部との関連とか色々覚えないとだし、それなりに慣れるのに時間がかかりそう。


仕事が終わり、夕飯の買い物をして家に着く。

本当に簡単なものしか作らないけど、自炊はやってる方だ。

外食もいいけどね、お金かかるしね。

でも、美味しい店とか開拓したいから２週間に一度は外食するようにしてる。

ご飯も食べて落ち着いたところで、だいたい毎日みどりとチャットをしてそのあとに、例のオンラインゲームをはじめる。

みんな既にログインしてた。

PT組んで色々戦いに行く。

それだけで、ストレスが発散になる。

家に帰って楽しみがあるのって最高だわ！

でも、戦ってるときにブツブツ言ってる私って怖いかも？と思ったりもする。

そして、とうとう今週で30歳なる。

30でゲーマーかぁー、しかも独身。

はたからみたら痛いと思われるだろうな。

恋愛もしたくないわけでないけど、元彼とは社内恋愛だったし付き合いも長かったから知ってる人も多いし、松井さんも元々恋愛対象外みたいだったし、なんとなく恋愛してもうまくいくとか思えない。

今は１人のがいいのかなって思ったり…

結婚願望は30だしそれなりにあるんだけど、今の私には遠い世界にも感じる。



課長という役職もあってか、付き合いという食事会もたまにあったりで、年配の方が多く、まぁ合わせればいいんだけどね。その中で営業課長の人が私と歳が近いのかな？と思える人だった。

「本社からきた山見さんですよね？」

「あっ、はい」

「営業２課の課長してる本川もとかわといいます」

「よろしくお願いします」

と、挨拶をした。

「おっさんばっかだと、疲れますよね」

とハッキリ、でも小声で言うのでちょっと笑ってしまった。

「いえ、大丈夫です」

「まぁ、定例の集まりの飲み会みたいなもんなんで適当でいいですよ。大事な話とかはここですることないので」

「はい」

少し気持ちが楽になった。

「それにしても、まさかこんな若い方が本社から課長としてくるなんてビックリしました」

「私もまさか、課長になるなんてビックリしました」

その後も少しして食事会は解散となった。

１人でも話せる人ができてよかった。

まだ、社内では個人的に話せる人もいないし、１人でも出来るといいけどなー


週末、ちょうど新しいドラマが入れ代わりの時期らしく、テレビをみるとだいだいゲストが俳優で番組の宣伝をしている。その中に以前本社の前でみた伏見涼がゲストで出てた。

「では次に伏見さんの恥ずかしい話をしたいと思います」

「え？聞いてないですよ」

「はい！言ってません。」

と、司会しているお笑い芸人さんが嬉しそうに言っている。

「では、伏見さんの恥ずかしい話をしてくれるのは、親友のこの方です」

と、映像がかわり

「えっ！？」

そこに、映ってたのは松井さんだった。

下のテロップには、親友のスタントマンの松井悠人さんと、書かれてる

「涼はですね、昔から…」

話が頭の中に入ってこない。

松井さんの顔をみて、時間が止まったように動けなくなってしまった。

映像に出てたのは３分位で、でもあまりにも衝撃的でドキドキが止まらない。

「伏見さんもいい男だから、親友の人もいい男ですねー」

と司会の人が言っている。

確かに、伏見涼とは知り合いとか言ってた気がしたが、まさか親友としてテレビに出るとは…

これが事故前の撮影か後かは知らないけど、もし事故後なら元気になったんだなっと思うことにしよう。