消えた記憶

詩織

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誰にも必要とされない女 【丸山美玖 編】

私なんかに

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「あ、あのマテオさん?」

マテオさんって、有名人なの?

そんな疑問が顔に出てたのか

「昔ね、ちょっと読者モデルってのしてたことあって、以前はああやって声かけられることあったんだけど」

す、凄い!やっぱりスタイルもいいし、モデルでも全然おかしくないもんな。

「やっぱりマテオさんって凄いです!モデルさん並のスタイルだと思ってたので、昔やってたんですね。すいません、私そういうの知らなくって」

と言ったら

「いや、むしろ知らないほうが嬉しいよ」

「え?」

「美玖ちゃん見てると、なんでも新鮮で楽しい」

なんだろ?マテオさんを見ると、顔が赤くなってドキドキが止まらなくなってる。


遅いランチをして、今度は少し刺激の強くない乗り物にした。

きれいな景色が見えるものとか、ゆっくり高くなる乗り物とか、船で海に出る乗り物とか

「遊園地って楽しいんですね!子供だけの遊びかと思ったけど大人でも全然楽しめるんだと思いました」

「美玖ちゃん見てると、素直に嬉しそうな顔してくれるから、見てて幸せにだよ」

「そうですか?何も世間をしらないだけだと思うんですけど」

「知らなかったらこれから知ればいいんだよ」

夕方になって、マテオさんが観覧車を勧めた。

「夕陽もきれいだし、きっときれいだと思うよ」

観覧車は2人だけの空間で、余計に緊張する

少し登ったところで

「ちょっとベタだけど、美玖ちゃん、俺と付き合ってくれませんか?」

「え?」

「俺、美玖ちゃんが好き」

ちょ、ちょっとまって

驚いてしばらく言葉が出なかった。

そして、自分の過去のことが一気に思い出された。

「だ、だめです!」

「え?」

「私みたいなと、ダメです!わ、私なんかに言っちゃダメです」

「美玖ちゃん?」

「私は、そんな資格のない人間なんです」

私は九重先生と彼女さんを傷つけて、ストーカーみたいなことして、そんな私がそんなのダメだ

「美玖ちゃん教えて?俺と付き合えない理由。俺のこと嫌い?」

そ、そんなわけない。

「美玖ちゃん泣かないで?俺自惚れかもだけど、美玖ちゃんに嫌われてないと思ってるんだけど」

「私、マテオさんが思うような素直な子じゃないんです」

「美玖ちゃん?」

マテオさんは、近くにきて抱きしめた。

「どんな美玖ちゃんでも俺、美玖ちゃん好き」

「だめ!」

抱きしめてる腕の中で私は泣きながら

「そんな資格ない!」

「美玖ちゃん…」 

「私のこと、忘れてください」

「嫌だ!美玖ちゃんのこと忘れるとこなんか出来ないよ」

観覧車が終わって降りるとき、逃げるように出ようとしたが、

「逃さない」

と、しっかり掴まれた

「ねぇ、教えて?なんでそんなこと言うの?」

「じゃ、なんでマテオさんは私なんですか?」


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