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偽イケメンの彼氏
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「だから彼氏の1人もいないのよ!」
「…」
只今2期先輩たちに会議室に呼ばれていびられてます。
ことの発端は2ヶ月前、目の前の先輩、加能小夜子が仕事がなかなか進まず苦しんでるのを、課長が私、仲山凛子に手伝うように指示された。そしたら課長は思った以上の出来に驚きそれ以降加能さんがやってた仕事をこっちに回したのだ。
それから加能さんからチクチクと言われ現在に至る。
加能さんも29歳、いい加減こんなことして恥ずかしくないのか?そしてそれに付き合う加能さんの同期の女性たち2人。他の部署なので面識もないのに一緒に嫌味を言ってるし。
そして、彼氏1人もいないのよ!と言われてる。
「仲山さんって地味だしね、なかなか作れないのかしら?可愛そう」
「私達はねー、合コンでアチコチ声かかって忙しくって」
それって痛くないか?その年にもなって合コンしまくってます!って
口には出さないがそう思っていた。
「まぁ、一生独身の人も多いし、まぁでも課長のようにおじさんには媚びうるくらいだから、そっちはモテるのかしらねー」
「えっ!?おっさんに?いやだー恥ずかしくない?」
言いたい放題の3人。マジ嫌になる。
27にもなってなんでこんなことに…
「…恋人くらいいますよ!」
つい、言ってしまった。黙ってればいいものを
「はぁ?嘘言わなくてもいいわよ!」
「そそ、惨めになるじゃん」
と、笑ってるし
…確かに言うとおりで本当はいない。でもつい言ってしまった。
「じゃ、紹介してよ!」
「あー、そうね!いてもきっと地味なんじゃない?」
…
「で、いつ紹介してくれるの?」
「…」
「今日の夜でもいいよ?彼氏にすぐ連絡して!見てるから」
「こんな、黒淵メガネの頭ボッサリな人の彼氏見てみたいわ!」
言われたい放題。
確かに黒淵の厚いメガネ。そして髪の毛も後ろに1つで結んでるだけ。服装も黒、紺、ブラウンが多い。見た目はオシャレの1つも出来ない。てか、しようとは思えない。だってしても仕方ないじゃん。
いや、それよりも連絡しろ!とガンガン言われてる。
面倒だなー、どうしよう
「おい!会議室空いてるぞ!」
と、ドアが開いてみたのは確か…
「え?マジ!?」
と、言う加能さん。
この人確か隣のシステム部の室井さんだっけ?
「あ、室井かー、だったらいいや!この子がこれから彼氏に電話して私達に会わせる約束せるのよ!仲山さんの彼氏どんな人か楽しみねー」
「…」
なんなんだ、この人たちは。室井さんがきてもイビりは止まらない。イライラが限界に達し
「私室井さんと付き合ってるんです」
…
わ、わたし、何言った?今!?
「「「!?」」」
加能さんたちも室井さんもびっくりしてる。
こ、これは…
どんなにイライラしてるからって…やばいだろ!!
「なにそれ?もう少しまともな嘘ついたら?」
と、笑い出す
…ですよね。さすがに自分でもそう思った。
これからもっとイビられるだろうな。もうこんなの嫌だし会社やめるか…
「あ、そうだよ!俺たち付き合ってるよ」
「えっ!?」
加能さんたちも驚いたが私も驚いた。
「あんたなに言ってるよ!彼女いたじゃん」
「あー、随分前に別れてるけど」
そう言って私の隣にきた。
「いくらさ、同期よしみだからって言っても俺の彼女にこんなことするのってどうなの?」
「な、なによ、それ」
「あんた、仲山さんに告白されて適当に遊んでやろうくらいに思ったわけ?」
「なに言ってるの?俺がコクったんだけど」
「はぁ!?」
びっくりして言葉を失ってる。てか、私も失ってる。
「行こっか!」
と言って私の腕をひっぱり
「俺の彼女に今後こんなことしたら、解ってるよな!?」
ギロッと加能さんたちを室井さんは睨み、後にした。
しばらく歩き
「あ、あの!!すいませんでした!!!」
深々とあたまを下げる
そう言うと
「えっと、確か…、総務の仲山さんだっけ?」
「あっ、はい」
「あ、あの、今からでも私訂正に…」
そう言って戻ろうとすると、腕を更に引っ張り
「自分で言ったことでしょ?」
「あ、いや、あの、すいません。とっさに出てしまって」
「で?」
「え?」
で?って、なにが ?
「既に広まってるかもよ!あいつそういうの早いから」
「じゃ急がないと」
「仲山さんって彼氏いるの?」
いたらこんな嘘つかないでじょ!と言いたいが
「い、いえ…」
「俺もフリーだし、別にこのままでもいいよ」
「いや、そういうわけには」
室井さんって背も高いし、顔もちょっと可愛い系だけどカッコいい!スタイルもいいし、横に並ぶ人ってモデルの子?くらいなレベルじゃないと…
「今日は何時におわる?」
「え?あ、えーと…、18時ころには」
「じゃ、迎えにいくよ!じゃまたあとでね!」
と言って行ってしまった。
ど、どういうこと!?
そして18時を過ぎ帰り支度を用意したところ
「お待たせ」
ほ、ほんとに来た
「あ、あの…」
後ろから視線が…
「じゃ、いこっか」
問答無用に一緒に会社を出た。
「あ、今日なんか予定あった?」
「あっ、いえ特には…」
って、今聞くこと?てかそうじゃなくって
「あの、室井さん、昼間の私の突発的な発言で大変ご迷惑を」
「まぁ、そうだね、驚いたよ」
「謝罪だけじゃすまされないと思ってますが」
「まぁ、あいつらアチコチに言いふらしてるようだし」
「…すいません」
「仲山さんは俺を彼氏としてくれたし」
意味深にニヤリとされ
「あ、だから、あの、」
絶対に怒ってると思うんだが
「おれの行きつけの店だけど、まぁ見た目はかなり古いが、味は確かだよ」
確かに見た目は凄い古い。入ると
「おい!聞こえてたぞ」
お店の人が室井さんを見て
「あー」
と、苦笑い
「全く一言多いんだから。まぁまちがっちゃいねーけど」
そう言いながら怒りもせず、御通しを出してくれた。
「室井君、恋人出来たのか?」
「…あ、いえ、」
と、言おうとすると
「まぁ…」
と、室井さんが曖昧に答える。
席に座り
「ビールでいい?」
と言うので、はいと答えた。
ビールがきて、おすすめの料理をいくつか注文
「!?」
美味しすぎない!?
目を見開いた私に
「な、うまいだろ?」
「はい!」
夢中で食べてる私。てか、時間みると30分以上も食べっぱなしだった。
視線に気がつき横をみると
「うっ」
笑って見てる室井さん。
「そんなにうまかった?」
夢中すぎて忘れてたなんて言えない…てかきっとわかってる。
「いいねー、そんな顔して食べてくれると有りがたいよ」
お店の人はニコニコとして言われる。
赤面して死にそう…
「す、すいません」
「いや、全然」
笑顔が…やばい!元々イケメンだとは思ってたけど、笑顔殺しだよ、それは
「あ、そだ、あの…それで、すいません。今更なんですけど、確かに私の一言で巻き込んだのは本当に反省してます。けど、あの、訂正でもなんでも明日しますから」
「いや、それはいいよ!このままで」
「えっ!?でも、それだと室井さんが」
てか、そもそも私達今日初めて話したよね?好きだったとかでも…まぁ当然ないだろう。じゃなんでこのままでいいんだろ?
「あ、あの、それじゃどうして?」
「あいつらには、色々貸しがあってね」
あいつらってのは、加能さんたちのことのようだ。
「少し色々返したいんだ」
笑顔で言ってるけど怒ってる!?
「それに、仲山さんもあんなやつにいつも言われてるだけじゃ我慢できないでしょう?」
「それは確かに…」
「じゃ、協力しあわない?」
「協力…ですか?」
どうやら、私と付き合うってことよりも彼女たちに対して怒りが収まらないと言った感じのようにみえた。
「ねえ、美貴」
会社で唯一話せる同期の子の細川美貴。彼女は秘書をしてるため、仕事のからみはほぼない。一緒に出張も行くし、同行してることも多い。だから会社にいることもそこまで多くない。けど、久々に会うことができ一緒にランチをした。
「ん?」
「システム部の室井さんっているじゃん。あの人ってうちの部の加能さんたちと何かあったの?」
「え?」
彼女は社内の情報通なので色々知ってる。私は正直社内の噂は全く興味がない。誰と付き合おうが関係ない派。
「なにかあったの?」
と言ったので加能さん、室井さんのことを話した。
「まだ、加能のヤツそんなのことしてるの!?」
ムッとした顔になった美貴。そして、室井さんのことを話し始めた。
室井さんは長い間社内恋愛をし、結婚まで考えてた人がいたが、加能さんがフリーになったことで、室井さんを奪い取ろうとして彼女にかなりの嫌がらせをしたようだ。最終的に彼女は精神科にまで通うくらいメンタルがやられ、仕事が出来る状態じゃなく退職。室井さんはそれでも彼女の側に居たかったけど、彼女の両親、そして室井さんを見るとトラウマになり、別れることに…、かなり社内で言ったようだが証拠もないし、加能さんの親戚は親会社の幹部ぽい。
「そ、そんな…、じゃ室井さんは…」
「泣き寝入りだね」
「…」
「室井さんだけでなく、ほかでもあるって話よ!でも親戚のその圧力とかで最後は揉み消しになってるって話ぽい」
自分だけでも限界なのに、なんでそんなこと…
「あんたも面倒なのに目をつけらるたね。我慢するしかない!ってのが今までなんだろうけど」
「…そうね、なんかほんと胸くそ悪くなってきた」
社内のことに全く興味ないとはいえ、こんなこともあったなんて…
「美貴!」
「うん、私も協力するよ」
「仲山さーん、これやっといてくれないかしら?私腹痛で定時に帰りたいの?」
「これとは、なんですか?」
「来週の月曜日までの勤怠の整理。」
「これって、加能さんの仕事だし、まだ期日まで時間ありますけど」
「ごめんなさーい!私お腹痛くって明日も出れないかも。やってくれないら?」
「…わかりました」
「あ、あと、室井はあーいってたけど、結局はどうなの?室井の弱みでも握ってるの?じゃなきゃ、あんたみたいなメガネブスとつきあわないでしょ?」
私の耳元でドスのきいた声で言う。
「…」
「じゃ、よろしくねー」
と、笑顔で加能さんは会社を後にした。
「加能君、これ、勤怠のまとめだよね?早いね」
「はい!社会人として早く終わらせるのは当然ですから」
「…」
あたかも自分がやったように提出する加能さん。
「あ、こっちの請求書の整理も終わってます~」
それも私がやったのに…
「いやー、加能君。やっぱり長年勤めてるだけあって優秀だねー」
課長は、見直したとばかりに褒めまくってる。
「あっ、室井ー!!」
加能さんは、室井さんを見つけると駆け足で行った。
「話があるの」
私の顔をみてニヤとして室井さんの腕をとって移動した。
そして
「どういうことだね!!」
「…」
「消去したってことかね?」
「い、いえ、そんなことは…」
「大事な台帳なんだよ!仲山君、昨日最後にさわってたのは君だよな?」
「…はい」
データがバッサリ消えている。
横をみると、ニヤリとしてる加能さん
「仲山さん、優秀だったのに残念ねー」
「ほんとだよ!君に安心して任せてたのに」
加能さんと課長に言われ限界がもう…
まわりも何も言えず静かに見守ってた。
「謝られてもすまないんだよ!どうしてくれるのかね!?」
課長の怒りもピークに達したとき
「失礼します」
入ってきたのは室井さんだった。
「あー!室井!!あんたの彼女大変なことしたわよー!!」
そう言うと
「データですか?」
と、室井さんが言い出した
「え、ええ」
なんで知ってるの?て顔をしてる加能さん。
「加能、お前のPC見せてみろ!」
「…え?」
「いいから見せろ!!」
睨み付けるように言われ、PCのパスポートを入力し画面が開いた。
加能さんの席に座り、ガタガタと作業をしてスマホに電話をする
「あっ、悪いがさっき件よろしく」
電話を切り、カタカタとキーワードをたたく。そして
「課長、消去したファイルはこれですか?」
と言って課長を呼ぶ
「えっ!?ああ。そうこれだ」
「そうですか。となると、おかしいですね。私はデータ削除を復活させるプログラムを起動しました。このPCで復活したということはここで削除したからってことですが」
「え!?」
「か、加能君、どういうことかね?」
「な、なにかの手違いじゃないですか?あ、そそ、昨日仲山さん自分のPC調子悪いっていって、これ使ってなかった?」
さすがにそれは…、皆わかるだろう。
「私は加能さんのPCお借りした記憶はありません」
「い、いや、私は知りません。なにかの手違いですよ」
「あ、あと、加能さん、忘れてました」
私はそう言って、スマホの録画を再生した。
『…私お腹痛くって明日も出れないかも。やってくれないかしら?』
『…メガネブス…』
「ひっ!」
ドスのきいた声に怖くて悲鳴をあげる女子社員。
そう。私は加能さんが自分の手柄にするのが解ってたので加能さんの言ってたことを録画していた。
『この請求書の確認ってまだかしら?』
「な、なんだこれは…」
課長はびっくりしながら加能さんに問いただす。
「こ、これは、なんかの間違い…」
「こんなのもありますよ!」
そう言って室井さんは、自分のスマホの録画を再生した。
「室井、あんたあんなメガネブスといい加減別れなさいよ!うちの身内が手を出してもいいの?仲山のブスをボロボロにするわよ!」
私も初めてきいた内容。
ザワザワと周りが騒ぎだし
「か、加能君!!君は何してるんだ!?」
「し、知りません!私じゃないですよ!だ、だいたいこんな地味な女のこと信じるんですか?」
つい言ってしまった地味な女発言!
「ひでぇー!」
男子社員がドン引きして言う。
周囲の目は加能さんにドン引きしまくってる。
「な、な、なによ!だって本当のことじゃない!!な、仲山がいけないのよ!たいして仕事も出来ないのに媚び売って、室井にも媚び売って」
「…」
私どこで言われてるのよ!怒りよりも呆れてきた。
室井さんも哀れな顔をしてる。
「失礼します。加能さん、佐枝事業部長がお話があるとおっしゃってます。三矢部長、山中課長もご同席願います。」
美貴が入ってきてピシャッと一言。
部長も課長も言葉が出ない。何も言わず美貴に着いていく。加能さんはしばらく立ち尽くしてる。
「加能、行けよ」
室井さんの一言に我に返り、よたよたとして部を後にした。
室井さんは私の顔をみて苦笑し、自分の部に帰っていった。
その後、加能さんの今までのことがどんどんと明るみになり親会社の親戚がもみ消すレベルというのを遥かに越え、解雇となった。
そして私は…
「お世話になりました」
退職の道を選んだ。
課長に責められてるとき、加能さんの作戦にはめられた課長をみて証拠もなにもないのに責められてるとき自分が悲しかった。もし今後同じことがあったとしたら、自分でないと言っても誰かの流れで無実の人でもああやって言うかもしれない。それを目の当たりにしたら、ここにいてもこの先いいことないかも…と思ってしまった。
「さて、ゆっくり探すかな」
会社を出てボソッと言った。
貯金もあるし、失業手当てもあるかゆっくり探すかな。でもこの歳で手に職がない私を雇ってくれる所あるんだろうか…
掃除のおばさんでも何でもやったる!雇ってくれるなら何処でもやったる!!みたいな気持ちでいくか!
会社を出て後ろを振り向いた。
8年勤めた会社。あっけなかったな。
「よう」
会社から出てきたのは室井さん。
そういえば、あれから会ってなかったな。
「なんか…、お久しぶりです」
「辞めるんだって?」
「あ、はい」
「ふーん」
興味なさそうな返事。まぁ、興味ないか。
「室井さんには、色々お世話になりました」
あたまを下げると
「いや、おれの方こそ、少しは仕返しが出来たから」
「…あっ、はい」
そっか。彼女の失ったのは辛すぎるよな。
「次の仕事は決まってるの?」
「いえ…、ゆっくり探そうと思ってます」
と言うと
「じゃ、俺のところこない?」
「え?」
「と言っても先輩や同期の数人と立ち上げたシステム会社だけど。既に同期と先輩達で先に会社は立ち上げてて、俺は今のプロジェクトが終わったら辞めてそっちに行く」
「そうなんですか。」
室井さんも辞めるのか…てか、起業するって凄いな、でも
「私、システム会社行っても役にたつことなんか」
「別にプログラム作れとか言ってないよ!先輩の奥さんが1人で事務してるんでお子さんもいるからもう1人いたらいいなって思ってるんだ」
「そうなんですか?」
「どお?」
「でも、そんな私で…、いいんですかね?」
「なんで?」
「だって、私室井さんに色々とお世話になりぱなしなのに」
「なにが?」
「えっ!?だって」
「当たり前でしょ?彼女なんだし」
!!?
「い、いや、それはもう…」
室井さんは近寄ってきて、そして
「あっー!」
「やっぱり…」
そう言って笑みをみせて
「メガネとると全然イメージ違うじゃん」
メガネを取られてそう言われる。
「あっ、えっ、そうですか?」
メガネをとれると裸がみられてるようでちょっと恥ずかしい。
その後すぐメガネは返してもらえたが。その後私は室井さんたちが起業した会社にお世話になることになった。
「仲山!こっちも頼んでいい?」
「はい!」
転職して2ヶ月。プログラムは組めないけど設計書のサポートとか、少しだけどやらせてもらってる。
確か以前にシステム部にいた人たちがいて、彼らと起業したのかーというのと
「え?阿川さんだったんですか?」
先輩の奥さんで事務してた人は私が新入社員のときに面倒みてくれた阿川さんだった。
「あれ?室井君、言ってなかったの?」
「はい」
「もー、相変わらず一言足りないのよね」
まさか、3年も前に退職した阿川さんと仕事出来るとは思わなかったので凄い嬉しかった。
そして
「おす!」
「待ってたぞ!」
「仕事いっぱい貯めてたからな!」
室井さんが退職し、この会社にきた。
皆でバシバシ頭を叩かれ、めっちゃ歓迎されてる。
私の顔をみて
「よう」
休みなく仕事をし、その間引き継ぎもあったりでやっとこっちに来れた。だから会うことも出来なかったけど
「…いいじゃん!」
私をみてそう笑顔で言われた。
コンタクトにして、髪の毛をストレートに伸ばし、メイク教室でメイクも勉強したりして、少しでもまた室井さんに笑顔で見てもらえたらと思って…
またこの笑顔がみれて、嬉しいやら恥ずかしいやらで視線を外してしまった。
「ちょっと、きて早々ラブラブモード勘弁よぉー」
と、阿川さんが言う。
「あ、いえ、そんなんじゃ…」
みんなにニヤつかれ、それでもやっぱりどこか嬉しかった。
「終わる?」
「え?」
後ろを無理向くと室井さんがいて
「あれ?今日歓迎会とか言ってなかったです?」
「まぁ、それは週末にしてもらった」
「そうなんですね」
「仕事慣れたそうだし安心したよ」
「お陰さまでありがとうございました」
と、頭をさげる。
「さて」
と言って私に肩をまわし
「行こっか」
「えっ?行くってどこに?」
「そんなの…、デートに決まってるでしょ!」
「泣かすなよー!!」
なんて野次もあったりしたが
「泣かすかよ!!」
と言って2人で会社を出た。
会社の人達からはもう公認になってるし、このままでいいのかな?でも、勘違いとか冗談とかかもしれないし、室井さんみたいなイケメンが私に…と思ってしまう。それに彼女のことだってあるし
私は彼氏いない歴5年だから何も障害ないけど
「えっ?」
恋人繋ぎされて
「解ってもらってると思ってるけど言葉にしてないから…、きっかけはあんな感じだったし、あいつに仕返しするまでは協力者だった。けど、今はそうじゃないから」
そう言って私の顔をみて
「いつの間にか、忘れられなくなっていた。だから、しっかり言わないとな」
「…」
「好きだ」
じっと見つめられてそして
「俺の恋人になって」
言葉に出ず、縦に首をふる。
「顔みせて」
下を向いてたので反対の手が頬に触り顔をあげられる。嬉しそうな顔が見えて
「俺のことどう思ってる?」
「…、す、す、きです」
と言うとキスをされ
「さて、飯行くか」
そう言って駅の方に向かった。
「…」
只今2期先輩たちに会議室に呼ばれていびられてます。
ことの発端は2ヶ月前、目の前の先輩、加能小夜子が仕事がなかなか進まず苦しんでるのを、課長が私、仲山凛子に手伝うように指示された。そしたら課長は思った以上の出来に驚きそれ以降加能さんがやってた仕事をこっちに回したのだ。
それから加能さんからチクチクと言われ現在に至る。
加能さんも29歳、いい加減こんなことして恥ずかしくないのか?そしてそれに付き合う加能さんの同期の女性たち2人。他の部署なので面識もないのに一緒に嫌味を言ってるし。
そして、彼氏1人もいないのよ!と言われてる。
「仲山さんって地味だしね、なかなか作れないのかしら?可愛そう」
「私達はねー、合コンでアチコチ声かかって忙しくって」
それって痛くないか?その年にもなって合コンしまくってます!って
口には出さないがそう思っていた。
「まぁ、一生独身の人も多いし、まぁでも課長のようにおじさんには媚びうるくらいだから、そっちはモテるのかしらねー」
「えっ!?おっさんに?いやだー恥ずかしくない?」
言いたい放題の3人。マジ嫌になる。
27にもなってなんでこんなことに…
「…恋人くらいいますよ!」
つい、言ってしまった。黙ってればいいものを
「はぁ?嘘言わなくてもいいわよ!」
「そそ、惨めになるじゃん」
と、笑ってるし
…確かに言うとおりで本当はいない。でもつい言ってしまった。
「じゃ、紹介してよ!」
「あー、そうね!いてもきっと地味なんじゃない?」
…
「で、いつ紹介してくれるの?」
「…」
「今日の夜でもいいよ?彼氏にすぐ連絡して!見てるから」
「こんな、黒淵メガネの頭ボッサリな人の彼氏見てみたいわ!」
言われたい放題。
確かに黒淵の厚いメガネ。そして髪の毛も後ろに1つで結んでるだけ。服装も黒、紺、ブラウンが多い。見た目はオシャレの1つも出来ない。てか、しようとは思えない。だってしても仕方ないじゃん。
いや、それよりも連絡しろ!とガンガン言われてる。
面倒だなー、どうしよう
「おい!会議室空いてるぞ!」
と、ドアが開いてみたのは確か…
「え?マジ!?」
と、言う加能さん。
この人確か隣のシステム部の室井さんだっけ?
「あ、室井かー、だったらいいや!この子がこれから彼氏に電話して私達に会わせる約束せるのよ!仲山さんの彼氏どんな人か楽しみねー」
「…」
なんなんだ、この人たちは。室井さんがきてもイビりは止まらない。イライラが限界に達し
「私室井さんと付き合ってるんです」
…
わ、わたし、何言った?今!?
「「「!?」」」
加能さんたちも室井さんもびっくりしてる。
こ、これは…
どんなにイライラしてるからって…やばいだろ!!
「なにそれ?もう少しまともな嘘ついたら?」
と、笑い出す
…ですよね。さすがに自分でもそう思った。
これからもっとイビられるだろうな。もうこんなの嫌だし会社やめるか…
「あ、そうだよ!俺たち付き合ってるよ」
「えっ!?」
加能さんたちも驚いたが私も驚いた。
「あんたなに言ってるよ!彼女いたじゃん」
「あー、随分前に別れてるけど」
そう言って私の隣にきた。
「いくらさ、同期よしみだからって言っても俺の彼女にこんなことするのってどうなの?」
「な、なによ、それ」
「あんた、仲山さんに告白されて適当に遊んでやろうくらいに思ったわけ?」
「なに言ってるの?俺がコクったんだけど」
「はぁ!?」
びっくりして言葉を失ってる。てか、私も失ってる。
「行こっか!」
と言って私の腕をひっぱり
「俺の彼女に今後こんなことしたら、解ってるよな!?」
ギロッと加能さんたちを室井さんは睨み、後にした。
しばらく歩き
「あ、あの!!すいませんでした!!!」
深々とあたまを下げる
そう言うと
「えっと、確か…、総務の仲山さんだっけ?」
「あっ、はい」
「あ、あの、今からでも私訂正に…」
そう言って戻ろうとすると、腕を更に引っ張り
「自分で言ったことでしょ?」
「あ、いや、あの、すいません。とっさに出てしまって」
「で?」
「え?」
で?って、なにが ?
「既に広まってるかもよ!あいつそういうの早いから」
「じゃ急がないと」
「仲山さんって彼氏いるの?」
いたらこんな嘘つかないでじょ!と言いたいが
「い、いえ…」
「俺もフリーだし、別にこのままでもいいよ」
「いや、そういうわけには」
室井さんって背も高いし、顔もちょっと可愛い系だけどカッコいい!スタイルもいいし、横に並ぶ人ってモデルの子?くらいなレベルじゃないと…
「今日は何時におわる?」
「え?あ、えーと…、18時ころには」
「じゃ、迎えにいくよ!じゃまたあとでね!」
と言って行ってしまった。
ど、どういうこと!?
そして18時を過ぎ帰り支度を用意したところ
「お待たせ」
ほ、ほんとに来た
「あ、あの…」
後ろから視線が…
「じゃ、いこっか」
問答無用に一緒に会社を出た。
「あ、今日なんか予定あった?」
「あっ、いえ特には…」
って、今聞くこと?てかそうじゃなくって
「あの、室井さん、昼間の私の突発的な発言で大変ご迷惑を」
「まぁ、そうだね、驚いたよ」
「謝罪だけじゃすまされないと思ってますが」
「まぁ、あいつらアチコチに言いふらしてるようだし」
「…すいません」
「仲山さんは俺を彼氏としてくれたし」
意味深にニヤリとされ
「あ、だから、あの、」
絶対に怒ってると思うんだが
「おれの行きつけの店だけど、まぁ見た目はかなり古いが、味は確かだよ」
確かに見た目は凄い古い。入ると
「おい!聞こえてたぞ」
お店の人が室井さんを見て
「あー」
と、苦笑い
「全く一言多いんだから。まぁまちがっちゃいねーけど」
そう言いながら怒りもせず、御通しを出してくれた。
「室井君、恋人出来たのか?」
「…あ、いえ、」
と、言おうとすると
「まぁ…」
と、室井さんが曖昧に答える。
席に座り
「ビールでいい?」
と言うので、はいと答えた。
ビールがきて、おすすめの料理をいくつか注文
「!?」
美味しすぎない!?
目を見開いた私に
「な、うまいだろ?」
「はい!」
夢中で食べてる私。てか、時間みると30分以上も食べっぱなしだった。
視線に気がつき横をみると
「うっ」
笑って見てる室井さん。
「そんなにうまかった?」
夢中すぎて忘れてたなんて言えない…てかきっとわかってる。
「いいねー、そんな顔して食べてくれると有りがたいよ」
お店の人はニコニコとして言われる。
赤面して死にそう…
「す、すいません」
「いや、全然」
笑顔が…やばい!元々イケメンだとは思ってたけど、笑顔殺しだよ、それは
「あ、そだ、あの…それで、すいません。今更なんですけど、確かに私の一言で巻き込んだのは本当に反省してます。けど、あの、訂正でもなんでも明日しますから」
「いや、それはいいよ!このままで」
「えっ!?でも、それだと室井さんが」
てか、そもそも私達今日初めて話したよね?好きだったとかでも…まぁ当然ないだろう。じゃなんでこのままでいいんだろ?
「あ、あの、それじゃどうして?」
「あいつらには、色々貸しがあってね」
あいつらってのは、加能さんたちのことのようだ。
「少し色々返したいんだ」
笑顔で言ってるけど怒ってる!?
「それに、仲山さんもあんなやつにいつも言われてるだけじゃ我慢できないでしょう?」
「それは確かに…」
「じゃ、協力しあわない?」
「協力…ですか?」
どうやら、私と付き合うってことよりも彼女たちに対して怒りが収まらないと言った感じのようにみえた。
「ねえ、美貴」
会社で唯一話せる同期の子の細川美貴。彼女は秘書をしてるため、仕事のからみはほぼない。一緒に出張も行くし、同行してることも多い。だから会社にいることもそこまで多くない。けど、久々に会うことができ一緒にランチをした。
「ん?」
「システム部の室井さんっているじゃん。あの人ってうちの部の加能さんたちと何かあったの?」
「え?」
彼女は社内の情報通なので色々知ってる。私は正直社内の噂は全く興味がない。誰と付き合おうが関係ない派。
「なにかあったの?」
と言ったので加能さん、室井さんのことを話した。
「まだ、加能のヤツそんなのことしてるの!?」
ムッとした顔になった美貴。そして、室井さんのことを話し始めた。
室井さんは長い間社内恋愛をし、結婚まで考えてた人がいたが、加能さんがフリーになったことで、室井さんを奪い取ろうとして彼女にかなりの嫌がらせをしたようだ。最終的に彼女は精神科にまで通うくらいメンタルがやられ、仕事が出来る状態じゃなく退職。室井さんはそれでも彼女の側に居たかったけど、彼女の両親、そして室井さんを見るとトラウマになり、別れることに…、かなり社内で言ったようだが証拠もないし、加能さんの親戚は親会社の幹部ぽい。
「そ、そんな…、じゃ室井さんは…」
「泣き寝入りだね」
「…」
「室井さんだけでなく、ほかでもあるって話よ!でも親戚のその圧力とかで最後は揉み消しになってるって話ぽい」
自分だけでも限界なのに、なんでそんなこと…
「あんたも面倒なのに目をつけらるたね。我慢するしかない!ってのが今までなんだろうけど」
「…そうね、なんかほんと胸くそ悪くなってきた」
社内のことに全く興味ないとはいえ、こんなこともあったなんて…
「美貴!」
「うん、私も協力するよ」
「仲山さーん、これやっといてくれないかしら?私腹痛で定時に帰りたいの?」
「これとは、なんですか?」
「来週の月曜日までの勤怠の整理。」
「これって、加能さんの仕事だし、まだ期日まで時間ありますけど」
「ごめんなさーい!私お腹痛くって明日も出れないかも。やってくれないら?」
「…わかりました」
「あ、あと、室井はあーいってたけど、結局はどうなの?室井の弱みでも握ってるの?じゃなきゃ、あんたみたいなメガネブスとつきあわないでしょ?」
私の耳元でドスのきいた声で言う。
「…」
「じゃ、よろしくねー」
と、笑顔で加能さんは会社を後にした。
「加能君、これ、勤怠のまとめだよね?早いね」
「はい!社会人として早く終わらせるのは当然ですから」
「…」
あたかも自分がやったように提出する加能さん。
「あ、こっちの請求書の整理も終わってます~」
それも私がやったのに…
「いやー、加能君。やっぱり長年勤めてるだけあって優秀だねー」
課長は、見直したとばかりに褒めまくってる。
「あっ、室井ー!!」
加能さんは、室井さんを見つけると駆け足で行った。
「話があるの」
私の顔をみてニヤとして室井さんの腕をとって移動した。
そして
「どういうことだね!!」
「…」
「消去したってことかね?」
「い、いえ、そんなことは…」
「大事な台帳なんだよ!仲山君、昨日最後にさわってたのは君だよな?」
「…はい」
データがバッサリ消えている。
横をみると、ニヤリとしてる加能さん
「仲山さん、優秀だったのに残念ねー」
「ほんとだよ!君に安心して任せてたのに」
加能さんと課長に言われ限界がもう…
まわりも何も言えず静かに見守ってた。
「謝られてもすまないんだよ!どうしてくれるのかね!?」
課長の怒りもピークに達したとき
「失礼します」
入ってきたのは室井さんだった。
「あー!室井!!あんたの彼女大変なことしたわよー!!」
そう言うと
「データですか?」
と、室井さんが言い出した
「え、ええ」
なんで知ってるの?て顔をしてる加能さん。
「加能、お前のPC見せてみろ!」
「…え?」
「いいから見せろ!!」
睨み付けるように言われ、PCのパスポートを入力し画面が開いた。
加能さんの席に座り、ガタガタと作業をしてスマホに電話をする
「あっ、悪いがさっき件よろしく」
電話を切り、カタカタとキーワードをたたく。そして
「課長、消去したファイルはこれですか?」
と言って課長を呼ぶ
「えっ!?ああ。そうこれだ」
「そうですか。となると、おかしいですね。私はデータ削除を復活させるプログラムを起動しました。このPCで復活したということはここで削除したからってことですが」
「え!?」
「か、加能君、どういうことかね?」
「な、なにかの手違いじゃないですか?あ、そそ、昨日仲山さん自分のPC調子悪いっていって、これ使ってなかった?」
さすがにそれは…、皆わかるだろう。
「私は加能さんのPCお借りした記憶はありません」
「い、いや、私は知りません。なにかの手違いですよ」
「あ、あと、加能さん、忘れてました」
私はそう言って、スマホの録画を再生した。
『…私お腹痛くって明日も出れないかも。やってくれないかしら?』
『…メガネブス…』
「ひっ!」
ドスのきいた声に怖くて悲鳴をあげる女子社員。
そう。私は加能さんが自分の手柄にするのが解ってたので加能さんの言ってたことを録画していた。
『この請求書の確認ってまだかしら?』
「な、なんだこれは…」
課長はびっくりしながら加能さんに問いただす。
「こ、これは、なんかの間違い…」
「こんなのもありますよ!」
そう言って室井さんは、自分のスマホの録画を再生した。
「室井、あんたあんなメガネブスといい加減別れなさいよ!うちの身内が手を出してもいいの?仲山のブスをボロボロにするわよ!」
私も初めてきいた内容。
ザワザワと周りが騒ぎだし
「か、加能君!!君は何してるんだ!?」
「し、知りません!私じゃないですよ!だ、だいたいこんな地味な女のこと信じるんですか?」
つい言ってしまった地味な女発言!
「ひでぇー!」
男子社員がドン引きして言う。
周囲の目は加能さんにドン引きしまくってる。
「な、な、なによ!だって本当のことじゃない!!な、仲山がいけないのよ!たいして仕事も出来ないのに媚び売って、室井にも媚び売って」
「…」
私どこで言われてるのよ!怒りよりも呆れてきた。
室井さんも哀れな顔をしてる。
「失礼します。加能さん、佐枝事業部長がお話があるとおっしゃってます。三矢部長、山中課長もご同席願います。」
美貴が入ってきてピシャッと一言。
部長も課長も言葉が出ない。何も言わず美貴に着いていく。加能さんはしばらく立ち尽くしてる。
「加能、行けよ」
室井さんの一言に我に返り、よたよたとして部を後にした。
室井さんは私の顔をみて苦笑し、自分の部に帰っていった。
その後、加能さんの今までのことがどんどんと明るみになり親会社の親戚がもみ消すレベルというのを遥かに越え、解雇となった。
そして私は…
「お世話になりました」
退職の道を選んだ。
課長に責められてるとき、加能さんの作戦にはめられた課長をみて証拠もなにもないのに責められてるとき自分が悲しかった。もし今後同じことがあったとしたら、自分でないと言っても誰かの流れで無実の人でもああやって言うかもしれない。それを目の当たりにしたら、ここにいてもこの先いいことないかも…と思ってしまった。
「さて、ゆっくり探すかな」
会社を出てボソッと言った。
貯金もあるし、失業手当てもあるかゆっくり探すかな。でもこの歳で手に職がない私を雇ってくれる所あるんだろうか…
掃除のおばさんでも何でもやったる!雇ってくれるなら何処でもやったる!!みたいな気持ちでいくか!
会社を出て後ろを振り向いた。
8年勤めた会社。あっけなかったな。
「よう」
会社から出てきたのは室井さん。
そういえば、あれから会ってなかったな。
「なんか…、お久しぶりです」
「辞めるんだって?」
「あ、はい」
「ふーん」
興味なさそうな返事。まぁ、興味ないか。
「室井さんには、色々お世話になりました」
あたまを下げると
「いや、おれの方こそ、少しは仕返しが出来たから」
「…あっ、はい」
そっか。彼女の失ったのは辛すぎるよな。
「次の仕事は決まってるの?」
「いえ…、ゆっくり探そうと思ってます」
と言うと
「じゃ、俺のところこない?」
「え?」
「と言っても先輩や同期の数人と立ち上げたシステム会社だけど。既に同期と先輩達で先に会社は立ち上げてて、俺は今のプロジェクトが終わったら辞めてそっちに行く」
「そうなんですか。」
室井さんも辞めるのか…てか、起業するって凄いな、でも
「私、システム会社行っても役にたつことなんか」
「別にプログラム作れとか言ってないよ!先輩の奥さんが1人で事務してるんでお子さんもいるからもう1人いたらいいなって思ってるんだ」
「そうなんですか?」
「どお?」
「でも、そんな私で…、いいんですかね?」
「なんで?」
「だって、私室井さんに色々とお世話になりぱなしなのに」
「なにが?」
「えっ!?だって」
「当たり前でしょ?彼女なんだし」
!!?
「い、いや、それはもう…」
室井さんは近寄ってきて、そして
「あっー!」
「やっぱり…」
そう言って笑みをみせて
「メガネとると全然イメージ違うじゃん」
メガネを取られてそう言われる。
「あっ、えっ、そうですか?」
メガネをとれると裸がみられてるようでちょっと恥ずかしい。
その後すぐメガネは返してもらえたが。その後私は室井さんたちが起業した会社にお世話になることになった。
「仲山!こっちも頼んでいい?」
「はい!」
転職して2ヶ月。プログラムは組めないけど設計書のサポートとか、少しだけどやらせてもらってる。
確か以前にシステム部にいた人たちがいて、彼らと起業したのかーというのと
「え?阿川さんだったんですか?」
先輩の奥さんで事務してた人は私が新入社員のときに面倒みてくれた阿川さんだった。
「あれ?室井君、言ってなかったの?」
「はい」
「もー、相変わらず一言足りないのよね」
まさか、3年も前に退職した阿川さんと仕事出来るとは思わなかったので凄い嬉しかった。
そして
「おす!」
「待ってたぞ!」
「仕事いっぱい貯めてたからな!」
室井さんが退職し、この会社にきた。
皆でバシバシ頭を叩かれ、めっちゃ歓迎されてる。
私の顔をみて
「よう」
休みなく仕事をし、その間引き継ぎもあったりでやっとこっちに来れた。だから会うことも出来なかったけど
「…いいじゃん!」
私をみてそう笑顔で言われた。
コンタクトにして、髪の毛をストレートに伸ばし、メイク教室でメイクも勉強したりして、少しでもまた室井さんに笑顔で見てもらえたらと思って…
またこの笑顔がみれて、嬉しいやら恥ずかしいやらで視線を外してしまった。
「ちょっと、きて早々ラブラブモード勘弁よぉー」
と、阿川さんが言う。
「あ、いえ、そんなんじゃ…」
みんなにニヤつかれ、それでもやっぱりどこか嬉しかった。
「終わる?」
「え?」
後ろを無理向くと室井さんがいて
「あれ?今日歓迎会とか言ってなかったです?」
「まぁ、それは週末にしてもらった」
「そうなんですね」
「仕事慣れたそうだし安心したよ」
「お陰さまでありがとうございました」
と、頭をさげる。
「さて」
と言って私に肩をまわし
「行こっか」
「えっ?行くってどこに?」
「そんなの…、デートに決まってるでしょ!」
「泣かすなよー!!」
なんて野次もあったりしたが
「泣かすかよ!!」
と言って2人で会社を出た。
会社の人達からはもう公認になってるし、このままでいいのかな?でも、勘違いとか冗談とかかもしれないし、室井さんみたいなイケメンが私に…と思ってしまう。それに彼女のことだってあるし
私は彼氏いない歴5年だから何も障害ないけど
「えっ?」
恋人繋ぎされて
「解ってもらってると思ってるけど言葉にしてないから…、きっかけはあんな感じだったし、あいつに仕返しするまでは協力者だった。けど、今はそうじゃないから」
そう言って私の顔をみて
「いつの間にか、忘れられなくなっていた。だから、しっかり言わないとな」
「…」
「好きだ」
じっと見つめられてそして
「俺の恋人になって」
言葉に出ず、縦に首をふる。
「顔みせて」
下を向いてたので反対の手が頬に触り顔をあげられる。嬉しそうな顔が見えて
「俺のことどう思ってる?」
「…、す、す、きです」
と言うとキスをされ
「さて、飯行くか」
そう言って駅の方に向かった。
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