フラれた女

詩織

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「あっ…、気持ちだけもらっときます」







な、なにしてるんだ!?私

「す、すいませんでしたーー!!」

資料室から思いっきりダッシュで逃げる。

私、花村佳南はなむらかなみ、29歳。勿論独身。彼氏現在ナシ!

出版社に3年前に転職。

タウン誌を担当。

そして、今私はとんでもないことをした。

資料室に入ったら、前から気になってた人、坂木佑人さかきゆうとさんに、ついつい…

…告白をしてしまった。

だって、高いところのものを取ろうとして苦戦して倒れそうな時に、後ろでキャッチしてくれて、あまりにも近すぎて恥ずかしさ忘れて思わず

「あ、あの、好きです!」

と言ってしまった…

そして、思いっきり振ら急いで逃げた。

言うつもりはなかった。それなのに…


坂木さんは、ビジネス誌を担当してるので部署としては別の部署になり、私は情報部、坂木さんは企業部になる。

別の階だし、会うこともほぼない。

けど、私は彼の仕事に対する姿勢に目が離せなく、それからなんとなく目が離せないでいた。

見た目は俳優さん?と言われるくらいの容姿でかなりモテる。歳は多分同じくらいだろう。

昔から私は完全モテモテのって人はあまり好きにはなれなかった。だから今回は自分でもビックリしている。

彼を気になりだしたのは1年半くらい前。締め切りも近いのに全然文章もまとまってなかった。

書きたいことが全く浮かばない。

焦りに焦りまくってその日も1人で残業して頭を抱えてた。

気分を変えるためにリフレッシュルームに行って珈琲を飲んでいた。

「…俺はそうは思わないがな」

「え?なんで?」

「仕事が出来る出来ないって結局は自分しだいだろ!お前が自分で出来ないって思ってるだけじゃないか?」

「そうはいっても、全く浮かばないんですよ」

「お前なー、そんなの自分だけって思ってない?皆同じ経験してるんだよ」

「坂木さんにもそんなことあるんですか?」

「…あるに決まってるだろ!」

奥の方でそんな話が聞こえた。

あの後輩は私と今同じ状況かと、そう思ってみてた。

その坂木って人は

「まぁ、がんばれよ!」

そういって後輩を見送り脚を組んで珈琲を飲み、資料を見始めた。

そして、スマホが鳴り

「あー、今そっち行ったよ!俺が出来るのはここまでだよ!あとは皆でがんばれ!…え?だから大丈夫だよ!」

そういってスマホを切った。

先輩が後輩の面倒をみてた。それだけのことだけど、なんかそれ以降気になってそして別日に…

「こ、これ…」

これ何!?

言葉が出ない。

相変わらず、うまく文章がまとまらず頭を抱えてるとき、先輩から渡されたのはうちの社のビジネス誌の雑誌。

そして、このページをみろ!といわればかりに渡された。

まとまった文章。本当に解りやすい。しっかり要点をおさえて、で尚且つしっかり方向性をも見だしている。

「…凄い」

「坂木ってヤツが書いたんだが」

!?

あの人か…

「コイツ、ここまで出来るのにすげー努力してたよ!だからダメだと頭抱えるな!誰もがはじめから出来るなんてヤツいない!」

先輩から参考にと見せてもらったのが、あの人の記事でこんな風に書きたいと本当に思った。

その日からすこしだけ気持ちが楽になった。

誰もがはじめから上手くなんてできない。だから自分に才能がないと思うんじゃなく、何かをヒントに日々進めれいいんだ!

色んな雑誌を買って目にし、雑誌だけでなくネットのコラムや色々なものを毎日読むようにして、自分の文章になにが足りないのかを毎日反省するようにした。

そしてそんな日々を続けて数ヶ月後の今、私は目標としてた坂木さんに、好きといってしまった。

毎日彼の書いた雑誌をみてるうちにいつの間にか好きになっていた。…けど、好きは恋愛の好きとはちょっと違ってたんだが、今更訂正も…

まぁ、うん。日頃会う人じゃないしそのうち忘れてくれるだろう。



「…へ?」

編集長から今とんでもないことを言われた気がする

「別に左遷とかじゃないぞ!お前の最近の頑張りを見込んでだ」

「えっ?いや、だって…」

まさかの異動の話。しかも坂木さんのいるビジネス誌の。

「うちの面子も色んな雑誌を経験してる。お前も他を経験者させてもそろそろいいなと思ってな」

嬉しい話だけど、何もこんなタイミングで…

「行ってくれるよな?」

「…はい」

半月後から私はビジネス誌の担当となった。



「本日よりお世話になります。花村です」

皆の前で挨拶をする。

勿論坂木さんもいるが、なるべく見ないように…

私はベテランの持田もちださんにつくことになった。10歳くらい年上の男性で

「バシバシいくからな」

と言われる。

ビクッとするも

「はい!よろしくお願いします」

目鼻立ちはしっかりして、キリッとしている。モテそうな顔立ち。

それから私は持田さんの言う通り、バシバシしごかれた。

タウン誌では多くを経験してなかった取材も動向し、相手から聞き出すノウハウを必死に学ぼうとしてる。

が、思ってた以上に難しい。

取材を終え、社に戻り1人で内容を纏める。持田さんはもう1件取材をするようでその間私はしっかりと纏めるように指示されていた。

「…えっ?」

気がついたら22時を回っていた。

集中しすぎて全く気づかなかった。

スマホを見ると持田さんからは直帰と連絡のチャットがあり、無理して遅くまでやるなよ!と書かれてた。

「まじか…」

まさかチャットも気づかないとは…

あたりをみると、

ひっ!!

坂木さんだけしかいない。2人っきりだったのか…

「…そろそろ閉めたいんだけど」

急に話しかけてきた。

「えっ?あっ、はい!すいません」

急いで帰り支度をし、出ていこうとする。

って、もしかして待っててくれた?

「あ、あの…、すいません。今後は閉めかた覚えますので、教えて頂けないでしょうか?」

「…あのな、きたばかりのヤツにそれは出来ないだろ!」

「あ、はい!すいません!!」

パソコンを落とし、バックを持って出ようとするけど

「…なに?」

「あ、いえ、お待ち頂いてるので」

「そんなの、気にしないでいい」

待っててくれてるのが解ったようで、そう返されるも会社を出るくらいまで待ってようと思った。

カードキーを使って閉めて、管理室に渡して名前を書いている。

基本向こうのタウン誌でやってたことと同じだなー

「「お疲れ様でした」」

警備の人に挨拶をして裏口から出る。

「あ、あの、ありがとうございました」

「…」

「そ、それと、あの…、前言ってたことですけど、あの…」

や、なに急に私言い出してるのよ!?

「坂木さんのえっと、好きはあの…、毎日いつも坂木さんの記事を見て憧れてそれであの…」

「…そうだとしても、急に知らんヤツに言われても困るだろ!」

ごもっともな意見で

「…はい」

お互い駅に向かってるので方向が同じで…、これなら先に帰ればよかっと後悔した。



「あれ?」

横からこっちに向かって声かけられて

!?

うそ、まさる!!

半年くらい前に別れた優がいた。

会社近かったから、よく待ち合わせして帰ってたんだったわ!

「えー、新しい男できたんだ?」

「い、ちが…」

「いいの?コイツマグロでしょ?」

「!?」

優が坂木さんに向かって言う

「な、な、なにを」

焦って言葉見つからない。しかも坂木さんに向かってそんなこと…、死ぬほど恥ずかしい

「…へぇー」

坂木さんは、それだけ返した。

「せいぜい俺みたいに捨てられないようにな!」

そういって私達から離れて行った

「…」

最悪だ!!

仕事に必死すぎて全然時間とれなくなって、他の子と付き合いだして最終的には振られたという…、年下だったけどしっかりしてて安心しきってた。でも、全然会えないことにイラだってたのも知っていた。

私が…悪かったんだ。

でもだからって坂木さんにあんなこと…

「あ、あの、すいませんでした!」

そういってもうダッシュで走って駅に向かった。

振られたうえにマグロ女…って最悪すぎる!!今日だって遠回りに迷惑って言ってるようなもんだったし。

もう余計顔合わせずらくなった。



「うーん、まだまだだな」

「…はい」

持田さんに纏めた原稿見てもらうも、全然ダメだったようで更に凹む。

もう一度はじめったらとりかかる。

「もう少し要点をしっかり押さえろ!これだと何を言いたいのかわからん!」

うっ…

はぁー、必死で頑張ってるけど全然成果でないなー、今までなにやっててんだろ

「花村!これから別件で人と会う約束あるから俺は直帰になる。明日まてに仕上げとけ!」

「はい!」

持田さんも自分の仕事があるのにフォローしてくれてるんだから、それなりに負荷がかかってるのは知っている。

すこしでもなんもかしたい!と思いつつも空回りしてる。



「!?」

ヤバイ!また22時

そして…

はぁー、また坂木さん待たせてしまった。

「も、申し訳ありません!」

明日まで仕上げられないのでノートパソコンを持って帰る準備をして帰ろうとしたとき

「まだいいよ!俺も終わってない!」

「あ、はい!」

こっちを見ず返事が帰ってきた。

そか、じゃもう少しだけ…

ほとんど書けてない。書いては消しを繰り返しだった。

「花村!」

「は、はい!」

「お前さ、この記事を書くとき誰に何を伝えたい?」

「…えっ?」

「誰に伝えたいんだ?」

誰に…?これから社会に出る人たちに…

「そして、何を知ってもらいたい?」

雑用でも何でもそれが仕事だという取材の方が言ってたので、一つ一つ取り組んでくれればと…

「今、お前が思ったことを素直に書けばいい」

「…はい」

助け船?いやいや、そんなこと考えてる余裕はない!

目を瞑り、自分が思ってること、何を知ってほしいかを考えた。

回りにとらわれず、私が伝えたいこと!知ってもらいたいこと!

焦る気持ちを落ち着かせて、深呼吸して目を開けノートパソコンにむかった。



「はぁー」

納得いかないところも多いが、とりあえず書けた!!

「んーん!!」

と、背伸びしてハッと気づく。

「12時…過ぎてる…」

まじか!!どうしよう…、終電はダッシュでいけば間に合うかもだが

「もういいか?」

!?

「す、すいません!!」

結局待たせ…てしまった。

「あの、えっと…」

声かけてくれればよかったのにって思ったけど、きっと集中してたから待っててくれた?んだろうな。

「あ、あの、坂木さんは終電は?」

「こっちのことは気にするな!早く帰り支度しろ!」

「は、はい!」

急いで出る準備をする。

坂木さんも面倒みてる長柄ながえさんっていう女性がいて入社は私と同じ3年ちょっとと聞いている。私よりも5歳も若く可愛らしい子で、しっかりと指導し彼女が帰ると自分の仕事にとりかかってるようにみえる。

彼女の面倒もみて、私のことまで待っててくれて…

「あ、あの、本当にすいませんでした」

「いいから、早く帰れ!」

「はい!」

終電を心配してけれたのかそういってくれたので、急いで出ようとしたら

「…えっ!?」

「おい!花村!!」






「…あ、えっ!?」

「あ、気がついた。大丈夫ですか?」

だ、誰?この人…

綺麗な女性が心配そうに見てる。

ちょっと待って!私…

記憶をたどる。

確か会社にいて終電がヤバイ!と思ってそれから…

「あ、気がつきましたか」

もう1人部屋に入ってきた男性。

な、だ、だれ?この人たち!?

記憶がなくなったとかってことないよな?

「あ、あの、すいません。私…」

「少しさわるね」

と、男性が私の目の下を下げ、そして脈、おでこなどを確認する。

「多分疲労だと思うけど、まためまいなどで倒れるようなら検査したほうがいい」

「あっ、えっと…」

そう言うと、フッと笑って

「自己紹介まだだったね、俺は坂木直人さかきなおと、佑人の兄で
こっちが妻のりん

坂木さんのお兄さん!?

「佑人はちょうど今風呂入ってるよ!えっと、確かお名前は」

「花村です!」

「いちよう俺医師なんだ。倒れたと言って佑人が連れてきたのは驚いたが」

「…そうね、こんな深夜に」

みると1時半だった。

「す、すいません!!」

「ところで、佑人君とは付き合い長いの?」

「…えっ?」

「恋人なんでしょ?」

「と、とんでもない!!」

左右に大きく首をふって

「会社でお世話になってまして、いつもご迷惑をおかけてします」

「あら、同僚の方なの?」

「はい!」

「なに?気がついたの?」

と、ラフな格好できた坂木さん

「あ、はい!あのご迷惑をおかけしまして」

と、深々と頭を下げる。

「こんつめ過ぎなんだよ!もう少し自覚しろ!」

「は、はい!すいません」

「佑人、泊まっていくだろ?」

「あっ、わりーな。」

「いや、気を遣うことない!部屋も前泊まってたところ空いてるし使えばいい。花村さんも泊まっていく?また倒れられても大変だし」

!?

「い、いえ!私は失礼します!これ以上ご迷惑を…」

「でも電車もないし、おうちはどこ?」

「最寄駅はS駅で」

「じゃ、タクシーでもかなりかかるわね!よかったら泊まっていって!おもてなしとかは何も出来ないけど」

「いえ、そういうわけには…」

「倒れられても困るだろ!」

と、坂木さんに言われて

「…はい」

結局そのまま泊まらせてもらうことになった。

確かにまだめまいみたいなのはある。動くのはしんどいのは確かだったので有難いけど…

「ここはゲストルームだから。私達は別に部屋もあるし気にしないで!あっ、ここに着替えだけ置いときますね」

「す、すいません」

「シャワー浴びたくなったら遠慮なくどうぞ!」

さすがにそこまでは…

私はベットにまた横になりそのまま寝てしまった。

少し明かりを感じて目をあける。

…朝か。

カーテンから日差しが漏れてそれでわかった。

まだ6時。

一旦家に帰ろう。着替えをしたいし今日中にこれも仕上げたい。

そう思って部屋を出ると

「あら、おはよう!」

「…えっ?」

お兄さんの奥さん、凛さんがいた。

「今まってね、朝食出きるから」

「お、おかまいなく、あの…」

「朝早くに家に戻ろうとしてるの解ってたから」

と、笑顔で言われて

「ご飯だけでも食べて」

テーブルには1人分の朝食が準備されてた。

「まだうちのも佑人君も起きてないから」

「…はい」

折角なので頂いた。

「頂きます」

頭を下げてご飯を頂く。

こんな朝ごはん久々だな。

いつも、食べないかパンだけだった。

「仕事…、頑張り過ぎてるのかな?」

「…え?」

「佑人君がね、自分の身体考えないで仕事してるように見えるって言ってたから」

「…あ、そんな」

ことはないですって言おうとしたが、昨日実際に倒れてるし最後まで言えないでいた。

「佑人君はしっかり見てるから、だからもっと自分の身体もしっかり管理しておしごとしてね!」

「はい」

「それと…」

少し間があって

「佑人君のこと好きでしょ?」

えっ!?

「いえ、そんな…、尊敬してる憧れてる先輩と言う意味では好きですけど」

「…そか」

と、笑顔で答えられる。

「仕事に必死すぎなのかな?」

な、なに?

坂木さんのこと好きに見えるの?

まさか…

食事を終え、深々とお礼をして近々お礼に伺うことを伝え後にした。
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