毎日!アルスの日常366

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服選び・突然現れる回(全2話)

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【服選び】~ナタモチ~

藍夏はヒロを連れて、服屋へと訪れていた。
店に入ると、正面には冬用の服装のマネキンが立っていた。

藍夏「ところで、あんたの傾向が分かんないんだけど。」

マネキンの着る服の裾に触れながら、藍夏は「いつもどんなの着るの?」と尋ねた。

ヒロ「あの、え~と...。」

普段オシャレをしないヒロは口ごもる。

黒いパーカーや白のシャツなどといった、無地の服を着るだけのときが圧倒的に多い。

藍夏「...じゃあ、着てみたいのとかはある?」

質問を変えるが、反応は同じだった。

近くに立つマネキンに着せられた服を見ても、ヒロはピンとこないようだった。

ヒロ「藍夏さんから見たら、どんなのが似合いそうかな...。」
藍夏「あたしから?そうねぇ...。」

藍夏は、店内を歩いて物色すると、数着の服を手に取る。

藍夏「そこに試着室あるから、黙って着てきて。」

選んだ2着の服と1着のズボンをヒロに押し付け、試着室のある方へと連れて行く。

ヒロ「う、うん……。」

言われるがまま、ヒロは試着室へと入っていった。

彼の着替えが終わるまで、近くの椅子に腰掛け待っていた。

ヒロ「ど、どうかな...。」

試着室のカーテンが開かれて、中からヒロが出てくる。
彼のコーデは、白のパーカーに緑のジャケットを羽織り、カーキ色のズボンで合わせたものだった。

藍夏「うん、思ったとおり服の相性はいいね。」

フードの位置を手直ししながら、藍夏は頷く。

藍夏「あんた派手なの苦手そうだし、できるだけシンプル寄りにしたんだけど。」

しかし、どこか納得いかない部分があるそうで「でも、な~んか違うんだよね。」と呟く。

顎に手を添え、少しだけ考えると藍夏はヒロと目を合わせた。

ヒロ「え...なに?」

藍夏はヒロの眼鏡を外し、下ろしてある前髪をかき分けた。
一気に雰囲気が変わったヒロを見て、藍夏は納得の様子だった。

藍夏「やっぱあんた、顔立ちは良いのよね。地味だから気付かないけど。」

眼鏡を渡しながら藍夏は「コンタクトに変えれば?」と提案するが、ヒロは「付けるのが怖いから...」と拒んだ。

藍夏「なら、髪型だけでもどうにかしなさいよ。あとでセットの方法も教えるから...。」

そう言うと藍夏は、近くのハンガーにかけてあった服を一式手に取り、「次これも着てみて」とヒロに押し付けた。

ヒロ「え、まだあるの!?」
藍夏「当たり前でしょ、何パターンも試してみて、そっから選ぶの。はい着る!」

驚くヒロを、藍夏は問答無用で試着室に押し込む。
藍夏はヒロを休ませる間もなく、次々と色んなコーデを試させていた。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



【突然現れる回】~アルスの日常~

ヒロは3着目の試着を終え、カーテンを開けた。

藍夏「こっちもいいね、若干のフォーマル感があって大人っぽいかも。」

襟を直しながら、藍夏はそう評価する。

アルス「さっきのよりはかしこまるが、大事な場面では割とええかもな。」
藍夏「うわビックリした!!いきなり出てくんなよ!」

顎に手を添え、物事を想定しながら話すアルスと、反射的に体をのけ反る藍夏。

どこから出てきたのか、急に現れたアルスに驚いていた。

ヒロ「い、いつからいたの?」

眼鏡を掛け直しながらそう尋ねる。

アルス「1個前の試着からすぐそこで見てたぞ」

近くにある服の棚を指差しながら、アルスはそう答えた。

藍夏「全然気付かんかったわ、いるなら言えよ。」

乱れた髪を直しながら、彼の肩を小突く。

アルス「悪い悪い。たまたまいたもんでな、驚かそうとはしてた。」
藍夏「してたのかよ!」
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