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田舎の祖父母宅の回・冬休み前半の思い出・開幕(全3話)
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【田舎の祖父母宅の回】~アルスの日常~
アルスは祖父母やいとこ達に会う為、とある田舎町にある家へと足を運んでいた。
車から降りると、黒いコートを着た祖父とオレンジ色の髪をしたいとこが出迎えてくれた。
無邪気な閏は「おじいちゃ~ん!」と呼び上げると、車を飛び出し祖父の元へと駆け寄る。
ガスター「よく来たのう、早速上がりなさいな。」
抱き着く閏を受け止めながら、ガスターは玄関まで先導をする。
アイリス「パールあけおめ~!元気してた~?」
手袋を外したアイリスは、パルムースの手を握りブンブンと振り回す。
パルムース「ええ、おかげさまで。...そちらもお変わりなく?」
こちらから問い掛け返すと、アイリスは「全然!」と即答した。
しかし、なにか問題があるのだろうか。
返事を返した直後、わずかに曇り顔を浮かべた。
アイリス「せやけど、大学が忙しいからなぁ...ま、大変やけど楽しくやっとるで大丈夫やで!」
明るく振る舞うアイリスに「そう、それならよかった。」と眉を開いた。
アルス「ところで、クレは来てるのか?」
アルスはアイリスと反対側の、パルムースの隣で歩を合わせる。
パルムース「そのことだけど、さっき連絡が来てさ。」
そう言って、パルムースは携帯を起動させる。
メッセージアプリを立ち上げ、クレとのやりとり画面を開く。
そこには『寄り道するからお昼前に着く~!』と連絡が来ていた。
パルムース「時間的にはあと30分頃じゃないかと。途中でカフェにでも寄ってるんじゃないかな。」
彼女のことだから、きっとそうだろうな。
なんとなくだが、察しがつく。
アルス「それより返信してやれよ」
画面を見ると、パルムースは既読を付けただけで、なにも返事を送っていなかった。
パルムース「見れば伝わるでしょ、逆になにを送ればいいの。」
相変わらず冷たいなこいつは。
アルスはキーボードをスタンプに切り替え、『了解!』と書かれたスタンプを送った。
パルムース「ちょっ勝手に!?」
しかも彼女の柄に合わない、ゆるふわなタッチのイラストだ。
キャラクターは投げキッスをしており、おまけに文字の後ろにはハートのビックリマークが付いていた。
アルス「せっかくやし送っときな、クレも嬉しがるやろし。」
鼻を鳴らすアルスの肩に、一発パンチをお見舞いした。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【冬休み前半の思い出】~Life's~
昼食を済ませるとパルムースは、冬休み中の出来事を語らうアルスとクレに耳を傾けていた。
アルス「そういやクレ、エルと出掛けたらしいな。」
いつしかエルが言っていたことを思い出し、アルスはそう切り出す。
クレはニコッと笑みを浮かべ「そう!」と頷いた。
ココアの入ったマグカップを置くと、そばに置いてあった携帯のアルバムを開く。
クレ「2人でイルミネーション見に行って来たんだ~!雪が降ってるのも相まって、すごく綺麗だったよ!」
当時の写真を見つけ、2人に見せる。
細々とした雪が写っており、パラパラと降っていたのが分かる。
地面には雪が敷き詰められ、もはや会場に施された装飾の一部と化していた。
パルムース「へぇ、いい一枚じゃないか。」
釘付けとまではいかないが、パルムースは写真に惹き付けられる。
クレ「でしょでしょ!構図とか結構いい感じだよね!」
ライトの色合いが積雪を彩り、季節を感じられる写真となっていた。
直感的に見て、綺麗だと感じられたようだ。
アルス「冬ならではって感じがしてええな」
そう評価するとクレは「そうなの!いいときに行けて良かった!」と嬉しそうだった。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【開幕】~電脳戦士の理~
ガスター「おういお前さん達、机の上をさっぱりにしてくれい。」
お盆を持った祖父が、食器や調味料等をどかすよう促す。
アルスは醤油やふりかけを棚にしまいながら、「今年もやってきたか」と呟いた。
ガスター「3人でなにを話しとったんだ?」
空いたスペースにトレイを置くと、アルス達に尋ねた。
パルムース「冬休み中あったことや、予定とかについてだよ。クレは最近、イルミネーション見に行ったみたいだけど。」
内容を軽く説明すると、ガスターは「そうかそうか、よかったのう。」と頷いている。
ガスター「学校の事とかは話さんのかね、3人とも同じ年だろうに。」
パルムース「年どころか、学校も同じだよ。」
机を拭きながら、半ば呆然としながら言い含める。
するとガスターは「そういやあ、そうだったのう。」と頭を掻いていた。
ガスター「さて、準備も整ったことだし、そろそろ始めるとするかの。」
トレイの上に置かれた、パンパンになった一袋。
子供達を召集すると、袋をひっくり返しトレイの上に流し込む。
流れ出てきたのは、大量の小銭だった。
閏「わ~い!いっぱいある~!」
ぴょこぴょことやってきた閏は、机の前で飛び跳ねる。
...そう。
この家では毎年、爺ちゃん主催の掴み取り大会が開かれていた。
貰えるお年玉の金額は、己の実力次第である。
巧みな技術で、いかに多く掬えるか。
また、狙い所も肝心である。
鋭い洞察力で演算し、いかに高い数値の小銭を集められるか。
結果の全ては、己の利き手に託されていた。
アイリス「閏!ここにあるの全部かっさらう気で挑みな!」
閏はアイリスに背中を押され、「よーし、頑張っちゃお~!」と士気を上げた。
クレ「クレープ何個買えるかな~!」
パルムース「もっと他にもあるでしょ」
換算がなんとも彼女らしい。
なにはともあれ、年明けの楽しみの一つだ。
命運を含めた一握りを、ここに捧げよう。
白熱した少年少女らのお年玉を巡る熱き戦いが、今始まろうとしていた。
パルムース「いや...私は全然興味無いけど。」
アルスは祖父母やいとこ達に会う為、とある田舎町にある家へと足を運んでいた。
車から降りると、黒いコートを着た祖父とオレンジ色の髪をしたいとこが出迎えてくれた。
無邪気な閏は「おじいちゃ~ん!」と呼び上げると、車を飛び出し祖父の元へと駆け寄る。
ガスター「よく来たのう、早速上がりなさいな。」
抱き着く閏を受け止めながら、ガスターは玄関まで先導をする。
アイリス「パールあけおめ~!元気してた~?」
手袋を外したアイリスは、パルムースの手を握りブンブンと振り回す。
パルムース「ええ、おかげさまで。...そちらもお変わりなく?」
こちらから問い掛け返すと、アイリスは「全然!」と即答した。
しかし、なにか問題があるのだろうか。
返事を返した直後、わずかに曇り顔を浮かべた。
アイリス「せやけど、大学が忙しいからなぁ...ま、大変やけど楽しくやっとるで大丈夫やで!」
明るく振る舞うアイリスに「そう、それならよかった。」と眉を開いた。
アルス「ところで、クレは来てるのか?」
アルスはアイリスと反対側の、パルムースの隣で歩を合わせる。
パルムース「そのことだけど、さっき連絡が来てさ。」
そう言って、パルムースは携帯を起動させる。
メッセージアプリを立ち上げ、クレとのやりとり画面を開く。
そこには『寄り道するからお昼前に着く~!』と連絡が来ていた。
パルムース「時間的にはあと30分頃じゃないかと。途中でカフェにでも寄ってるんじゃないかな。」
彼女のことだから、きっとそうだろうな。
なんとなくだが、察しがつく。
アルス「それより返信してやれよ」
画面を見ると、パルムースは既読を付けただけで、なにも返事を送っていなかった。
パルムース「見れば伝わるでしょ、逆になにを送ればいいの。」
相変わらず冷たいなこいつは。
アルスはキーボードをスタンプに切り替え、『了解!』と書かれたスタンプを送った。
パルムース「ちょっ勝手に!?」
しかも彼女の柄に合わない、ゆるふわなタッチのイラストだ。
キャラクターは投げキッスをしており、おまけに文字の後ろにはハートのビックリマークが付いていた。
アルス「せっかくやし送っときな、クレも嬉しがるやろし。」
鼻を鳴らすアルスの肩に、一発パンチをお見舞いした。
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【冬休み前半の思い出】~Life's~
昼食を済ませるとパルムースは、冬休み中の出来事を語らうアルスとクレに耳を傾けていた。
アルス「そういやクレ、エルと出掛けたらしいな。」
いつしかエルが言っていたことを思い出し、アルスはそう切り出す。
クレはニコッと笑みを浮かべ「そう!」と頷いた。
ココアの入ったマグカップを置くと、そばに置いてあった携帯のアルバムを開く。
クレ「2人でイルミネーション見に行って来たんだ~!雪が降ってるのも相まって、すごく綺麗だったよ!」
当時の写真を見つけ、2人に見せる。
細々とした雪が写っており、パラパラと降っていたのが分かる。
地面には雪が敷き詰められ、もはや会場に施された装飾の一部と化していた。
パルムース「へぇ、いい一枚じゃないか。」
釘付けとまではいかないが、パルムースは写真に惹き付けられる。
クレ「でしょでしょ!構図とか結構いい感じだよね!」
ライトの色合いが積雪を彩り、季節を感じられる写真となっていた。
直感的に見て、綺麗だと感じられたようだ。
アルス「冬ならではって感じがしてええな」
そう評価するとクレは「そうなの!いいときに行けて良かった!」と嬉しそうだった。
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【開幕】~電脳戦士の理~
ガスター「おういお前さん達、机の上をさっぱりにしてくれい。」
お盆を持った祖父が、食器や調味料等をどかすよう促す。
アルスは醤油やふりかけを棚にしまいながら、「今年もやってきたか」と呟いた。
ガスター「3人でなにを話しとったんだ?」
空いたスペースにトレイを置くと、アルス達に尋ねた。
パルムース「冬休み中あったことや、予定とかについてだよ。クレは最近、イルミネーション見に行ったみたいだけど。」
内容を軽く説明すると、ガスターは「そうかそうか、よかったのう。」と頷いている。
ガスター「学校の事とかは話さんのかね、3人とも同じ年だろうに。」
パルムース「年どころか、学校も同じだよ。」
机を拭きながら、半ば呆然としながら言い含める。
するとガスターは「そういやあ、そうだったのう。」と頭を掻いていた。
ガスター「さて、準備も整ったことだし、そろそろ始めるとするかの。」
トレイの上に置かれた、パンパンになった一袋。
子供達を召集すると、袋をひっくり返しトレイの上に流し込む。
流れ出てきたのは、大量の小銭だった。
閏「わ~い!いっぱいある~!」
ぴょこぴょことやってきた閏は、机の前で飛び跳ねる。
...そう。
この家では毎年、爺ちゃん主催の掴み取り大会が開かれていた。
貰えるお年玉の金額は、己の実力次第である。
巧みな技術で、いかに多く掬えるか。
また、狙い所も肝心である。
鋭い洞察力で演算し、いかに高い数値の小銭を集められるか。
結果の全ては、己の利き手に託されていた。
アイリス「閏!ここにあるの全部かっさらう気で挑みな!」
閏はアイリスに背中を押され、「よーし、頑張っちゃお~!」と士気を上げた。
クレ「クレープ何個買えるかな~!」
パルムース「もっと他にもあるでしょ」
換算がなんとも彼女らしい。
なにはともあれ、年明けの楽しみの一つだ。
命運を含めた一握りを、ここに捧げよう。
白熱した少年少女らのお年玉を巡る熱き戦いが、今始まろうとしていた。
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