孤独の風が吹くまでは

吹くまでは

第二話「友情の裏側」

第二話「友情の裏側」

休み時間、ヒトミとハイナは移動教室のために渡り廊下を歩いていた。
二人は先日の出来事をきっかけに、自然と一緒に過ごすことが多くなっていた。

リヒカ「あれ、二人とも仲良かったんだ？」

突然、明るい声が響き渡った。
振り向くと、リヒカが友達と談笑していたところから顔を出し、意外そうにそう尋ねてきた。

ハイナ「うん！最近ね！」

笑顔で返すハイナに続けて「ええ、色々あってね」とヒトミも静かに頷く。
リヒカは一瞬だけ二人を見つめ、「ふ～ん、ま！いいことじゃん！」と明るく振る舞った。

その言葉の裏には、少しだけ羨ましさが滲んでいたのかもしれない。
そんなリヒカに、ヒトミは注意深い目を向けると...。

ヒトミ「それよりもあなた、そんなところに座らないの。危ないでしょ」

渡り廊下の柵に腰掛けるリヒカに、冷静に声をかけた。

リヒカ「えへへ、ごめんちゃ～い」

注意をされたリヒカは軽く謝りながら柵から降りると、軽快に笑った。

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その日の放課後、リヒカは夕暮れ時の校舎を一人歩いていた。

忘れ物を取りに教室へ向かっていた途中、女子トイレから聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
その正体は、休み時間に一緒に談笑していた女子生徒たちだ。

何気なく聞き耳を立てていたリヒカだったが、その内容が自分の陰口だと気付いた瞬間、心に重い痛みが走った。

「あの子、本当はうざいよね」

笑いながらそう話す声が耳に焼きつく。

リヒカは耐えられなくなり、忘れ物を取りに行くこともせず、そのまま生徒玄関へ駆け出した。

校舎を出たところで、壁にもたれながら溢れる涙を拭い、彼女は一人悲しさに打ちひしがれていた。

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翌朝、リヒカはいつもより少し遅めに登校してきた。
遅刻ギリギリに教室に着くリヒカを見つけたヒトミは「危なかったね、もう少しで遅れるところだったよ」と声をかけた。

リヒカ「あ、うん...そうだね...」

普段とは違うリヒカの暗い声に、ヒトミは「あなた、なんだか暗くない？具合悪いの？」と尋ねる。

ヒトミ「それとも、なにかあったの？」

続けてそう問いかけると、リヒカはヒトミの手を引き廊下へと連れ出す。

そこでリヒカは涙目になって「私、昨日の放課後に陰口聞いちゃって...友達だと思ってた人のことが怖くなって...。」と打ち明ける。

リヒカ「それで他の人のことも信用できなくなっちゃって...。」

そんな彼女をヒトミは抱き寄せると「それならもう、その子達とは関わらない。これからは私がついてるから。」と温かく声を掛ける。

その言葉に安堵したリヒカは、ヒトミの胸で涙を流した。

リヒカはヒトミの腕の中でしばらく泣き続けた。
涙が止まらないのは、これまで心の中に溜め込んでいた不安や恐怖が一気に溢れ出したからだ。

泣くことができる相手がいる、ただそれだけで彼女の心は少しずつ軽くなっていく。

リヒカ「ごめんね、こんなことで泣いちゃって...」

すすり泣きながらそう呟くリヒカに、ヒトミは「謝ることなんてないわ」と優しい声で答え、リヒカの髪をそっと撫でた。

ヒトミ「誰だって辛い時はある。大事なのは、その時に誰かがそばにいることよ。」

その言葉に、リヒカはもう一度深く息を吐き出した。

ヒトミは強い人だと改めて感じた。
表面的には冷静で、時には厳しい言葉を口にするが、その内側には温かさが溢れている。

リヒカ「ありがとう、ヒトミ...」

そんなヒトミに、リヒカは小さく感謝を伝えた。
彼女の心に、一筋の光が差し込んだように感じた。

ヒトミ「うん、私がいるから大丈夫」

そう言うとヒトミは再びリヒカの肩に手を置き、力強く言った。

ヒトミ「それに、これからはハイナもいるわ。彼女もあんまり人を信用するタイプじゃないけど、あなたと同じで、本当は誰かと繋がりたいと思っているんじゃないかしら。」

リヒカはその言葉に少し笑みを見せた。

ハイナは確かに元気で明るいが、どこか孤独そうに見える瞬間があった。
自分と似ている部分があるかもしれない、とリヒカは思った。

リヒカ「そうだね、これからは私も二人に頼ってみるよ...」
そう言うとリヒカは涙を拭い、少しずつ気持ちを立て直した。

ヒトミは「それなら良かった。」と言うと微笑み、リヒカに手を差し伸べた。
リヒカもその手をしっかり握り返し、二人はこれから始まる新しい友情に希望を感じていた。