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3話
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前回のあらすじ
日暮れ後の学校に閉じ込められた2日目、私達は学校に隠されたオーブを探し出すこととなった。
-藍夏Side-
藍夏「じゃあ3階から潰していって、1階まで見ていこうか。」
こちらの班は、リーダーを藍夏に、班員は私と紫音、そして昭太だ。
藍夏「ホント美優が来てくれて助かったよ」
藍夏がひっそりと、私に耳打ちする。
美優「え、なんで?」
私は咄嗟に聞き返した。
藍夏「あたしだけじゃあの2人怖がらせちゃいそうじゃん?性格真逆だし。」
言われてみればそうだ。
藍夏は、自分の思ったことをすぐ言い出せるし、主張できる。
しかし、紫音と昭太は控えめで、私達が聞き出さないと答えを出してくれないことが多い。
実はもっといい案があったかもしれないし、別のことがしたかったのかもしれない。
美優「ま、まあ...いずれ打ち解けると思うよ。」
私は頬を掻きながら、苦笑いをした。
藍夏「だといいけどね...」
腕を組み、窓の外を眺める。
景色は相変わらず暗闇に包まれた街が見えるだけだ。
街灯どころか、窓の明かり1つすらついておらず、不気味さを演出する。
まるで、私達以外が消えてしまったようだ。
藍夏「てゆうか美優さぁ...」
急にトーンを変えて、再度私の名を口にする。
なにかしたっけ、と今日の出来事を振り返る。
さっき起きるのが遅くて、それについて言われるのかなと思ったけど...違ったみたい。
藍夏「あんたさっき私についてくって言った時、藍夏ちゃんって言ったよね?」
それがどうかしたのだろうか。
彼女の台詞的に、ついてきたことに関しては文句はないと思うけど。
美優「う、うん?そうだったかもだけど...それがどうかしたの?」
恐る恐る質問の理由について聞き出す。
藍夏「あたしのことは藍夏でいいよ、小学からの友達じゃん?あたしもあんたのことは美優と呼んでるでしょ?いつまでもちゃん付けしてたら、仮初めだって言われちゃうじゃん?」
藍夏はニッと笑ってそう答えた。
なんだ、そんなことか。
この数年で、私と藍夏の間に壁ができていたと勝手に勘違いしていた。
でもそれは、彼女にとってはなんでもなかったみたいで。
私は安心した。
美優「な、なんだ...なにかやらかしちゃったと思ったよ...」
藍夏「なによ!?怒られると思ったの!?」
胸を撫で下ろす私を見て顔を近付けた。
近い。これ鼻当たってるよね?
藍夏「あたしはね、本当に間違ってることしてたらそりゃ怒るよ。でも大概のことはフォローして回るから。」
本当に彼女は、昔から変わっていない。
人を想いやる能力があるのは、間違いなく彼女そのものだ。
私の勝手な偏見で、藍夏と言う人物像の印象を下げていただけだったみたいだ。
美優「...うん、やっぱり藍夏は藍夏のままだね。」
私の一言に、藍夏はピンと来てない様子。
藍夏「あたしはあたしだけど...」
まあ、汲み取ってもらえなくても構わない。それより、私にはずっと気になっていたことがある。
美優「ね、ねぇ...大丈夫?」
私は壁沿いで震える紫音に声をかけた。
藍夏「なに?寒いの!?」
体を小刻みに揺らす紫音を見て、藍夏はひどく気に掛ける。
藍夏「寒いんならあたしの上着使いなよ!」
そう言って、彼女は腰に巻いていたカーディガンをほどき、紫音に肩から被せた。
それでも震えが止まらない紫音。
この震えの原因は一体なんだと言うのか。
紫音「あ、あの...気に掛けてくださりありがとうございます...ですが寒いわけではないので、大丈夫です...」
どうやら寒さで震えているわけではないようだ。
藍夏「あれ、そうなの?」
美優「じゃ、じゃあ、どうして?」
顔を見合わせる私と藍夏。
私は紫音の震えている理由を尋ねた。
紫音「あの...やっぱり、怖いんですよね...」
口元に手を寄せ、怯えるように答える。
ちょっと待って、乙女じゃん。
語彙力迷子で説明できないけど、乙女じゃん。
紫音「夜の学校って、普段立ち入らないですし...それに昨夜の事もあってか、いつあの人が出てくるのかが気になってしまいます...」
怖がる理由を、たどたどしいがなんとか紡ぎながら説明している。
確かに、昼と違って夜の学校は不気味だし、たとえ明かりがついているとしても不安になるのは無理もない。
例えるならば、海外の都市伝説みたいだ。
やんちゃしてるとか、そういうのではない限り、私もここに立ち入りたくはない。
前に、休んだ友達の提出物を学校にまで持っていったことがあるけれど、あの時はもうダメだと思った。
急かした先生を恨みそうになった。
...話がそれたけど、あの人とは、私達を3tsuが1しに来た、あの大人の人だろう。
無作為なのか丁寧なのか、よく分からず襲い掛かってくるあの人物像に戦慄が走る。
藍夏「そうね...あんな社畜に怯えるのも分かるわ。」
藍夏は顔を歪ませ、そっぽを向く。
藍夏「...無理な話かもしれないけど」
が、すぐに紫音に向き直る。
藍夏「今は気にしない。来たら来た時。今はやるべきことがあるんだから、それに目を向けないと。」
覚悟を決めた瞳をしている。
私から見た藍夏は、時に怖いとこもあるけど、勇ましく、カッコいい。そこら辺のチャラけた男子よりも断然。
藍夏「やらなければいけない。そんな時、すき嫌いは言ってられないよね。...私はあんたとそいつを守る為に班員として選んだんだからさ。」
藍夏「無理な話かもしんないけどさ、今は気にしない。来たら来た時。今はやらなければいけない時なの。」
藍夏は、紫音の肩を持ち、昭太を顎で指す。
藍夏「頼ってよ。でなきゃ存在と意志が無駄になるじゃん?」
藍夏は笑って、そう言った。
美優「そうだよ、私も頑張るから。だから一緒に頑張ろう!」
私は率先して人の前に立つということはできないけど、補佐ならできる。
足手まといにならないように、少しでも役立てるように...なんて、自分を守るためじゃない。
藍夏の負担を少しでも減らしたい。その気持ちが強かった。
紫音「...分かりました。私も頑張ってみます...」
紫音には伝わったみたいだ。
昭太はというと...やはり必死に頷いている。
本当に、ヘドバン状態だね。
藍夏「あぁ、もう!いつまでも敬語使わないの!痒くなる!」
藍夏はどちらかと言うと、友好的に接してほしいみたいだ。
馴れ馴れしく呼び掛けても、恐らくそれは普通だと捉えられると思う。
私はしないけど。
藍夏「あたしはあんたのことは紫音って呼ぶし、あんたもあたしのことは藍夏でいいよ。」
紫音「で、ですが...」
紫音はというと、かなりためらっている。
正直な話、紫音が教室で誰かと話しているところは一度も見たことが無かったかもしれない。
人と話すことに慣れていないのか、かつ相手が藍夏だからだろうか。
だが、藍夏はと言うと...
藍夏「なによ、別に強要してるわけじゃないし。ていうか、あたしら友達じゃん?友達なら気軽に接してくれればいいんだけど。」
紫音「友達...?」
紫音が不思議そうな顔をした。
紫音「私なんかを友達として見てもいいんですか...?」
おずおずと藍夏に問う。
藍夏「当たり前じゃん。そうじゃなきゃここまで近付いてないよ。」
藍夏「そうと決まったら早速この3階の端から...」藍夏が突き当たりの教室の扉に手を掛けたその時、サイレンが鳴り響いた。昭太「う、うわぁぁあ!」昭太の情けない悲鳴も聞こえる。藍夏「ちょ、なによこれ!?あーもう、うるさい!」耳を塞ぐ藍夏。サイレンが鳴るなか、校舎内は光る。
オレンジ色に照らされた。
続けて、青色にも切り替わり、しばらくサイレンはなり続けた。足がすくみ、動けず、その場に固まる。
通香はしゃがみこみ、昭太は壁に身を寄せていた。数十秒が経過した頃、ようやくサイレンが鳴りやんだ。藍夏「...やっと止まったね。」両耳から手を離し、辺りを見渡す。
藍夏「ねぇ、なんでオレンジとか青に照らされるの?」美優「さあ...なんか法則とかあるのかな。」
そもそもサイレンが鳴る理由が分からないことには解決しない。
でも、私には心当たりがあった。しかし、それはまだ確定してないので、今は言わないことにした。藍夏「...とりあえず、ここん中入っとく?」美優「そ、そうだね。少しでも多く調べておかないと。」教室内に入り、辺りを見渡す。藍夏「さて、どこにあるのかね。」腰に手を当て、肩の力を抜く藍夏。美優「棚とか引き出しとか...あとここには準備室もあるね。」大きな黒板の隣にある準備室の扉を指差す。藍夏「げっ...しかも、なんだっけ?オーブの大きさとか分かんないし、手を抜くわけにはいかないよね。」腕を回し、渋々探索をし始めた。私も引き出しの中を1つ1つ確認しに回り始めた。通香「ま、待ってください...。」入り口付近の棚に手を掛けようとしていた通香が、こちらに向かって呟いた。藍夏「なに、もう見つけたの!?」蛇口の下の棚を調べていた藍夏が立ち上がり、通香の方へと体を向けた。通香「い、いえ...誰か来てるような...。」入り口から離れ、黒板の前の机の横まで下がる。足音が聞こえたのだろうか。藍夏「まさか...あの社畜?」可能性はある。私も少し距離を置き、体勢を整えた。
確かに、足音が聞こえてくる。自分の鼓動が聞こえる。手を握りしめる。
汗を拭った。開いた扉に手が掛かり、そこから美浦が姿を表した。藍夏「なんだ美浦か~!」藍夏は近くの机に体を伏せ、安堵の息を吐く。美優「もう、怖いよ!てっきりあの大人の人かと思っちゃった!」音の正体が分かり、胸を撫で下ろす。しかし、美浦は深刻な表情をしている。美浦「ご、ごめん...あのさ。」美浦は、私達の方を向き、こう言いはなった。美浦「隼士と賢澄君が、56されちゃった。」私達は絶句した。突然の報告に、硬直するばかりだ。
美優「...ねぇ、藍夏。」私は美浦の方を向いたまま、反対の窓側にいる藍夏を呼ぶ。美優「さっき、サイレン鳴った時、青く光ったよね。」藍夏「そ、そうね...オレンジと青があったわ。」藍夏は先程の事を思い出す。藍夏「それがどうかしたわけ?」藍夏の問いに、私は一呼吸置いたのちにこう答えた。美優「昨夜、私は隼士君が56される瞬間を見た。その時も、青い光で照らされたんだよ。」ここまで言うと、藍夏も勘づいたらしい。藍夏「そ、それってつまり...。」私は藍夏と目を合わせる。美優「サイレンは、誰かが56されたことを、色は誰が56されたかを暗示しているんだと思う。」
しばらく目を合わせていると、入り口の方からなにやら鋭い音が聞こえてきた。すぐさま視線を向けるとそこには...。
腹部からナタが貫かれている。美浦の背後には、いつの間にかあの男性が立っていた。美浦「あ...あぁ...」貫かれた腹部を見て、絶望の表情を浮かべている。美浦「は...早く逃げ...」美浦が言い終わる前に、男性はナタを天井へ振り掲げた。首の真ん中辺りまでが裂け、その切れ目と頭から大量の血が流れ落ちる。
通香は悲鳴を上げ、地面を這いながら教室の後ろへと逃げ出そうとする。
藍夏「美優、こっち!!」準備室の方へ駆け出し、片手で私を手招きする藍夏。通香と昭太は既に(教室の後ろへと辿り着いていた。今更こっちへ来ることは難しいと悟った私は、準備室の方へと
藍夏「来いよ社畜!」小さな容器を投げつけ、そのまま2階へとかけおりた。
ナタモチ「一人一人、正確に執り行わなければいけませんよ。」
しかし男性は、藍夏達に見向きもせず、教室へと入ってきた。
賢澄「真っ先にやられてしまった、こういうのには、僕にリーダーは務まらない。」
昭太「ご、ごめん...僕もあの直後に...」藍夏「別にいいって、そんなの。」
藍夏「知ってる。朦朧とした状態であんたの声聞こえたからね。痛々しい、短い悲鳴が。」
藍夏「...逆にね、余計に怖がらせてしまったかなって。私の姿を見て、自分もこうなるっていう気持ちを植え付けたんだよ、私は。バカだよね。」
藍夏「半端な気持ちで鉄砲玉になるなよって話よね。」
日暮れ後の学校に閉じ込められた2日目、私達は学校に隠されたオーブを探し出すこととなった。
-藍夏Side-
藍夏「じゃあ3階から潰していって、1階まで見ていこうか。」
こちらの班は、リーダーを藍夏に、班員は私と紫音、そして昭太だ。
藍夏「ホント美優が来てくれて助かったよ」
藍夏がひっそりと、私に耳打ちする。
美優「え、なんで?」
私は咄嗟に聞き返した。
藍夏「あたしだけじゃあの2人怖がらせちゃいそうじゃん?性格真逆だし。」
言われてみればそうだ。
藍夏は、自分の思ったことをすぐ言い出せるし、主張できる。
しかし、紫音と昭太は控えめで、私達が聞き出さないと答えを出してくれないことが多い。
実はもっといい案があったかもしれないし、別のことがしたかったのかもしれない。
美優「ま、まあ...いずれ打ち解けると思うよ。」
私は頬を掻きながら、苦笑いをした。
藍夏「だといいけどね...」
腕を組み、窓の外を眺める。
景色は相変わらず暗闇に包まれた街が見えるだけだ。
街灯どころか、窓の明かり1つすらついておらず、不気味さを演出する。
まるで、私達以外が消えてしまったようだ。
藍夏「てゆうか美優さぁ...」
急にトーンを変えて、再度私の名を口にする。
なにかしたっけ、と今日の出来事を振り返る。
さっき起きるのが遅くて、それについて言われるのかなと思ったけど...違ったみたい。
藍夏「あんたさっき私についてくって言った時、藍夏ちゃんって言ったよね?」
それがどうかしたのだろうか。
彼女の台詞的に、ついてきたことに関しては文句はないと思うけど。
美優「う、うん?そうだったかもだけど...それがどうかしたの?」
恐る恐る質問の理由について聞き出す。
藍夏「あたしのことは藍夏でいいよ、小学からの友達じゃん?あたしもあんたのことは美優と呼んでるでしょ?いつまでもちゃん付けしてたら、仮初めだって言われちゃうじゃん?」
藍夏はニッと笑ってそう答えた。
なんだ、そんなことか。
この数年で、私と藍夏の間に壁ができていたと勝手に勘違いしていた。
でもそれは、彼女にとってはなんでもなかったみたいで。
私は安心した。
美優「な、なんだ...なにかやらかしちゃったと思ったよ...」
藍夏「なによ!?怒られると思ったの!?」
胸を撫で下ろす私を見て顔を近付けた。
近い。これ鼻当たってるよね?
藍夏「あたしはね、本当に間違ってることしてたらそりゃ怒るよ。でも大概のことはフォローして回るから。」
本当に彼女は、昔から変わっていない。
人を想いやる能力があるのは、間違いなく彼女そのものだ。
私の勝手な偏見で、藍夏と言う人物像の印象を下げていただけだったみたいだ。
美優「...うん、やっぱり藍夏は藍夏のままだね。」
私の一言に、藍夏はピンと来てない様子。
藍夏「あたしはあたしだけど...」
まあ、汲み取ってもらえなくても構わない。それより、私にはずっと気になっていたことがある。
美優「ね、ねぇ...大丈夫?」
私は壁沿いで震える紫音に声をかけた。
藍夏「なに?寒いの!?」
体を小刻みに揺らす紫音を見て、藍夏はひどく気に掛ける。
藍夏「寒いんならあたしの上着使いなよ!」
そう言って、彼女は腰に巻いていたカーディガンをほどき、紫音に肩から被せた。
それでも震えが止まらない紫音。
この震えの原因は一体なんだと言うのか。
紫音「あ、あの...気に掛けてくださりありがとうございます...ですが寒いわけではないので、大丈夫です...」
どうやら寒さで震えているわけではないようだ。
藍夏「あれ、そうなの?」
美優「じゃ、じゃあ、どうして?」
顔を見合わせる私と藍夏。
私は紫音の震えている理由を尋ねた。
紫音「あの...やっぱり、怖いんですよね...」
口元に手を寄せ、怯えるように答える。
ちょっと待って、乙女じゃん。
語彙力迷子で説明できないけど、乙女じゃん。
紫音「夜の学校って、普段立ち入らないですし...それに昨夜の事もあってか、いつあの人が出てくるのかが気になってしまいます...」
怖がる理由を、たどたどしいがなんとか紡ぎながら説明している。
確かに、昼と違って夜の学校は不気味だし、たとえ明かりがついているとしても不安になるのは無理もない。
例えるならば、海外の都市伝説みたいだ。
やんちゃしてるとか、そういうのではない限り、私もここに立ち入りたくはない。
前に、休んだ友達の提出物を学校にまで持っていったことがあるけれど、あの時はもうダメだと思った。
急かした先生を恨みそうになった。
...話がそれたけど、あの人とは、私達を3tsuが1しに来た、あの大人の人だろう。
無作為なのか丁寧なのか、よく分からず襲い掛かってくるあの人物像に戦慄が走る。
藍夏「そうね...あんな社畜に怯えるのも分かるわ。」
藍夏は顔を歪ませ、そっぽを向く。
藍夏「...無理な話かもしれないけど」
が、すぐに紫音に向き直る。
藍夏「今は気にしない。来たら来た時。今はやるべきことがあるんだから、それに目を向けないと。」
覚悟を決めた瞳をしている。
私から見た藍夏は、時に怖いとこもあるけど、勇ましく、カッコいい。そこら辺のチャラけた男子よりも断然。
藍夏「やらなければいけない。そんな時、すき嫌いは言ってられないよね。...私はあんたとそいつを守る為に班員として選んだんだからさ。」
藍夏「無理な話かもしんないけどさ、今は気にしない。来たら来た時。今はやらなければいけない時なの。」
藍夏は、紫音の肩を持ち、昭太を顎で指す。
藍夏「頼ってよ。でなきゃ存在と意志が無駄になるじゃん?」
藍夏は笑って、そう言った。
美優「そうだよ、私も頑張るから。だから一緒に頑張ろう!」
私は率先して人の前に立つということはできないけど、補佐ならできる。
足手まといにならないように、少しでも役立てるように...なんて、自分を守るためじゃない。
藍夏の負担を少しでも減らしたい。その気持ちが強かった。
紫音「...分かりました。私も頑張ってみます...」
紫音には伝わったみたいだ。
昭太はというと...やはり必死に頷いている。
本当に、ヘドバン状態だね。
藍夏「あぁ、もう!いつまでも敬語使わないの!痒くなる!」
藍夏はどちらかと言うと、友好的に接してほしいみたいだ。
馴れ馴れしく呼び掛けても、恐らくそれは普通だと捉えられると思う。
私はしないけど。
藍夏「あたしはあんたのことは紫音って呼ぶし、あんたもあたしのことは藍夏でいいよ。」
紫音「で、ですが...」
紫音はというと、かなりためらっている。
正直な話、紫音が教室で誰かと話しているところは一度も見たことが無かったかもしれない。
人と話すことに慣れていないのか、かつ相手が藍夏だからだろうか。
だが、藍夏はと言うと...
藍夏「なによ、別に強要してるわけじゃないし。ていうか、あたしら友達じゃん?友達なら気軽に接してくれればいいんだけど。」
紫音「友達...?」
紫音が不思議そうな顔をした。
紫音「私なんかを友達として見てもいいんですか...?」
おずおずと藍夏に問う。
藍夏「当たり前じゃん。そうじゃなきゃここまで近付いてないよ。」
藍夏「そうと決まったら早速この3階の端から...」藍夏が突き当たりの教室の扉に手を掛けたその時、サイレンが鳴り響いた。昭太「う、うわぁぁあ!」昭太の情けない悲鳴も聞こえる。藍夏「ちょ、なによこれ!?あーもう、うるさい!」耳を塞ぐ藍夏。サイレンが鳴るなか、校舎内は光る。
オレンジ色に照らされた。
続けて、青色にも切り替わり、しばらくサイレンはなり続けた。足がすくみ、動けず、その場に固まる。
通香はしゃがみこみ、昭太は壁に身を寄せていた。数十秒が経過した頃、ようやくサイレンが鳴りやんだ。藍夏「...やっと止まったね。」両耳から手を離し、辺りを見渡す。
藍夏「ねぇ、なんでオレンジとか青に照らされるの?」美優「さあ...なんか法則とかあるのかな。」
そもそもサイレンが鳴る理由が分からないことには解決しない。
でも、私には心当たりがあった。しかし、それはまだ確定してないので、今は言わないことにした。藍夏「...とりあえず、ここん中入っとく?」美優「そ、そうだね。少しでも多く調べておかないと。」教室内に入り、辺りを見渡す。藍夏「さて、どこにあるのかね。」腰に手を当て、肩の力を抜く藍夏。美優「棚とか引き出しとか...あとここには準備室もあるね。」大きな黒板の隣にある準備室の扉を指差す。藍夏「げっ...しかも、なんだっけ?オーブの大きさとか分かんないし、手を抜くわけにはいかないよね。」腕を回し、渋々探索をし始めた。私も引き出しの中を1つ1つ確認しに回り始めた。通香「ま、待ってください...。」入り口付近の棚に手を掛けようとしていた通香が、こちらに向かって呟いた。藍夏「なに、もう見つけたの!?」蛇口の下の棚を調べていた藍夏が立ち上がり、通香の方へと体を向けた。通香「い、いえ...誰か来てるような...。」入り口から離れ、黒板の前の机の横まで下がる。足音が聞こえたのだろうか。藍夏「まさか...あの社畜?」可能性はある。私も少し距離を置き、体勢を整えた。
確かに、足音が聞こえてくる。自分の鼓動が聞こえる。手を握りしめる。
汗を拭った。開いた扉に手が掛かり、そこから美浦が姿を表した。藍夏「なんだ美浦か~!」藍夏は近くの机に体を伏せ、安堵の息を吐く。美優「もう、怖いよ!てっきりあの大人の人かと思っちゃった!」音の正体が分かり、胸を撫で下ろす。しかし、美浦は深刻な表情をしている。美浦「ご、ごめん...あのさ。」美浦は、私達の方を向き、こう言いはなった。美浦「隼士と賢澄君が、56されちゃった。」私達は絶句した。突然の報告に、硬直するばかりだ。
美優「...ねぇ、藍夏。」私は美浦の方を向いたまま、反対の窓側にいる藍夏を呼ぶ。美優「さっき、サイレン鳴った時、青く光ったよね。」藍夏「そ、そうね...オレンジと青があったわ。」藍夏は先程の事を思い出す。藍夏「それがどうかしたわけ?」藍夏の問いに、私は一呼吸置いたのちにこう答えた。美優「昨夜、私は隼士君が56される瞬間を見た。その時も、青い光で照らされたんだよ。」ここまで言うと、藍夏も勘づいたらしい。藍夏「そ、それってつまり...。」私は藍夏と目を合わせる。美優「サイレンは、誰かが56されたことを、色は誰が56されたかを暗示しているんだと思う。」
しばらく目を合わせていると、入り口の方からなにやら鋭い音が聞こえてきた。すぐさま視線を向けるとそこには...。
腹部からナタが貫かれている。美浦の背後には、いつの間にかあの男性が立っていた。美浦「あ...あぁ...」貫かれた腹部を見て、絶望の表情を浮かべている。美浦「は...早く逃げ...」美浦が言い終わる前に、男性はナタを天井へ振り掲げた。首の真ん中辺りまでが裂け、その切れ目と頭から大量の血が流れ落ちる。
通香は悲鳴を上げ、地面を這いながら教室の後ろへと逃げ出そうとする。
藍夏「美優、こっち!!」準備室の方へ駆け出し、片手で私を手招きする藍夏。通香と昭太は既に(教室の後ろへと辿り着いていた。今更こっちへ来ることは難しいと悟った私は、準備室の方へと
藍夏「来いよ社畜!」小さな容器を投げつけ、そのまま2階へとかけおりた。
ナタモチ「一人一人、正確に執り行わなければいけませんよ。」
しかし男性は、藍夏達に見向きもせず、教室へと入ってきた。
賢澄「真っ先にやられてしまった、こういうのには、僕にリーダーは務まらない。」
昭太「ご、ごめん...僕もあの直後に...」藍夏「別にいいって、そんなの。」
藍夏「知ってる。朦朧とした状態であんたの声聞こえたからね。痛々しい、短い悲鳴が。」
藍夏「...逆にね、余計に怖がらせてしまったかなって。私の姿を見て、自分もこうなるっていう気持ちを植え付けたんだよ、私は。バカだよね。」
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