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神無月
くしゃみ・大事な一冊の回(全2話)
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【くしゃみ】
カヤサ「やべ、くしゃみ出る。」
国語の授業中、カヤサはくしゃみを催し、口と鼻を抑えた。
厚史「くしゃみって、予告したら出なくなるよな。」
机の下で携帯をいじっていた厚史が顔を上げ、そう話した直後にカヤサは盛大なくしゃみをした。
アルス「予告したらなんだって?」
突っかかるアルスに、厚史は「なんでもないっす」と視線を落とし、携帯を見つめた。
しかし、一度に留まらず再びくしゃみをする。
飛鳥は耳を掻きながら「うるさい、もうちょっと静かにできないの?」と文句を言った。
アルス「もういっぺんぶちかませ」
カヤサにそう耳打ちするが、指で鼻をこすりながら「もう出んて」と呟いた。
アルス「ティッシュ使えよ、ほら向こう。」
辺りを見渡すカヤサに、アルスは前方向に指を差す。
黒板横に置かれたティッシュを取りに、席を立ち歩く。
齋籐「おい、授業中だ。立ち歩くな。」
席を立ち上がる音でこちらに振り返った齋籐先生は、チョークでカヤサを指し示し着席を促す。
カヤサ「ティッシュくらい許してくれよ」
ティッシュで鼻をかむカヤサに、齋籐先生は「ハンカチくらいは携帯しておけ」と呟き、再び板書を始めた。
カヤサ「こっからいけるか?」カヤサは少し立ち位置を変え、教室の右前の角にあるゴミ箱が見える位置へと移動した。
丸めたティッシュを一直線目掛けてシュートすると、華麗なるゴールを決めた。
カヤサは「やりぃ!」と手を叩き、高揚感に包まれる。
齋籐先生「物を投げるな!」
教室内に突如として、齋籐先生の怒号が響いた。
カヤサ「あんまフラフラしんように考えた結果がこれだわ、入ったし結果オーライっしょ?」
黒板に手を付き、新しく取ったティッシュで鼻を拭いながら負けじと反発をする。
その態度が気に入らないのか、斉藤先生の目元は痙攣するばかりだ。
今にでも机をバンッと叩きそうな勢いだった。
齋籐先生が「いい加減に...」と口を開いたその時、カヤサは三度目のくしゃみをした。
しっかりと鼻を抑えていたにも関わらず、くしゃみの勢いでティッシュが飛んでいってしまった。
それはひらひらと宙を舞い、齋籐先生の足元に落ちてゆく。
カヤサは「おっと失敬」とティッシュを拾い上げ、野球の横投げのようなシュートを放つ。
わずかなカーブを描き、それも見事に入った。
カヤサ「俺ティッシュ投げの才能あるんちゃうか?」
過信をするカヤサに、齋籐先生は怒鳴ること無く「いいから席につけ」と静かに注意した。
多分、呆れて怒る気にもならないのだろう。
カヤサは「いいんすか?」と言って席へと戻っていった。
かなりピリついてたね、空気が。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【大事な一冊の回】~アルスの日常~
藍夏「今日はなに読んでんの?」
朝のSHRが始まる前、自分の席で本を開くアルスに、藍夏が声をかけた。
アルスの机に腰掛け内容を尋ねると、アルスは本を閉じて表紙を見せた。
藍夏「まだそれ読んでんの?長すぎじゃね?」
見覚えのある表紙に、藍夏は眉をひそめた。
本を奪い取りペラペラっとページを送るが、細かい文字が並ぶばかりで読む気になれなかった。
アルス「だいぶ前に、古本屋で偶然手に取ったやつだけどさ。内容が凝っててなかなかに面白いんだよな、何度でも読んでまうわ。」
本を返す藍夏からそれを受け取り、しおりを挟んだページの続きから再び読み始める。
藍夏「ホントあんたって、一冊の本を大事そうに読むよね。」
感心してるのかバカにしてるのか、曖昧な感想だ。
まあ、特に気にならないからどっちでもいいが。
アルス「カヤサも似たようなもんだぞ。暇な時なんかはラーメン屋とかから貰った古い雑誌を読み漁ってたりするしな。」
カヤサの机の上には、端が丸まった古い雑誌が何冊か置かれていた。
藍夏「あいつ、貰ったものはとことん使い込むタイプっぽいよね。」
アルス「それはガチで分かるわ」
藍夏の的確な偏見に、思わず納得してしまった。
いや、的確な偏見ってなんだ。
カヤサ「やべ、くしゃみ出る。」
国語の授業中、カヤサはくしゃみを催し、口と鼻を抑えた。
厚史「くしゃみって、予告したら出なくなるよな。」
机の下で携帯をいじっていた厚史が顔を上げ、そう話した直後にカヤサは盛大なくしゃみをした。
アルス「予告したらなんだって?」
突っかかるアルスに、厚史は「なんでもないっす」と視線を落とし、携帯を見つめた。
しかし、一度に留まらず再びくしゃみをする。
飛鳥は耳を掻きながら「うるさい、もうちょっと静かにできないの?」と文句を言った。
アルス「もういっぺんぶちかませ」
カヤサにそう耳打ちするが、指で鼻をこすりながら「もう出んて」と呟いた。
アルス「ティッシュ使えよ、ほら向こう。」
辺りを見渡すカヤサに、アルスは前方向に指を差す。
黒板横に置かれたティッシュを取りに、席を立ち歩く。
齋籐「おい、授業中だ。立ち歩くな。」
席を立ち上がる音でこちらに振り返った齋籐先生は、チョークでカヤサを指し示し着席を促す。
カヤサ「ティッシュくらい許してくれよ」
ティッシュで鼻をかむカヤサに、齋籐先生は「ハンカチくらいは携帯しておけ」と呟き、再び板書を始めた。
カヤサ「こっからいけるか?」カヤサは少し立ち位置を変え、教室の右前の角にあるゴミ箱が見える位置へと移動した。
丸めたティッシュを一直線目掛けてシュートすると、華麗なるゴールを決めた。
カヤサは「やりぃ!」と手を叩き、高揚感に包まれる。
齋籐先生「物を投げるな!」
教室内に突如として、齋籐先生の怒号が響いた。
カヤサ「あんまフラフラしんように考えた結果がこれだわ、入ったし結果オーライっしょ?」
黒板に手を付き、新しく取ったティッシュで鼻を拭いながら負けじと反発をする。
その態度が気に入らないのか、斉藤先生の目元は痙攣するばかりだ。
今にでも机をバンッと叩きそうな勢いだった。
齋籐先生が「いい加減に...」と口を開いたその時、カヤサは三度目のくしゃみをした。
しっかりと鼻を抑えていたにも関わらず、くしゃみの勢いでティッシュが飛んでいってしまった。
それはひらひらと宙を舞い、齋籐先生の足元に落ちてゆく。
カヤサは「おっと失敬」とティッシュを拾い上げ、野球の横投げのようなシュートを放つ。
わずかなカーブを描き、それも見事に入った。
カヤサ「俺ティッシュ投げの才能あるんちゃうか?」
過信をするカヤサに、齋籐先生は怒鳴ること無く「いいから席につけ」と静かに注意した。
多分、呆れて怒る気にもならないのだろう。
カヤサは「いいんすか?」と言って席へと戻っていった。
かなりピリついてたね、空気が。
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藍夏「今日はなに読んでんの?」
朝のSHRが始まる前、自分の席で本を開くアルスに、藍夏が声をかけた。
アルスの机に腰掛け内容を尋ねると、アルスは本を閉じて表紙を見せた。
藍夏「まだそれ読んでんの?長すぎじゃね?」
見覚えのある表紙に、藍夏は眉をひそめた。
本を奪い取りペラペラっとページを送るが、細かい文字が並ぶばかりで読む気になれなかった。
アルス「だいぶ前に、古本屋で偶然手に取ったやつだけどさ。内容が凝っててなかなかに面白いんだよな、何度でも読んでまうわ。」
本を返す藍夏からそれを受け取り、しおりを挟んだページの続きから再び読み始める。
藍夏「ホントあんたって、一冊の本を大事そうに読むよね。」
感心してるのかバカにしてるのか、曖昧な感想だ。
まあ、特に気にならないからどっちでもいいが。
アルス「カヤサも似たようなもんだぞ。暇な時なんかはラーメン屋とかから貰った古い雑誌を読み漁ってたりするしな。」
カヤサの机の上には、端が丸まった古い雑誌が何冊か置かれていた。
藍夏「あいつ、貰ったものはとことん使い込むタイプっぽいよね。」
アルス「それはガチで分かるわ」
藍夏の的確な偏見に、思わず納得してしまった。
いや、的確な偏見ってなんだ。
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