毎日!アルスの日常365

星月

文字の大きさ
上 下
278 / 369
神無月

中古ゲーム・冷ややっこ・秋に染まる(全3話)

しおりを挟む
【中古ゲーム】~アルスの日常~

アルスは昼休み、購買へ行こうと席を立ち上がる。
後ろの扉に手をかけようとしたところ、ふと壁側の席に座る生徒、ヒロを見る。

彼はいつも一人で過ごしており、誰かと話しているところを授業の交流以外で見たことがない。

机の下に視線を向け、うつむく彼の手元を見ると、あるものを手にしていることが分かった。

アルス「俺以外にそれやってるのなかなかいねぇぞ」

彼が手にしていたのは、今から15年以上も前に発売された携帯型ゲーム機であった。
アルスはその年代のゲームを漁るのがすきで、思わず声をかけていた。

ヒロ「さ、最近お小遣いで買ったんだ...。」

今にも消え入りそうな声で呟く彼に、アルスは顔を近付けた。

アルス「まさか、隣町の中古屋で買ったんか?1階にあるとこ。」

ヒロは驚いたように、目を見開いてこちらを向く。

ヒロ「え...どうして分かったの?」

予想は当たっていた。驚愕の表情を浮かべる彼に、アルスは「やはりか」と続けた。

アルス「先週かね、そこにジャンク品を漁りに行ったんだよ。その時に見つけたのがそれと同じ色だったから、もしやと思ってさ。」

隣の席の椅子を持ってきて、ヒロの隣に座る。

アルス「一旦保留にしとくかってその日は店を出ちまったが、先を越されちまったってわけだな。」
ヒロ「ご、ごめん...。」

笑いながら話をするアルスに、ヒロは突然謝る。

アルス「なんで謝るん、そんなの早い者勝ちやで謝る必要とか...あ。」

ふと、あることを思い付く。
俺は机に肘をかけ、頬杖を付いた。

アルス「勝手に買いやがって、許さねえぜ?」

机に肘をかけ頬杖を付くと、ヒロは「そんなぁ...」と、弱々しい声を上げる。
そんな彼を横目に遠い黒板を眺めながら「そうだなぁ」と呟き、こう続けた。

アルス「じゃ、俺と通信して遊ぼうや。」
ヒロ「...え?」

俺はニヤっと笑い、ヒロと顔を合わせた。

アルス「一緒にやって楽しむ、それなら恨みも晴れて友達やら?」
ヒロ「友達...」

ヒロは俯き、黙り込む。

アルス「いけね、時間無くなっちまうわ。」

時計を見るなり、アルスは椅子から腰を浮かすと、配置を元に戻す。

アルス「んなわけで俺行くわ。マルチおもろいやつ選んでくるで、明日楽しみにしといてな?」

そう言って、俺は彼の肩をぽんと叩き、教室を出ていった。

分かっていると思うが、念のために言っておく。
恨む気などさらさらない。

俺みたいな何台も持ってるマニアより、純粋にそれが欲しい人の手に渡った方が、ゲームとしても幸せなんじゃないかと。
かと言って、コレクター達を否定しているわけではないが。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



【冷ややっこ】~ナタモチ~

美浦「なんか冷ややっこ食べたくなってきたな~」

教室の外を眺めながら、美浦は呟いた。

美優「すごい急だね」

3限目終わり、理由は不明だが突如として冷ややっこが食べたいと言い出す美浦。

美浦「冷ややっこのねぎ、いらない。醤油があれば十分。」

彼女の言葉に反応した隼士が、「ねぎは必須だろ!」と声を上げた。

美浦「ねぇびっくりするからやめてよ!」

手にしていた携帯を落としそうになり、慌てて窓から乗り出していた体を引っ込めた。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



【秋に染まる】

クレ「もう10月だね~」

朝のSHRが始まる前、窓側の壁にもたれるエルの隣に立つ。

エル「そうだね~、なんだか急に肌寒く感じるよ。」

エルが自身の腕をさすると、クレは「分かる~!」と同調した。

クレ「そんな時はやっぱりこれだよね~」

隣にある畳まれたカーテンを手にし、そこにくるまろうと広げた。
カーテンに身を包むが、ひんやりとしていた。

クレ「あれ、冷たい!」
アルス「そりゃあ曇りだからな」

日が出ていないので、カーテンは温まっていなかった。

クレ「え~、お日様出てこないの~?」
アルス「昼からは快晴だとよ、訳が分からん。」

天気予報の情報を伝えるが、エルは「日中は晴れなくていいよ、暑いし。」と言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

同僚くすぐりマッサージ

セナ
大衆娯楽
これは自分の実体験です

朝起きたら女体化してました

たいが
恋愛
主人公の早乙女駿、朝起きると体が... ⚠誤字脱字等、めちゃくちゃあります

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

ドレスを着たら…

奈落
SF
TSFの短い話です

後悔と快感の中で

なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私 快感に溺れてしまってる私 なつきの体験談かも知れないです もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう もっと後悔して もっと溺れてしまうかも ※感想を聞かせてもらえたらうれしいです

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...