毎日!アルスの日常365

星月

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文月

直行・水分補給の回(全2話)

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【直行】

朝の駅のホーム、飛鳥はベンチに腰掛け電車を待っていた。

改札口の方から、カヤサと厚史の話し声が聞こえ、その方向に視線を向ける。
2人は並んでこちらへと歩いてきており、ある程度近くなると厚史は「おっすー飛鳥」と、携帯を触る私に声をかけた。

飛鳥「ん、おはよう。」

適当に挨拶を返して、再び携帯の画面に目を向ける。

厚史「あれ、今日クレは?」

もうすぐ電車が来る時間になるが、この場にクレの姿はなかった。
珍しそうに見る厚史に、飛鳥はため息をついた。

飛鳥「仕事が終わって直で行くって言ってたじゃん」

先週の金曜日、別れ際にそう話したはずだ。

その場に厚史もいたし、なにより「大変だな~」と声をかけていたんだから、知らないはずはない。

厚史「そうだわ!すっかり忘れてたわ!」

がははと笑い、厚史はちょうど私達の前で停まった電車に乗り込む。

カヤサ「なんか足りない感じがするな、あいつがおらんと。」

それは私が一番感じてるよ。
待ち時間、退屈でしかなかった。



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【水分補給の回】~アルスの日常~

近藤は部活が終わると、グラウンドで練習をしていた杏姉を迎えに来ていた。

靴紐をほどく杏姉を見つけ、彼女の元へと駆け寄る。

近藤「お疲れ、杏姉。」

野球道具を地面に降ろし、同じ視線になるようしゃがみ込む。

杏姉「あっ近藤君、お疲れさまです。」

シューズを履き替えようとしていた彼女は、手を止めて顔を上げる。

近藤「今日は暑かったな!ちゃんとこまめに休憩とってたか?」
杏姉「はい、木陰に入って塩分や水分の補給はしてましたよ。」

杏姉がしっかりと熱中症対策をしていることを聞いて、近藤は頷いた。

近藤「偉いな、体壊さないようにこれからも続けてこうな。」

杏姉は褒められたことで照れてしまったのか「は、はい...ありがとうございます...。」と、たどたどしくなりうつむく。

近藤「杏姉の鞄はこれだよな。他に荷物ってあるか?」

杏姉の横に置いてある鞄を見ると、まだ入れていないものがあるのか、ファスナーが開いている。

杏姉「あっ、そこにある水筒もなので、あとで入れようかなって...。」

自分の斜め前に置いてある水筒を指差す杏姉だが、その先には2本の水筒が立っていた。

近藤「こっちだよな。よく見るやつだし覚えてるぜ!」

自信満々に片方の水筒を手に取るが、杏姉は指し示した指の向きをずらした。

杏姉「そうですが...実はこっちもです。」

普段から使っている水筒とは別に、水が入った透明な水筒も自信の物だと言う。

近藤「あれ、そうなのか?なんで2つもあるんだ?」

置いてある両方の水筒も持ち上げ、鞄の元へと運びながら尋ねる。

杏姉「いつもの水筒にはスポーツ飲料が入っているのですが、水と交互に飲むといいみたいなので...早速実践してみました。」

テレビで見かけて気になり、ネットで色々調べたりなどして得た情報だと言う。

興味を持った近藤は、あとで自分も調べておくことにした。
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