毎日!アルスの日常365

星月

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睦月

テーマ【3学期】(全タイトル)

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~はじめに~
みなさん、冬休みはいかがお過ごしでしたか?

私は、運動もしなければと意識してはいましたが、合わせて2日しかそのような機会が訪れませんでした。
結局食っちゃ寝です。(そんなことはない!)

本日のテーマは【休み明け】で、以前の仕事初めに似たジャンルとなっております。
前置きを長くしても仕方がないので、私はここらでおいとまさせていただきます。

因みにアルスの日常は、前編と後編で分かれております。



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《アルスの日常》前編

午前7時前。
アルスは開かない校門を前に、寒さを耐え忍んでいた。

アルス「もっと早く開けられないんすかね」

小さな湯たんぽを握り、かじかんだ指先を温めながら催促する。

高橋先生「だ~め。開門時間は7時だって決められているからね。」

携帯の時計を見つめながら、門にかかる南京錠に手を掛けている先生。
この人は、門を開けるタイミングがぴったしになるよう狙っているらしい。

アルス「凍死したらどうしてくれるん」
高橋先生「はい、アウト。」
アルス「なにがやねん!」

低クオリティなダジャレにすかさず判定を下す。

高橋先生「笑いは人を傷付けないものでいきましょう」

それについてはごもっともである。
我々で心温まる世の中を築き上げていきましょう。

アルス「そういや先生、前に寒いの苦手だとか言ってたじゃないですか。なんでわざわざ冬場に門番やってるんすか。」

ある授業で先生が、冬場は寒いから嫌いと言っていたのを思い出した。

高橋先生「俺だって今日みたいな超寒い日は、もう少し布団にくるまっていたかったさ。でも日直だからそうはいかなかいんだよ。」

日直だとこうやって早出して、校門を開ける役を担うことになるのか。
先生も先生で大変なんだな。

アルス「それはそれは、ご苦労様です。」

ぬるくなった湯たんぽをいつまでも握りしめるアルス。
もはや効力を失ってまであるが、これが唯一の暖を取る方法だった。

高橋先生「ていうか、お前こそ寒いの嫌いそうなのに、なんでこんな時間に来たんだよ。」

手袋をはめ直す先生が、俺に向けてそう問う。

アルス「そりゃあ、新年初登校者の称号を頂くために決まってますよ。」
高橋先生「なんだそりゃ」

これにいたっては、自分でも意味が分からない。
自分の身を削ってまでやりたいことなのか、と問われると悩むところだ。

でも、こういうしょうもないことで本気になれるのは、俺も先生もあてはまるようだ。

高橋先生「だけど残念、君より先に再試の関係で登校してる子がいるんだよ。」

マジかよ。
その可能性は考えてはいたが、実際にいたと聞くとワクワクが半減する。

アルス「因みに誰っすか?」
高橋先生「サトシ」

あの野郎!!



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《ナタモチ》

冬休みが明け、久しぶりの教室。
暖房が効いており、廊下との温度差を感じる。

美浦「あぁ~、寒かった...。」

自分の机より先に、エアコンの温風が当たる場所へ直行する美浦。
彼女は相も変わらず、寒がりである。

私は鞄とマフラーを机へ置き、美浦の隣へ立つ。

美優「本当だ、あったかいねここ。」

教室の真ん中、ここに立っているとエアコンの風が直で当たる。

美浦「でしょ!いいな~ここの席の人!」

ずっと当たり続けてたら、今度は逆に熱くなるんじゃないかな。
夏場もそこだけ異常に寒かったし。

しばらくそこで雑談をしていると、勢いよく扉が開き、隼士が飛び込んで来た。

どうしたことか、かなり焦っている様子。

隼士「だれか...誰か課題の答え持ってないか!?」

息を切らし、冬休みの課題の冊子を掲げながら解答を求めている。

隼士「あとは答え合わせだけなんだが、答えを失くしちまったんだよ!」

丸付けをしないことには提出ができないようだ。
私は鞄に解答が入っているので、それを取り出そうと机へ戻った。

藍夏「美優、待ちな!」

隼士の後ろに、人影があることに気が付いた。
その正体は藍夏だった。

彼女は隼士を追い抜き様に、1冊のテキストを手に持たせる。

隼士「なんだこれ...」

それはまさに、冬休みの課題の解答であった。
藍夏がわざわざ取り出し、隼士のために渡したのだろうか。

隼士「お、お前ってやつは...ってよく見たらこれ俺のじゃねぇか!!」

冊子の名前の部分には、隼士の名前が書かれていた。
配布時に名前はしっかり書くタイプなんだね。

藍夏「イタズラのつもりで答えだけ抜き取ったのに、あんた全然気が付かないんだもん。初詣の時とかもノーコメントだったし、これは一夜漬け確定だなと。」

その結果、彼は地獄を見たってわけか。

隼士「マジで寝る時間削りまくったわ...」

でも、遅刻しなかったのは偉いね。

美浦「美優、褒めてあげなよ。」
美優「え、なんで私が...。」



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《電脳戦士の理》

リーテは学校まで、ホームシイクに送迎してもらっていた。

秋には赤と黄色で染まっていた通学路の木々は、今となっては枯れ葉すら残っていない。

リーテ「...はあ。」

僕は窓の外を眺めながら、ため息をついた。

ホームシイク「おや、リーテ様。なにやら元気がないように見えますが、お疲れですかの?」

バックミラーで様子を伺うホームシイク。
操縦をしているので、目視することはできない。

リーテ「いや、なんでもないよ。」

原因を話したところでなんだよなぁ。



僕より先に外へ回り、素早く扉を開ける同行人の召し使い。

ホームシイク「それではリーテ様、いってらっしゃいませ。」
リーテ「ありがとう、行ってくるよ。」

乗っていたリムジンから降り、生徒玄関へ向かう僕を、ホームシイクと召し使いは静かに見送る。

ここで、注意しなければならないことがある。
僕はキョロキョロと周りを見渡すが、問題の人物が見当たらない。

よかった、まだ登校してきていないみたいだ。

安心したのも束の間。
僕の後ろの正門から、凄まじい勢いでなにかがこちらへやってくるような気配がした。

僕は恐ろしくて、振り返ることができなかった。

次の瞬間、背中から荷重が加わった。

茉愛「リーテ君!!今日からまた一緒にいられるね!」

そう、僕が憂鬱であった理由とは、この子の存在である。

いつも僕に引っ付いてくる彼女の言うとおり、今日から"また"一緒に学校生活を送ることとなるわけだ。

僕がヘルプを出し、召し使いに茉愛を引き離させた。

リーテ「勘弁してよ初日から...」

彼女で余計な体力を使わないことを望むリーテであった。



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《四元戦士の理》

マリンは、クラスのみんなの休み中の話を聞いていた。
どこに行ってきた、なにをやってきた...こういった話は、聞いているだけでも楽しい。

複数人で固まり、土産話に花を咲かせ盛り上がっていると、担任の浜瀬先生が教室へ入ってきた。

教卓の前に立ち、クラスを見回す先生。
それを見て、クラスのみんなは着々と自分の席に戻っていく。

朝のSHRを始めようとしたさなか、カツキが扉を勢いよく開け登場した。

カツキ「みんなおっはよぉ~!!」

その一声と同時に、チャイムが鳴った。

カツキ「遅れると思った?残念!初日から遅れちゃこの先やっていけないからね~。」

ドヤ顔でアピールをするカツキ。

浜瀬先生「いやギリギリじゃねぇか!!」

今のチャイムが鳴る前までに教室にいなければ、遅刻判定となる。

カツキ「でもセーフではあるよね。というかマリン!」

先生の言葉を軽く受け流し、マリンに歩み寄る。

カツキ「あんた、今日は起こしてって言ったよね!?なんで1人で勝手に行っちゃったの!」

何回も起こしたのに起きなかったのはお姉ちゃんだよ。
それに、初日から遅刻した方が面白いんじゃないかな。

カツキ「あんたなに初日から遅刻した方が面白いって顔してんのよ」

残念そうな顔をしている私を見て察したのだろうか。
一文字一句通じすぎなんだよね。



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《アルスの日常》後編

今日から3学期。
久々にクラスのみんなと顔を会わせられる。

それが楽しみなエルは、軽い足取りで学校へと向かっていた。

アルス「おはようエル」
エル「あ、アルス君!」

正面からアルスがやってきた。
私は彼の元へ駆け寄った。

エル「あれ?アルス君、鞄はどうしたの?」

よく見ると彼は、リュックや手提げを持っていなかった。
普段より必要な荷物が少ないとはいえ、流石に手ぶらはチャレンジャーすぎる。

アルス「ああ、教室に置いてきたわ。」

一瞬、耳を疑った。
まさか彼は、一度学校へ行き荷物を置いて、ここまで戻ってきたと言うのか。

エル「どうして戻ってきたの?忘れ物?」

理由を尋ねるエル。
それに対しアルスは、こう答えた。

アルス「俺はただ単純に、生徒の中で今年1番に登校しようとしたんだわ。」

やることがアルス君らしい。

アルス「でもな、新学期初日からお前を1人で登校させるのもなって思って。普段から一緒にいるのに、迎えに来ないわけがないやろ。」

胸が熱くなった。

エル「えぇ...もう、アルス君は...。」

そんなつもりはないだろうが、私は嬉しながらも照れてしまう。

アルス「まあ、そんなわけで今学期もよろしくな。」

改めて、これからもお世話になると挨拶が来る。

エル「...はい、こちらこそ!」

私は恥ずかしさを振り払い、笑顔で答えた。



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※今回は再投稿という形でお送りさせていただきました。
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