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41 写真 (完結)
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「お前が仕事辞めて、製菓の専門学校行くなんて思わなかったよな~」
「ホント、ホント! 好紀がパティシエ?とか想像出来ん!」
「あはは…」
好紀は久しぶりに会う友人2人の言葉に笑う事しか出来なかった。
高畑、大林に会うのは本当に久しぶりのことだった。男娼として働いていた時には罪悪感があり、会うのを控えていた。ディメントを辞めた今、こうして喫茶店に呼ばれて、友人関係を続けられていることが何よりも嬉しかった。
美也が小向と話して、あれから1か月。身請けをされディメントを辞めた好紀は、ケーキなどの菓子を作る製菓の専門学校に入学していた。若い人ばかりだったらどうしようかと思ったが、様々な年齢の男女がおり、周りの生徒とも馴染むことが出来た。
―――そもそも、好紀は専門学校に入るつもりはなかった。
バイトや一般就職を経てお金を貯めて、自分のお金で学校にいくなり留学するつもりだったのだ。
しかし、恋人である美也に『俺が金を出す』と言い、断わっても『気にするな』と見たこともないようなキラキラの笑顔で言われてしまってそのまま押し切られた。
美也には母親の生活費も貰っているのに、これでは完全に『ヒモ』ではないかと思う。
「んで? 彼女さんとの同居生活はどうよ?!」
大林が可愛い目を煌めかせて身を乗り出し聞いてくる。
会った時に『今恋人と同居している』と好紀が口を滑られせたので、2人は好紀の恋愛事情に興味津々だ。
「ど、どうって言われてもなぁ…」
好紀は美也と同棲していた。美也がディメントを辞めた6月の終わり。もう7月の1週目から、2人は同棲を始めた。美也に『一緒に住もう』と言われて誰が断われるのだろう。
好紀が何と言おうか考えていると隣に座っている高畑が身を乗り出す。
「てか、彼女って何歳?! 写真とかないの? 可愛い系?美人系?身長は?」
「うわ、たかやんがめっちゃ興奮してる」
「だって気になるしさぁ! この好紀の彼女よ?」
いつも落ち着いている高畑が鼻息荒く好紀に問いただす。
「うーん…そういえば年齢知らないな…。年上…?だとは思うけど…」
「え?! 同棲してるのに、年齢知らないことある?!」
「え、まさかの…じゅ、熟女?」
2人はそれぞれ驚いている。確かに考えてみれば美也の年齢を知らない。家を決める時も彼が手続きをしてくれたし、いつの間にか終わっていた。知る機会がなかったが、今度聞いてみたいと思った。
「いや、熟女ではないな…。20代後半から30代って感じ…。写真は…ないし、美人系で、身長は…190センチぐらいかな?」
「は?」
「190センチ?!」
2人は目を丸くして大きく叫んだ。あまりに大きく叫んだので、近くの席がざわついている。
「190センチって、外人?! てか想像出来ん!」
「ううん、外人ではないけど…顔の堀りが深いな」
「は、ハーフとか? ど、どんな日本人…」
「外国の血が入っているとかは聞いたことないけど…この前まで本当の名前も知らなかったし、ミステリアス系かなぁ」
好紀の言葉に2人は絶句している。そして2人はこそこそと何かを話して、心配そうに好紀を見詰めた。ゆっくりと大林が言葉を紡ぐ。
「だ。大丈夫?だ、騙されてない…? 俺たち、好紀が傷つくとか勘弁なんだけど…」
それは好紀を心配する言葉だった。好紀は2人を安心させるため笑顔を作った。
「うん。騙されてないよ。だって俺、幸せだもん」
そう言うと、2人は驚いた顔をしていたが、やがて笑みを浮かべてくれた。
「うー…ただいま…です」
2人で使うには広すぎる綺麗な玄関に『ただいま』と言うのは毎回緊張する。もうここに住んで1か月だが、高層マンションに住むことも、家族ではない他人と住むことも初めて尽くしだ。好紀は靴を脱ぎ、リビングに向かうと、ソファで新聞を読んでいる彼を見つけた。
「おかえり」
笑みを浮かべてこちらを見る美也は、何度見ても慣れない。新聞をテーブルに置き、好紀の肩に触れる。その小さな触れ合いに、ドキドキと心臓が高鳴った。
「た、ただいま…」
美也は前よりは随分話すようにはなったが、目で訴える所は変わっていない。こっちに来い、と目で言っていることが分かり、好紀はそっと美也の胸に顔を埋めた。
「どうだった? 楽しかったか?」
「は、はい…。楽しかったです…」
背中に美也の大きな手が這わされる。それだけで恥ずかしくて嬉しくて―――今にも天に上りそうだ。美也はディメントを辞めた後、ディメントの裏方をしていた。事務作業をやるイメージはなかったが、元々の頭がいいのか、すぐに戦力になった。今はその傍ら、貯金で株を始める準備をしている。きっと彼ならすぐに儲けることが出来るだろう。
好紀は顔を上げて、ずっと聞きたかったことを問う。
「美也さんって…何歳なんですか?」
「言ってなかったか? 今年で29だ」
さらりと言われて、好紀は度肝を抜かれる。
「俺、21だから…、8歳差…だったんだ…」
「歳の差なんて関係ないだろ? でも、そうか…21…若いな」
「ガキですみません…」
「何を謝る。8歳差なら誤差だろ」
誤差なのだろうかとふと思ったが、これ以上突っ込んではいけないと思った。
「あの、美也さん。お願いがあるんですけど」
話を変えようと切り出したら、美也がとろんとした笑みを浮かべた。―――し、心臓に悪い!
「お前がお願いとか初めてじゃないか? 言ってみろ」
美也にじっと見られて、好紀は顔を真っ赤にして言葉を放つ。
「あの、嫌だったら断わってください! えーと、と、友達が恋人である美也さんの写真が見たいって言ってて…。い、一緒に俺も撮ってもいいですか?!」
好紀の一世一代の告白に、美也は驚いた顔をしていた。
「あー、別にいいが…。お前、その友達に俺が男って言ってるのか?」
「え、いいんですか?! 言ってはないんですけど、別に差別とかしないタイプだと思うので! もし反対されても、めちゃくちゃ美也さんの良い所言いまくります!」
「…そうか」
美也は目を細めてクスリと笑った。その幸せそうな表情にきゅんとする。そして目で『撮らないのか?』と訴えられ、好紀は慌ててポケットからスマホを取り出す。そして「美也さんがデカすぎて入らないので、しゃがんでください」と言いつつ2人は同じ画面に初めて映った。
その画像を確認しているとき、隣に居た美也から熱い視線がくる。熱い、欲望を持った―――美也の目。この目はきっと『キスをしたい』ということだろう。この間好紀がしたくなったらいつでも言え、と言われたが未だにそれは実行されていない。きっと今が…その時なのだろう。
「美也さん…キス、して欲しいです」
「俺もしたいと思ってた」
―――そんなの、分かってましたよ。貴方の目で。
好紀はそっと目を瞑り、唇を合わせた。瞬間、幸福感が身を包む。幸せだった。キスの最中の彼の目で『可愛い。愛している』と伝わってくる。好紀はそれに答えるように美也の背中に手をまわした―――。
その後。
好紀はディメントで青の蝶として頑張っている元ルームメイトに、美也との写真を『イチ。元気? 俺らは今こんな感じ』と文章をつけて送った。
すぐに一位から返信が来た。
『幸せそうだね。…良かった。俺は2人の事応援してるよ』
彼らしい優しい言葉。好紀は『うん。幸せ。本当に有難う』と返信をして、クミヤの腕の中で眠りについた。2人の寝室に置いてある2人用の大きなベッド。まだ美也に触れる手がぎこちない好紀だが、それすらも愛おしいと美也が笑うから―――好紀はそれでいいのだと思う。
美也と好紀のペースで愛をはぐくめばいい。もう2人の間に隠し事なんてないのだから―――。
◇ 『エンドルフィンと隠し事』 END ◇
ここまでお読み下さりありがとうございました!
感想などがあれば是非! ありがとうございました!
「お前が仕事辞めて、製菓の専門学校行くなんて思わなかったよな~」
「ホント、ホント! 好紀がパティシエ?とか想像出来ん!」
「あはは…」
好紀は久しぶりに会う友人2人の言葉に笑う事しか出来なかった。
高畑、大林に会うのは本当に久しぶりのことだった。男娼として働いていた時には罪悪感があり、会うのを控えていた。ディメントを辞めた今、こうして喫茶店に呼ばれて、友人関係を続けられていることが何よりも嬉しかった。
美也が小向と話して、あれから1か月。身請けをされディメントを辞めた好紀は、ケーキなどの菓子を作る製菓の専門学校に入学していた。若い人ばかりだったらどうしようかと思ったが、様々な年齢の男女がおり、周りの生徒とも馴染むことが出来た。
―――そもそも、好紀は専門学校に入るつもりはなかった。
バイトや一般就職を経てお金を貯めて、自分のお金で学校にいくなり留学するつもりだったのだ。
しかし、恋人である美也に『俺が金を出す』と言い、断わっても『気にするな』と見たこともないようなキラキラの笑顔で言われてしまってそのまま押し切られた。
美也には母親の生活費も貰っているのに、これでは完全に『ヒモ』ではないかと思う。
「んで? 彼女さんとの同居生活はどうよ?!」
大林が可愛い目を煌めかせて身を乗り出し聞いてくる。
会った時に『今恋人と同居している』と好紀が口を滑られせたので、2人は好紀の恋愛事情に興味津々だ。
「ど、どうって言われてもなぁ…」
好紀は美也と同棲していた。美也がディメントを辞めた6月の終わり。もう7月の1週目から、2人は同棲を始めた。美也に『一緒に住もう』と言われて誰が断われるのだろう。
好紀が何と言おうか考えていると隣に座っている高畑が身を乗り出す。
「てか、彼女って何歳?! 写真とかないの? 可愛い系?美人系?身長は?」
「うわ、たかやんがめっちゃ興奮してる」
「だって気になるしさぁ! この好紀の彼女よ?」
いつも落ち着いている高畑が鼻息荒く好紀に問いただす。
「うーん…そういえば年齢知らないな…。年上…?だとは思うけど…」
「え?! 同棲してるのに、年齢知らないことある?!」
「え、まさかの…じゅ、熟女?」
2人はそれぞれ驚いている。確かに考えてみれば美也の年齢を知らない。家を決める時も彼が手続きをしてくれたし、いつの間にか終わっていた。知る機会がなかったが、今度聞いてみたいと思った。
「いや、熟女ではないな…。20代後半から30代って感じ…。写真は…ないし、美人系で、身長は…190センチぐらいかな?」
「は?」
「190センチ?!」
2人は目を丸くして大きく叫んだ。あまりに大きく叫んだので、近くの席がざわついている。
「190センチって、外人?! てか想像出来ん!」
「ううん、外人ではないけど…顔の堀りが深いな」
「は、ハーフとか? ど、どんな日本人…」
「外国の血が入っているとかは聞いたことないけど…この前まで本当の名前も知らなかったし、ミステリアス系かなぁ」
好紀の言葉に2人は絶句している。そして2人はこそこそと何かを話して、心配そうに好紀を見詰めた。ゆっくりと大林が言葉を紡ぐ。
「だ。大丈夫?だ、騙されてない…? 俺たち、好紀が傷つくとか勘弁なんだけど…」
それは好紀を心配する言葉だった。好紀は2人を安心させるため笑顔を作った。
「うん。騙されてないよ。だって俺、幸せだもん」
そう言うと、2人は驚いた顔をしていたが、やがて笑みを浮かべてくれた。
「うー…ただいま…です」
2人で使うには広すぎる綺麗な玄関に『ただいま』と言うのは毎回緊張する。もうここに住んで1か月だが、高層マンションに住むことも、家族ではない他人と住むことも初めて尽くしだ。好紀は靴を脱ぎ、リビングに向かうと、ソファで新聞を読んでいる彼を見つけた。
「おかえり」
笑みを浮かべてこちらを見る美也は、何度見ても慣れない。新聞をテーブルに置き、好紀の肩に触れる。その小さな触れ合いに、ドキドキと心臓が高鳴った。
「た、ただいま…」
美也は前よりは随分話すようにはなったが、目で訴える所は変わっていない。こっちに来い、と目で言っていることが分かり、好紀はそっと美也の胸に顔を埋めた。
「どうだった? 楽しかったか?」
「は、はい…。楽しかったです…」
背中に美也の大きな手が這わされる。それだけで恥ずかしくて嬉しくて―――今にも天に上りそうだ。美也はディメントを辞めた後、ディメントの裏方をしていた。事務作業をやるイメージはなかったが、元々の頭がいいのか、すぐに戦力になった。今はその傍ら、貯金で株を始める準備をしている。きっと彼ならすぐに儲けることが出来るだろう。
好紀は顔を上げて、ずっと聞きたかったことを問う。
「美也さんって…何歳なんですか?」
「言ってなかったか? 今年で29だ」
さらりと言われて、好紀は度肝を抜かれる。
「俺、21だから…、8歳差…だったんだ…」
「歳の差なんて関係ないだろ? でも、そうか…21…若いな」
「ガキですみません…」
「何を謝る。8歳差なら誤差だろ」
誤差なのだろうかとふと思ったが、これ以上突っ込んではいけないと思った。
「あの、美也さん。お願いがあるんですけど」
話を変えようと切り出したら、美也がとろんとした笑みを浮かべた。―――し、心臓に悪い!
「お前がお願いとか初めてじゃないか? 言ってみろ」
美也にじっと見られて、好紀は顔を真っ赤にして言葉を放つ。
「あの、嫌だったら断わってください! えーと、と、友達が恋人である美也さんの写真が見たいって言ってて…。い、一緒に俺も撮ってもいいですか?!」
好紀の一世一代の告白に、美也は驚いた顔をしていた。
「あー、別にいいが…。お前、その友達に俺が男って言ってるのか?」
「え、いいんですか?! 言ってはないんですけど、別に差別とかしないタイプだと思うので! もし反対されても、めちゃくちゃ美也さんの良い所言いまくります!」
「…そうか」
美也は目を細めてクスリと笑った。その幸せそうな表情にきゅんとする。そして目で『撮らないのか?』と訴えられ、好紀は慌ててポケットからスマホを取り出す。そして「美也さんがデカすぎて入らないので、しゃがんでください」と言いつつ2人は同じ画面に初めて映った。
その画像を確認しているとき、隣に居た美也から熱い視線がくる。熱い、欲望を持った―――美也の目。この目はきっと『キスをしたい』ということだろう。この間好紀がしたくなったらいつでも言え、と言われたが未だにそれは実行されていない。きっと今が…その時なのだろう。
「美也さん…キス、して欲しいです」
「俺もしたいと思ってた」
―――そんなの、分かってましたよ。貴方の目で。
好紀はそっと目を瞑り、唇を合わせた。瞬間、幸福感が身を包む。幸せだった。キスの最中の彼の目で『可愛い。愛している』と伝わってくる。好紀はそれに答えるように美也の背中に手をまわした―――。
その後。
好紀はディメントで青の蝶として頑張っている元ルームメイトに、美也との写真を『イチ。元気? 俺らは今こんな感じ』と文章をつけて送った。
すぐに一位から返信が来た。
『幸せそうだね。…良かった。俺は2人の事応援してるよ』
彼らしい優しい言葉。好紀は『うん。幸せ。本当に有難う』と返信をして、クミヤの腕の中で眠りについた。2人の寝室に置いてある2人用の大きなベッド。まだ美也に触れる手がぎこちない好紀だが、それすらも愛おしいと美也が笑うから―――好紀はそれでいいのだと思う。
美也と好紀のペースで愛をはぐくめばいい。もう2人の間に隠し事なんてないのだから―――。
◇ 『エンドルフィンと隠し事』 END ◇
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うわあああ!!コメントありがとうございます!
まさか感想貰えると思わず、こんな時間なのに目が冴えてきました!😭🙏🏻✨
大好きって言われてホントに嬉しいです!
これからもがんばれます!!!前作から楽しみにしてくれてたってもう……;;;;
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嬉しいコメントありがとうございました!
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これからも頑張ってください!
コメントありがとうございます!
これからも頑張ります!!