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第一章
第二話 19 可愛い悪戯
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びくっと体を震わせて、聖月は怯える目をケイに向けた。
色素の薄い茶色い目が、少し見開かれていた。が、その刹那彼は、聖月の耳朶に舌を入れてきたのだ。ぬめりとした、奇妙な温かな感触に聖月は慄く。そしてそのケイの驚くべき行動にもみっともない声をあげる。
「うひゃぁ…っ…!」
聖月のまぬけな声にケイはさも嬉しそうに笑う。
「子供っぽい声! かわいいっ…あは!」
「何すんだよ…っ!」
いきなりだったので、聖月は荒々しい言葉遣いで反論する。
「可愛かったから、ついイタズラしたの」
だから、許して?───というケイの思いが表れているのか、彼は上眼づかいの罪のような可愛らしい顔で聖月を見つめていた。自分の価値が分かっているような、そんな態度のケイに聖月は驚いた。まさかこれを可愛いって分かっていてやっていたら、本当に凄いと思った。
だがその感情を乗り越し、呆れるような気分に聖月はなっていった。可愛いからいたずらしたなんて。そんな冗談はキツイだろ──と。
聖月の瞠目している姿にご機嫌のようで、嬉々としてケイは話す。先程の聖月の耳を舐めたことは特に気にしてないようだ。
「蒼ってね、仲良くしたい人で気になっている人をじっと見る癖があるんだ。だからね、きっと聖月と仲良くしたいんだよっ! それで話しかけられるかもしれないけど、ちゃんと構って話しかけてね」
友達の俺がいうんだから、本当だよとそのあとケイは付け加えた。
「なんで、俺なの? あんなカッコいい人が俺のことが気になるの?」
聖月は不思議な気分で、ケイに問う。
自分みたいな冴えない男と仲良くして、何か特になるようなことがあるのだろうか。引き立て役ならできるだろうが。
ケイはにやにやと楽しそうに笑いながら
「聖月はなんか気になっちゃうからね。蒼は、自分の好みの子を……あっ気になる子と喋りかけたがるし、それに聖月は施設の新入りの子じゃん。みんな気になって、こっちをじろじろ見てるでしょ? それと同じことだよ」
と、まるでサッカーを解説するような口調で話した。
「へえ…変わってるね…」
納得ができない気持ちで、聖月は答える。
蒼という青年が聖月のことを気になっているという話も、ケイが聖月のことを可愛いとか綺麗というのも聖月には理解できなかった。
結局そのあとしばらくたって小向が、聖月のことを皆に紹介したいからといって施設の青年たちに、自己紹介をすることになってしまった。
突き刺さるような視線に聖月の緊張は最高潮に高まり、耳を塞ぎたくなるような酷い自己紹介を聖月はしてしまった。
ケイはその様子をケタケタと笑っているし、蒼も聖月のうろたえている姿を見てくすくすと笑っていた。そんな二人の様子に聖月は今すぐ死にたくなっていた。どこかの穴に埋もれたい気分が急に湧きあがったいく。
聖月は自己紹介のあとに、施設を逃げるように出かけて行ったのはいうまでもなかった。
◆
聖月はつい先刻の羞恥の出来事を思い出し、バス内で顔が真っ赤になった。
ケイは施設の子ということであるが、明るく元気な子であった。あんな子でも家庭に問題があったと思うと、考えさせるものがある。ドラマの見過ぎなのかもしれないがついついケイの家庭事情を想像してしまう。聖月のように家族が死んでしまったのかな―――…なんてことを考えていたら。
聖月はもうすぐで学校のバス停につくと気が付いた。
ばんやりと記憶を巡らせていたが、いつの間にか学校近くの住宅街が外には広がっていた。
『…高校前に止まります…』というアナウンスが聞こえてほどなくしてバスは止まった。
ぞろぞろと、人々がバスから降りていったので、聖月も着いて行った。蝉の声と夏の熱気がむありと、聖月の身体に感じられた。
さほど新しくない公立なので、綺麗ではない校内に聖月は急ぎ足で入った。げた箱に入れていあった上履きをとって履き替えた。
4階にある2年生のスペースまで階段を上った。運動不足の聖月の肺と体はすぐに息が上がり、悲鳴をあげていた。
聖月は自分のクラスである2-4組のドアをくぐった。おまけ程度に扇風機が回っているので少しは涼しいけれど決して過ごしやすいとは言えない。
クラスのお勉強会に参加する人たちはまだ5名ほどしか来ていなかった。集まっているのは女の子ばかりで友達がいなかったので、聖月はおとなしく窓際の後ろから二番目の席に向かった。
窓が開いてなかったのでそろそろガタがきている近くのガラスの窓に力をこめて開ける。ごぎ、ごきゅっと不気味すぎる音をたて開けられた窓から涼しい風が入って、聖月の体は休まった。
そういえば、今日はアイツは来る日だったけ?―――と、聖月は周りを見る。
だけれど聖月の友人である、あの男はまだ来ていないようだった。
色素の薄い茶色い目が、少し見開かれていた。が、その刹那彼は、聖月の耳朶に舌を入れてきたのだ。ぬめりとした、奇妙な温かな感触に聖月は慄く。そしてそのケイの驚くべき行動にもみっともない声をあげる。
「うひゃぁ…っ…!」
聖月のまぬけな声にケイはさも嬉しそうに笑う。
「子供っぽい声! かわいいっ…あは!」
「何すんだよ…っ!」
いきなりだったので、聖月は荒々しい言葉遣いで反論する。
「可愛かったから、ついイタズラしたの」
だから、許して?───というケイの思いが表れているのか、彼は上眼づかいの罪のような可愛らしい顔で聖月を見つめていた。自分の価値が分かっているような、そんな態度のケイに聖月は驚いた。まさかこれを可愛いって分かっていてやっていたら、本当に凄いと思った。
だがその感情を乗り越し、呆れるような気分に聖月はなっていった。可愛いからいたずらしたなんて。そんな冗談はキツイだろ──と。
聖月の瞠目している姿にご機嫌のようで、嬉々としてケイは話す。先程の聖月の耳を舐めたことは特に気にしてないようだ。
「蒼ってね、仲良くしたい人で気になっている人をじっと見る癖があるんだ。だからね、きっと聖月と仲良くしたいんだよっ! それで話しかけられるかもしれないけど、ちゃんと構って話しかけてね」
友達の俺がいうんだから、本当だよとそのあとケイは付け加えた。
「なんで、俺なの? あんなカッコいい人が俺のことが気になるの?」
聖月は不思議な気分で、ケイに問う。
自分みたいな冴えない男と仲良くして、何か特になるようなことがあるのだろうか。引き立て役ならできるだろうが。
ケイはにやにやと楽しそうに笑いながら
「聖月はなんか気になっちゃうからね。蒼は、自分の好みの子を……あっ気になる子と喋りかけたがるし、それに聖月は施設の新入りの子じゃん。みんな気になって、こっちをじろじろ見てるでしょ? それと同じことだよ」
と、まるでサッカーを解説するような口調で話した。
「へえ…変わってるね…」
納得ができない気持ちで、聖月は答える。
蒼という青年が聖月のことを気になっているという話も、ケイが聖月のことを可愛いとか綺麗というのも聖月には理解できなかった。
結局そのあとしばらくたって小向が、聖月のことを皆に紹介したいからといって施設の青年たちに、自己紹介をすることになってしまった。
突き刺さるような視線に聖月の緊張は最高潮に高まり、耳を塞ぎたくなるような酷い自己紹介を聖月はしてしまった。
ケイはその様子をケタケタと笑っているし、蒼も聖月のうろたえている姿を見てくすくすと笑っていた。そんな二人の様子に聖月は今すぐ死にたくなっていた。どこかの穴に埋もれたい気分が急に湧きあがったいく。
聖月は自己紹介のあとに、施設を逃げるように出かけて行ったのはいうまでもなかった。
◆
聖月はつい先刻の羞恥の出来事を思い出し、バス内で顔が真っ赤になった。
ケイは施設の子ということであるが、明るく元気な子であった。あんな子でも家庭に問題があったと思うと、考えさせるものがある。ドラマの見過ぎなのかもしれないがついついケイの家庭事情を想像してしまう。聖月のように家族が死んでしまったのかな―――…なんてことを考えていたら。
聖月はもうすぐで学校のバス停につくと気が付いた。
ばんやりと記憶を巡らせていたが、いつの間にか学校近くの住宅街が外には広がっていた。
『…高校前に止まります…』というアナウンスが聞こえてほどなくしてバスは止まった。
ぞろぞろと、人々がバスから降りていったので、聖月も着いて行った。蝉の声と夏の熱気がむありと、聖月の身体に感じられた。
さほど新しくない公立なので、綺麗ではない校内に聖月は急ぎ足で入った。げた箱に入れていあった上履きをとって履き替えた。
4階にある2年生のスペースまで階段を上った。運動不足の聖月の肺と体はすぐに息が上がり、悲鳴をあげていた。
聖月は自分のクラスである2-4組のドアをくぐった。おまけ程度に扇風機が回っているので少しは涼しいけれど決して過ごしやすいとは言えない。
クラスのお勉強会に参加する人たちはまだ5名ほどしか来ていなかった。集まっているのは女の子ばかりで友達がいなかったので、聖月はおとなしく窓際の後ろから二番目の席に向かった。
窓が開いてなかったのでそろそろガタがきている近くのガラスの窓に力をこめて開ける。ごぎ、ごきゅっと不気味すぎる音をたて開けられた窓から涼しい風が入って、聖月の体は休まった。
そういえば、今日はアイツは来る日だったけ?―――と、聖月は周りを見る。
だけれど聖月の友人である、あの男はまだ来ていないようだった。
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