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第一章
第一話 11 サディスト
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そんな小向の行動にあっけにとられていた、神山だったがそれよりも体が強張った。
聖月は、泣いていた。
その貌が、かなり…神山の目にも小向の目にもよかったのだ。ゾクッとした震えがきたことを、神山ははっきりと覚えている。まるであの顔は…―――。
顔はクシャリと歪み曲がって、自分でも泣いていると気付いたのか顔をごしごしと擦っていた。その健気な姿は男たちのイケない欲望を刺激する。
止めます。止めます――。
そう必死に言いながら、鼻をぐずぐずとされながら涙を流していたのだ。ぐしゃぐしゃの顔を見られたくないのか、聖月は下を向いていた。
ああ…。だからか。
――――そんな聖月を見て小向は胸に寄せて青年を抱いたのだ。
突然の法要に驚き肩が震えている聖月を見て小向は、聖月には分からない位置でほくそ微笑んだ。
その目にはエクスタシーを感じ身を震わせてそれを抑えている小向の姿がそこにはあったのだ。
「あの時…からですか」
「うん…? なんだい…?」
しらを切るよな小向の口調に、神山はすこし眉をひそめた。
そんな神山の様子に気づいたのか、ゆっくりとワインを口に運んでいる小向の目には暗い黒い光が浮かんだ。そんな瞳には気づいていたが、神山は口を開けていた。
「あのときから、君塚が泣いた時から働かせるって決めたんですか」
小向はワイングラスをもてあそぶ様に、グラスのくびれの所を指でなぞりながら神山の言葉を聞き目を細めた。
その一連の動作が、エロティックで卑猥だ。
「いや…? それよりも前かな」
それよりも、前―――?
神山はだんだんと憎悪が溜まっていっているが分かる。誰に対してか――――それは言わなくてもわかることだろう。
「…いつ……」
「そりゃぁ、昔の知人の葬式だよ。聖月は、知人の息子だった。葬式でさぞ泣いているだろうと思っていたけど。初めは親が死んだのに彼は無表情だったよ。だけど、自分のお香をたてるときにね我慢が出来なかったのか子供のように泣いたんだよ。それが先程よりも扇情的だったんだ」
その光景を思い出しているのか、神山の目の前にいる男はうっとりとしていた。
あの無表情の顔が泣いたんだ――。
そうまるで、自分の子供が何かしたことを話すように嬉しそうに小向は言う。子供のように、あの聖月が泣く。
人前で、あられもない顔で、泣く。大勢の前で聖月のあの無垢な綺麗な瞳が潤んでいた顔で泣いていた先ほどの顔と重なって神山は興奮した。
小向が言ったとおり、あの青年はどこか自分のサディスティックなものを刺激するものがあるのだろう。 いたぶって、泣かせてやりたい。それほどの残忍な気持ちがあのミツキという青年に向けられるのだ。どうしようもなく。
きっと、小向もそんな聖月が気になって預かったのだろう。
「どうして、預かったんですか」
どうしても理由が知りたくて、神山は口走っていた。
「聖月のお兄さんに、出張多いからってことで頼まれたんだ。それで預かってほしいってね。一人じゃ心配だからってさ。毎月生活費としてお金もくれるって言ってたけど、それについては断ったよ。まぁ理由としての回答ならば聖月のこと気になっていたから承諾したんだ」
別にお金なんていらないのになと、小向はそのあと呟いた。外の風景を彼は楽しんでいるようだった。
すると、小向は空になったワイングラスを置き椅子から優雅に立ちあがった。そして次に、自分の腕時計を確認して時間を見ていた。
「もう、こんな時間か」
そう小向がいったので、神山も確認した。神山の腕時計はもうすぐ10時になるとこを知らせていた。
「聖月が来る時間だ。もういくよ」
小向はするりと神山の横を軽やかに通り過ぎた。まるで神山には目もくれずに。
彼が通ったとき、男の色気のような香りが神山の鼻腔をかすめたように感じられた。
小向がドアを閉めた時に見えた彼の横顔の目からは欲望を抑えながら近づき、獲物を狙う百獣の王のような野獣の目を神山は見てしまった。
神山は、その表情を見た瞬間胸をわし掴みにされたように痛んだ。
愛しい人が、他の人物に欲望を感じている。
そんなことを思うと、神山は訳もわからずに怒りが湧いて磨き上げられ光を放っている自分の履いている革靴で、思い切り壁に蹴った。
そして、怒りにまかせて小向が飲んでいた高級赤ワインの瓶を壁に投げつけた。
その衝撃で大きな金属の割れる音がして、耳を引き裂く。そしてその衝撃で飛び散ったワインがベージュ色の壁にべったりと血のような液体がしたたっていた。
近くにはガラスの鋭利な破片が散乱している。この破片で、聖月の顔をグチャグチャにしてやりたい。そして、永遠に帰ってこなくなればいい。
神山が打ちつけたときの痛みが―――自分の右足には鈍く感じられるのを嫉妬に怒り狂った神山の脳内はぼんやりと感じていた。
時刻はもう10時だ。
◆ 第一話 <END> ◆ 第二話に続く
聖月は、泣いていた。
その貌が、かなり…神山の目にも小向の目にもよかったのだ。ゾクッとした震えがきたことを、神山ははっきりと覚えている。まるであの顔は…―――。
顔はクシャリと歪み曲がって、自分でも泣いていると気付いたのか顔をごしごしと擦っていた。その健気な姿は男たちのイケない欲望を刺激する。
止めます。止めます――。
そう必死に言いながら、鼻をぐずぐずとされながら涙を流していたのだ。ぐしゃぐしゃの顔を見られたくないのか、聖月は下を向いていた。
ああ…。だからか。
――――そんな聖月を見て小向は胸に寄せて青年を抱いたのだ。
突然の法要に驚き肩が震えている聖月を見て小向は、聖月には分からない位置でほくそ微笑んだ。
その目にはエクスタシーを感じ身を震わせてそれを抑えている小向の姿がそこにはあったのだ。
「あの時…からですか」
「うん…? なんだい…?」
しらを切るよな小向の口調に、神山はすこし眉をひそめた。
そんな神山の様子に気づいたのか、ゆっくりとワインを口に運んでいる小向の目には暗い黒い光が浮かんだ。そんな瞳には気づいていたが、神山は口を開けていた。
「あのときから、君塚が泣いた時から働かせるって決めたんですか」
小向はワイングラスをもてあそぶ様に、グラスのくびれの所を指でなぞりながら神山の言葉を聞き目を細めた。
その一連の動作が、エロティックで卑猥だ。
「いや…? それよりも前かな」
それよりも、前―――?
神山はだんだんと憎悪が溜まっていっているが分かる。誰に対してか――――それは言わなくてもわかることだろう。
「…いつ……」
「そりゃぁ、昔の知人の葬式だよ。聖月は、知人の息子だった。葬式でさぞ泣いているだろうと思っていたけど。初めは親が死んだのに彼は無表情だったよ。だけど、自分のお香をたてるときにね我慢が出来なかったのか子供のように泣いたんだよ。それが先程よりも扇情的だったんだ」
その光景を思い出しているのか、神山の目の前にいる男はうっとりとしていた。
あの無表情の顔が泣いたんだ――。
そうまるで、自分の子供が何かしたことを話すように嬉しそうに小向は言う。子供のように、あの聖月が泣く。
人前で、あられもない顔で、泣く。大勢の前で聖月のあの無垢な綺麗な瞳が潤んでいた顔で泣いていた先ほどの顔と重なって神山は興奮した。
小向が言ったとおり、あの青年はどこか自分のサディスティックなものを刺激するものがあるのだろう。 いたぶって、泣かせてやりたい。それほどの残忍な気持ちがあのミツキという青年に向けられるのだ。どうしようもなく。
きっと、小向もそんな聖月が気になって預かったのだろう。
「どうして、預かったんですか」
どうしても理由が知りたくて、神山は口走っていた。
「聖月のお兄さんに、出張多いからってことで頼まれたんだ。それで預かってほしいってね。一人じゃ心配だからってさ。毎月生活費としてお金もくれるって言ってたけど、それについては断ったよ。まぁ理由としての回答ならば聖月のこと気になっていたから承諾したんだ」
別にお金なんていらないのになと、小向はそのあと呟いた。外の風景を彼は楽しんでいるようだった。
すると、小向は空になったワイングラスを置き椅子から優雅に立ちあがった。そして次に、自分の腕時計を確認して時間を見ていた。
「もう、こんな時間か」
そう小向がいったので、神山も確認した。神山の腕時計はもうすぐ10時になるとこを知らせていた。
「聖月が来る時間だ。もういくよ」
小向はするりと神山の横を軽やかに通り過ぎた。まるで神山には目もくれずに。
彼が通ったとき、男の色気のような香りが神山の鼻腔をかすめたように感じられた。
小向がドアを閉めた時に見えた彼の横顔の目からは欲望を抑えながら近づき、獲物を狙う百獣の王のような野獣の目を神山は見てしまった。
神山は、その表情を見た瞬間胸をわし掴みにされたように痛んだ。
愛しい人が、他の人物に欲望を感じている。
そんなことを思うと、神山は訳もわからずに怒りが湧いて磨き上げられ光を放っている自分の履いている革靴で、思い切り壁に蹴った。
そして、怒りにまかせて小向が飲んでいた高級赤ワインの瓶を壁に投げつけた。
その衝撃で大きな金属の割れる音がして、耳を引き裂く。そしてその衝撃で飛び散ったワインがベージュ色の壁にべったりと血のような液体がしたたっていた。
近くにはガラスの鋭利な破片が散乱している。この破片で、聖月の顔をグチャグチャにしてやりたい。そして、永遠に帰ってこなくなればいい。
神山が打ちつけたときの痛みが―――自分の右足には鈍く感じられるのを嫉妬に怒り狂った神山の脳内はぼんやりと感じていた。
時刻はもう10時だ。
◆ 第一話 <END> ◆ 第二話に続く
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