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35 いじわるな言葉遊び
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バイブの音と振動が弱くなって樹はほっと息をつく。微かな振動でもどかしいが、刺激には耐えられる。ほっと胸をなでおろした樹にさらなる試練が襲った。
「お客さん、なんかケータイの鳴ってませんでしたか?」
「――っ」
ローターの音とケータイのバイブ音を間違えた運転手が、後ろの席に座る二人にハンドルを右に回しながら軽く聞く。その声はローターの音には聞こえていないとわかるほど、普通の問いかけだった。樹は今すぐに倒れそうになる心と身体を叱咤して、なんとか呼吸をする。
どうしよう、どうしよう、どうしよう―――なんて答えればいい?
「…そうですね…」
樹が混乱し混沌の思考をしていると明日がふふっと笑った。―――ポケットの中を探し今気づきましたと言いたげに明日は話す。白々しい。白々しすぎて、嫌な予感がした。
それはケータイではなくスイッチを握っていることは樹でもわかった。またカチカチとスイッチが切り替わり、バイブを強にする。腸内のローターが暴れ回る。
「…っうぐっ」
弱から強の切り替えに樹は身体を大きくビクつかせる。悪魔だ。意地の悪い行為に樹は地団駄を踏みたくなった。
「あぁ、僕のみたいです。さっきから鳴ってて…あぁ、今も鳴ってる…。へえ…僕のだったんだ」
白々しく明日は樹の反応を愉しみながら、運転手と軽口を交わす。その口元には、嘘つきの微笑みが浮かんでいた。
「そうなんですか。僕のかと思ってちょっとびっくりしました」
運転手は何も不審に思わず頷いていた。樹はそのことにほっとすると同時に明日を力弱く睨む。
樹は生きた心地がしなかった。明日は刺激を強くされて滝汗をかいている樹を見て、飄飄と嬉しそうに笑った。汗でびっしょりとなった樹の背中をいやらしく撫で、前の運転席には聞こえない程度の声でうっとりと囁いた。
「腰ずぅっとさっきからもじもじ動いてるよ…。…運転手さんに、えっちな音も聞かれちゃったね? もうちょっと我慢したら、トイレで抜いてあげるからね」
脳を犯す明日の言葉と香りにクラクラする。だが樹はそんな自分の邪な想いを恥じるよりも、ある言葉を聞いて頭が晴れた。
トイレで抜いてあげる―――。つまりこの今も暴力的な動きで樹を苛むローターを抜いてくれるということだ。その言葉に『やっと解放される!』と樹は嬉しくなってコクコクと大きく頷いた。その顔には満面の笑みが浮かんでいる。御主人様から餌をお預けさせられて、やっと許しが出た犬のようだ。
明日はそんな樹を見て嬉しそうに―――これから起こることに期待してふふっと笑っている。明日の思惑なんて知らずに喜ぶ樹はある意味愚かだった。そんな簡単に明日が解放してくれるわけがないのに、そんなことは本来なら――樹自身分かっていたはずなのに――心身ともに疲弊しきった樹は素直に喜んでいた。
それからランダムに切り替わる刺激に、これからローターを抜いてあげると教えられていた樹はそれを目標に刺激に耐えぬきなんとか運転手にバレないまま目的地に到着した。
だいたい30分ぐらいしか車内にいなかったが、3時間はそこにいたような気がした。
明日はスマートにお金を払うと自動で開いたドアから出る。樹もタクシーから出なくちゃとうだる熱に浮かされて足を動かした瞬間――。
「イズっ!」
「わっ」
明日が大きく叫ぶ。樹も驚きの声をあげた。樹は車内から出ようとした瞬間、脚がもたつき道の地面に倒れそうになった。
「お客さん?!」
運転手が大きく声をあげた瞬間、樹は何かに支えられた。樹は思っていた衝撃と痛みとは違う感触に恐る恐る目を開ける。するとそこには樹を腰を引き寄せ、身体が倒れそうになったのを受け止め支えた明日がいた。
「…あー…ちゃん」
樹は瞬きを繰り返す。
「あっぶなかった…。イズ、急に動いちゃだめだよ」
「お客さん大丈夫ですか?」
「ええ、僕が支えてなんとか」
「………」
運転手は明日の言葉を聞きほっと息を吐いていた。樹は妙な胸のドキドキを感じていた。自分を心配そうに頭を撫で助けてもらった明日を樹は見上げる。足がふらついた原因をつくった人なのに、なんでときめいてしまっているのだろうとぼんやりとした自分を樹は叱責していた。
心配そうに運転手は支え合う二人に近づき「ホテルに入るまで彼を支えるの手伝いましょうか?」と親切に問いかける。だがその優しい質問は、満面の笑みで明日が断った。
「大丈夫です。僕が責任もって運ぶので。…ここまで運んでくださってありがとうございました。それじゃ」
樹はその完璧な回答に、何故か寒気を感じていた。それは運転手も同じだったようで申し訳なさそうに小さく頭を掻き「あっ。そ、そうですか。じゃあ、私はここで…」とタクシーに乗り込みさっさと行ってしまった。運転手がそそくさと行ってしまうのも無理はないほど明日の声は冷たかった。そして強い拒絶の色を感じた。
運転手が消え都会の大きな交差点の前で樹と明日は二人きりになる。有名な交差点の前だからか人通りが多くて樹は周りを見渡した。ぼんやりとした視界に様々な人たちが映る。
長身のサングラスをかけてはいるが見るからに美形の明日に視線が集まっている。樹は腰を支えられ熱い域を吐き出しながら、明日に「どうしよう」と不安げな視線を向ける。
明日の表情を見ると樹は目をさっと逸らす。明日は眉を寄せて、怒りの表情をしていたからだ。見てはいけないような顔を見てしまった気がする。――いったい何があったのだろう。
そんな疑問を抱いているとまた明日はおもむろに先ほどまで『中』だった刺激を『強』に変えた。
「ん、っぅ―――うっ」
明日の腕の中で熱くなった身体を大きく震わせる。身構えていてもその刺激にはなれそうにない。今自分が立っていることが不思議なくらいに樹は足元が覚束ない。立っていることが出来るのは支えてくれる明日がいるからなんだろう。
「イズ、行こうか」
優しく樹を先へ促す明日は先ほどまでの怒りは感じない。だからこそ今の行為の異常さが際立つ。樹はふらつく頭と体を明日に支えられながら、一歩を踏み出した。腸内で震え続けているものに耐えながら――。
「う、う、そつき…っ」
樹は迫力のない声で、騙されたと涙目で意地悪な恋人に訴える。明日にスーツ屋にあった多目的トイレの個室に連れられた。高級店のトイレなので豪華絢爛で、入るのもためらうほどだったがそんな神聖な場所で樹は明日に好き勝手にされていた。
やっと解放されると願っていた樹に待っていたのは解放ではなく甘い快楽刑だった。
「イズが勝手に勘違いしたんじゃん」
「だ、だって、ふ、ふつ、うっ、んぐっ」
ふふっと楽しそうに笑いながら明日は樹のズボンと下着をずらして、器具で塞き止められたままの性器をしごいている。何度見ても明日が自分の性器を握り、擦っている姿は倒錯的すぎて夢をみているような錯覚に襲われる。
だが断片的に与えられる刺激がこれは現実だと思い知らされる。浅く息をし、感覚に耐える樹に明日は蕩けた声で嘯く。
「僕は嘘は言ってないよ。抜いてあげるって言ったでしょう?」
「…っ、っぅ」
―――もうちょっと我慢したら、トイレで抜いてあげるからね
明日が言った言葉を樹は思い返していた。確かに明日は『ローター』を抜くとは言っていない。勝手にいい方に勘違いした自分が悪いとは分かってはいたが、樹は文句を言わずにはいられなかった。だって抜く、と言われたら期待してしまうではないか。
抜いてもらえると思っていたローターはいまだに樹の前立腺を擦りあげて樹に快楽を教えこむ。抜いてあげるという言葉は、ローターではなく性器で、つまりいっぱい気持ちよくさせてあげるからねということだったのだ。
自分が勘違いして喜んだのが馬鹿らしくて、気持ちよくさせてもらえると喜んだことが恥ずかしくて…――樹は屈辱感に苛まれていた。
樹は恋人から与えられる手加減なしの快楽に呻き声をあげる。
「あーあ…下着も先走りでグチャグチャだよ? まだ媚薬効いてないのにこんなに気持ちよくなっちゃって…」
「あ、あーちゃんがっ」
こんな風にしたんじゃないか―――。樹がそう言葉を紡ごうとしようとしたら、さらに擦るスピードをはやめさせられ樹は背中をのけ反った。気持ちいいツボをずっと押されているような快楽に樹は情けなく出せない性器からトロトロと先走りの液を溢れさせていた。
「うんうん分かってるよ。いっぱいイかせてあげるからね?」
明日はスターとは思えないほど乱れて蕩けた顔で樹に奉仕していた。幸せそうに笑い小さく音を立て性器にキスをさせられる。その甘美な光景に樹は大きく首を振る。
「ち、ちがっ、奥のぬいてっ、と、って、とって…っ」
まだ残酷な腹の中にある震えは収まらない。先ほどからもどかしい強さで樹のイイところを擦っていた。樹はガクガクと腰を震わせ、尻と性器の快楽を強制的に味わらされていた。
「だ~め。…あと3分は大丈夫かな? 今のうちにいっぱい気持ちよくなろ?」
「も、やだっ、ゆっ、ゆるしてっ…」
大量の汗と涎と愛液を垂らしながらもう無理だと樹は首を振る。そんな駄々っ子のような樹に明日はそっと口に手を持っていき「静かにしないと誰か来ちゃうよ?」と目を細めた。そんなことを言われれば、もう文句なんて言えない。
樹はそのあともトロトロになるまで、射精は出来ない快楽を叩きこまれた。声を押し殺し、気持ちよくなっていないと虚勢をはるため痙攣を抑え込む樹は健気だった。だがその行為が樹をさらに追い詰める。
逆に声を押し殺すと明日がさらに声を引き出そうと、鋭敏な先端を擦りあげ、痙攣を押さえ込もうと身体を動かさないようにすると、熱が発散できずよけいに感じてしまう。
明日は媚薬の効果もないのに感じてしまっている樹を見て嬉しそうに――与えられたオモチャを壊す子供のように微笑む。
まだ媚薬の効果は表れていないのに、散々泣かされ、嬲られ、気持ちよくさせられてしまっている。樹は恐ろしくて堪らなかった。明日の言う通り媚薬の効果もないのにこんなに気持ちよくなってしまう自分に。
樹は思う。この人に自分は今日どれだけ作り替えられてしまうのだろうか、と。あとどれくらい耐えきればよいのだろうか、と。樹の腕時計は静かにゆっくりと確実に時を刻んでいた。
「お客さん、なんかケータイの鳴ってませんでしたか?」
「――っ」
ローターの音とケータイのバイブ音を間違えた運転手が、後ろの席に座る二人にハンドルを右に回しながら軽く聞く。その声はローターの音には聞こえていないとわかるほど、普通の問いかけだった。樹は今すぐに倒れそうになる心と身体を叱咤して、なんとか呼吸をする。
どうしよう、どうしよう、どうしよう―――なんて答えればいい?
「…そうですね…」
樹が混乱し混沌の思考をしていると明日がふふっと笑った。―――ポケットの中を探し今気づきましたと言いたげに明日は話す。白々しい。白々しすぎて、嫌な予感がした。
それはケータイではなくスイッチを握っていることは樹でもわかった。またカチカチとスイッチが切り替わり、バイブを強にする。腸内のローターが暴れ回る。
「…っうぐっ」
弱から強の切り替えに樹は身体を大きくビクつかせる。悪魔だ。意地の悪い行為に樹は地団駄を踏みたくなった。
「あぁ、僕のみたいです。さっきから鳴ってて…あぁ、今も鳴ってる…。へえ…僕のだったんだ」
白々しく明日は樹の反応を愉しみながら、運転手と軽口を交わす。その口元には、嘘つきの微笑みが浮かんでいた。
「そうなんですか。僕のかと思ってちょっとびっくりしました」
運転手は何も不審に思わず頷いていた。樹はそのことにほっとすると同時に明日を力弱く睨む。
樹は生きた心地がしなかった。明日は刺激を強くされて滝汗をかいている樹を見て、飄飄と嬉しそうに笑った。汗でびっしょりとなった樹の背中をいやらしく撫で、前の運転席には聞こえない程度の声でうっとりと囁いた。
「腰ずぅっとさっきからもじもじ動いてるよ…。…運転手さんに、えっちな音も聞かれちゃったね? もうちょっと我慢したら、トイレで抜いてあげるからね」
脳を犯す明日の言葉と香りにクラクラする。だが樹はそんな自分の邪な想いを恥じるよりも、ある言葉を聞いて頭が晴れた。
トイレで抜いてあげる―――。つまりこの今も暴力的な動きで樹を苛むローターを抜いてくれるということだ。その言葉に『やっと解放される!』と樹は嬉しくなってコクコクと大きく頷いた。その顔には満面の笑みが浮かんでいる。御主人様から餌をお預けさせられて、やっと許しが出た犬のようだ。
明日はそんな樹を見て嬉しそうに―――これから起こることに期待してふふっと笑っている。明日の思惑なんて知らずに喜ぶ樹はある意味愚かだった。そんな簡単に明日が解放してくれるわけがないのに、そんなことは本来なら――樹自身分かっていたはずなのに――心身ともに疲弊しきった樹は素直に喜んでいた。
それからランダムに切り替わる刺激に、これからローターを抜いてあげると教えられていた樹はそれを目標に刺激に耐えぬきなんとか運転手にバレないまま目的地に到着した。
だいたい30分ぐらいしか車内にいなかったが、3時間はそこにいたような気がした。
明日はスマートにお金を払うと自動で開いたドアから出る。樹もタクシーから出なくちゃとうだる熱に浮かされて足を動かした瞬間――。
「イズっ!」
「わっ」
明日が大きく叫ぶ。樹も驚きの声をあげた。樹は車内から出ようとした瞬間、脚がもたつき道の地面に倒れそうになった。
「お客さん?!」
運転手が大きく声をあげた瞬間、樹は何かに支えられた。樹は思っていた衝撃と痛みとは違う感触に恐る恐る目を開ける。するとそこには樹を腰を引き寄せ、身体が倒れそうになったのを受け止め支えた明日がいた。
「…あー…ちゃん」
樹は瞬きを繰り返す。
「あっぶなかった…。イズ、急に動いちゃだめだよ」
「お客さん大丈夫ですか?」
「ええ、僕が支えてなんとか」
「………」
運転手は明日の言葉を聞きほっと息を吐いていた。樹は妙な胸のドキドキを感じていた。自分を心配そうに頭を撫で助けてもらった明日を樹は見上げる。足がふらついた原因をつくった人なのに、なんでときめいてしまっているのだろうとぼんやりとした自分を樹は叱責していた。
心配そうに運転手は支え合う二人に近づき「ホテルに入るまで彼を支えるの手伝いましょうか?」と親切に問いかける。だがその優しい質問は、満面の笑みで明日が断った。
「大丈夫です。僕が責任もって運ぶので。…ここまで運んでくださってありがとうございました。それじゃ」
樹はその完璧な回答に、何故か寒気を感じていた。それは運転手も同じだったようで申し訳なさそうに小さく頭を掻き「あっ。そ、そうですか。じゃあ、私はここで…」とタクシーに乗り込みさっさと行ってしまった。運転手がそそくさと行ってしまうのも無理はないほど明日の声は冷たかった。そして強い拒絶の色を感じた。
運転手が消え都会の大きな交差点の前で樹と明日は二人きりになる。有名な交差点の前だからか人通りが多くて樹は周りを見渡した。ぼんやりとした視界に様々な人たちが映る。
長身のサングラスをかけてはいるが見るからに美形の明日に視線が集まっている。樹は腰を支えられ熱い域を吐き出しながら、明日に「どうしよう」と不安げな視線を向ける。
明日の表情を見ると樹は目をさっと逸らす。明日は眉を寄せて、怒りの表情をしていたからだ。見てはいけないような顔を見てしまった気がする。――いったい何があったのだろう。
そんな疑問を抱いているとまた明日はおもむろに先ほどまで『中』だった刺激を『強』に変えた。
「ん、っぅ―――うっ」
明日の腕の中で熱くなった身体を大きく震わせる。身構えていてもその刺激にはなれそうにない。今自分が立っていることが不思議なくらいに樹は足元が覚束ない。立っていることが出来るのは支えてくれる明日がいるからなんだろう。
「イズ、行こうか」
優しく樹を先へ促す明日は先ほどまでの怒りは感じない。だからこそ今の行為の異常さが際立つ。樹はふらつく頭と体を明日に支えられながら、一歩を踏み出した。腸内で震え続けているものに耐えながら――。
「う、う、そつき…っ」
樹は迫力のない声で、騙されたと涙目で意地悪な恋人に訴える。明日にスーツ屋にあった多目的トイレの個室に連れられた。高級店のトイレなので豪華絢爛で、入るのもためらうほどだったがそんな神聖な場所で樹は明日に好き勝手にされていた。
やっと解放されると願っていた樹に待っていたのは解放ではなく甘い快楽刑だった。
「イズが勝手に勘違いしたんじゃん」
「だ、だって、ふ、ふつ、うっ、んぐっ」
ふふっと楽しそうに笑いながら明日は樹のズボンと下着をずらして、器具で塞き止められたままの性器をしごいている。何度見ても明日が自分の性器を握り、擦っている姿は倒錯的すぎて夢をみているような錯覚に襲われる。
だが断片的に与えられる刺激がこれは現実だと思い知らされる。浅く息をし、感覚に耐える樹に明日は蕩けた声で嘯く。
「僕は嘘は言ってないよ。抜いてあげるって言ったでしょう?」
「…っ、っぅ」
―――もうちょっと我慢したら、トイレで抜いてあげるからね
明日が言った言葉を樹は思い返していた。確かに明日は『ローター』を抜くとは言っていない。勝手にいい方に勘違いした自分が悪いとは分かってはいたが、樹は文句を言わずにはいられなかった。だって抜く、と言われたら期待してしまうではないか。
抜いてもらえると思っていたローターはいまだに樹の前立腺を擦りあげて樹に快楽を教えこむ。抜いてあげるという言葉は、ローターではなく性器で、つまりいっぱい気持ちよくさせてあげるからねということだったのだ。
自分が勘違いして喜んだのが馬鹿らしくて、気持ちよくさせてもらえると喜んだことが恥ずかしくて…――樹は屈辱感に苛まれていた。
樹は恋人から与えられる手加減なしの快楽に呻き声をあげる。
「あーあ…下着も先走りでグチャグチャだよ? まだ媚薬効いてないのにこんなに気持ちよくなっちゃって…」
「あ、あーちゃんがっ」
こんな風にしたんじゃないか―――。樹がそう言葉を紡ごうとしようとしたら、さらに擦るスピードをはやめさせられ樹は背中をのけ反った。気持ちいいツボをずっと押されているような快楽に樹は情けなく出せない性器からトロトロと先走りの液を溢れさせていた。
「うんうん分かってるよ。いっぱいイかせてあげるからね?」
明日はスターとは思えないほど乱れて蕩けた顔で樹に奉仕していた。幸せそうに笑い小さく音を立て性器にキスをさせられる。その甘美な光景に樹は大きく首を振る。
「ち、ちがっ、奥のぬいてっ、と、って、とって…っ」
まだ残酷な腹の中にある震えは収まらない。先ほどからもどかしい強さで樹のイイところを擦っていた。樹はガクガクと腰を震わせ、尻と性器の快楽を強制的に味わらされていた。
「だ~め。…あと3分は大丈夫かな? 今のうちにいっぱい気持ちよくなろ?」
「も、やだっ、ゆっ、ゆるしてっ…」
大量の汗と涎と愛液を垂らしながらもう無理だと樹は首を振る。そんな駄々っ子のような樹に明日はそっと口に手を持っていき「静かにしないと誰か来ちゃうよ?」と目を細めた。そんなことを言われれば、もう文句なんて言えない。
樹はそのあともトロトロになるまで、射精は出来ない快楽を叩きこまれた。声を押し殺し、気持ちよくなっていないと虚勢をはるため痙攣を抑え込む樹は健気だった。だがその行為が樹をさらに追い詰める。
逆に声を押し殺すと明日がさらに声を引き出そうと、鋭敏な先端を擦りあげ、痙攣を押さえ込もうと身体を動かさないようにすると、熱が発散できずよけいに感じてしまう。
明日は媚薬の効果もないのに感じてしまっている樹を見て嬉しそうに――与えられたオモチャを壊す子供のように微笑む。
まだ媚薬の効果は表れていないのに、散々泣かされ、嬲られ、気持ちよくさせられてしまっている。樹は恐ろしくて堪らなかった。明日の言う通り媚薬の効果もないのにこんなに気持ちよくなってしまう自分に。
樹は思う。この人に自分は今日どれだけ作り替えられてしまうのだろうか、と。あとどれくらい耐えきればよいのだろうか、と。樹の腕時計は静かにゆっくりと確実に時を刻んでいた。
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