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26 偶像崩壊
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「ひぐっ、ひぅっ、ぐすっ…っ」
涙を流し続ける樹は自分が子供だったときを思い出した。明日がはじめて自分の小学校にやってきたとき、クラスのみんなはまるで青い目をした異物がやってきたような反応をしていた。好奇の目に晒される明日は自分が宇宙人だと思ったことだろう。
もうあれからずいぶんと時間が経って、明日はあのクラスの異物から、世界中を飛び回り世界中の人々を元気にさせる人気者になった。もとから同じ言葉を話せるようになったら――いや笑うだけで明日はみんなの太陽みたいな存在だった。
太陽みたいにキラキラと輝いている明日の傍にいるのは、天国にいるように心地でとても幸せだった。だがそれと同時にずっと樹は苦しかった。自分が持っていた本当の気持ちを押し殺して好きな人の隣にいるのは、嘘を言い続けているような罪悪感が常にあった。
傍にいるだけで有頂天になって、彼の行動だけで一喜一憂する。自分に―――みんなに対して笑いかけてくれれば何度も何度も彼に恋に落ちていく。
だから明日も同じ気持ちだと知って本当にうれしかった。
恋が叶うのはこんなに幸せなんだ。
そう思ったのに、そんな天にも昇る幸せはまやかしだとすぐに気づいてしまう。
自分と明日は立場も性別もすべてが決して交わることがないからだ。普通ではない立場の相手とただの一般人の自分。もし立場が同じだとしても同性では世間も社会も許してくれない。
もし隠れて付き合ったとしても世間に関係がバレたら取り返しのつかないことになる。明日の世間に対するイメージが一気に悪くなって、結果的にファンも減って、最悪バンドも崩壊して取り返しのつかないことになることは想像に難くない。
自分のエゴで明日の歌声とリアスの音楽を愛している何百万の人のファンを哀しませる権利なんてどうしてあるのだろう。ましてや音楽で生きている明日の人生を滅茶苦茶にすることなんて樹には出来なかった。
そんなことをするぐらいだったら、死んだ方がましだ。
樹はただ明日の歌を、音楽を、Re:asu-リアス-をずっと見ていたかった。ただそれだけだったのに。どうしてそれすら許さないのだろう。
「イズ……」
「あー…ちゃん…」
愛しい人が自分を呼んでいる。樹も嗚咽まじりに声をあげた。明日の存在を確かめたいのに目の前が涙にぬれて何も見えない。明日の声だけが脳内に響き渡る。明日の声は大好きだから、ずっと聞いていたいと思う。だが今の彼の明日の声は悲しい色に染まっていた。樹は必死に震える手をのばす。
どうか目の前にいる明日に届きますように。どうか悲しい声が明るいものに変わりますように―――…。
そんな樹の純粋な想いは叶えられた。―――だが樹が思っていたのとは違う形で。
「あッ…」
いきなり身体を引き寄せられて温かいものに包まれる。樹は突然腕を引かれた衝撃と痛みで困惑の悲鳴をあげた。樹は明日に腕を引っ張られて身体を無理やり起こされ、いつの間にか彼の胸に抱き寄せるような体勢になっていた。フローリングの冷たい場所からの人肌のぬくもりに驚いた樹は本能的に身体が離れようとする。
だがそれは明日の力強い腕で阻まれる。まるで逃がさない、と言わんばかりの強い力だった。
樹は無言で抱き寄せられ、混乱の渦中にいた。自分が流して出した涙と汚い鼻水が明日の綺麗な服についてしまう。それは嫌だったので離してくれ、と身体をよじる。しかし座った状態で強く抱きしめられロクな抵抗も出来ない。
身動きが出来ず逃げ場もなくなった樹に明日は甘く囁いた。
「イズ、ね、お願い…」
涙が止まらない樹に、明日は悪魔の囁きを樹に捧げる。それは先ほどの悲しい声なんかじゃなく、とびきり甘い声で、上目使いの懇願する表情で明日は言ったのだ。樹は頭が思わずくらりときた。今の明日の表情でお願いなんてされたら、魂だって捧げてしまう。
それぐらいの破壊力と威力が明日の貌にはあった。
「や、だ…、イヤだあ…っ」
強い手に腕を引っ張られて、明日が示したのは彼の膨らんだ禁断ゾーンだ。一体何が起こっているのか、これから起こるだろう出来事が分からなくて嫌だと首を振る。しかもそこは明日は男なのだと神様が言っているかのように、明日のソコは硬くなっている。
樹は目の前にいる明日の考えていることが分からなくなって、それが心底恐ろしかった。今まで見てきた好きな人が全然違う人になっているような気がしてますます怖くなる。いや本当は―――これが本当の明日だったのかもしれない。
そんな混沌とした気持ちがグチャグチャになりながらも、樹はこの声が誰かに届いてほしいと願いながら大声で泣き叫ぶ。
しかしこの家は防音対策をしっかりしていると明日の兄である明日翔から言っていたことを思い出した。明日が音楽に携わる仕事をしているのだから当たり前のことだ。樹は静かに絶望する。この状況を打破するのはかなり厳しいということを思い知る。
外には一切聞こえず部屋には虚しく響く樹の叫び声に明日は、困ったように笑った。
「…そこまで泣かなくてもいいじゃん」
その声色は拗ねたような、あきれたような、哀しそうな声だった。まるで赤子が泣き叫ぶのをどうしていいのか分からず何とも言えない顔で見る父親のような表情で、自分を見詰める明日に樹はびっくりして涙が引っ込んだ。
樹が驚いた顔をしていると、明日はくすっと笑った。
「…泣き止んだぁ」
―――そんなに僕のここが気になるの?
天使の声で、悪魔の囁きが放たれた。明日は先ほどから打って変わって勝ち気で自信たっぷりな貌をしている。ドキン、ドキンと心臓が今まで以上に脈打って期待と興奮と様々な感情が樹を包んだ。明日の淡い透き通った瞳で見られると何もかもが見透かされているような気がして怖かった。
明日の言動はすべて神様が与えた計算なのではないかと思うほど、明日の声や表情、仕草は艶めていた。
樹は明日の誘う言葉のまま、触っている明日のソコをみつめる。明日のそこは自分のものと同じ感触がした。あの秘め事を思い出して身体が一気に熱くなる。明日が蕩けそうな表情で樹を呼んだ。まるでそれは見てはいけないほどの綺麗なものを見ているようだった。
「イズ」
「あ…、」
ずるりと明日のズボンが彼の手でずらされるのが、樹の目にはスローモーションで鮮やかに映し出していた。明日が下着ごとおろしていくところを樹は唾を飲み込んで、凝視する。見てはいけないと分かっているのに、その目の前の倒錯的な光景から目が離せない。
まるで芸術作品を見ているかと思うほど明日の性器は綺麗で、思わずほう…と感嘆のため息が漏れる。明日のソコは自分のものとは違い、薄く茂る色も淡い綺麗なものだった。明日の性器は勃起し、先端からはどくどくと透明の液が流れている。それは明日の興奮の表れだった。
その樹のため息は、明日の興奮した声で消えてなくなった。
「あーあ…こんなに下着がぐちゃぐちゃになっちゃった…。僕もイズのこと言えないね…」
「あ、あーちゃ…ッ」
腕を引かれ、手を包み込まれ、樹は先走りに濡れた明日の性器を握らされる。樹は驚きで声をあげ、目をぎゅっとつぶる。目をつぶることで逆に手の感触がよりリアルに感じた。べとべとに濡れた性器は、紛れもなく明日についているもので、自分のものと何も変わらなかった。
抵抗も忘れるほど混乱している樹をいいことに明日の行動はエスカレートしていく。
「僕がこうなって下着が汚れちゃったのはぜーんぶイズのせいだよ」
全部が樹のせいだと明日は言った。
明日は樹をまるで操り人形のように好き勝手に動かす。樹の手は明日の性器を握りしめ上下に動かしている状況だった。ぐちゅぐちゅと粘着した水音が容赦なく樹の脳を犯していく。頭が今にもおかしくなりそうな状態に樹は声をあげてかぶりを振る。
「あっ、ちが、イヤだ…ッ」
「うわっ、すごい、イズの手コキなんてエロ過ぎっ、あっ、んっぅ…」
興奮した声で吐息交じりの明日の声はあまりに淫猥だった。幼い明日と今の明日の顔がダブって見える。あの時よりもっと妖艶に快楽を追う姿は、樹を確実に翻弄し、狂わせていく。頭の奥が痺れて今にも明日に縋りついて、自分の想いをすべて吐露したくなる衝動が襲う。
「や、やだぁ…っ」
耳からも、手からも、彼の匂いまでも侵される恐怖に樹は身体を震わせた。手を離そうとしても、勝手に手が動いて、明日の性器を犯す。
嫌だ、いやだ、イヤだ―――っ!
今起こっていることが全部がおかしくて、狂っていて、もう一体何が本当なのか分からない。目の前にいる明日が徐々に硬くなり、ビクビクと生き物のように震える明日の象徴は、明日が動かす樹の手によって変わっていく。
「んぅ…、ああんっ、イズ…」
明日の熱い吐息が樹の心までをグチャグチャにかき乱す。そんな声で名前で呼ばないで欲しい。明日の前にひれ伏して、なんでもしてしまいそうになる。彼の甘い声は聞いているだけで昇天してしまいそうだった。
「あぁ、も…ッ、っん、だめ、イくッっぅ――――」
明日がさらに激しく手を動かした直後、一際聞いているこっちがおかしくなるような甘い嬌声をあげて明日は身体を大きく逸らす。
「ッ」
瞬間、明日は大きくビクンと何度も痙攣し樹の腹と手に精をぶちまけた。その光景を樹は見惚れて見つめていた。爆ぜる白濁が樹の手と腹部を汚していたが、普通だったら汚いと思うはずその愛液を樹はむしろ綺麗なものに見えた。
「あ、っ、すご、い…ッや、だ止まんない…っ、あ、っぅ」
樹の手で気持ちよさそうに何度も射精を繰り返す明日は、テレビに映る大スターとは思えないほど別人に見えた。快楽の余韻にさらされ、身体を弛緩させている姿はさながらポルノスターのように淫猥で、扇情的で、身体が熱くなる。
「ん、ぁ、…、んふぅ……」
大量の精を吐き出した明日は圧倒的なオーラを感じた。決して常人では有り得ないオーラだ。ビクビクといまだに快楽の痙攣をし、震えながらその先を期待とろんとした目で樹を見つめられ我に返る。樹はいつの間にか明日の手が外れていたのにまだ握っていたことに気づくと、慌ててその手を離す。
そしてじわじわと時間が経つにつれ、今自分がしたことの大きさを思い知る。
俺は一体なにを―――…。
樹がそんなふうな自責の念を感じているとふいに、カシャッと無機質な音が聞こえた。それは今の状況では絶対に聞こえるのないカメラのシャッター音。思わず周りを見渡すと、そこにはケータイを片手に持っている明日がいた。
「な、に、…撮った、の…」
急に頭が冴えた。頭に冷水がかけられたような衝撃だった。静かに、静かに絶望が迫っているのを感じた。
問いかける上ずり震える声が樹の混乱を顕著に表していた。
さらに日常が壊れていく音が確かに聞こえた。
涙を流し続ける樹は自分が子供だったときを思い出した。明日がはじめて自分の小学校にやってきたとき、クラスのみんなはまるで青い目をした異物がやってきたような反応をしていた。好奇の目に晒される明日は自分が宇宙人だと思ったことだろう。
もうあれからずいぶんと時間が経って、明日はあのクラスの異物から、世界中を飛び回り世界中の人々を元気にさせる人気者になった。もとから同じ言葉を話せるようになったら――いや笑うだけで明日はみんなの太陽みたいな存在だった。
太陽みたいにキラキラと輝いている明日の傍にいるのは、天国にいるように心地でとても幸せだった。だがそれと同時にずっと樹は苦しかった。自分が持っていた本当の気持ちを押し殺して好きな人の隣にいるのは、嘘を言い続けているような罪悪感が常にあった。
傍にいるだけで有頂天になって、彼の行動だけで一喜一憂する。自分に―――みんなに対して笑いかけてくれれば何度も何度も彼に恋に落ちていく。
だから明日も同じ気持ちだと知って本当にうれしかった。
恋が叶うのはこんなに幸せなんだ。
そう思ったのに、そんな天にも昇る幸せはまやかしだとすぐに気づいてしまう。
自分と明日は立場も性別もすべてが決して交わることがないからだ。普通ではない立場の相手とただの一般人の自分。もし立場が同じだとしても同性では世間も社会も許してくれない。
もし隠れて付き合ったとしても世間に関係がバレたら取り返しのつかないことになる。明日の世間に対するイメージが一気に悪くなって、結果的にファンも減って、最悪バンドも崩壊して取り返しのつかないことになることは想像に難くない。
自分のエゴで明日の歌声とリアスの音楽を愛している何百万の人のファンを哀しませる権利なんてどうしてあるのだろう。ましてや音楽で生きている明日の人生を滅茶苦茶にすることなんて樹には出来なかった。
そんなことをするぐらいだったら、死んだ方がましだ。
樹はただ明日の歌を、音楽を、Re:asu-リアス-をずっと見ていたかった。ただそれだけだったのに。どうしてそれすら許さないのだろう。
「イズ……」
「あー…ちゃん…」
愛しい人が自分を呼んでいる。樹も嗚咽まじりに声をあげた。明日の存在を確かめたいのに目の前が涙にぬれて何も見えない。明日の声だけが脳内に響き渡る。明日の声は大好きだから、ずっと聞いていたいと思う。だが今の彼の明日の声は悲しい色に染まっていた。樹は必死に震える手をのばす。
どうか目の前にいる明日に届きますように。どうか悲しい声が明るいものに変わりますように―――…。
そんな樹の純粋な想いは叶えられた。―――だが樹が思っていたのとは違う形で。
「あッ…」
いきなり身体を引き寄せられて温かいものに包まれる。樹は突然腕を引かれた衝撃と痛みで困惑の悲鳴をあげた。樹は明日に腕を引っ張られて身体を無理やり起こされ、いつの間にか彼の胸に抱き寄せるような体勢になっていた。フローリングの冷たい場所からの人肌のぬくもりに驚いた樹は本能的に身体が離れようとする。
だがそれは明日の力強い腕で阻まれる。まるで逃がさない、と言わんばかりの強い力だった。
樹は無言で抱き寄せられ、混乱の渦中にいた。自分が流して出した涙と汚い鼻水が明日の綺麗な服についてしまう。それは嫌だったので離してくれ、と身体をよじる。しかし座った状態で強く抱きしめられロクな抵抗も出来ない。
身動きが出来ず逃げ場もなくなった樹に明日は甘く囁いた。
「イズ、ね、お願い…」
涙が止まらない樹に、明日は悪魔の囁きを樹に捧げる。それは先ほどの悲しい声なんかじゃなく、とびきり甘い声で、上目使いの懇願する表情で明日は言ったのだ。樹は頭が思わずくらりときた。今の明日の表情でお願いなんてされたら、魂だって捧げてしまう。
それぐらいの破壊力と威力が明日の貌にはあった。
「や、だ…、イヤだあ…っ」
強い手に腕を引っ張られて、明日が示したのは彼の膨らんだ禁断ゾーンだ。一体何が起こっているのか、これから起こるだろう出来事が分からなくて嫌だと首を振る。しかもそこは明日は男なのだと神様が言っているかのように、明日のソコは硬くなっている。
樹は目の前にいる明日の考えていることが分からなくなって、それが心底恐ろしかった。今まで見てきた好きな人が全然違う人になっているような気がしてますます怖くなる。いや本当は―――これが本当の明日だったのかもしれない。
そんな混沌とした気持ちがグチャグチャになりながらも、樹はこの声が誰かに届いてほしいと願いながら大声で泣き叫ぶ。
しかしこの家は防音対策をしっかりしていると明日の兄である明日翔から言っていたことを思い出した。明日が音楽に携わる仕事をしているのだから当たり前のことだ。樹は静かに絶望する。この状況を打破するのはかなり厳しいということを思い知る。
外には一切聞こえず部屋には虚しく響く樹の叫び声に明日は、困ったように笑った。
「…そこまで泣かなくてもいいじゃん」
その声色は拗ねたような、あきれたような、哀しそうな声だった。まるで赤子が泣き叫ぶのをどうしていいのか分からず何とも言えない顔で見る父親のような表情で、自分を見詰める明日に樹はびっくりして涙が引っ込んだ。
樹が驚いた顔をしていると、明日はくすっと笑った。
「…泣き止んだぁ」
―――そんなに僕のここが気になるの?
天使の声で、悪魔の囁きが放たれた。明日は先ほどから打って変わって勝ち気で自信たっぷりな貌をしている。ドキン、ドキンと心臓が今まで以上に脈打って期待と興奮と様々な感情が樹を包んだ。明日の淡い透き通った瞳で見られると何もかもが見透かされているような気がして怖かった。
明日の言動はすべて神様が与えた計算なのではないかと思うほど、明日の声や表情、仕草は艶めていた。
樹は明日の誘う言葉のまま、触っている明日のソコをみつめる。明日のそこは自分のものと同じ感触がした。あの秘め事を思い出して身体が一気に熱くなる。明日が蕩けそうな表情で樹を呼んだ。まるでそれは見てはいけないほどの綺麗なものを見ているようだった。
「イズ」
「あ…、」
ずるりと明日のズボンが彼の手でずらされるのが、樹の目にはスローモーションで鮮やかに映し出していた。明日が下着ごとおろしていくところを樹は唾を飲み込んで、凝視する。見てはいけないと分かっているのに、その目の前の倒錯的な光景から目が離せない。
まるで芸術作品を見ているかと思うほど明日の性器は綺麗で、思わずほう…と感嘆のため息が漏れる。明日のソコは自分のものとは違い、薄く茂る色も淡い綺麗なものだった。明日の性器は勃起し、先端からはどくどくと透明の液が流れている。それは明日の興奮の表れだった。
その樹のため息は、明日の興奮した声で消えてなくなった。
「あーあ…こんなに下着がぐちゃぐちゃになっちゃった…。僕もイズのこと言えないね…」
「あ、あーちゃ…ッ」
腕を引かれ、手を包み込まれ、樹は先走りに濡れた明日の性器を握らされる。樹は驚きで声をあげ、目をぎゅっとつぶる。目をつぶることで逆に手の感触がよりリアルに感じた。べとべとに濡れた性器は、紛れもなく明日についているもので、自分のものと何も変わらなかった。
抵抗も忘れるほど混乱している樹をいいことに明日の行動はエスカレートしていく。
「僕がこうなって下着が汚れちゃったのはぜーんぶイズのせいだよ」
全部が樹のせいだと明日は言った。
明日は樹をまるで操り人形のように好き勝手に動かす。樹の手は明日の性器を握りしめ上下に動かしている状況だった。ぐちゅぐちゅと粘着した水音が容赦なく樹の脳を犯していく。頭が今にもおかしくなりそうな状態に樹は声をあげてかぶりを振る。
「あっ、ちが、イヤだ…ッ」
「うわっ、すごい、イズの手コキなんてエロ過ぎっ、あっ、んっぅ…」
興奮した声で吐息交じりの明日の声はあまりに淫猥だった。幼い明日と今の明日の顔がダブって見える。あの時よりもっと妖艶に快楽を追う姿は、樹を確実に翻弄し、狂わせていく。頭の奥が痺れて今にも明日に縋りついて、自分の想いをすべて吐露したくなる衝動が襲う。
「や、やだぁ…っ」
耳からも、手からも、彼の匂いまでも侵される恐怖に樹は身体を震わせた。手を離そうとしても、勝手に手が動いて、明日の性器を犯す。
嫌だ、いやだ、イヤだ―――っ!
今起こっていることが全部がおかしくて、狂っていて、もう一体何が本当なのか分からない。目の前にいる明日が徐々に硬くなり、ビクビクと生き物のように震える明日の象徴は、明日が動かす樹の手によって変わっていく。
「んぅ…、ああんっ、イズ…」
明日の熱い吐息が樹の心までをグチャグチャにかき乱す。そんな声で名前で呼ばないで欲しい。明日の前にひれ伏して、なんでもしてしまいそうになる。彼の甘い声は聞いているだけで昇天してしまいそうだった。
「あぁ、も…ッ、っん、だめ、イくッっぅ――――」
明日がさらに激しく手を動かした直後、一際聞いているこっちがおかしくなるような甘い嬌声をあげて明日は身体を大きく逸らす。
「ッ」
瞬間、明日は大きくビクンと何度も痙攣し樹の腹と手に精をぶちまけた。その光景を樹は見惚れて見つめていた。爆ぜる白濁が樹の手と腹部を汚していたが、普通だったら汚いと思うはずその愛液を樹はむしろ綺麗なものに見えた。
「あ、っ、すご、い…ッや、だ止まんない…っ、あ、っぅ」
樹の手で気持ちよさそうに何度も射精を繰り返す明日は、テレビに映る大スターとは思えないほど別人に見えた。快楽の余韻にさらされ、身体を弛緩させている姿はさながらポルノスターのように淫猥で、扇情的で、身体が熱くなる。
「ん、ぁ、…、んふぅ……」
大量の精を吐き出した明日は圧倒的なオーラを感じた。決して常人では有り得ないオーラだ。ビクビクといまだに快楽の痙攣をし、震えながらその先を期待とろんとした目で樹を見つめられ我に返る。樹はいつの間にか明日の手が外れていたのにまだ握っていたことに気づくと、慌ててその手を離す。
そしてじわじわと時間が経つにつれ、今自分がしたことの大きさを思い知る。
俺は一体なにを―――…。
樹がそんなふうな自責の念を感じているとふいに、カシャッと無機質な音が聞こえた。それは今の状況では絶対に聞こえるのないカメラのシャッター音。思わず周りを見渡すと、そこにはケータイを片手に持っている明日がいた。
「な、に、…撮った、の…」
急に頭が冴えた。頭に冷水がかけられたような衝撃だった。静かに、静かに絶望が迫っているのを感じた。
問いかける上ずり震える声が樹の混乱を顕著に表していた。
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