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1 どうしたら妄想をやめてくれますか?
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世界は不変で満ちていた。
そんなとき、きっと神様は退屈しのぎのゲームをしたんだろう。
じゃなかったら、この世界はこんなおかしなことになっていなかっただろうから――――…。
◇
『うわあ、あの子めっちゃかわいい…あんな子とえっちなことできたら最高だろうな…ぐへへ』
大丈夫だろうか。あの子は男の制服を着ているが。
『密着する体温! 触りたい放題! 満員電車サイコー!』
痴漢野郎がいるな。離れとこう…。
朝からツッコミが収まらない。
朝から≪妄想≫できるとは幸せ者だな。
ぎゅむ、ぎゅむ、と四方八方から身体が密着しあっている。重力で死ぬんじゃないか?ってぐらいで、俺はもう死にそうになっていた。朝の満員電車は、地獄そのものだ。能力ある人たちはなんで電車に乗らなきゃならないんだ、という声が聞こえた。
その気持ちはよくわかる。
しばらく苦しい状況が続いたが、最寄り駅につき俺はやっとのことで電車から脱出した。
どっと疲れた…。
俺はぼろぼろになった制服を整えて、学校へ向かった。
「おはよ~。増栄くん」
後ろから肩をたたかれて振り向くと、俺―――増栄州将(ますえ くにます)を呼んだクラスメイトの西島ライ(にしじま らい)がいた。西島は相変わらずかわいい顔をしていて、まるで女の子みたいだった。かわいい声も相まって、クラスではひそかにファンクラブもできている。
「おはよ。学校行くまでほんと大変だよね」
西島は、さっき男に欲情されていたから、さらに大変だろうな。
「ね~」
「俺が思うに普通に能力使ってもいいと思うんだけど」
「それ思うんだけどさ…仕事なくなっちゃうんじゃね?」
「あ! だから通勤時間のときは能力使っちゃダメなんだ」
「授業中はもう不可抗力だよね…」
「西島はホントツライ能力持ってるよな~」
「増栄だってそうだろ?」
「…まあな」
俺たち二人はそういいながら、学校の校門をくぐった。校門の前には、公立の高校なのに、いつも警備員が立っている。そんなことをしても不審者は入ってくるのにな、とは思うがそれを突っ込んだら野暮だ。
俺たちの世界は、いつの間にかおかしくなっていった。
国民の99パーセントが何かしらの身体能力に異常をきたしている。その異常は『神通力』と呼ばれるものだ。
1パーセントしか、人間という本来の生き物ではなくなってしまったのだ。その人間たちはレアとして、生まれてしばらくたって研究所へ連れていかれる。何年かしたら出てこられれるが、その研究はとても人間にはツライものらしい。
まあ、俺には一生関係ない話だ。
そういう俺も幼いころは無能力者としてレア扱いされた。あと1年ほど能力の存在がわからなかったら、政府の研究所行きだった。
この俺がかよっている公立高校は100パーセント能力者という高校だ。
だから、いざこざもあって、警備は公立高校だってのにすごい厳しいものになっている。
強い能力者がいて、それを見張っているという噂があるが、そんなのはただの噂だ。
能力者といっても、幅広いもので、運が強いなどの程度のものから人を操れたり、空を飛ぶことが出来たり、身体が巨大化などの大きなものまである。人に害を与える能力などは国から直々に使ってはいけないと通達がでる。破ると罰金や最悪死刑になる。
能力は自己申告性で、子供の時に国に申請することが国民の義務となっている。
そこでランク付けされ危険度の高い能力者は要注意人物としてマークされることになる。
さいわい俺の能力は人に干渉はするが、そこまで害は及ばないということで要注意人物ではない。
まず強い能力者は、こんな公立高校に通うことは許されず政府直属機関で学を学ぶのだ。
強い能力者に生まれながらなってしまった人はかわいそうだ。
まあ、俺もいらない能力もらったけどな…。
「頭いた…」
西島のかわいらしい顔がゆがんだ。俺は慌てて近づく。
「大丈夫か? 学校つくと、いっぱい人いてつらいよな」
西島は、人の心を読めるというやっかいな能力を持っている。他人の思考が一気にはいってくる学校はかなりつらいものだろう。
「うん…。でも平気…、慣れた…」
それは慣れたっていうのだろうか。
「俺の近くにいれば遮られるだろ。もっとこっちによれば…」
俺の能力は西島と似た能力だからか、俺の心の声は一切入ってこないらしい。だから、俺と西島は友達でいられるのだ。
だがそんな想いは、西島の言葉によって撥ねられた。
「……ダメ。離れて」
「え?」
西島の言葉に慌てて身体を話す。無理やりキスされたような感覚がきて、俺はすぐに理解した。
「おはよ」
「おはよ…」
低い声に、高い背の男。その表情は無表情で、一切何を考えているかは見えない。
同じクラスメイトである栗須公宏(くりす きみひろ)は、容姿ともに武骨な印象を受ける。
「また、クラスで」
「あぁ…」
栗須とは普通に友達だ。かなりいいやつだし、無口だけど気が利くし。一緒にいて楽な存在なのだが…―――。
『あ~、今日も可愛いな。その顔で女の制服きておねだりとかしてくれたら最高なんだけどな』
―――しねーよ!
俺は目の前の華麗に去っていく背中に向けて大声で言いたかった。
「…今日もいろいろとぶっ飛ばしてたよ、栗須くん」
栗須がいなくなってから、西島はぼそっと小声で話す。だが、俺は首を振る。
「…俺も聞こえてたから…」
「内容言おうか?」
「…い、いらない!」
西島の言葉に全力で拒絶した。心の中が全部見える西島に教えられたらもうたまったもんじゃない。自分の能力だけで手いっぱいだ。
俺の能力は人の妄想や願望を見れる能力だ。
最近、友達が俺を妄想の材料にして困っている。
どうやったら彼は俺の妄想をやめてくれるんだろうか?
そんなとき、きっと神様は退屈しのぎのゲームをしたんだろう。
じゃなかったら、この世界はこんなおかしなことになっていなかっただろうから――――…。
◇
『うわあ、あの子めっちゃかわいい…あんな子とえっちなことできたら最高だろうな…ぐへへ』
大丈夫だろうか。あの子は男の制服を着ているが。
『密着する体温! 触りたい放題! 満員電車サイコー!』
痴漢野郎がいるな。離れとこう…。
朝からツッコミが収まらない。
朝から≪妄想≫できるとは幸せ者だな。
ぎゅむ、ぎゅむ、と四方八方から身体が密着しあっている。重力で死ぬんじゃないか?ってぐらいで、俺はもう死にそうになっていた。朝の満員電車は、地獄そのものだ。能力ある人たちはなんで電車に乗らなきゃならないんだ、という声が聞こえた。
その気持ちはよくわかる。
しばらく苦しい状況が続いたが、最寄り駅につき俺はやっとのことで電車から脱出した。
どっと疲れた…。
俺はぼろぼろになった制服を整えて、学校へ向かった。
「おはよ~。増栄くん」
後ろから肩をたたかれて振り向くと、俺―――増栄州将(ますえ くにます)を呼んだクラスメイトの西島ライ(にしじま らい)がいた。西島は相変わらずかわいい顔をしていて、まるで女の子みたいだった。かわいい声も相まって、クラスではひそかにファンクラブもできている。
「おはよ。学校行くまでほんと大変だよね」
西島は、さっき男に欲情されていたから、さらに大変だろうな。
「ね~」
「俺が思うに普通に能力使ってもいいと思うんだけど」
「それ思うんだけどさ…仕事なくなっちゃうんじゃね?」
「あ! だから通勤時間のときは能力使っちゃダメなんだ」
「授業中はもう不可抗力だよね…」
「西島はホントツライ能力持ってるよな~」
「増栄だってそうだろ?」
「…まあな」
俺たち二人はそういいながら、学校の校門をくぐった。校門の前には、公立の高校なのに、いつも警備員が立っている。そんなことをしても不審者は入ってくるのにな、とは思うがそれを突っ込んだら野暮だ。
俺たちの世界は、いつの間にかおかしくなっていった。
国民の99パーセントが何かしらの身体能力に異常をきたしている。その異常は『神通力』と呼ばれるものだ。
1パーセントしか、人間という本来の生き物ではなくなってしまったのだ。その人間たちはレアとして、生まれてしばらくたって研究所へ連れていかれる。何年かしたら出てこられれるが、その研究はとても人間にはツライものらしい。
まあ、俺には一生関係ない話だ。
そういう俺も幼いころは無能力者としてレア扱いされた。あと1年ほど能力の存在がわからなかったら、政府の研究所行きだった。
この俺がかよっている公立高校は100パーセント能力者という高校だ。
だから、いざこざもあって、警備は公立高校だってのにすごい厳しいものになっている。
強い能力者がいて、それを見張っているという噂があるが、そんなのはただの噂だ。
能力者といっても、幅広いもので、運が強いなどの程度のものから人を操れたり、空を飛ぶことが出来たり、身体が巨大化などの大きなものまである。人に害を与える能力などは国から直々に使ってはいけないと通達がでる。破ると罰金や最悪死刑になる。
能力は自己申告性で、子供の時に国に申請することが国民の義務となっている。
そこでランク付けされ危険度の高い能力者は要注意人物としてマークされることになる。
さいわい俺の能力は人に干渉はするが、そこまで害は及ばないということで要注意人物ではない。
まず強い能力者は、こんな公立高校に通うことは許されず政府直属機関で学を学ぶのだ。
強い能力者に生まれながらなってしまった人はかわいそうだ。
まあ、俺もいらない能力もらったけどな…。
「頭いた…」
西島のかわいらしい顔がゆがんだ。俺は慌てて近づく。
「大丈夫か? 学校つくと、いっぱい人いてつらいよな」
西島は、人の心を読めるというやっかいな能力を持っている。他人の思考が一気にはいってくる学校はかなりつらいものだろう。
「うん…。でも平気…、慣れた…」
それは慣れたっていうのだろうか。
「俺の近くにいれば遮られるだろ。もっとこっちによれば…」
俺の能力は西島と似た能力だからか、俺の心の声は一切入ってこないらしい。だから、俺と西島は友達でいられるのだ。
だがそんな想いは、西島の言葉によって撥ねられた。
「……ダメ。離れて」
「え?」
西島の言葉に慌てて身体を話す。無理やりキスされたような感覚がきて、俺はすぐに理解した。
「おはよ」
「おはよ…」
低い声に、高い背の男。その表情は無表情で、一切何を考えているかは見えない。
同じクラスメイトである栗須公宏(くりす きみひろ)は、容姿ともに武骨な印象を受ける。
「また、クラスで」
「あぁ…」
栗須とは普通に友達だ。かなりいいやつだし、無口だけど気が利くし。一緒にいて楽な存在なのだが…―――。
『あ~、今日も可愛いな。その顔で女の制服きておねだりとかしてくれたら最高なんだけどな』
―――しねーよ!
俺は目の前の華麗に去っていく背中に向けて大声で言いたかった。
「…今日もいろいろとぶっ飛ばしてたよ、栗須くん」
栗須がいなくなってから、西島はぼそっと小声で話す。だが、俺は首を振る。
「…俺も聞こえてたから…」
「内容言おうか?」
「…い、いらない!」
西島の言葉に全力で拒絶した。心の中が全部見える西島に教えられたらもうたまったもんじゃない。自分の能力だけで手いっぱいだ。
俺の能力は人の妄想や願望を見れる能力だ。
最近、友達が俺を妄想の材料にして困っている。
どうやったら彼は俺の妄想をやめてくれるんだろうか?
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