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9 現れた背中の文様! 『呪いの子』とは一体…?!
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「…ハーバル」
ファイブがハーバルの名前を低く呼んだ。ファイブの雰囲気が変わる。ピリピリとした空気が辺りを包む。『怒っている』、そう全身でファイブは怒っていた。
「! …分かった。分かったって。どうする、アレクには出ていってもらうか」
それに気づいたハーバルはたしなめるように言った。
ハーバルの『出ていってもらうか』という言葉に、ドキリとする。その言葉によってこれは彼と彼女の二人だけの話ということを、まざまざと感じた。自分がのけ者のような…そんな気持ちが湧き上がる。
そもそも俺とファイブは騎士と王子という関係で。そんな気持ちになるのはおかしいのに。そんな気持ちを抱くのは、おこがましいのに。
「いや、そのままでいい。見てもらったほうが、いいだろう」
「ほぅ。ファイブが言うなら…いいのか。アレク見てくか」
「…はい。わかり、ました」
あまり話の流れが掴めなかったが、俺は頷く。
「ベッドじゃなくていいのか」
「ここでいい。さっさとしろ」
「流石呪いの子。やって貰う立場なのに、図々しいぜ」
「……」
二人は言いながら、椅子の座っている位置をずらしたり、薬草の準備をしている。ファイブは椅子に座った状態で、背中をハーバルに見せる体勢になる。
妙な緊張感が流れていた。立ったまま二人を見ているが、何もしていない自分が手持ち無沙汰で。二人の話に口を挟むわけにもいかず。セーブたんも出てこず、固唾を飲んで二人のことを見守る事しかできない。ハーバルはファイブの背中を撫でる。
それは男女の仲の親しさではなく、労わるようなものを感じた。流石は美男美女なのか。二人の姿はつい見惚れるものであった。
「めくるぞ」
「…あぁ」
そう言って、ハーバルは無造作に服をめくる。
「!」
俺は目を疑う。
ファイブの晒された素肌。その褐色の肌色に目を奪われる前に、ファイブの背中にあったソレに度肝を抜かれる。ファイブの背中には丸い円の囲われた何かの文様が描かれていた。タトゥーかと思ったが、タトゥーにしてはどこか禍々しく。褐色の肌に描かれた黒色の謎の文様。
ソレが一体何なのか、俺には分からなかった。
「また広くなったんじゃないか」
意味深な言葉をハーバルは話す。
「…忌々しい」
吐き捨てるようにファイブが言った。
「……~~~~……。…~~~~~…」
少し間が空いて、ハーバルが何か聞き取れない言葉を言いながら枝を背中の文様に押し付ける。
「!?」
――――光った?!
その刹那。その文様は赤く光輝いた。ファイブが苦し気に「うぅう」と声をあげる。ファイブが、ハーバルが、赤く染まる。魔法が使える世界とは聞いていたが、こんな現象を見ることは初めてで。俺は驚きで声も出ない。
「おおおおおぉ、おおおおおおおお…」
どこかから、低い、形容出来ない声が響き渡る。地響きにも似たそれは本能的に逃げ出したくなるもので。何処からともなく大きく風が吹き荒れる。ここは外ではなくハーバルの家なのに。
そんな状況だが、ハーバルは言葉を続ける。
「……~~~~……。…~~~~~…。鎮まれ…鎮まれ…!!」
言いながら、文様に何かの液体を塗りたくる。粘ついたそれを塗りたくると、ひと際大きく赤く光る。カッ!と光ったそれは、やがて、光らなくなった。
バサバサバサ…。
どこかで本が落ちた音がする。やがて風は止んだ。
俺はハッとする。
「ハーバルさん! ファイブ! 大丈夫ですか!」
俺は慌てて二人に近寄った。二人とも大量の汗をかいている。ハーバルは涼し気な顔をしているが、ファイブは苦しそうで。はぁ、はぁ、はぁ、と荒く息をしている。めくられた背中の文様は赤くなることもなく、黒いままファイブの背中にあった。
その事にゾッとする。
「私は大丈夫だが、呪いの子がなぁ」
「……『いつも』の事だ、心配することじゃない」
そう言いのけるファイブに、頭の中にハーバルの言っていた『呪いの子』という言葉がぐるぐると回った――――。
ファイブがハーバルの名前を低く呼んだ。ファイブの雰囲気が変わる。ピリピリとした空気が辺りを包む。『怒っている』、そう全身でファイブは怒っていた。
「! …分かった。分かったって。どうする、アレクには出ていってもらうか」
それに気づいたハーバルはたしなめるように言った。
ハーバルの『出ていってもらうか』という言葉に、ドキリとする。その言葉によってこれは彼と彼女の二人だけの話ということを、まざまざと感じた。自分がのけ者のような…そんな気持ちが湧き上がる。
そもそも俺とファイブは騎士と王子という関係で。そんな気持ちになるのはおかしいのに。そんな気持ちを抱くのは、おこがましいのに。
「いや、そのままでいい。見てもらったほうが、いいだろう」
「ほぅ。ファイブが言うなら…いいのか。アレク見てくか」
「…はい。わかり、ました」
あまり話の流れが掴めなかったが、俺は頷く。
「ベッドじゃなくていいのか」
「ここでいい。さっさとしろ」
「流石呪いの子。やって貰う立場なのに、図々しいぜ」
「……」
二人は言いながら、椅子の座っている位置をずらしたり、薬草の準備をしている。ファイブは椅子に座った状態で、背中をハーバルに見せる体勢になる。
妙な緊張感が流れていた。立ったまま二人を見ているが、何もしていない自分が手持ち無沙汰で。二人の話に口を挟むわけにもいかず。セーブたんも出てこず、固唾を飲んで二人のことを見守る事しかできない。ハーバルはファイブの背中を撫でる。
それは男女の仲の親しさではなく、労わるようなものを感じた。流石は美男美女なのか。二人の姿はつい見惚れるものであった。
「めくるぞ」
「…あぁ」
そう言って、ハーバルは無造作に服をめくる。
「!」
俺は目を疑う。
ファイブの晒された素肌。その褐色の肌色に目を奪われる前に、ファイブの背中にあったソレに度肝を抜かれる。ファイブの背中には丸い円の囲われた何かの文様が描かれていた。タトゥーかと思ったが、タトゥーにしてはどこか禍々しく。褐色の肌に描かれた黒色の謎の文様。
ソレが一体何なのか、俺には分からなかった。
「また広くなったんじゃないか」
意味深な言葉をハーバルは話す。
「…忌々しい」
吐き捨てるようにファイブが言った。
「……~~~~……。…~~~~~…」
少し間が空いて、ハーバルが何か聞き取れない言葉を言いながら枝を背中の文様に押し付ける。
「!?」
――――光った?!
その刹那。その文様は赤く光輝いた。ファイブが苦し気に「うぅう」と声をあげる。ファイブが、ハーバルが、赤く染まる。魔法が使える世界とは聞いていたが、こんな現象を見ることは初めてで。俺は驚きで声も出ない。
「おおおおおぉ、おおおおおおおお…」
どこかから、低い、形容出来ない声が響き渡る。地響きにも似たそれは本能的に逃げ出したくなるもので。何処からともなく大きく風が吹き荒れる。ここは外ではなくハーバルの家なのに。
そんな状況だが、ハーバルは言葉を続ける。
「……~~~~……。…~~~~~…。鎮まれ…鎮まれ…!!」
言いながら、文様に何かの液体を塗りたくる。粘ついたそれを塗りたくると、ひと際大きく赤く光る。カッ!と光ったそれは、やがて、光らなくなった。
バサバサバサ…。
どこかで本が落ちた音がする。やがて風は止んだ。
俺はハッとする。
「ハーバルさん! ファイブ! 大丈夫ですか!」
俺は慌てて二人に近寄った。二人とも大量の汗をかいている。ハーバルは涼し気な顔をしているが、ファイブは苦しそうで。はぁ、はぁ、はぁ、と荒く息をしている。めくられた背中の文様は赤くなることもなく、黒いままファイブの背中にあった。
その事にゾッとする。
「私は大丈夫だが、呪いの子がなぁ」
「……『いつも』の事だ、心配することじゃない」
そう言いのけるファイブに、頭の中にハーバルの言っていた『呪いの子』という言葉がぐるぐると回った――――。
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