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第4章 入団までの1年間(3)、グラナダ迷宮と蓋をした私の思い
77:鍛錬4日目・ついに始まる迷宮探索
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迷宮都市<アッシド>。
その中心にある荘厳な中央神殿と堅牢な冒険者ギルド。
二つの物々しい建物に左右を挟まれたその場所に・・・グラナダ迷宮の入口はあった。
街中なのに、そこだけ森の中のように、苔に覆われた洞窟の穴がぽっかり空いていた。
同時に大人二、三十人は余裕で潜り抜けられそうなその大きな穴は、木の板で支えてあった。
日本の鉱山の抗口だと言われても、うなずいてしまうような雰囲気だ。
その迷宮の出入り口には、南の領地の領地軍の兵士が2人、背筋を伸ばし佇んでいる。
<迷宮活性化>や<スタンピード>なんてものがあるから、念のために迷宮を監視しているのかもしれない。
「んんん~、行くわよ!行くわよぉおおおおお!」
大声を上げて、意気揚々とベルタが先に迷宮の中に入っていく。
「おいっ!1人で行くな!!」
焦ったように<元彼・光輝>に似ている<マクシム>が彼女を呼び止め、その腕を素早くつかんだ。
その様子を私<レティシア>はついつい見つめてしまう。彼は<元彼・光輝>ではないというのに、彼が異性に触れるのを見ると・・・・・・・・何度心に蓋をしても、どうしても胸がざわつく。
ハッと息を吐きだす。
一方、私の護衛兼、講師の<A級冒険者>アルフレッドは、完全に2人の様子を気にせず、迷宮に入っていく。この迷宮に何度か入ったことがあるのだろう。非常に余裕そうである。
ちなみに、アルフレッドは私の腕を掴んだあと、放して・・・・そのまま私の手を握った。つまりは、だから私も一緒に通り抜けた。
グラナダ迷宮は・・・というよりこの世界の迷宮は、特に通行証のようなものはいらない。
勝手に入って、勝手に出ることができる。
なぜなら・・・・・・縁起でもない話だが、この世界は割と死にやすいからだ。
叔父<ハワード・フランシス>が善政を敷いているとはいえ、ここ<南の領地>でさえもやっぱり日本に比べて・・・・・・すぐに人は死ぬ。
ポーションや治癒魔法があるとはいえ、医療もそこまで発達していないのだから、仕方がない。何より凶悪な魔獣がいる世界だ。腕っぷしが強かったり、魔法が使えなかったら、すぐに襲われて死んでしまう。
迷宮は、様々な魔獣の素材や高価な魔石、宝玉類も出やすい反面、強い魔獣がいて、さらに罠(トラップ)まである。
高リスク高リターンな場所なのだ。1日数千人単位の冒険者や傭兵等が中に入り、少なくない人数が死亡したり、重傷を負う。
そんな場所で、一々人の数を数えても無意味なのだ。リスク覚悟で入った者を毎日何百人も助けに行けるほど、領地軍だって人的資源が豊富なわけじゃない。
だから・・・・出入り口で人の出入りを記録したりはしないのだ。入った時点で自己責任。迷宮はそういう場所というわけだ。
アルフレッドになぜか手を握られ、歩きながらも私は初めて入る迷宮に目を向けた。目の前は全部茶色い壁。一見ただの洞窟のような空間でしかないが、ほんわかと壁が光っている。
苔の様な植物が、この洞窟内を照らしているようだ。
だが、このグラナダ迷宮も、よくあるファンタジー世界同様、階層ごとにその様子は異なる。
しばらくは洞窟のような空間が続くが、階層によっては、森林のような場所もあれば、砂漠のような場所もあるし、海のような場所まであると、昨日冒険者ギルドで読んだ本には書いてあった。
とても楽しみだ。
まだ朝が早いからか、出入り口付近のこの場所は見た感じでは人の気配は全くない。
常時展開している気配察知の方はどうだろうか・・・?と意識をして・・・私は気づいた。
(気配察知がうまく機能していない・・・?)
いつもは広範囲にわたってできている筈の気配察知が、半径3Mほどしかできないのである・・・・これじゃ目で見たほうが早い。
公爵子息家教育によると魔法は魔素で発現するというし、迷宮は普通の場所より魔素が濃いと昨日の本には書かれていた。
前世のゲームキャラクター<剣聖>の気配察知がどういう原理で、出来ているのか分からなかったが・・・・もしかしたら魔素を薄く広げて、それに当たったものを反射して場所を確かめているのかもしれない。
そうであるなら、迷宮のような魔素の濃い場所だと、うまく魔素を薄く広げられないのもうなずける。
魔素が濃い場所は、大量の魔素を広げなければ気配察知をすることができないのだろう。
だが、私の・・・レティシアの魔力操作能力では、ここまで大量の魔素は操作が難しく、半径3Mほどが限度なのだと感じる。
(これは・・・・ちょっと厄介だなぁ)
しかし、そんな思いとは裏腹に・・・ワクワクする気持ちがおさえられない。
この世界はゲームではなく、現実だというのに・・・一歩間違えれば死んでしまうというのに・・・・・腰に帯びている剣に思わず手を伸ばし、うっすら口角があがってしまうのを止められない。
いま私の手を握りしめる・・・隣にたたずむアルフレッドは、乙女ゲームの隠しキャラ。
その中で彼は傲慢で不遜、力こそすべてのような戦闘狂キャラクターだった・・・が、今の私は、そんな彼のことを戦闘狂と揶揄うことなどできない。
同じ穴の狢だ。
「あいつから依頼されたのは、20階層のボス部屋まで連れて行くだったかぁ・・・?
グラナダ迷宮は中級迷宮で、最下層は30階層。元々、オレとフレドだけでも2週間もありゃ攻略できる迷宮だからな。
本当にあの・・・マクシムとかいう男がA級冒険者並み・・・・・いや。
・・・ハッ、勇者並みに強いなら、5日もあれば、依頼が終わりそうだな・・・・」
私と同じく何やら楽しそうに口角をあげているアルフレッド。
なぜ<勇者>なんてセリフが出たのかは分からないが、そんなに早く20階層まで着くものなのか、と若干驚く。
彼は、私にそう話しかけながら、ちらりと<マクシム>と<ベルタ>の2人に視線を向けた。
アルフレッドと同じように、2人に私も視線を向けると・・・・・そこには、私たちのつないだ手を・・・・凝視するマクシムの姿が目に入った。
その中心にある荘厳な中央神殿と堅牢な冒険者ギルド。
二つの物々しい建物に左右を挟まれたその場所に・・・グラナダ迷宮の入口はあった。
街中なのに、そこだけ森の中のように、苔に覆われた洞窟の穴がぽっかり空いていた。
同時に大人二、三十人は余裕で潜り抜けられそうなその大きな穴は、木の板で支えてあった。
日本の鉱山の抗口だと言われても、うなずいてしまうような雰囲気だ。
その迷宮の出入り口には、南の領地の領地軍の兵士が2人、背筋を伸ばし佇んでいる。
<迷宮活性化>や<スタンピード>なんてものがあるから、念のために迷宮を監視しているのかもしれない。
「んんん~、行くわよ!行くわよぉおおおおお!」
大声を上げて、意気揚々とベルタが先に迷宮の中に入っていく。
「おいっ!1人で行くな!!」
焦ったように<元彼・光輝>に似ている<マクシム>が彼女を呼び止め、その腕を素早くつかんだ。
その様子を私<レティシア>はついつい見つめてしまう。彼は<元彼・光輝>ではないというのに、彼が異性に触れるのを見ると・・・・・・・・何度心に蓋をしても、どうしても胸がざわつく。
ハッと息を吐きだす。
一方、私の護衛兼、講師の<A級冒険者>アルフレッドは、完全に2人の様子を気にせず、迷宮に入っていく。この迷宮に何度か入ったことがあるのだろう。非常に余裕そうである。
ちなみに、アルフレッドは私の腕を掴んだあと、放して・・・・そのまま私の手を握った。つまりは、だから私も一緒に通り抜けた。
グラナダ迷宮は・・・というよりこの世界の迷宮は、特に通行証のようなものはいらない。
勝手に入って、勝手に出ることができる。
なぜなら・・・・・・縁起でもない話だが、この世界は割と死にやすいからだ。
叔父<ハワード・フランシス>が善政を敷いているとはいえ、ここ<南の領地>でさえもやっぱり日本に比べて・・・・・・すぐに人は死ぬ。
ポーションや治癒魔法があるとはいえ、医療もそこまで発達していないのだから、仕方がない。何より凶悪な魔獣がいる世界だ。腕っぷしが強かったり、魔法が使えなかったら、すぐに襲われて死んでしまう。
迷宮は、様々な魔獣の素材や高価な魔石、宝玉類も出やすい反面、強い魔獣がいて、さらに罠(トラップ)まである。
高リスク高リターンな場所なのだ。1日数千人単位の冒険者や傭兵等が中に入り、少なくない人数が死亡したり、重傷を負う。
そんな場所で、一々人の数を数えても無意味なのだ。リスク覚悟で入った者を毎日何百人も助けに行けるほど、領地軍だって人的資源が豊富なわけじゃない。
だから・・・・出入り口で人の出入りを記録したりはしないのだ。入った時点で自己責任。迷宮はそういう場所というわけだ。
アルフレッドになぜか手を握られ、歩きながらも私は初めて入る迷宮に目を向けた。目の前は全部茶色い壁。一見ただの洞窟のような空間でしかないが、ほんわかと壁が光っている。
苔の様な植物が、この洞窟内を照らしているようだ。
だが、このグラナダ迷宮も、よくあるファンタジー世界同様、階層ごとにその様子は異なる。
しばらくは洞窟のような空間が続くが、階層によっては、森林のような場所もあれば、砂漠のような場所もあるし、海のような場所まであると、昨日冒険者ギルドで読んだ本には書いてあった。
とても楽しみだ。
まだ朝が早いからか、出入り口付近のこの場所は見た感じでは人の気配は全くない。
常時展開している気配察知の方はどうだろうか・・・?と意識をして・・・私は気づいた。
(気配察知がうまく機能していない・・・?)
いつもは広範囲にわたってできている筈の気配察知が、半径3Mほどしかできないのである・・・・これじゃ目で見たほうが早い。
公爵子息家教育によると魔法は魔素で発現するというし、迷宮は普通の場所より魔素が濃いと昨日の本には書かれていた。
前世のゲームキャラクター<剣聖>の気配察知がどういう原理で、出来ているのか分からなかったが・・・・もしかしたら魔素を薄く広げて、それに当たったものを反射して場所を確かめているのかもしれない。
そうであるなら、迷宮のような魔素の濃い場所だと、うまく魔素を薄く広げられないのもうなずける。
魔素が濃い場所は、大量の魔素を広げなければ気配察知をすることができないのだろう。
だが、私の・・・レティシアの魔力操作能力では、ここまで大量の魔素は操作が難しく、半径3Mほどが限度なのだと感じる。
(これは・・・・ちょっと厄介だなぁ)
しかし、そんな思いとは裏腹に・・・ワクワクする気持ちがおさえられない。
この世界はゲームではなく、現実だというのに・・・一歩間違えれば死んでしまうというのに・・・・・腰に帯びている剣に思わず手を伸ばし、うっすら口角があがってしまうのを止められない。
いま私の手を握りしめる・・・隣にたたずむアルフレッドは、乙女ゲームの隠しキャラ。
その中で彼は傲慢で不遜、力こそすべてのような戦闘狂キャラクターだった・・・が、今の私は、そんな彼のことを戦闘狂と揶揄うことなどできない。
同じ穴の狢だ。
「あいつから依頼されたのは、20階層のボス部屋まで連れて行くだったかぁ・・・?
グラナダ迷宮は中級迷宮で、最下層は30階層。元々、オレとフレドだけでも2週間もありゃ攻略できる迷宮だからな。
本当にあの・・・マクシムとかいう男がA級冒険者並み・・・・・いや。
・・・ハッ、勇者並みに強いなら、5日もあれば、依頼が終わりそうだな・・・・」
私と同じく何やら楽しそうに口角をあげているアルフレッド。
なぜ<勇者>なんてセリフが出たのかは分からないが、そんなに早く20階層まで着くものなのか、と若干驚く。
彼は、私にそう話しかけながら、ちらりと<マクシム>と<ベルタ>の2人に視線を向けた。
アルフレッドと同じように、2人に私も視線を向けると・・・・・そこには、私たちのつないだ手を・・・・凝視するマクシムの姿が目に入った。
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