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第2章 入団までの1年間(1)、新たな攻略対象との出会い
24:フレデリックの朝の応接間
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レティシアが応接間に到着する少し前のこと。
南の領地最大都市「サリム」にある領主の城。
その従者用区画にある一室で、2人の男が彼ら以外に誰もいないにも関わらず、ひそひそと声をおとして話していた。
アイオスという人物に変装しているレティシアの兄・フレデリックと、元々彼の側近候補として従者をしていたジンだ。
「ジン、本当にレティに指導している講師がこの城に来ているんだな?」
「はい、フレド様。いまはレティシア様が着替えるのを青の応接間で待っているらしいですよ」
頬をかきながら、城の下男から聞いた情報をフレデリックに話すジン。
「・・・・・・」
無言でフレデリックは青の応接間の方角に目線を向ける。
ちなみにレティシアとは違い、日の出とともに起きていた2人はすでに来客対応も万全な恰好をしている。
「はぁ。やっぱり・・・行くんですか?」
ジンはそんなフレデリックの様子に少しあきれたような声をだす。
「ああ。昨日のレティの疲れ具合は尋常じゃなかったからね。様子を尋ねたい。・・・それに、少し気になることもあるんだ。悪いな、ジン。付き合ってくれるかい?」
フレデリックの安定の過保護さ加減に、ジンは思わず苦笑する。
「分かりました。一緒に行きますよ」
相談し終えた2人は従者の区画から、青の応接間のある区画へと歩を進める。
コンコンッ
青の応接間に着いくと、フレデリックは、扉を丁寧にノックする。
すると、1秒もしないうちに内側から扉が開く。
どうやらレティシアつきの侍女・メアリが、扉の側で控えていたらしい。
「?・・・ジン様?・それに・・・アイ・・・オス・・様?」
なぜここに彼らがいるのだろうと目を大きく見開く侍女・メアリ。
元々大きい目がさらに大きく見える。
そんなメアリに一つ頷くような仕草をかえして、フレデリックはジンとともに応接間に入った。
ちなみにメアリが2人に敬称をつけているのは、アイオス(フレデリック)がフランシス公爵家配下の伯爵家四男、ジンが男爵家の養子・・・つまり貴族という肩書だからだ。
応接間に入ると、ソファの前にふんぞり返るように座ったやけにキレイな顔をした背の高い男がフレデリックの目に入る。
即座にほほ笑みをたたえるフレデリック。
「突然の訪問、失礼いたします。お初にお目にかかります。私の名前は、アイオス・サザンド。こちらの者は、ジン・バトラーと申します。
我々は、将来フレデリック様を支えるよう公爵様(父・コドック)より、いいつかっている者です」
丁寧な口調で自身に相対したフレデリックを見て、背の高い男こと、昨日からレティシアの講師をしているアルフレッドが不敵に笑う。
「なるほど、つまりは側近候補ってわけか・・・。
オレは冒険者のアルフレッド・ブラッドレイだ。
・・・で、何の用だ・・・?」
席を立つこともせず、フレデリックとジンにそう告げるアルフレッド。
彼のそんな様子にメアリの顔は一瞬ゆがみ、ジンは苦笑をこぼす。
なぜなら貴族同士でも格上の相手や同列の相手には、席を立って挨拶をするのが基本。
平民なら言わずもがな、もっと丁寧に接しなくてはならないからだ。
冒険者ということは、身分は平民。そう思うメアリはアルフレッドの不躾ともいえる態度に顔をゆがませ、孤児院出身のジンは過去の自分を思い出し、苦笑した。
だが・・・フレデリックだけは、違った。
「不躾に申し訳ございません。
実は、アルフォンス殿下をこうして伺わせていただいたのは、
公爵様(父・コドック)にフレデリック様の鍛錬の様子を報告するように
承っているからなんです。
フレデリック様は一部記憶を無くしておりますが、高名な魔法騎士であられた殿下の生徒として、役不足ということはございませんか?」
フレデリックの発言に、その場の空気が一瞬で凍った。
南の領地最大都市「サリム」にある領主の城。
その従者用区画にある一室で、2人の男が彼ら以外に誰もいないにも関わらず、ひそひそと声をおとして話していた。
アイオスという人物に変装しているレティシアの兄・フレデリックと、元々彼の側近候補として従者をしていたジンだ。
「ジン、本当にレティに指導している講師がこの城に来ているんだな?」
「はい、フレド様。いまはレティシア様が着替えるのを青の応接間で待っているらしいですよ」
頬をかきながら、城の下男から聞いた情報をフレデリックに話すジン。
「・・・・・・」
無言でフレデリックは青の応接間の方角に目線を向ける。
ちなみにレティシアとは違い、日の出とともに起きていた2人はすでに来客対応も万全な恰好をしている。
「はぁ。やっぱり・・・行くんですか?」
ジンはそんなフレデリックの様子に少しあきれたような声をだす。
「ああ。昨日のレティの疲れ具合は尋常じゃなかったからね。様子を尋ねたい。・・・それに、少し気になることもあるんだ。悪いな、ジン。付き合ってくれるかい?」
フレデリックの安定の過保護さ加減に、ジンは思わず苦笑する。
「分かりました。一緒に行きますよ」
相談し終えた2人は従者の区画から、青の応接間のある区画へと歩を進める。
コンコンッ
青の応接間に着いくと、フレデリックは、扉を丁寧にノックする。
すると、1秒もしないうちに内側から扉が開く。
どうやらレティシアつきの侍女・メアリが、扉の側で控えていたらしい。
「?・・・ジン様?・それに・・・アイ・・・オス・・様?」
なぜここに彼らがいるのだろうと目を大きく見開く侍女・メアリ。
元々大きい目がさらに大きく見える。
そんなメアリに一つ頷くような仕草をかえして、フレデリックはジンとともに応接間に入った。
ちなみにメアリが2人に敬称をつけているのは、アイオス(フレデリック)がフランシス公爵家配下の伯爵家四男、ジンが男爵家の養子・・・つまり貴族という肩書だからだ。
応接間に入ると、ソファの前にふんぞり返るように座ったやけにキレイな顔をした背の高い男がフレデリックの目に入る。
即座にほほ笑みをたたえるフレデリック。
「突然の訪問、失礼いたします。お初にお目にかかります。私の名前は、アイオス・サザンド。こちらの者は、ジン・バトラーと申します。
我々は、将来フレデリック様を支えるよう公爵様(父・コドック)より、いいつかっている者です」
丁寧な口調で自身に相対したフレデリックを見て、背の高い男こと、昨日からレティシアの講師をしているアルフレッドが不敵に笑う。
「なるほど、つまりは側近候補ってわけか・・・。
オレは冒険者のアルフレッド・ブラッドレイだ。
・・・で、何の用だ・・・?」
席を立つこともせず、フレデリックとジンにそう告げるアルフレッド。
彼のそんな様子にメアリの顔は一瞬ゆがみ、ジンは苦笑をこぼす。
なぜなら貴族同士でも格上の相手や同列の相手には、席を立って挨拶をするのが基本。
平民なら言わずもがな、もっと丁寧に接しなくてはならないからだ。
冒険者ということは、身分は平民。そう思うメアリはアルフレッドの不躾ともいえる態度に顔をゆがませ、孤児院出身のジンは過去の自分を思い出し、苦笑した。
だが・・・フレデリックだけは、違った。
「不躾に申し訳ございません。
実は、アルフォンス殿下をこうして伺わせていただいたのは、
公爵様(父・コドック)にフレデリック様の鍛錬の様子を報告するように
承っているからなんです。
フレデリック様は一部記憶を無くしておりますが、高名な魔法騎士であられた殿下の生徒として、役不足ということはございませんか?」
フレデリックの発言に、その場の空気が一瞬で凍った。
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